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2019.09.08 12:00

『ブレードランナー ファイナル・カット』IMAXレーザー鑑賞レポート

  • ichigoma

1982年に初公開され、今もなおSF映画の金字塔としても名高いリドリー・スコット監督の『ブレードランナー』。

細かい部分から作品そのものの解釈を揺らがすシーンの追加によって7パターンものバージョンがある点も映画史に名を刻む逸話でもありますが、公開25周年を記念しリドリー・スコット監督の手によって再編集され、2007年に公開されたのが『ブレードランナー ファイナル・カット』です。当時は、日本では東京と大阪の限られた映画館で上映でしたが、続編『ブレードランナー2049』(17年)公開にあわせて、2017年10月に丸の内ピカデリー、川崎チネチッタなど5館でリバイバル上映されました。筆者は丸の内ピカデリーの爆音映画祭で鑑賞したのですが、退廃的な世界観とBGMとして多用されてるシンセサイザーの重厚なサウンドにこれが35年前に作られた映画なのか!と、お口あんぐりなままで劇場を後にしたのを覚えてます。

さらに2年経ったこの2019年、本作初となるIMAXシアターでの2週間限定リバイバル上映が決定!”ブレードランナー”のデッカード刑事と人造人間レプリカントの死闘と哀愁が今この2019年に戻ってくると聞き、公開初日早々に池袋の「グランドシネマサンシャイン」に行ってきました。2019年のロサンゼルスを舞台とした『ブレードランナー』を、実際の2019年に大画面で鑑賞できるなんて憎い計らいです。

さて、こちらのグランドシネマサンシャイン。『ダンケルク』の鑑賞レポートでも記載しましたように国内最大級サイズのスクリーンを擁す「IMAXレーザー/GTテクノロジー」シアターなわけですが、『ブレードランナー ファイナル・カット』はこのスクリーンのフルサイズ(1.43:1)ではなくシネスコ画角で製作されているため、画面の上部と下部にそれぞれ黒い帯が表示されていました。上映前のIMAXカウントダウン映像もシネスコ画角で、普段観慣れてる映像なのに比率が違うだけでとても新鮮な気分です。

本編開始早々に表示される「BLADE RUNNER」のタイトル文字。黒一色のバックとシンプルな赤文字にワクワクしながらもキャスト名に続いてでーん!と出てくる「LOS ANGELES NOVEMBER, 2019」でエモさ爆発です。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズでも30年後の未来として2015年の世界が出てきましたが、往年の名作で描かれた未来世界と現実の時間がリンクするのは不思議な感覚です。

IMAX上映レポートということで、シナリオや演出には触れず、映像や音響面について語りたいと思いますが、特筆すべきは映像の美しさでしょう。

2017年に丸の内ピカデリーで鑑賞した際も、高層ビルが密集する夜の街並みに星空を思わせるかのようなビル窓に点る無数のライト、宇宙開拓を謳う大型ビジョンを搭載した飛行機器やビル壁面を占める舞妓さんのサイネージ広告など、都市の夜景が印象的でしたが、若干粒子の粗さやザラ付きが目に付く部分もあり、そりゃウン十年も前に作られた作品だからなぁと納得してたところもあるのですが、IMAX用に処理された映像はその粒子間がほぼ処理されており、クリアな映像に仕上がっていました。

この”ほぼ処理”と言うのがポイントで、完全処理を施すと現在のSF作品のようなツルッとした映像になるところですが、当時の作風や味をしっかり残しつつ、灰汁を取り除いて観せたい部分を強調するというバランス感が絶妙です。暗がりの中、横からの光源に照らされたデッカードの肌の質感などは少々の粗さが残ってる事で、苦悩と苦労の多いベテラン刑事の色が濃く出ていたと思います。

『ブレードランナー』の世界を語るにあたり、映像と共に重要になってくるのが音響。シンセサイザーの和音を多重に組み合わせて作られた変調サウンドは、近未来感と共に酸性雨の降り続く閉塞感に満ちたロサンゼルスを彩るのに相応しいものですが、シアターの高所から客席全体を包み込むサウンドは、非現実的な神秘性に富み、座ったままで異次元に飛ばされてるかのような浮遊感にも満ちていました。

文字通り「天上の調べ」として降り注ぐ音響と、大画面に拡がるサイバーパンクの世界は、我々を「LOS ANGELES NOVEMBER, 2019」に誘ってくれるでしょう。これが本当にアナログ撮影で作られた作品なのかと、改めて再認識させられました。ゆったりと街中を行き交う空を飛ぶ車・スピナーから見下ろす街並みも必見です。

また、作中に出てくるシーンは基本的に夜、または薄暗い室内が大半を占めていますが、画面が暗い作品で発生しやすい「暗すぎて人物の動きや表情が分からない」といった心配も杞憂でした。「IMAXレーザー/GTテクノロジー」が得意とする明るさの向上と高いコントラストは、暗所のシーンでもメリハリの効いた映写を可能としています。デッカードがロサンゼルス市警に呼び出されレプリカントの処理を命ぜられるシーンや、タイレル社の技師J・F・セバスチャンの住まう廃マンションにて、彼が創り出した”作品”たちが所狭しと並ぶ室内内装などは、当時の美術職人が生み出した渾身の技術を目の当たりに出来ます。

「IMAXレーザー/GTテクノロジー」が導入されているIMAXシアターは、グランドシネマサンシャインと109シネマズ大阪エキスポシティの2館のみですが、このレポートを書いている時点で今回のリバイバル上映の対象館に名を連ねているのはグランドシネマサンシャインのみなのが悔やまれます。

グランドシネマサンシャインの開業前、大好きな作品や思い入れのある作品を是非とも「IMAXレーザー/GTテクノロジー」で観たいと、大阪まではるばる遠征していた関東民だからこそ、関西在住の『ブレードランナー』ファンが抱いてるであろう悔しさが痛いほど分かります。時期がずれても、関西でも「IMAXレーザー/GTテクノロジー」によるブレードランナー体験が出来る日を願ってやみません。

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『ブレードランナー ファイナル・カット』

<4K ULTRA HD&ブルーレイセット>(2枚組)5,990円+税
ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
TM & ©2017 The Blade Runner Partnership. All Rights Reserved.

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グランドシネマサンシャイン

所在:東京都豊島区東池袋一丁目 30 番 3 号
アクセス: JR 山手線等「池袋駅」徒歩 4 分
開業:2019年7月19日(金)
スクリーン数:12 スクリーン
座席数:2,443 席
事業者:佐々木興業グループ(全国で 14 箇所のシネマコンプレックスを運営)
公式サイト公式施設特設サイト

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