Report

2019.07.24 12:27

『ダンケルク』フルサイズIMAX上映!グランドシネマサンシャイン前夜祭 鑑賞レポート

  • ichigoma

7月19日(金)に東京・池袋に新しくオープンしたシネマコンプレックス「グランドシネマサンシャイン」。その1週間前、7月12日(金)に多くの映画ファンに見守られつつ約34年間の歴史に幕を閉じた「シネマサンシャイン池袋」の後を継ぐこのシネコンは、最新鋭の上映環境と充実の館内設備、写真栄えも美しい豪華な内装と、映画の殿堂の風格も漂わせる映画館に仕上がっています。

日本初上陸となる体感型アトラクションシアター「4DX」と三面マルチプロジェクション上映システム「ScreenX」が融合した「4DX with ScreenX」、日本で初めて全シアターに幅広い色域の表現を可能とするRGBレーザープロジェクターを導入するなど、これだけでも贅沢な品揃えではありますが、その上にメインディッシュとして上乗せされたのが、国内最大の巨大スクリーンとなる「IMAX®レーザー/GTテクノロジー」シアターです。

オープン前日、7月18日(木)に開催された前夜祭ではクリストファー・ノーラン監督の名作『ダンケルク』が上映され、チケット販売のオンラインサイトでは開始時間となるや否や542席のチケットを巡る熾烈な戦いが繰り広げられました。

今回、何とかダンケルクの地への乗船チケットを手に入れる事が出来たため、「IMAX®レーザー/GTテクノロジー」の魅力や見所について触れていきたいと思います。

ちなみに、筆者は『ダンケルク』(17年)の劇場公開期間中、T・ジョイPRINCE品川のIMAXシアター含む計5回観ております。

なぜ『ダンケルク』なのか?

さて、どうして前夜祭に『ダンケルク』が選ばれ、またファンの間でここまで大騒動になるほどの人気なのか。このレポートを読まれてるコアな映画ファンの方々からしたら、いまさらいうまでもないかもしれませんが、その理由を簡単に説明させていただきます。

早くレポート本文を読みたい方はこの段落をパスしていただいてかまいません。

『ダンケルク』は、『バットマン ビギンズ』(05年)を含むバットマン三部作(ダークナイト トリノジー)や『インセプション』(10年)、『インターステラー』(14年)など大ヒット作を世に送り出したクリストファー・ノーラン監督による2017年の作品。第二次世界大戦後期にフランスの海岸線を舞台に展開されたダイナモ作戦(仏ダンケルクからの英仏軍撤退作戦)を、空、海、陸の3つの視点から描く群像劇は、サスペンスフルな戦争映画です。

クリストファー・ノーラン監督(中央)

『インターステラー』に続き撮影監督にはホイテ・ヴァン・ホイテマが起用され、フランスのダンケルクを中心に行われた撮影では、IMAX 65mmと65mmラージフォーマットフィルムが用いられました。本編106分中、79分がIMAXフィルムで撮影されているとのこと。つまり通常の劇場用の縦横ともにほぼ倍の面積のフィルムで撮られた、メガシアター用の作品なのです。そのアスペクト比(縦横の比率)は、1.43:1。

日本国内の多くの映画館の上映フォーマットは、2.35(2.40):1のシネマスコープサイズ。IMAXデジタルシアターでも、1.9:1。つまり、本来の『ダンケルク』は、比較的正方形に近いフォーマットなのです。

残念ながら、「グランドシネマサンシャイン」オープン前は、日本でこのアスペクト比で観られる劇場は、109シネマズ大阪エキスポシティしかなかったのです。他の劇場では、上下の40%がカットされた状態。極端にいうと、通常の劇場で『ダンケルク』を観た人は、映画の約7割しか観ていなかったのです!!

劇場公開時のポスター

2017年の公開時には、監督が本当に見せたかった画をこの目で確認したいと、関東をはじめ日本全国から関西に遠征する映画ファンも多く発生しました。

そう、「グランドシネマサンシャイン」の12階にある「IMAX®レーザー/GTテクノロジー」シアターは、関東で初めて『ダンケルク』を本来の画角で鑑賞できるシアターなのです!

スクリーンサイズは、高さ18.910m×幅25.849m。アスペクト比は1.43:1。2台の4Kレーザープロジェクターにより、より広い色域と高いコントラストのが可能になりました。これによって、ノーランがこだわっていた“没入感”に、近づくことができることでしょう!

ということで、そんな『ダンケルク』のフルサイズIMAX版の1回限りの特別上映。オープンに相応しい作品を持ってきたな!と思います。

もはや壁のIMAXシアター

さてそれでは実際に「IMAX®レーザー/GTテクノロジー」シアターに向かってみましょう。エスカレーター、またはエレベーターを使って上がること12階。池袋の街並みが展望できるガラス張りの待合場所と天井全面に設置されたLEDビジョンが日常を忘れさせてくれる空間を演出しており、LEDビジョンに投影される幾何学映像や映画予告を観ているだけでも、結構楽しめます。

はい、これが「IMAX®レーザー/GTテクノロジー」シアターです。

…。

ここまで来るとスクリーンと言うよりただの壁です。壁面。ロビーや待合場所、館内の何処を切り取ってもインスタ映えする設備や内装なのにここだけ全く映えません。

駅徒歩5分圏内の商業ビルにこんなでっかいの、入れちゃったんですか。と言うか、どうやってこの超大判サイズのスクリーンを12階の高さまで運搬したの?こんなの入口から納入できないよ(小学生並みの疑問)??

と、ともかくこのスクリーン全部、端から端ぴっちりサイズで映画が観れるって思うと最の高。ワクワクが止まりません!

座席はM列の20番、前方・中方・後方の三ブロック構成のうち、後方ブロックのセンターです。普通席ですが、リクライニング機能とミニテーブルが付いてる、ちょっとリッチなプレミアムクラス(+1,500円)の真後ろ列の席なので、ここも実質プレミアムクラスです……。そういう事にしてください(笑)。

陸海空、大迫力で迫ってくる映像と音響!

「IMAX®レーザー/GTテクノロジー」で初体験した『ダンケルク』。ひと言で言えば、2017年の劇場公開時(大阪エキスポシティを除く)および映像媒体として普及しているものとは、まったくの別モノでした。

前夜祭の前日夜、自宅でBlu-ray版を鑑賞し復習しておきましたが、作品冒頭に出てくるダンケルクの街中で佇むトミー(フィン・ホワイトヘッド)のシーンだけとっても、上下に広い画面サイズに圧倒されました。劇場版(Blu-ray版)は画面中央にトミーの全身がぴったり入るくらいの大ききでトリミングされてましたが、元々はもっとトミーの全身は小さく描かれており、その小ささが敵軍に包囲された場の中で信頼できる仲間もおらず、一人ぼっちで逃げ惑う二等兵の孤独や緊迫感をひしひしと感じました。

銃声が飛び交う市街地を抜け、辿り着いた先で視界に広がるダンケルクの海辺。ここでも果てしなく続く空と海、列を成して今か今かと救助の手を待ちわびる幾多の兵隊の姿が出てきますが、遥か彼方に広がる広大な水平線のド迫力。IMAXレーザーの名の通り、4Kレーザープロジェクター2台が魅せる、海と空の境界にある部分のコントラストの高い絶妙な色合いのグラデーションが見事のひと言です。

映像面を語るにあたって外せないのは、ダンケルクへ向かう英国空軍の3機の戦闘機・スピットファイア。3機が横一列で空を駆け、散開の合図で三方向に散る風景やコックピット視点で敵機を撃ち落すシーンは、あたかも自分がその場にいるような臨場感でした。

十字に写る照準と前方の敵機、自機から発射される赤い縁取りで彩られた白い銃弾ラインも、苦も無く目で捉えられます。銃弾を見てやろうと思ってガン見してる訳ではなく、意識せずとも追いかける事が出来るのは素晴らしいです。

そして大海原を舞台に大空をくまなく駆け巡る飛行戦!海と空と戦闘機が二機のみで展開する画面の臨場感と壮大さ、自機の旋回と共に傾く画面に、つい自分の体も斜めになってしまうほどの没入感がありました。

特にスピットファイアのパイロットの一人、ファリア(トム・ハーディ)が敵機を追い詰め降下するシーン。基本的には上方には空・下方には海で構成されていた画面が画面中央にファリア機を捉え、高い場所から見下ろす形で描かれるスクリーン全体が海一色に染まる数秒には思わず息を呑むほど。あまりの高さに品川IMAXでも「ひっ…」となった記憶がありますが、今回はそれを更に上回るものでした(高いところが苦手な方は特にご注意を…)。

水の表現も素晴らしく、撃墜されたコックピットから脱出しようとするも戦闘機の天窓が開かず、そうこうしてるうちに隙間から入り込んでくる海水の透明感や、敵兵に撃たれて船底に開けられた穴から浸水し、天井近くまで水に満たされる船倉の濁り感、難破した船から重油が流れこみ水面上で燃える油と、その下で息を止めてもがくトミーの姿を水中から映したシーンも緊張感に満ちてて最高でした。アレです……つい一緒に息を止めちゃうアレです。

グランドシネマサンシャインの「IMAX®レーザー/GTテクノロジー」は、スクリーンサイズが取り沙汰される事が多いですが、音響面も映像に引けを取っておらず、鳴り響く銃声や遠方近方で轟く爆撃音、軽快な音を立てる戦闘機のエンジン音やプロペラ音等、かなりの大音量で客席に迫ってきます。

銃撃シーンでは耳が遠くなるほどの爆音と背中や地面を這って来る重低音が体を揺さぶり、2D上映であるにも関わらず、体感型上映の4D上映の雰囲気すらあります。本作を象徴する音の一つである時計の秒針音も、耳の奥でずっと残るような厭らしさを保っており、この音が消えた時の安堵感は倍増しました。

以上、「IMAX®レーザー/GTテクノロジー」上映の『ダンケルク』をレポートしましたが、このクオリティの映画館が都内に降臨したのは、いち映画ファンとして、本当に喜ばしく、シネコンの歴史にまた一つ名を刻む映画館が出来たなと思います。池袋駅から徒歩4分と言う好立地に高スペックの映画館、正に向かうところ敵なしではないでしょうか。

あえて、付け加えるなら、4階ロビーから12階とビルの高層階に渡って展開されてるシネコンのため、シアター間で開映・終映時間が被るとエレベーター・エスカレーターが混雑する可能性があるかなと感じました。なので、行かれる方は少し早めに到着出来るよう時間調整することをオススメします。

先に上げたガラス張りの展望エリア以外にも、4階ロビーの天球に投影される映像アートや時代ごとの名作映画ポスター、映画愛がぎゅっと詰まった展示スペース等と見所もいっぱいです!

==

グランドシネマサンシャイン

所在:東京都豊島区東池袋一丁目 30 番 3 号
アクセス: JR 山手線等「池袋駅」徒歩 4 分
開業:2019年7月19日(金)
スクリーン数:12 スクリーン
座席数:2,443 席
事業者:佐々木興業グループ(全国で 14 箇所のシネマコンプレックスを運営)
公式サイト公式施設特設サイト

==

『ダンケルク』(原題:Dunkirk)

追い詰められた40万人──史上最大の救出作戦。

ダンケルクの海岸に追い詰められた何十万人もの英仏連合軍に敵の軍勢が迫りつつある状況の下、物語は陸・海・空を舞台に展開される。海峡上空ではイギリス空軍(RAF)のスピットファイアが敵機を迎え撃ち、地上の無防備な兵士たちを守るために空中戦を繰り広げる。そして海上では軍人ばかりか民間人も小型船に乗り込み、一人でも多くの味方の命を救うため、時間との戦いの中で危険をも顧みず、決死の救出作戦を決行する。

監督・脚本・製作/クリストファー・ノーラン
製作/エマ・トーマス
音楽/ハンス・ジマー
出演(吹替)/フィン・ホワイトヘッド(小野賢章)、ハリー・スタイルズ(増田俊樹)、ケネス・ブラナー(谷 昌樹)、キリアン・マーフィー(内田夕夜)、マーク・ライランス(原 康義)、トム・ハーディー(宮内敦士)
2017年/アメリカ/映倫区分:G/本編時間:106分

ブルーレイ/2,381 円+税
DVD/1,429 円+税
発売・販売元/ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
公式サイト
© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.
IMAX® is a registered trademark of IMAX Corporation.