【全文レポート】『窮鼠はチーズの夢を見る』大倉忠義と行定勲監督が大ヒット記念舞台挨拶に登壇!
- Fan's Voice Staff
9月11日(金)に公開された映画『窮鼠はチーズの夢を見る』の大ヒット記念舞台挨拶が10月30日(金)に都内の劇場で開催され、主演の大倉忠義と行定勲監督が上映後の観客の前に登場しました。
学生時代から受け身の恋愛を繰り返してきた大伴恭一(大倉忠義)と、7年ぶりに再会した大学時代の後輩の今ヶ瀬渉(成田凌)の、狂おしくも切ない恋を、時に繊細に時に大胆に描き出す本作。水城せとなの傑作コミック「窮鼠はチーズの夢を見る」、「俎上の鯉は二度跳ねる」を、『ナラタージュ』、『劇場』の行定勲監督が映画化したものです。
本記事では舞台挨拶の内容を全文レポートします(※司会:奥浜レイラ)。
──まずはご挨拶をお願いします。
行定監督 本日はありがとうございます。久しぶりの満員の観客席というのを見て、ちょっと今圧倒されていますが、本当にありがとうございます。『窮鼠はチーズの夢を見る』は9月11日に公開されて以来、ここまで皆さまに育でていただけたというか、愛された作品になったなと実感しております。本日はよろしくお願いします。ありがとうございます。
大倉 よろしくお願いします。前回の成田くんと監督の会見は家の方で見させていただいて、参加できなかったのがすごい残念に思ったんですけど、成田くんにも、人前でぬいぐるみなんて持ったことないだろうに持たせてしまい、申し訳ない気持ちになりながらもですね…。今日は成田くんはいないですけれども、こうやって皆さんにお会いできたことと、本当に久しぶりにお客さんの前に立てたことが…、いつもライブで1年に1回あるんですけど、今年はどうなるんだろうっていうのがあったんですけど、こういう機会があってすごく嬉しく思います。短い時間ですけどよろしくお願いします。
──大倉さんは体調が復活されてから初めてのお客様の前に立つわけですが…
大倉 そうですね。
──今のお気持ちはいかがですか。満席というのを見るのも、ね。
大倉 ねえ。皆さんもたぶん、(新型コロナに)かかっていらっしゃらない方が…、もちろんそうだと思いますけども(場内笑い)、ご心配をおかけしましたけども、非常に、非常にと言うか万全の体調に戻りましてですね。なので引き続き気をつけていただいて。でも映画館もこれだけ満員で観られるようになったということですもんね。ありがとうございます。
──お帰りなさい。待ってました!
大倉 あ、ただいま、です。(場内拍手)
──公開から1ヶ月半が経ちまして、7億円を超える大ヒット、53万人以上の方にご覧いただいております。多くの感想もあがってきて、リピーターの方も多い作品ですが、監督の方にはどのような反響が届いていますか?
行定監督 ありがとうございます。やっぱり、何度も観たという感想が多いですよね。で、観る度に発見があるとか、だんだん見え方も変わってくると言うか。この映画自体、ラブストーリーとしてすごくそこを特化して描いた作品だと思うんですよね。普通、人間ドラマであるという前提で描くんですけど、これはどちらかというと、恋愛ってどういうことなんだとか、人を好きになること、受け入れることはどういうことなんだっていうことを中心に描いた作品なので。でもですね、普通はそういう映画を撮る時に、もっと主観的にというか、もっと入り込んで撮るイメージがあるんですけど、どちらかというとこれ(『窮鼠〜』)は、この二人を客観的に見つめている映画になっているので、それで観客がむしろ能動的に自分から主観的になっていくというか、もっと近づいて観てくださってるなあ、という。リレーションというか、ある種この二人を凝縮させた空間の中で二人を客観的に撮っているものを、もっと自分のものとして、自分の作品として観てくださっている感想が多いというか。それはすごくありがたいなと思いました。
──確かに、濃い感想が多いのが本作の特徴かと思います。大倉さんにとっては、『窮鼠はチーズの夢を見る』は改めてどんな作品になりましたか?
大倉 どういう作品なんでしょうねえ…。なんかあの…、僕の周りもそうですけど、本当に何回か観たという方がすごく多いという話を聞いて。自分が最初に観た時は、心情を丁寧に説明しているのかしていないのかというところはそこまで注目せず観ていたんですけど、そう言われればそうだなと思い、雑誌とか取材の時も、どこまで語ったらいいんだろうというのもいつも思うところでした。恭一はこうなんじゃないかとか、今ヶ瀬はこうなんじゃないかと、皆さんがこれだけ想像してくださる作品なので。いつまでも言わないほうが素敵なものなのかもしれないですし、それだけ奥深いというか。そういう作品に僕が携わらせていただけるようになったんだなというか。自分の経験の中でも、自分で言うのもなんですけど、代表作になればいいなと思っています。
──今回は脚本家の方が大倉さんをイメージして執筆されていたとのことですが、脚本段階のエピソードは何か思い返されますか?
行定監督 それを聞いたのは、キャスティングで困った時なんですよね。キャスティングでは最初に、自分のセクシャリティと違うものを演じたりできるかなというところで、一回足が止まっちゃう気がするんですよ。じゃあ誰にやっていただけるんだろうって言った時に、意外とこう、いろんな人を想像してみてもなかなかハマるものがなくて。で、脚本家に「誰を想像して書いたの?」って。よく言ってるんでね。だいたいいつもは、「ショーン・ペンです」とか。”外人かよ”とか思うんですけど、いつもそうやって書くみたいなんです。トニー・レオンとか、外国人の名前が出てくるんですけど。今回は「大倉忠義さんですね」って言ったんですね。「ええー」って(返すと)、「知らないんですかー、大倉さんってすごい演技良いですよ」とかって言われて、それでいろんなビデオとか観せられて。声と、この色気というか、ちょっと謎な感じ。常に謎めいてる、すごく説明的じゃないということですかね。自分の心情をわかってもらおうみたいな感じはあまりない。そのものとして。だからすごくシンプルなんですよね。でも声も確かに良いよねってなって、その「声とか色気みたいなものが、無自覚にある人がいいと思ったから大倉さんで書いてましたー」って言ったから、「じゃあ、大倉忠義聞いてみよっかー、たぶんダメって言われると思うけどね」って言って送ったら、あれっ、意外と前向きの返答が返ってきて。それで大倉くんは「別に断る理由ないじゃないですか」って理由だったから、やっぱりこの人はすごくまっすぐに受け止めるというか、でもちょっと奥底に何を考えているかわからないところがあるっていうのがいいですよね。クセがあって。
──大倉さんが意味深な顔をされていましたけど、今のをお聞きになっていかがですか?
大倉 いや、ありがたいですね。皆さんもいろんな媒体を通じて僕を見てくださっていると思うんですけど、テレビの僕が本当なのか、雑誌の僕が本当なのかとか、いろんな見方をしてくださっていると思うし、基本は素直なんで全部本当なんでしょうけど、本当の本当は誰も知らないというところが、僕は嬉しくてたまらないですね。もう一生かけて見つけて欲しいですね(笑)。
──良い顔されていますね、今ね(笑)。行定監督からいろいろな演出の話もされたかと思いますが、撮影中に印象的だったことはありますか?
大倉 印象的だったことは…、そうですね、大きく方向転換するよりも、なにかもうちょっとこっちの方向でできる?みたいなので、その終わった後に、「何考えてたの?」とか「大倉って変だよね」みたいなことを、そのシーンを終わる度に感想を言ってくださるような印象でしたかね。でも、相手との関係性ももちろんありますし、初めて台本を読んで現場に行った時に、なにかしらこう現場で違和感が少しあったりすると、敏感に感じてくださって、その違和感をちょこちょこっと調整してくださると、すんなりいくようなイメージですかね。
──成田さんは今日は残念ながら出席が叶いませんでしたが、成田さんといちばん印象に残っているエピソードは?前回はここで成田さんからの大倉さん愛が大分感じられましたよね、監督?
大倉 そうですねえ(笑)
行定監督 大好きだって言ってましたから。
大倉 いや、僕も好きなんですけどね(監督笑い)、好き好き言われるとちょっと恥ずかしいから、こうなってしまうんですよ(笑)。でも好きなんですけど。そうですねえ、成田くんなんだろうな…。本当に、すごい良いシーンが詰まっているのでどれも印象的だし、(隣にあるポスターを見ながら)このシーンもなんかツンケンしてるけど、耳かきとかね、やってもらいながらもちょっと…すっげー恥ずかしかったなあとか思いながら。耳の中見られるってすごい恥ずかしいじゃないですか。え、なんでしたっけ、好きなシーン。そう、その裏側が可愛かったんですよ、すごい。山P(山下智久)とも共演してるし、「ジャニーズ独特の前髪に憧れてたんですよ」みたいな。「(髪を)一本だけね、ここにこう垂らして(顔の中央、鼻に沿った手振りで説明)、(サイドに)こう分けるのって、これジャニーズの定番でしょう?みんながやるこれ、学生の時真似してたんですよ」みたいな話とかを、すごい熱く。「これね、結構ちゃんと見ないとわかんないんですよ」とか、「知ってる?」みたいな感じで熱く語っていたのがすごい印象的で。そういや自分もデビュー当時、若い頃、そういう髪型してたなとか思いながら。そう、なんかね、「ジャニーズフリークなんですよー」みたいな感じで。しかも、最初に食事していた時に成田くんがすごい明るい人で、僕は現場に入るとわいわいわちゃわちゃできないので、「成田くんお願いします」って言ったのも忘れてて、あそっかー、だから成田くんすごい盛り上げてくれてたんだーってちょっと申し訳なくなりましたね。
──『窮鼠はチーズの夢を見る』は海外でも上映が決まっていまして、11月20日からは台湾での公開が決定しています。他にも韓国、香港での公開も決定しています。
大倉 嬉しいですねえ。関ジャニ∞としては台湾にしか行ったことがないですけれども、僕自身も、日本から飛び出たところでどなたが知ってくれてるんだろうなって本当に知らないんです。こういう作品を通じて知ってくださるのもそうですし、日本のエンタメとか映画というものに関しても、(『窮鼠〜』は)なかなか無い作品だとも思うので、こういう進み方をしているんだというところでも、新しく興味を持ってくださればと思います。
──実はですね、大倉さんには内緒にしていたんですが、行定監督から大倉さんへのお手紙を預かっておりまして、
大倉 えっ……、なになに、やばいやばい(会場笑い)
行定監督 そんなリアクション大きくなっちゃって(笑)
大倉 いやいや、なんすかなんすかなんすか、え、なんすかー、やばっ
──代読させていただいて良いですか?
大倉 え、ちょっと、裏じゃだめですか?(会場笑い)
──では、読ませていただきます。
大倉忠義 様
やっと今日、お客様の前に立てて安堵していることでしょう。しかも、満員の映画館で嬉しいですね。ここまでこられたのも、観客の皆様が「窮鼠はチーズの夢を見る」を愛してくださったおかげです。
観客に届いて映画は完成します。あまたある映画の中で「窮鼠」を選んでいただいた方々がこれだけいたことは、私たちが映画に取り組んだ結果です。誇りに思いましょう!
思い返せば、大倉が恭一役を引き受けてくれたところから、この映画は実現の道を歩き出しました。あの頃、岐路に立たされていたきみが、よく映画出演を決めてくれました。衣装合わせの頃は、太っていたは、荒んでいるはで、大丈夫かなと心配しつつも、そんな内面を露呈してしまっている正直なきみが人間臭くて逆に興味を持ちました。
映画を撮りはじめる前にもっときみと分かり合いたくて、あえて踏み込むことがきみを楽にする術だと考え、「荒れてる?」って直球を投げたら、きみはどうしようもない顔をして 満面の笑みを浮かべ「はい」って正直に答えたよね。足の指を骨折していたから情けない気分だったんだろう。
コンディションが完璧じゃない状態で挑む映画には、もどかしさもあっただろうけど、撮影現場でのきみは、「はい。わかりました。やってみます」の言葉しか口にせず、淡々と役を自分と同化させ、情感に訴える表情をたくさん見せてくれた。
一度だけ「明後日の走るシーン、走れません」と情けない声で言ってきたことがあったけど、俺はそこにも大倉の人間味を感じていたよ。むしろ、不完全な状況下で演じた恭一だったから人間臭さが出ていたし、そこに大倉忠義の持つ本質がない混ぜになって恭一という男のニュアンスを作り出していたのだと思います。時に感情が抜け落ちたような表情が大人の色気を放っていた俳優・大倉忠義の今後の活躍に期待をせずにいられません。
「窮鼠はチーズの夢を見る」は胸を張って代表作と言える作品になりました。大倉忠義という優れた俳優とも本当に良い出会いができた。
また、みんなが驚くような役を一緒に作りたいと思っています。それまでは、くれぐれも体には気をつけて、また飯でも行きましょう。
「窮鼠はチーズの夢を見る」監督
行定 勲
(会場拍手)
大倉 ありがとうございます。
──こんなエピソードがあったんですね、大倉さん…
大倉 思い返せばいろいろありましたねえ…(会場笑い)。ねえ。僕らグループも、すごいいろいろあったんですよね。今なんかいろいろ思い出しましたけれども、たぶん皆さんも思い出したんじゃないんですか、今ね。本当に運が悪いと言ったらアレですけど、いろいろ重なったときに…、まあ骨折ったんは自分が悪いんですけど(笑)、すごい状態で本当に申し訳ないことをしたなと思いながらも。そう、カットされてるんですよね。一個、僕が「あ、やっぱ走れない」ってなったきっかけのシーンがあるんですけど。えーと、あれか、「お前はもう要らない」っていうところの後ですね。あとちょっとだけ撮ってたシーンがあったんですけど、そこでいつもより早く歩くところがあって、「痛たたっっ!」ってなって成田くんに追いつけなかったんです(笑)。「すいません」って。「”走る”って書いてあるんですけど、ここ無理です」っていうのを今思い出しましたね。
でもほんま、ありがたいお言葉ですし、この映画を撮り終わってからもいろいろ大変だったなって思いながら、当時に戻ると泣きそうになるんで、目の前にいるちょっと眠そうな記者の方を見ながら今耐えていました(会場笑い)。
──記者の方のおかげで耐えられたと。
大倉 おかげで耐えられました(笑)。本当に、行定さんと出会えたことも大事なご縁ですし、成田くんとも今回はすごく近い役で、なかなかない演技でしたけど、違う作品でまたぜひ共演したいですねっていうのも取材の時に話していて。もちろん行定さんとも、ぜひまたお願いしますっていうお話もしてたんで。はい。僕も期待してます。
行定監督 全然違う役を。真逆の(笑)。
大倉 (笑)お願いします。
──後ほどお手紙は大倉さんにお渡しします。
大倉 ありがとうございます。すいません。
──ということで、今日はもう一つあります。大ヒットを記念して、また今後の運を開くという思いも込めまして、『窮鼠はチーズの夢を見る』オリジナルの鏡開きをご用意しております。
大倉 初めて、これするの。
──初めてですか?
大倉 初めてです。でも僕、本当に運がアレだったんでちゃんとお祓いには行ってきたんですけど(会場笑い)。個人的にですけど。
──行定監督も初めてですか?
行定監督 いや、何回かあるんですけど…、(樽の蓋に)いろんな叩いてる跡が…(会場笑い)
大倉 どこが割れやすいか
行定監督 ここを叩けばいいかな
──では、「よいしょ、よいしょ、よいしょ」の3つ目の「よいしょ」でお願いします。せーの…
行定監督&大倉 よいしょ、よいしょ、よいしょ!
大倉 すごっ
──無事鏡開きとなりました。それでは最後にひと言ずつお願いします。
大倉 皆さん、お忙しい中ありがとうございました。 本当にたくさんの方に観ていただいたということで、しかも何回も、ということで、これでもうちょっと続いて、映画の公開は終わっていくんですかね…なんですけれども。僕にとってもそうですし、皆さんにとっても、何かあったときにこう、観返すような作品になってくれたら僕は…、こうね、何をやっててもすべてが消費されていく時代ですけれども、なにか残っていくものに僕は参加できているというこの仕事にすごく誇りを持っているので、皆さんにとっても大事な作品になってくれたらなと願ってます。また違う形でもお会いできることを楽しみにしてます。今日はありがとうございました。
行定監督 2020年の今年は本当に大変な年で、たぶん忘れられない年に、僕にとってもなったし、で、そんな時にこの『窮鼠はチーズの夢を見る』が公開できたっていうこと、この奇跡ですね。これが皆さんに届いたってこと。それで、できれば、皆さんの心の中にこの『窮鼠はチーズの夢を見る』という作品が残って、忘れられない映画になっていたら嬉しいなという風に思っております。今日は主役の大倉忠義と共にこの満員の観客の皆さんの前でご挨拶ができるというのは、本当に有り難い話で、ここまで皆さんがこの映画を愛してくださった結果だと思いますので、本当に御礼が言いたいです。本当にありがとうございました。
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『窮鼠はチーズの夢を見る』
7年ぶりの再会 突然の告白 運命の歯車が動き出す──
学生時代から「自分を好きになってくれる女性」と受け身の恋愛ばかりを繰り返してきた、大伴恭一。ある日、大学の後輩・今ヶ瀬渉と7年ぶりに再会。「昔からずっと好きだった」と突然想いを告げられる。戸惑いを隠せない恭一だったが、今ヶ瀬のペースに乗せられ、ふたりは一緒に暮らすことに。ただひたすらにまっすぐな今ヶ瀬に、恭一も少しずつ心を開いていき…。しかし、恭一の昔の恋人・夏生が現れ、ふたりの関係が変わり始めていく。
原作/水城せとな「窮鼠はチーズの夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」(小学館「フラワーコミックスα」刊)
監督/行定勲
脚本/堀泉杏
音楽/半野喜弘
出演/大倉忠義、成田凌、吉田志織、さとうほなみ、咲妃みゆ、小原徳子
映倫区分:R15
日本公開/2020年9月11日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
配給/ファントム・フィルム
公式サイト
©水城せとな・小学館/映画「窮鼠はチーズの夢を見る」製作委員会