ハリソン・フォード、“デッカード”として35年ぶりの来日!『ブレードランナー 2049』記者会見ログ
- T&Bear
リドリー・スコット監督による『ブレードランナー』(82年)は、多くの映画製作者やクリエーターに影響を与え、SF映画の金字塔となりました。その劇場公開から35年、ついに続編『ブレードランナー 2049』が公開されます!
日本公開を10月27日(金)に控えた10月23日(月)、監督やキャストによる来日記者会見が都内で開催されました。会見に登壇したのは、『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(08年)以来9年ぶり、10度目の来日となるリック・デッカード役のハリソン・フォード、迫真の演技を絶賛されている女性レプリカント・ラヴを演じたシルヴィア・フークス、”世界で最も美しい顔100”常連のジョイ役アナ・デ・アルマス、『メッセージ』(16年)でアカデミー賞監督賞にノミネートされ、本作でSF映画界に新たなる奇跡を起こしたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の4名!秘密主義を通し、事前情報が少なかった本作。監督やキャスト口のから、作品にかけた思いや製作秘話が語られました。
まずは、ご挨拶からです。
ヴィルヌーヴ監督「日本に来られて、非常に光栄に思います。この新しい作品を皆さんと一緒に共有できることにとても興奮しています」
フークス「私は初来日なので、今とっても幸せですし、本当にエキサイティングな気持ちでいます。東京に来て、まさにブレードランナーの世界に入り込んだような、そんな感覚にとらわれています」
デ・アルマス「東京は2度目です。19歳の時、小さなスパニッシュ映画祭のために一度来日したことがあります。また帰って来られてとても嬉しいです。こうしてこの場で映画のこと話せるのも嬉しいですが、早く外に出て街を探索したいです」
フォード「私もまた東京に戻って来られて、とても嬉しく思っています。台風を追い払ってくれて本当にありがとう(笑)昨日の台風は興味深い経験でした。そして、今回2作目の『ブレードランナー』を持って来れたことを大変嬉しく思っています。最初の『ブレードランナー』公開時、日本での反響がとても良く、その時も日本に来れたことを幸せに思っていました。今度は続編を持って来たので、また日本のみなさんがこの作品を楽しんでいただけることを願っています」
続いて、MCからの代表質問に移ります。
——今回の『ブレードランナー 2049』で描かれている世界観、どういったところにこだわって作り上げていったのか教えてください。
ヴィルヌーヴ監督「みなさんはこの映画ご覧になっていますか?(会場のほとんどの人がすでに鑑賞済みということを聞き)ありがとう、素晴らしい。我々が描きたかったのは、最初の『ブレードランナー』の延長にある世界です。いま我々は、オリジナルの『ブレードランナー』の舞台となった2019年に近づいていますが、前作が想像した未来とは異なった世界にいます。そのため今作では、パラレルワールドとして前作からつながる世界の2049年を舞台にしています。スティーヴ・ジョブスが存在しない世界ですね(笑)そして、1作目よりも気候が悪化し、地球での生活がより厳しくなった、過酷な世界なため、その影響が建築物や乗り物、テクノロジーに反映されています。しかし私にとって一番興味深いのは、この映画が語る未来のことではなく、現在についてのことなんです』
——前作から35年ぶりにデッカード役のオファーが来た時、どんな風に感じたのか、率直な気持ちを教えてください。
フォード「撮影が始まる4年前、リドリー・スコットから電話で、もう一度デッカード役をやることに興味はあるかと聞かれ、驚きました。そして、ストーリー次第だが参加したいと答えました。当時リドリー・スコットは、今作の脚本のもとになる試験的な短編を、1作目の脚本家の一人のハンプトン・ファンチャーと共に書いていました。その短編、そしてスクリプトを読んだところ、デッカードというキャラクターの感情面での関係性が深められていて、そのことに自分も強い思いがあったので非常に嬉しかったし、良い機会だと思いました」
——映画史上の傑作と言われるブレードランナーに出演するということで、どういう気持ちだったのか、オファーを受けた時の気持ちを教えてください。
フークス「オファーを受けた時、私はプロデューサーのオフィスにいたのですが、まず部屋中に鳴り響く大きな叫び声をあげてしまいました。その後一気に涙が出てきました。とにかく、ヴィルヌーヴ監督、ハリソン・フォード、ロジャー・ディーキンス、ライアン・ゴズリング、こういう方々とこの素晴らしいプロジェクトに関われるということに圧倒されたんです。1作目は私にとって、人間的にも女優としても大変重要な映画で、この世界に入り込み、この方々と共に次のステップへ踏み込むというチャンスを与えられたということは、天にも昇る心地でした」
ヴィルヌーヴ監督「私はそのオファーを彼女に伝えた張本人なのですが、その時の彼女の叫び声は本当に大きかったです(笑)そしてプロデューサーには、彼女まだ生きてる?と聞きましたよ(笑)」
デ・アルマス「私にとって、非常に感情を打つ瞬間でしたし、それと同時に怖かったし、ナーバスにもなりました。こんな凄い映画の一部に自分がなるということにドキドキしました。そして監督の期待に応えられるような演技ができるように心から願いました。また、監督やライアン、ハリソン、シルヴィア、ロビン・ライトをはじめとした素晴らしいキャストと一緒に緊密に仕事が出来るということにも非常にワクワクしました。私が演じたジョイというキャラクターは非常に興味深い女性ですし、とても好きでした。一体どう演じようかと好奇心に駆られ、私にとっては学ぶことの連続で、オーディション、リハーサル、撮影の5ヵ月間の毎日が学びのプロセスでした」
この後は、各メディアからの質問時間です。
——日本のアニメーション監督にもすごく影響を及ぼした前作(『ブレードランナー』)ですが、監督が35年前に前作を観た時の衝撃と、今までの監督の作品にどんな影響があったのか、教えてください?
ヴィルヌーヴ監督「私と同じ世代の監督たちは、ブレードランナーという作品に強く影響を受けています。ですから、ブレードランナーの以前と以後でだいぶ違うと思います。リドリー・スコット監督の照明の使い方、また雰囲気の作り方は、それまで全く見たことのないものでした。もちろん私の映画にも非常に影響を与えていますし、私の友達やまわりにいる同世代の監督たちのほとんどが、オリジナルの『ブレードランナー』からなにかしらの影響を受けていると思います」
——昨日は丸一日オフだったと聞いたのですが、どんなことをして過ごされたのか、そしてどこか行ったところはあるのか、聞かせてください。
フォード「寝てたよ(笑)雨だったから、そこのモール(東京ミッドタウン)を歩いたりしたよ。そんなにエキサイティングな日ではなかったね(笑)」
ヴィルヌーヴ監督「あれは、初めての台風だったかい?」(大型台風の関東接近・上陸により、前日から記者会見当日の朝までは雨模様だった)
フォード「ノー(笑)泊まっているのがとても高層階の部屋で、この二日間雲に閉じ込められていて、今朝になるまで全然外が見えなかったよ(笑)」
——今回どこか行きたい場所はありますか?
フォード「東京は何度も来ているし、京都も5回くらい行っていると思う。だから今回もし機会があれば、田舎の方を自分で車を運転して、ドライブ旅行をしてみたいな。もっと日本の色んなところを見てみたい」
——ブレードランナーとハリソン・フォードさんに敬意を表して、こういう衣装(デッカード風のコート)で会見場に姿を現したのですが、いかがでしょうか?お気づきいただいていますでしょうか?
フォード「あー、なるほど。はい、分かりましたよ(手でOKサイン)」
——35年ぶりということで話題になっていますが、『スター・ウォーズ』のハン・ソロも30年以上経ってまた演じられています。『インディ・ジョーンズ』もずいぶん時間を経て、また同じ役を演じられています。今回のデッカードも35年ぶりということになりますけど、同じ役を長い時間を経てもう一度演じるというのは、どういうお気持ちなのか。同じ役をこういう形で演じることによって、どんなことを感じますか?
フォード「(長い時間を経て同じ役を演じては)いけないかい?(笑)私が何度も出演する映画にはたくさんの観客と多くのファンがいる。30年後のハン・ソロ、35年後のリック・デッカードを見る機会を楽しみに待ってくれている人がたくさんいる。それに応えて昔自分が演じたキャラクターを再び演じています。そして、時の流れがキャラクター達にどういう影響を与えているのか、どういうふうに人生を生きてきたのかということを演じるのは、俳優として非常に興味深いことでもあるので、何度も同じ役を演じているんだと思います」
——前作公開当時生まれていない若者もこの作品に触れると思うのですが、そういう人たちへのメッセージはありますか?
ヴィルヌーヴ監督「『ブレードランナー 2049』はこれだけ観ても、十分わかるように、意図して作られています。しかし、ぜひとも若者にオリジナルの『ブレードランナー』を観ていただきたい。オリジナルは美しいし、パワフルな映画で、SFとしても金字塔的なものなので。今回の作品だけ観ても面白いんですが、ぜひ両方観ていただきたいです。最近SFでは戦争ものやバトルものが多い中、ブレードランナーの世界観というのはSFの技術を探偵ものとして扱っていますし、そして謎を解いていくミステリーでもある。ですから、エモーショナルなものもあります」
フォード「今の話を聞いても、ドゥニがこの映画の監督にふさわしいということはわかるよね。彼はキャラクターからこの作品にアプローチしている。そしてキャラクターの感情的な部分を注意深く描くというアプローチが、監督のこの作品に対する愛情だと思います。オリジナルを観なくても、今作を楽しめるとは思います。でもオススメとしては、最初の映画を観ていただきたい。映画をひとつの織物と考えると、2つの作品を観ればその織物がもっと大きなものとして見ることが出来る。そういう経験が出来ます。今回の作品だけでも、壮大なスケールで、満足の行く経験が出来る。でもそれに加えて、もし前作をご覧になれば、ちょっと違った経験も出来るのではないかと思います」
——シルヴィアさんとアナさん。ハリソン・フォードにはじめて会った時の印象を教えてください。それを受けて、ハリソン・フォードさん、ひとことお願いします。
フークス「私はこの役の準備のために、かなりワークアウトをしなくてはいけませんでした。とにかくお腹が空くので、ケータリングのテーブルのところで色んなものに食らいついていたんです。そこにイヤリングをしてクールな感じのハリソン・フォードさんが来たので、“明日シーンの撮影があるんだけど”と言われて、食べているものを飲み込めなくてすごく大変な思いをしました。最初のシーンを撮影した時はすごく小さな空間でやったんですが、監督が入って来て、DOPは入れないくらいの小さいところで凄く緊張していて、彼を見ると、子供の頃から見てきたハン・ソロだ、インディ・ジョーンズだと思ってしまうので、なるべく見ないように、地面を見るようにしていました。彼をチラッと見ると、急にジョークを言ったんです。“ある時、バーに犬がいてね”と始まって、それからずっと私を笑わせてくれて、その日は監督と私と、いろんなシーンの合間に彼のジョークがあり、暖かくて、人間らしい、そしてクリエイティビティを奨励してくれる。とにかく笑って、楽しい雰囲気でした」
デ・アルマス「最初に会ったのは、いつだったかはハッキリ覚えてないけど、ラスベガスの彼のアパートでした。ジョイのコスチュームは、ミニスカートでタイトでセクシーで、ライアン・ゴズリングも気に入ってくれたんだけど、そのコスチュームでいたんです。そんなコスチュームを着た私をハリソンはとても心配してくれて、“寒くないかい?”とか“そのブーツ大丈夫?”、“これ貸してあげるよ”と言ってとても気遣ってくれました。
(ハリソンに向かって)覚えてますか?」
フォード「いいや、覚えてない(笑)」
デ・アルマス「違う記憶なのかしら(笑)」
フォード「とにかく、この映画を作るのが楽しかったということは言えますね。この映画は一日の長い時間をかけての撮影だったし、シーンも複雑でとても難しい映画だけど、いつも雰囲気は和気あいあいとしていて、楽しかったという記憶があります」
——全世界45カ国以上で初登場No.1を獲得しているということで、こういう世界の反響をどのように思われているのか、教えてください。
ヴィルヌーヴ監督「私たち全員、この映画を作るということにものすごくプレッシャーを感じていました。オリジナルの『ブレードランナー』が名作中の名作ということで、その続編を作るというのは、私たちにとってエキサイティングであると同時に緊張感、恐怖を覚えるものでした。最高のものを作ろうとして、ベストをつくしました。そして今は映画の神様に感謝をしたいと思っています。これだけ世界中で反響を呼び、ヒットしているということで、私は心から感謝していますし、誰も私の車の下に爆弾を置かないということは安心出来ます(笑)この映画に関わったアーティストたちは、ほぼ全員がオリジナルの『ブレードランナー』のファンだったので、我々全員が作品に敬意を払って作品づくりをしよう。そして我々の中の記憶とか思い出というものをちゃんとリスペクトしようと、そういう気持ちでした」
フォード「この映画はたしかに世界中で、それも色んな文化の違うところでヒットしている。私にとっては、それがとても興味深い。話自体は、カリフォルニアとラスベガスが舞台ですが、この映画が伝えたいのは場所ではなくキャラクターであり、キャラクターのストーリー。“人間とは何か”、“人間は運命をコントロールできるのか?”といったどんな文化をも超えた人間の自然に抱く質問、人間の感情的な質問に答えようとする映画。そういう意味で、この映画は文化圏を越えたインターナショナルな映画だと言えると思う。成功の鍵はそこにあると思います。真の意味でのインターナショナル映画です」
フークス「この映画を撮っている時、まるでアートハウス映画を撮っているような、小さい独立系の映画にある自由や信頼を監督から与えられていました。この監督はキャスティングをすると、本当に俳優を信頼してくれて、何でもやらせてくれた。そして、安全な環境を作ってくれました。だから、すごく創造性が出ました。これだけアートハウス的なものを作っていたと思って、いざ公開されると非常に大きな映画で、それがまた成功しているということは、クリエイティブな人間にとってはこれ以上ない幸せです。私たちが一生懸命やったものが、これだけ多くの人たちに暖かく迎えられている、そして世界中の人にこの作品が通じているということがとても嬉しいです」
デ・アルマス「他に何を言えばいいのかしら(笑)この映画があらゆるところでヒットしていて、クリエイティブな面でもエモーショナルな面でも人々の心にタッチしているということが、個人的にとても嬉しいです。本当に特別な映画です。この映画に携われて本当に幸せです」
ここで時間切れとなりましたが、4人がそれぞれどのような思いで『ブレードランナー2049』に携わったのか、そしてハリソン・フォードがリック・デッカードを演じることについてどう思っているのか、とても興味深い話が聞けました!
劇場のスクリーンで彼らに再会できるのももうすぐ!楽しみです。
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『ブレードランナー 2049』
2049年、貧困と病気が蔓延するカリフォルニア。人間と見分けのつかない人造人間“レプリカント”は労働力として生産され、人間社会と危うい共存関係にあった。ロサンゼルス市警のブレードランナー“K”(ライアン・ゴズリング)は、人類への反乱を目論み、社会に紛れ込んでいる違法な旧レプリカントの“処分”任務にあたっていた。そんな最中、Kはレプリカント開発に力を注ぐ科学者ウォレス(ジャレッド・レト)の<巨大な陰謀>を知る。そして、人類存亡に関わるその陰謀を暴く鍵となる一人の男の存在にたどり着く。その男こそ、30年前、恋人である女性レプリカントと共に姿を消したかつてのブレードランナー“デッカード”(ハリソン・フォード)だった。 彼が命をかけて守り続けた<秘密>とはいったい何なのか?30年のときを経て、封印された<衝撃の真実>が明らかになる。
製作総指揮/リドリー・スコット
監督/ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演/ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード、ロビン・ライト、ジャレッド・レト、アナ・デ・アルマス、シルヴィア・フークス、カーラ・ジュリ、マッケンジー・デイヴィス、バーカッド・アブディ、デイヴ・バウティスタ
配給/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
日本公開/2017年10月27日(金)丸の内ピカデリーほか全国ロードショー