バリー・ジェンキンス監督初来日!ビール・ストリートの恋人たち』公開記念トークショー開催
- Fan's Voice Staff
アカデミー賞作品賞受賞『ムーンライト』のバリー・ジェンキンス監督が来日し、最新作『ビール・ストリートの恋人たち』公開記念トークショーが、2月13日(水)に都内で開催されました。
『ムーンライト』で居場所を探し求める青年の愛を繊細に描いたジェンキンス監督が今作で紡いだのは、1970年代ニューヨークに生きる若きカップルの愛の物語。彼がずっと映画化を夢見ていたジェイムズ・ボールドウィン原作「ビール・ストリートの恋人たち」(早川書房刊)を基に、愛よりも、もっと深い“運命”で結ばれた、恋人たちのラブ・ストーリーを描き出しました。
チケットは発売当日に完売し、大盛況となった本イベント。上映前の舞台挨拶として満を持して登場した監督は、開口一番「初めての来日ですが、とても楽しんでいます。素敵な国ですね。到着したときの飛行機からの風景がすごく美しくて感動しました。明日、僕のツイッターで紹介しますよ」と挨拶。
『ムーンライト』に続き2作品連続でのオスカー獲得が期待される中、授賞式を直前に控えたタイミングでの来日ということで、今の心境を聞かれると「ワクワクしているよ。でも、去年はちょっとした事件があったからね。トラウマだよ(笑)」と、昨年のアカデミー賞作品賞発表時のハプニングをユーモアを交え語るなど、場内を盛り上げました。
和やかなムードでトークが弾む中、前作と本作に惚れ込み、ジェンキンス監督を愛してやまない特別ゲストとして、「水曜日のカンパネラ」ボーカルとして活躍するコムアイさんが登場。豪華な花束を持って現れたコムアイさんの姿に、監督も喜んだ様子。さらに、今日はバレンタイン・イブということで、映画に登場する主人公のティッシュとファニーのカップルをデザインしたオリジナル・チョコレートのプレゼントも!
監督はプレゼントに大興奮で、しきりにチョコレートを覗き込むキュートな姿が。コムアイさんから、「日本では、バレンタインの日は女の子が好きな人に、勇気を出してチョコを贈る日なんです」と日本のバレンタイン文化を説明すると、「チョコレートがたくさん売れる日なんだね。企業の作戦勝ちだ(笑)」と、トークに拍車がかかります。
本作の感想を尋ねられたコムアイさんは、「ミルフィーユみたいに、ロマンチックな甘い空気と厳しい現実が交互に押し寄せてくる映画。その中で、逆境をはねのけてそれに立ち向かう、生命力を感じられました。感情のゆらぎというものをすごく感じた作品です」と絶賛。そんなコムアイさんのコメントに対し、監督は少し照れながらも「映画の評論家のようなコメントだ。アリガトウ」と日本語で御礼を伝える一幕も。
ロマンチックな愛と社会性という2面性が描かれていることについて、監督は「最近、映画でラブストーリーが描かれるときは、スイートな面だけが描かれることが多いと思うんだ。でも僕は、映画の登場人物だって、社会に生きる一員として、様々な文脈に付随して物語が紡がれるべきだと思う。この映画の中で描かれているような人種差別もね。この原作をとても気に入った理由の一つもそこにあるんだよ」と熱弁。
真剣な様子で監督の言葉に耳を傾け、しきりにうなずきを返していたコムアイさんは、アーティストならではの視点で自ら監督へ質問も。「原作には音楽の表記が多いと聞きましたが、なぜ映画の中でオリジナルの音楽を用いたんですか?」と尋ねると、監督は「これまでの取材で初めてそのことについて触れられた!」と驚いた様子。「最初はすべて、原作に描かれるジャズを使って映画の音楽を作り上げようと思ったんだけど、原作とは違って、映画はキャラクター、特にティッシュの視点でも物語が進んでいくんだ。そうした時に、彼らキャラクターたちの音楽とはどういうものなのか、というのが頭に浮かんだんだよ」と本作の製作秘話を明かした上で、本年後アカデミー賞作曲賞にもノミネートされたニコラス・ブリテルを、「彼は、キャラクターと映画が、観客に何を伝えようとしているかを汲み取って、それを増幅して伝えてくれるんだ」と称賛しました。
さらにコムアイさんから、「なぜ、ヨーロッパでこの映画の脚本を執筆したのか」を聞かれた監督は、「アジアは遠いからね」とすかさず冗談で場内を和ませます。原作への敬意を持って映画化に挑んだ監督は、脚本執筆時にもその影響を受けていたとのことで、「ボールドウィンもあちこち旅をしながら、小説を書き進めていたそうなんだ。だから僕も、旅をしながら脚本を執筆してみたかったんだよ」と当時の心境を告白。「実は、映画化権を獲得する前にこの脚本を書き進めていたんだ。あの頃は、実際に映画として発表できるか否かよりも、自分が本当にやりたいと思ったことを進める、クリエイティブへの愛を貫きたかったんだ」と明かし、コムアイさんも「今の言葉にすごく感動しました。どんな人生を生きる人もそうだと思うけど、やっぱり愛が前提の行動をしたいですよね」と強く共感した様子。しかし、そんな感動的なコメントに対しても、「でも、人はお金を稼いで食べていかないといけないからね(笑)」と監督は冗談で切り返し、茶目っ気たっぷりな人柄がにじみ出るトークとなりました。
イベントは終始和やかに進み、終映後には、ジェンキンス監督から来場者全員へのサプライズプレゼントとして、ロゴ入りチロル・チョコがプレゼントされるということも明らかに!実際に配布するのはスタッフということでしたが、バレンタイン・イブならではの盛り上がりです。
“日本の観客にこの作品を伝えたい”という監督たっての強い希望で叶った今回の初来日。ジェンキンス監督は、最後に「実はこの映画は小津安二郎監督の『東京物語』にも影響を受けているんだ。『東京物語』で使われた、キャラクターがカメラに向かって演技する、という手法を取り入れている。そうすることで、映画の中キャラクターと直接目を合わせて、映画を体感できるんだ。日本ではあまり身近ではないかもしれないけど、黒人のロマンチックな愛と現実が描かれたこの物語を、少しでも体験してみてほしい。この映画は、僕から皆さんへの招待状なんだよ」と語り、舞台を後にしました。
本作は、第76回ゴールデン・グローブ賞において、主人公の母親役で熱演を見せたレジーナ・キングが助演女優賞を受賞。第91回アカデミー賞では、脚色、助演女優、作曲の3部門にノミネートされています。日本公開は2月22日(金)。
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『ビール・ストリートの恋人たち』(原題:If Beale Street Could Talk)
1970年代、ニューヨーク。幼い頃から共に育ち、強い絆で結ばれた19歳のティッシュと22歳の恋人ファニー。互いに運命の相手を見出し幸せな日々を送っていたある日、ファニーが無実の罪で逮捕されてしまう。二人の愛を守るため、彼女とその家族はファニーを助け出そうと奔走するが、様々な困難が待ち受けていた…。
監督・脚本/バリー・ジェンキンス
原作/「ビール・ストリートに口あらば」ジェームズ・ボールドウィン著
出演/キキ・レイン、ステファン・ジェームス、レジ―ナ・キング、コールマン・ドミンゴ、マイケル・ビーチ、ディエゴ・ルナ、エド・スクライン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、デイヴ・フランコ、ペドロ・パスカル 他
2018年/アメリカ/英語/119分/アメリカンビスタ/カラー/日本語字幕:古田由紀子
日本公開/2019年2月22日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
提供/バップ、ロングライド
配給/ロングライド
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