鬼才ヨルゴス・ランティモス監督最新作『女王陛下のお気に入り』東京国際映画祭でアジア初上映!トークイベント開催
- Fan's Voice Staff
今最も注目されるギリシャの鬼才、ヨルゴス・ランティモス監督の最新作『女王陛下のお気に入り』(原題:The Favourite)が、第31回東京国際映画祭の特別招待作品として11月1日(木)に日本で初上映され、トークイベントが実施されました。
18世紀初頭、フランスと戦時下の英国を支配していたアン女王(オリヴィア・コールマン)と、強大な権力を握る女王の幼馴染みのレディ・サラ(レイチェル・ワイズ)、サラの従妹で、上流階級への返り咲きを目論む女官アビゲイル(エマ・ストーン)。『女王陛下のお気に入り』は、3人の女たちの三つ巴の関係を描く宮廷劇です。
ベネチア国際映画祭で審査員グランプリと女優賞(コールマン)をW受賞、映画賞レースの中心となるであろう注目作の日本初お披露目とあって、今回の上映のチケットは発売後1時間で完売。映画を観終わった後の熱気の中、立田敦子(映画評論家)氏、平山義成(20世紀フォックス映画 FOXサーチライト担当)氏が登壇しました。
ベネチア映画祭に参加し、監督、キャストにも取材した立田氏は「今年のベネチアのコンペは豪華なラインナップで、特に前半に質の高い作品が集中しましたが、最高賞の金獅子賞を受賞した『ROMA/ローマ』とともに『女王陛下のお気に入り』が高評価で話題となりました。ヨルゴス・ランティモス監督は着眼点が卓越していて、私が今最も注目している監督の一人です。彼の作品を初めて観たのは2009年のカンヌ国際映画祭のサイドバーである「ある視点」部門で出品された『籠の中の乙女』の時でした。その年は、コンペティション部門にミヒャエル・ハネケ、ラース・フォン・トリアーといったヨーロッパの鬼才が選出されていたのですが、彼ら後継者ともいうべき、クセのある、新しい世代の監督が出てきたと、カンヌでも大きな話題となりました」とランティモス作品との出会いを語りました。
ランティモス監督が本作の初期段階の脚本を目にしたのは2010年のことでしたが、「監督はギリシャ人で、イングランドの歴史に詳しいわけでもない。でも、女性3人が主人公のストーリーというところに映画的な面白さを発見したそうです。脚本は4年もの月日を費やして完成されましたが、その間にランティモスはロンドンに移住し、『ロブスター』と『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』という2本の英語映画を先に撮りました。『ロブスター』以降は英語で撮影しているんです。『ロブスター』はカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞して話題になりましたが、今回の女優オリヴィア・コールマンとレイチェル・ワイズは、そこで初めて起用しています。エマ・ストーンはもともと監督が彼女の技量に注目していて、会って意気投合。アビゲイルという貴重な役に抜擢されました」と、キャスティングの裏話が明かされます。
18世紀王族の極めて貴族的な宮廷を舞台にしながらも、ダーク、かつコミカルなストーリーが非常に現代的に感じられる本作。「ランティモス監督は、いわゆる歴史映画を撮るつもりはまったくなかったのですが、『女王陛下のお気に入り』は、単なる歴史ものとは一線を画した現代的な物語です。近年の#MeTooムーブメントで映画界における女性を取り巻く環境は劇的に変わってきていますが、そんな時代にこのような内容の映画が公開されるのは、計らずもタイムリーですね」と立田はコメント。
監督がこだわりはたくさんあるのですが、そのひとつがカメラワーク。本作は、イングランドにある、エリザベス一世も子供の頃に住んでいたハットフィールド・ハウスという館で撮影されましたが、「限られた空間で、しかもキャラクターに寄るというコンセプトから、広角レンズなどを使い、凡庸な絵にならないように工夫されています。従来の撮影のようにライトはほとんど使わず、昼間は自然光、夜にはろうそくだけで撮影されました。もちろん、そんなに簡単にできるものではないので、撮影監督のロビー・ライアンとともに何度もテストを繰り返して、このような素晴らしい映像が出来上がりました」と、撮影の様子が熱く伝えられました。
今後の賞レースについて立田は、「監督は女3人の三角関係のラブストーリーだとも言っていますが、ブラック・コメディ要素もあり、とにかく面白い作品。賞レースにもかかってくると思いますが、アカデミー賞では最多ノミネートもありえるのではないでしょうか。特に監督賞にはノミネートされて欲しいですね。本当に、観れば観るほど完成度の高さがわかる作品ですよ」とコメント。
今年度のアカデミー賞授賞式は2019年2月25日(現地時間)に開催予定。今後の賞レースでの『女王陛下のお気に入り』の行方にも注目したいものです。
『女王陛下のお気に入り』は2019年2月に全国ロードショー。
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『女王陛下のお気に入り』(原題:The Favourite)
18世紀初頭、フランスとの戦争状態にあるイングランド。虚弱な女王、アン(オリヴィア・コールマン)が王位にあり、彼女の幼馴染、レディ・サラ(レイチェル・ワイズ)が病身で気まぐれな女王を動かし、絶大な権力を振るっていた。そんな中、没落したサラの従妹アビゲイル(エマ・ストーン)が召使いとして参内し、その魅力がレディ・サラとアン女王を引きつける。レディ・サラはアビゲイルを支配下に置くが、一方でアビゲイルは再び貴族の地位に返り咲く機会を伺っていた。戦争の継続をめぐる政治的駆け引きが続く中、急速に育まれるサラとの友情がアビゲイルにチャンスをもたらすが、その行く手には数々の試練が待ち受けていた。
監督/ヨルゴス・ランティモス
キャスト/エマ・ストーン、レイチェル・ワイズ、オリヴィア・コールマン、ニコラス・ホルト、ジョー・アルウィン
2018年/アイルランド・アメリカ・イギリス映画
日本公開/2019年2月全国ロードショー
配給/20世紀フォックス映画
© 2018 Twentieth Century Fox