Report

2022.12.26 21:00

『別れる決心』来日ジャパンプレミア開催!パク・チャヌク監督登壇!

  • Fan's Voice Staff

第75回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞した『別れる決心』の来日ジャパンプレミア試写会が東京・TOHOシネマズ 日比谷で12月26日(月)夕刻に開催され、パク・チャヌク監督が舞台挨拶に登壇しました。

『別れる決心』は、転落死事件を追う刑事ヘジュン(パク・ヘイル)と被害者の妻ソレ(タン・ウェイ)の、複雑に絡み合う愛を描くサスペンスロマンス。

『お嬢さん』以来となる​​5年10ヶ月ぶりの来日を果たしたパク監督。「このように寒いにも関わらず、もちろん韓国に比べましたらこの寒さも大したことはありませんが、いずれにせよ寒いなか映画を観に足を運んでくださいまして、心から感謝申し上げます」「『お嬢さん』という作品以降、初めて作った劇場映画になります。コロナ禍を経て初めての映画ということもありまして、とても意味深い作品になりました。特に皆さんが劇場で観てくださるにそぐう楽しい映画を、良い作品をベストを尽くして作りました」と挨拶。

古家正亨

イベントには韓国に造詣の深い、韓流・K-POP MCの古家正亨も参加。韓国では本作が6月に公開され大きな注目を集めていることに触れ、「インフルエンサーと言われている、特に若いK-POPのアーティストたちが(パク)監督の映画が好きで、自らインスタグラムやSNSで“この映画を観てほしい”“この映画のこのセリフが良い”と(コメントし)、特にBTSのRMさんは“もう何で試写会に呼んでくれなかったの”とめっちゃクレームを書いてましたからね。それほど社会現象化しており、どの世代に対しても刺さる(作品)」と紹介。

それを受けてパク監督は「BTSのRMさんとは共通の友人がいるので、以前に一緒にお食事をしたことがあります。ただ、本作の公開前でした。私の方としては、試写会にもちゃんとお招きしたのですが、途中で何か手違いがあったようで、それが伝わらなかったようです。実際にRMさんが自分でお金を出して何回も観てくださったということで、すごくありがたいなと思います。またお会いする機会もあると思うので、その時にお礼を言いたいなと思っています」と補足説明。

カンヌ国際映画祭での監督賞受賞をはじめ、ゴールデングローブ賞ノミネート、アカデミー賞韓国代表にも選出されるなど、高い評価を受けている本作。パク監督は「私はそもそも古典的なスタイルの映画を作ろうと考えて作った作品です。ですから、現代のよくある刺激的な作品に慣れている若者たちは、この作品を観て退屈に思ったらどうしようかと思っていました。しかし、以前私が作っていたような刺激的な作品よりも、むしろこの作品の方が好評を博しています。その部分が面白いな、興味深いなと感じました。やはり人を愛する感情や、愛する人との別れが非常に残念、辛いという気持ちは、どの国の人、どの世代の人にも共通することなのだと改めて確認することができました」と語りました。

古家は、映画本編に使われている韓国のベテラン歌手チョン・フニによる「霧」という名曲を話題に出し、「この曲に関してある程度知識があると、もっとこの映画の深さみたいなものをきっと分かっていただけると思う」と紹介。パク監督は、「実はこの『霧』という歌からこの映画自体が始まったと言えます」と明かし、「以前『リトル・ドラマー・ガール』というドラマシリーズをイギリスで撮って、そのポストプロダクション作業のためにロンドンに滞在していた時がありました。その時に韓国が恋しくなって、ちょっとYouTubeとかで韓国の昔の歌などを検索していた時に、子どもの頃によく聴いて大好きだったこの『霧』という歌をまた耳にすることになりました。昔の感情が蘇って、ぜひこの曲が使える映画を作ってみたいと考えました」と振り返りました。

ここで、同じくカンヌ国際映画祭に参加した『PLAN 75』の磯村勇斗がサプライズ登場。カンヌ現地ではスケジュールの都合でパク監督と会うことができなかったという磯村は、パク監督に花束を贈呈し、「本当に今日このような場所でパク・チャヌク監督とお会いできて、今まで感じたことのない緊張感と嬉しさで胸がいっぱいです」と挨拶。

パク監督作品との出会いについて尋ねられると、磯村は「僕が10代の時、まだ俳優を志して間もない時に、復讐3部作の『オールド・ボーイ』に出会って、あれを観た時に“俺はこういう映画に出れる俳優になりたいんだ”と思ったくらい衝撃を受けた作品です。それを手がけた監督と今お会いできているのは、もう本当に、何か夢のような時間です」と感慨深げにコメントしました。

一方、パク監督は「磯村さんが出演された『PLAN 75』は、本当にカンヌ映画祭でもとても重要な賞(※カメラドール特別表彰)を取られたということで、おめでとうございます。あの賞を取られた監督そして俳優は、いずれは大賞を取るということになってると思いますので、今日は磯村さんにこの場でお会いできて本当に良かったなと思います。後々大俳優になってなかなかご挨拶できないようになってしまうのではないかと思いますので、今日この場で会えて本当によかったと思います」

そんなパク監督のコメントを受けて、磯村は「頑張るしかないですよね」と意気込む様子を見せました。

一足先に『別れる決心』を鑑賞した磯村は、「本当に、面白かったですね。中毒性のある映画と言いますか、今までのパク監督作品には本当に過激なシーンがあったりしましたが、この作品はそれが極力抑えられていて、だからこそ登場人物たちの心情にすごくフォーカスが当たり、寄り添える作品になっていた印象です。特に刑事のヘジュンと容疑者ソレ、二人の掛け合いから、非常に胸がウズウズする大人の危険なラブストーリーとなっており、ものすごく何度も観たくなるような、そんな映画になっていたなと思っています。ちょっとまだ話したいところたくさんあるのですが、ここでやめておきます」と興奮気味に感想を述べました。

映画監督としても活動している磯村は、世界で躍進する韓国エンタテインメントの現場で映画を作るにあたり、何を大切にしているのかと質問。パク監督は「韓国の映画やドラマが人気を博してしていることは事実ですが、また一方で、日本にも素晴らしい映画やドラマがあることも確かです。そんなたくさん良い作品がある中で、韓国もそれを観て学んでいるところがあります。このようにお互いに良い影響を与えながら発展していくことが大切だと思いますし、それが今できているのが現実だと思います」とコメントした上で、「私が仕事をする上で大切に考えてることは対話、話をすることです。もしかすると私の作品をご覧になったら皆さんは、私という人間は一人でいろんなことにこだわって、周りの言うことを何も聞かないという風に思われるかもしれません。でも実際は、私は誰よりもたくさん俳優やスタッフの人たちと話をしますし、また彼らの話をよく聞く監督です。人とたくさん話をするというのは、相手の意見を受け入れることだけが重要なわけではなく、相手に話をすることによって、自分の考えもまた整理できていき、そして相手といろんなことに論争を戦わせ、そしてその中から良いものを選択していくことにより、自分の考えがどんどん発展・成長していく。そこが重要な点だと思います」と答えました。

そんなパク監督作品への出演に興味があるか尋ねられた磯村は「いや、もう出れるなら出たいです。韓国語を頑張って勉強しようと思います」と即答。一方で、パク監督は「磯村さんが必ずしもあの韓国語をマスターする必要もなく、逆に私が日本語を一生懸命勉強して、日本の映画でご一緒するという手もあるかと思います」とコメントし、「私たちアジア人がお互いに力を合わせて、相手の文化をお互いにちゃんと学びあってコラボレーションできる、そんな作品がたくさん増えていくと良いなと思います。私がカンヌ映画際に行ってとても誇らしいなと思ったことがあります。それは私が作ったこの韓国映画にタン・ウェイさんが出てくださって、一緒に仕事ができたこと。そしてまた、韓国のソン・ガンホさんという俳優が日本の是枝裕和監督の作品(『ベイビー・ブローカー』)で一緒にお仕事ができたということ。この二つの作品ともに、とても誇らしいなと思いました。これからもたくさんの日本の方と一緒に協力できると良いなと思っています」

終わりにパク監督は「本作を作った後、韓国そして外国の監督の皆さんと一緒に観た時に一番幸せだと思った瞬間があります。それは、この映画を観た監督の方が笑ってくれた時です。この映画は、意外とユーモラスな瞬間があちらこちらに入っています。ユーモアというものは、ある意味で言語の壁を越えるのが最も難しい部分だと思います。そんなユーモアの部分に外国の方が笑ってくださったということはイコール、そのユーモアが通じたということなので、私はとても幸せだと感じました。ですからこれから映画ご覧になる皆さんも、ちょっとおかしいけれど笑っていいのかな?ちょっと深刻なシーンなんじゃないかな?と思ったとしても、本当に躊躇することなく、おかしいと思ったら笑ってみてください」と観客にメッセージを送り、舞台挨拶を締めくくりました。

==

『別れる決心』(英題:Decision to Leave)

男が山頂から転落死した事件を追う刑事ヘジュン(パク・ヘイル)と、被害者の妻ソレ(タン・ウェイ)は捜査中に出会った。取り調べが進む中で、お互いの視線は交差し、それぞれの胸に言葉にならない感情が湧き上がってくる。いつしか刑事ヘジュンはソレに惹かれ、彼女もまたへジュンに特別な想いを抱き始める。やがて捜査の糸口が見つかり、事件は解決したかに思えた。しかし、それは相手への想いと疑惑が渦巻く“愛の迷路”のはじまりだった……。

監督/パク・チャヌク
脚本/チョン・ソギョン、パク・チャヌク
出演/パク・ヘイル、タン・ウェイ、イ・ジョンヒョン、コ・ギョンピョ
2022年/韓国映画/シネマスコープ/138分/G/原題:헤어질 결심

日本公開/2023年2月17日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
提供/ハピネットファントム・スタジオ、WOWOW
配給/ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト
© 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED