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2022.07.07 12:00

『神々の山嶺』パトリック・インバート監督よりメッセージ映像&インタビューが到着!

  • Fan's Voice Staff

第47回セザール賞アニメーション映画賞を受賞し、フランスで大ヒットを記録した日本原作のアニメーション映画『神々の山嶺(いただき)』の公開に先立ち、パトリック・インバート監督のオフィシャルインタビューと、日本のファンに宛てたメッセージ映像が到着しました。

物語は、「登山家マロリーはエベレスト初登頂に成功したのか?」という登山史上最大の謎に迫りながら、孤高のクライマー・羽生と、彼を追うカメラマン・深町が不可能とされる冬季エベレスト南西壁無酸素単独登頂に挑む姿を描きます。

原作の夢枕獏著による小説「神々の山嶺」(集英社文庫/角川文庫)は、1998年に第11回柴田錬三郎賞を受賞。同作を漫画化した谷口ジロー画「神々の山嶺」(集英社文庫)も2001年に、第5回文化庁メディア芸術祭マンガ部門・優秀賞を受賞しており、いずれも作者の代表作として、現在もなお愛され続ける伝説的作品です。2017年に逝去した谷口ジローはフランスでも絶大な人気を誇り、「漫画界の小津安二郎」と称され、フランス文化省から芸術文化勲章シュヴァリエ章を授与されるほどリスペクトを受けています。

幼い頃から山を愛し、山に関する本もたくさん読んでいたというプロデューサーのジャン=シャルル・オストレロは、「周りからは、あの谷口ジローさんの原作をアニメ化するなんて気でも狂ったのではないのか、とまで言われましたが、どうしても実現させたいという気持ちが勝り、自身のキャリア史上最も大事なプロジェクトとして実現しようと決心した」と言い、そんな一大プロジェクトの監督を託した相手が、『とてもいじわるなキツネと仲間たち』(17年)でセザール賞長編アニメーション映画賞を受賞し、アニー賞長編インディペンデント作品賞にノミネートされたパトリック・インバートです。

制作には、米アカデミー賞長編アニメ賞ノミネート作『ウルフウォーカー』(20年)に携わったパリのアニメ・スタジオ“フォスト”も参加し、細部までリアリティにこだわった登山シーンや、山に並外れた情熱を傾ける羽生の謎めいたカリスマ性、物語の語り手である深町の心の移ろいを繊細に表現。山岳映画の新たなマスターピースを完成させ、第47回セザール賞でアニメーション賞を受賞しました。

日本公開に先立ち、インバート監督がオフィシャルインタビューで制作秘話を語りました。

──原作者である谷口ジローさんは、フランスでも多くのファンがいらっしゃると伺っていますが、クリエイターたちが影響を受けているところなどはありますか?
もちろん有名です。私自身は谷口さんの原作漫画から直接的な影響を受けたというわけではないですが、日本の文化や日本から非常にたくさんの影響を受けたのは間違いないと思います。それから日本のアニメファンというのは、フランスにも、ヨーロッパにもたくさんいますので、谷口さんのこの原作からの影響というよりも、元々いる日本のアニメファンから影響を受けていると思います。

──パトリックさんは原作の漫画は今回のオファーより前に読まれていたのでしょうか?
このプロジェクトにオファーされる前は、原作漫画を読んでいなかったのですが、谷口ジローさんの他の作品は読んだことがありました。漫画「神々の山嶺」は特に超大作なので、手を出せずにいたのですが、読んでみるとすごく面白くて、あっという間でした。

──谷口さんの原作をアニメーション化することは、非常に大変だったと思いますが、どのようなお気持ちで臨まれましたか?
このアニメ化は非常に難しいところがたくさんありました。どんな作品であれ、映画にするという作業は難しい事の連続ですが、原作が1,500ページにも及ぶ大作なので、谷口ジローさんのスピリットや基本的な考え方をそのまま忠実にしながら、90分に纏めるという作業が非常に難しかったです。谷口さんの視点などは尊重して、そして谷口さんの他の漫画を読んだりして、谷口さんのことをもっと理解するようにしました。人物描写や、人物の心理的な深い部分についてはより複雑なので、谷口さんについて理解することによって、脚色することができました。

──制作にあたり、特にこだわって制作した箇所、また苦労した箇所があれば教えてください。
すべての点において苦労しました。アニメにおいて大切なのは、まず元となる絵コンテとナレーション、ストーリーの部分が非常に大切です。これがなければ、次の制作の段階に進めませんからね。その後の部分については、どれだけの予算を割くことができるかという、予算的な事によって決まってくると思います。

──山の描写のために、丹念に研究をされたと伺いました。リアルな山を描く上で気をつけたことは何ですか?
自分が登山家ではなかったので、まずは山についてそれぞれのテーマでインターネットや本で調べ、色々な資料から知識を得ました。それから、実際に登山する人をスタジオに呼び、どうやって山に登るのか、身振り手振りを加えて具体的なジェスチャーで色々教えてもらいました。それから、ヒマラヤの登山というのは、日本やフランスの山を登るのとも少し違った厳しい部分があるので、そういった部分をリアルに、忠実に作っていく必要がありました。SF映画とも違って、できるだけ忠実に、リアルに、写実的に描くようにということに気をつけながら作りました。

──日本の街並みや料理、仕草など日本の描写が印象的でした。表現するにあたり工夫した点はありますか?
先ほどの山登りと同様に、日本文化ついても、描くにあたり、インターネットでたくさんの資料や画像などを調べ、様々なものを参考にしました。それから、フランス人で日本文化のファンという方はすごく多くて、スタッフの中にも日本に住んでいたことがある人がいました。コンサルタントをしてる友人で、フランスに20年住んでいる日本人の方もいます。日本文化、あるいは日本における人間関係、上下関係や死生観、日常生活では靴を脱ぐというような居住条件など、彼らからいろいろと教えてもらいました。日本の住居では、畳は一畳の大きさが決まっているんだよと教えてもらうところから始まりました。

──深町の本棚にはジブリや寺田克也さん、松本大洋さんの本がありました。居酒屋ではロックパイロットの曲が流れていましたね。
これらを描写したのは、もちろん、そういった日本の偉大な漫画家たちへのオマージュです。漫画家たち以外の本も、写真家の本など、深町の本棚にはたくさん並べているのですが、そういったところに気づいていただけたのはすごく嬉しいです。ありがとうございます。

──好きな日本の映画作品は何でしょうか?
高畑勲監督の『おもひでぽろぽろ』です。

──日本の漫画でアニメーション化してみたい作品はありますか?
浦沢直樹さんの「20世紀少年」です。

──日本で劇場公開されることについて、どのようなお気持ちですか。
まもなく日本で公開になるのはすごく嬉しいですし、緊張もします。アニメ大国において、私の作ったアニメ作品が公開されるというのは、幸せでもあり、ちょっと怖い気持ちもあります。

──日本の観客にメッセージをお願いします。
この映画が日本で公開され、日本の皆様に見ていただけることを大変光栄に思います。この作品は原作が日本で生まれ、小説が漫画になり、それがフランスに渡り、フランスでも出版され、そしてフランスで映画化されました。映画はフランスと日本の文化の懸け橋のような作品となっています。私自身日本の芸術や映画からも大変影響を受けており、今まで日本からいただいていた事に対して今回このような形で御恩返しが出来ることを大変喜んでおります。この映画が日本の皆様にも気に入っていただけたら、この上ない喜びです。

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『神々の山嶺』(原題:Le Sommet des Dieux)

監督/ パトリック・インバート
原作/「神々の山嶺」作・夢枕獏 画・谷口ジロー(集英社刊)
日本語吹替えキャスト/堀内賢雄、大塚明夫、逢坂良太、今井麻美
2021年/94分/フランス、ルクセンブルク/仏語/1.85ビスタ/5.1ch/吹替翻訳:光瀬憲子/英題:The Summit of the Gods

日本公開/2022年7月8日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
配給/ロングライド、東京テアトル 
公式サイト
© Le Sommet des Dieux – 2021 / Julianne Films / Folivari / Mélusine Productions / France 3 Cinéma / Aura Cinéma