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2022.05.28 23:50

【カンヌ国際映画祭】『ベイビー・ブローカー』是枝裕和監督がエキュメニカル審査員賞を受賞!

  • Fan's Voice Staff

第75回カンヌ国際映画祭の授賞式に先立ち、コンペティション部門に選出されている『ベイビー・ブローカー』の是枝裕和監督が現地時間5月28日(土)、エキュメニカル審査員賞を受賞しました。

キリスト教徒の映画製作者と映画批評家らによりカンヌ国際映画祭の独立部門として1974年に創設されたエキュメニカル審査員賞は、カトリックとプロテスタントの組織「SIGNIS and INTERFILM」の審査員により、コンペティション部門参加作品の中から「人間の内面を豊かに描いた作品」に贈られます。

受賞にあたり、審査員長は「この映画は、血のつながりがなくても家族が存在できることをとても親密な方法で示してくれる。傷ついてきた過去を持つ大人3人(ブローカーの男2人とベイビー・ボックスに赤ん坊を置いた母親1人)と養護施設から抜け出した子供1人によって、赤ん坊の命と魂は守られる」と評価し、さらに本編後半に登場する彼らによるあるシーンがとても感動的だったことについて触れました。

是枝監督は受賞の喜びと共に作品について次のように語りました。「有難うございます。今僕が言うことは何もないと思うくらい、僕がこの映画でやりたかったことを伝えていただいたので、短く感謝の言葉を述べて終わりにしたいと思います。映画の冒頭で捨てられた赤ちゃんと捨てた母親が、子どもを売ろうとする男たちと旅に出るという話が、映画の最後間近で、彼ら全員が生まれてきたことを祝福されます。これは今回映画を作る上で、施設で育った子や親元を離れて育った子たちを取材する中で、自分が社会の側、大人の側としてどうしても伝えたい言葉だったので、普段はやらないくらいはっきりとセリフにしました。その祝福の言葉を聞いた後にちょっとだけ人生が上向きになる、上を向いて生きていけるようになるというか、そんな物語にしたいなと思いました。最終的には捨てられたひとつの命がもう少し大きな、それは側でみている人もいれば、側に近寄れないので遠巻きにみている人もいるけれども、社会という少し大きな箱の中で見つめられて育てられていくという、そういう話にしました。なので、今回は本当にこの作品にとってふさわしい賞をいただけたなと思っています。ありがとうございます」

近年のカンヌでは、テレンス・マリック監督『名もなき生涯』(19年)、ナディーン・ラバキー監督『存在のない子供たち』(18年)などが受賞しており、日本人としては、『EUREKA』青山真治監督(00年)、『光』河瀨直美監督(17年)、『ドライブ・マイ・カー』濱口竜介監督(21年)に続く4人目の栄誉となります。

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『ベイビー・ブローカー』(原題:Broker)

古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョン(ソン・ガンホ)と、〈赤ちゃんポスト〉がある施設で働く児童養護施設出身のドンス(カン・ドンウォン)。ある土砂降りの雨の晩、彼らは若い女ソヨン(イ・ジウン)が〈赤ちゃんポスト〉に預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。彼らの裏稼業は、ベイビー・ブローカーだ。しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気づき警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく白状する。「赤ちゃんを大切に育ててくれる家族を見つけようとした」という言い訳にあきれるソヨンだが、成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることに。一方、彼らを検挙するためずっと尾行していた刑事スジン(ぺ・ドゥナ)と後輩のイ刑事(イ・ジュヨン)は、是が非でも現行犯で逮捕しようと、静かに後を追っていくが…。
〈赤ちゃんポスト〉で出会った彼らの、特別な旅が始まる──。

監督・脚本・編集/是枝裕和
出演/ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ペ・ドゥナ、イ・ジウン、イ・ジュヨン
製作/CJ ENM
制作/ZIP CINEMA
制作協力/分福

日本公開/2022年6月24日(金)、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
提供/ギャガ、フジテレビジョン、AOI Pro.
配給/ギャガ
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