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2021.09.04 17:30

【会見全文】『DUNE/デューン 砂の惑星』ティモシー・シャラメ、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督らがベネチア公式会見に登壇!

  • Mitsuo

第78回ベネチア国際映画祭アウト・オブ・コンペティション部門に選出された『DUNE/デューン 砂の惑星』のワールドプレミアが現地時間9月3日(金)に開催され、ティモシー・シャラメらキャスト陣とドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が公式会見に登壇しました。

Photo: Giorgio Zucchiatti/ASAC

本作は“未来が視える”能力を持つ青年、ポール・アトレイデスの物語。その惑星を制する者が全宇宙を制すると言われる過酷な“砂の惑星デューン”への移住を機に、アトレイデス家と宇宙支配を狙う宿敵ハルコンネン家の壮絶な戦いが勃発。父を殺され、復讐そして全宇宙の平和のために、巨大なサンドワームが襲い来るその星で、命を狙われるひとりの青年ポールが立ち上がります。

原作は、1965年の発売以来多くのカルチャーに影響を与え続けているフランク・ハーバートの伝説的SF小説「デューン/砂の惑星」。1984年にはカイル・マクラクラン主演でデヴィッド・リンチ監督が映画化、2000年にはウィリアム・ハート主演でテレビドラマ化もされました。

監督を務めたドゥニ・ヴィルヌーヴは、『メッセージ』でアカデミー賞にノミネートされ、『ブレードランナー 2049』で異次元の天才と称えられたカナダの名匠。

主演には、『君の名前で僕を呼んで』で21歳にしてアカデミー賞主演男優賞にノミネートを果たし、『ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語』での好演も記憶に新しいティモシー・シャラメ。共演には、ゼンデイヤ、レベッカ・ファーガソン、オスカー・アイザック、ジョシュ・ブローリン、ステラン・スカルスガルド、シャーロット・ランプリング、ジェイソン・モモア、ハビエル・バルデムら超豪華キャストが名を連ねています。

ハビエル・バルデム、ゼンデイヤ、レベッカ・ファーガソン、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、ティモシー・シャラメ、オスカー・アイザック、ジョシュ・ブローリン Photo: Giorgio Zucchiatti/ASAC

公式上映に先立ち実施された会見には、ヴィルヌーヴ監督と以下6名のキャストが登壇しました。

・ティモシー・シャラメ(ポール・アトレイデス役:アトレイデス家の後継者。“未来が視える”能力を持ち、全宇宙から命を狙われる。巨大な陰謀により殺された父の復讐のため、全宇宙の平和のために立ち上がる)

・レベッカ・ファーガソン(レディ・ジェシカ役:ポールの母親。周りに流されない強い意志の持ち主。ポールとともに過酷な砂の惑星“デューン”で自らの運命に立ち向かう)

・オスカー・アイザック(レト・アトレイデス公爵役:アトレイデス家の当主として、勇ましく威厳ある姿で一家を牽引するが、陰謀に巻き込まれる)

・ジョシュ・ブローリン(ガーニイ・ハレック役:アトレイデス家の腹心。勇敢な戦士であり、ポールをアトレイデス家の後継者として鍛錬する

・ゼンデイヤ(チャニ役:フレメンの戦士で、謎めいた美女。ポールの夢の中に現れ、ミステリアスな表情をみせる)

・ハビエル・バルデム(スティルガー役:フレメンをまとめるリーダー。倫理と道徳を重んじ、環境の保全にも注力している)

Photo: Giorgio Zucchiatti/ASAC

──ヴィルヌーヴ監督へ。原作は長年にわたりあなたにとって大切なものだと伺っていますが、若かった頃と今、それぞれにおいてこの作品が重要である理由は?
監督 子どもの頃に読んだ時は、ポールの旅路に感銘を受けました。アイデンティティの見い出し、別の文化に馴染むその過程や、彼の自然との関係、哀愁を感じさせるところ、自身の肩にのしかかった運命の重さを苦しみ感じている孤独を美しさですね。深く心を動かされました。

──ティモシーへ。ポールというキャラクターはデヴィッド・リンチ版でカイル・マクラクランがとてもアイコニックな演技を披露しています。今回の役を準備するにあたり、彼の演技をテンプレートやインスピレーションとしてへ参考にしたのか、それともなるべく距離を置き、自分なりに作り上げようとしたのですか?
シャラメ 後者ですね。カイルの演技は非常にリスペクトしていますし、そちらのバージョンの映画も大好きです。今回の撮影が始まる2ヶ月ほど前に観ました。僕はこれまでにも、すでに素晴らしい俳優により映像化されたことのある作品に携わったことがありますが、その全員を尊敬しています。ただ、ドゥニ・ヴィルヌーヴが彼のバージョンの映画を作るために声をかけてくれたのなら、そうしたものは全て忘れて、基となる素材が求める通りに誠実であるべきだと思いましたので、そのようにアプローチしました。

Photo: Giorgio Zucchiatti/ASAC

──監督へ。今回のような壮大な映画の“第1部”を制作するにあたり、最大のチャレンジとなったものはなんですか?それから第2部が実現するためのベンチマークはありますか?
監督 最大のチャレンジは、ティモシーの髪の毛の扱いをマスターすることでしたね(笑)。

シャラメ ノーノーノー(笑)

監督 なにせ、生きたものですからね。ティモシーを演出しながら彼の髪の毛も演出しなければなりませんでした…(笑)。

原作は本当に内容が豊富で、ディテールこそがこの原作を力強いものにしていると思います。映画では、原作を全く知らない人がどれだけの情報を必要とするのか考え、説明しすぎることなく理解できるものにしつつ、できる限り映画的なものに作り上げられるようバランスをとるのが、大きなチャレンジでした。つまり、観客がこの物語、この旅路を追うにあたり、ちょうど良い情報量を見つけることですね。

Photo: Giorgio Zucchiatti/ASAC

ベンチマークについてですが、私はその基準を決める役ではありませんからね(笑)。ただこれだけは言えるのが、ワーナー・ブラザースとレジェンダリー(・ピクチャーズ)はこの映画を非常に誇りに思ってくれていて、世界中の大スクリーンで上映する事に全力を注いでくれています。そのことに私は非常に嬉しく思っています。どうなるか見守るしかありませんが、結局のところ今は皆にとって困難な時期で、安全が第一というのは全員が同意するところだと思います。観客には、安心できる環境で観れられるのなら、ぜひ大スクリーンで観てほしいと思います。この映画はIMAXを念頭に構想・設計し、撮影、サウンドデザインも含め制作してきました。この映画を観ることはいわば身体的な体験のようなもので、できる限り没入できるように作りました。私にとって大スクリーンというのは、言語の一部なのですから。(場内拍手)

──ハビエルへ。この映画は今日では最も大切な環境問題が一つのテーマになっています。あなた自身も環境活動家ですが、このテーマが映画で取り上げられる事はあなたにとって大切だったのですか?差し支えなければ英語とスペイン語でお答えいただけますか。
バルデム 英語とスペイン語の両方だと時間がかかりますね。まずは英語で──はい。原作の著者は、時代の先に進んでいたのだと思います。世界の進む先を憂い、人類がその限界を超え続ける限り、全員が健康的で生きるだけのキャパシティを維持できないのではと危惧していました。そして今日、我々は将来的に何か起きるのではと考え問題に対処しようとしていますが、実際のところ、問題はすでに起きています。ただ、いかに我々全員がライフスタイルを改め、大きく前進することができるのか、その鍵を握っているのは政府や大企業です。怖いことかもしれませんが、そうしなければ、さらなる惨事につながっていくわけです。本作での私のキャラクターも同様の考えを持っており、少なくとも自身の部族の人々が生き延びられるよう、惑星の環境を守ろうとしています。原作を読んだ時も脚本を読んだ時も、私自身がこの点には感情的にも概念的に完全にリンクしたし、この映画を作ったドゥニをはじめとした全員が、このテーマを語っていくのは大事なことだと思います。正しい方向への一歩になる事ですから。

Photo: Giorgio Zucchiatti/ASAC

──監督へ。この映画は政治的にも今日と非常に関連があるものだと思います。翻案のプロセスについてお話しいただけますか?
監督 60年代にフランク・ハーバートが「デューン/砂の惑星」を執筆した時は、20世紀のポートレイトを書いたつもりだったと思います。ところが時が経つに連れ、どちらかと言えば21世紀に起こることの予言のようなものとなっていきました。残念ながらこの原作は、政治と宗教を混合させることや救世主的な存在の危うさ、植民地主義の影響、それからハビエルが言ったような環境問題という意味で、今日にこそ最も関連するものとなりました。この原作は長年ずっと私の中にありましたが、時間が経てば経つ程、どんどん関連性のあるものとなりました。残念ながら、そうでなければよかったのですが、この作品は40年前よりも今こそ、世界に響くものとなっていると思います。

環境問題についてハビエルが話したことに追加すると、未来の世代は我々のことをジャッジするでしょう。今こそ怒りを持って、変化を推し進める時だと思います。まだ希望はあり、行動できる時期だと思います。例えばカナダでは今選挙がありますが、環境問題について十分に話題にされていません。それこそが優先されるべき最大のトピックであるはずなのに、数あるトピックの一つとして扱われているだけ。説教っぽくなりたいわけではありませんが、これはサバイバルに関わる話だと思います。そしてこの生き残ることこそ、この映画、そして原作のテーマでもあります。

──ゼンデイヤへ。本作であなたの役は非常に大きなインパクトがありますが、どのような準備をしたのですか?
ゼンデイヤ 今回の素晴らしいキャストとは一緒に撮影する時間があまりなく、今日初めてお会いした方もいます。最初は、尊敬するキャストばかりだし、ドゥニと一緒に仕事をする機会だということで、とても畏れ多く感じていました。ドゥニは稀有なフィルムメーカーだと思うし、ずっと尊敬してきた方ですからね。そんな方々の中で、ほとんど時間もないのに、何とか隣に立って良い仕事をしなければいけない相手が大勢いるのは、とても恐怖を感じました。でも実際にその中に入ってみると、本当に包み込んでくれるような温かさがあり、面倒もみてもらえると、すぐに安心することができました。私はただ導かれていけばよく、ドゥニがこの世界のことを説明してくれて、すぐに溶け込むことができたし、皆が本当に歓迎してくれました。とても美しい体験で、数日しかいなかったのですが、すぐに家族の一員になったような気がしました。なので皆さん、私にとって本当に素晴らしい時間になりました。ありがとうございます。この『DUNE』という本当にゴージャスなパズルの1ピースになれたことに、とても感謝しています。本当に謙遜させられる特別な時間でした。とにかく監督のことを信用していました。

Photo: Giorgio Zucchiatti/ASAC

──ティモシーへ。この壮大な物語におけるあなたの存在感は本当に大きいものですが、この映画があなた自身にとって意味するもの、そしてあなたのキャリアにどのようなインパクトがあるものだとお考えですか?
シャラメ シンプルに言うと、この映画は僕の一生の栄誉になったと思います。ゼンデイヤが今話したように、ある意味で僕も導かれなければなりませんでした。このようなスケールのプロジェクトに参加するのは初めてで、素晴らしいアーティストたちと一緒にこの場に座らせてもらえているのは本当に幸運なことなのです。こんな話をすべきなのかわかりませんが、4、5ヶ月にわたる撮影において、それぞれに対して感情的に頼る瞬間がありました。ここにいる俳優たちは、僕が尊敬するプロジェクトで観てきた方々で、これはお世辞ではなく時間があればもっとお話しすることができるのですが、そうした方々を今では兄弟姉妹へと呼べることをとても誇りに思っています。2作目を作れることも願っていますし、それはまさに夢ですね。一方で、とにかく今回の経験が出来たことに感謝もしています。今朝の別のインタビューでジョシュ・ブローリンがとても上手く言っていたのですが、何かを作るプロセスというのは、それを世に出すプロセスとは異なります。つまりこの映画には3つのバージョンがあって、(脚本で)読む映画、そこから作られた映画、そして編集された映画。今まさにそれが世に出るわけです。皆さんが観に行ってくれることを期待していますが、僕にとってはすでに夢が現実となった思いです。

──導くという意味で、レベッカ・ファーガソンとオスカー・アイザックにお聞きしたいと思いますが、お二人はポールの両親を演じていて、オスカーは“戦い”を担い、レベッカは“心”を担っています。それぞれのキャラクターとポールとの関係について、話していただけますか。
アイザック “戦い”は…どうかな。レト公爵がもたらすものというのは、ある意味で非常に特定的かもしれませんが、彼は最も人間らしい人物です。つまり、(水の惑星)カラダンの指導者である以外は特別な力を持たず、私たちにないものは、彼にもありません。それからこれも原作にあることですが、自らの末路を知りながらも、そこに突き進む点ですね。人々が彼について話し始める瞬間から「生き残れないだろう」と言われますが、それがわかった後に彼がどんな行動をとるか、それでも前進していくのかというところに緊張感があります。誇張して話すつもりはありませんが、人がいずれ死ぬのをわかっていながら、様々な選択をしながら生き続けていくことにとても似ていると思います。

Photo: Giorgio Zucchiatti/ASAC

それから息子に対する姿としては、人間性や気高さ、高貴さをもたらそうとしているのではないでしょうか。高貴さとは、貴族的な意味ではなく、国や人々より崇高に導くための方法を求めるという意味での高貴さです。特に新たな場所にやって来るにあたり、醜い部分や邪悪な部分、抑えきれない陰謀をも引き継ぎ、より高潔な存在になろうとすること。それが救世主になると予言された息子に与えようとしたものだと思います。でもレトにとっては、彼が人間性を失うことなく高潔さを追い求められれば、それで大丈夫なのだと思います。これは二人の間の興味深い関係性だと思い、レベッカともたくさん話しました。親同士が互いの行いをどれだけ知っていて、それについてポールはどれほど知っているのか。何世紀にも渡る“操作”や、それが意味すること。娘を持つはずだったところが息子になったこと。いわば愛のために決まり事を破ったこと。でもそれは愛に由来したものなのか、それとも救世主が現れると知っていたからなのか。そうした問いをすればするほど、さらに深みにはまっていくのが面白いですよね。

ファーガソン (映画のプロモーションで)インタビューを受けながら、他の人の答えを聞いているだけでもとても面白いと感じています。私が好きなのは、映画を作って、他の人によるキャラクターの描写や説明、感情に便乗できることです。ただ、私たちにはそれぞれのアイデンティティがあり、互いとの関係、さらにはそれぞれのスパイスに対する思惑から、単に仲間に便乗するわけにもいきません。ジェシカは母親であると同時に、一母親として以上に重大な信念も持っており、そのバランスを取るのは感情的にもパズルのようなものです。どちらかが優れているとか、どちらかを凌駕しているということはありませんが、彼女は、いわば宇宙の未来を操るために存在するベネ・ゲセリットという女子修道会の出身です。そして、自身の信念に対する情熱や愛と葛藤しているのです。

私たちは真実の愛についてもたくさん話しました。恋に落ちるとどうなるのか、さらには、息子を求められることと自分のやるべきこと、そのどちらを選ぶのか。絶え間ない葛藤があります。そしてその“心”と言われることは、彼女のアイデンティティそのものです。子どもや愛する人たちの心を守ることと、何が正しいことなのか理解すること。その最適なバランスをとることになるわけですが、ありがたいことに、私には順に感情を導いてくれる監督がいました。時にはかなり混乱してしまいましたからね。

Photo: Giorgio Zucchiatti/ASAC

アイザック 監督との話で言えば、二人が知っていることをどれだけ明らかにするか、そのバランスを取るために、常に原作に戻ってはシーンについて相談し、何を加えて、何が不要か、どうすれば家族の感情を深めることができるか、いつも話し合っていました。特に、義務を果たすことと、家族を守りたいという愛の間における心の葛藤について。

監督 上手い回答ですね、オスカー。良かったです。

アイザック ありがとうございます。

ファーガソン レベッカもね!(会場笑い)

──ジョシュへ。あなたが出ているスティーヴン・コルベアのQ&A動画を見たのですが、あなたは愉快な性格のようで、あなたの名前が呼ばれるたびにティモシーが笑っていました。現場でもそんな存在だったのですか?面白いことに、あなたの最初のセリフも「俺は笑っている」だったと思います。そんなあなたにとって、厳格な軍人を演じるのはどんなものでしたか?
監督 申し訳ございません、ジョシュは話すことが許されていません。(会場笑い)

ブローリン 契約書にもそう書かれているんです。話すことは山ほどあるのですが、この場は私にはついていけないほどの知性に満ちていますね。思うに、私はドゥニの友人として現場に呼ばれて、なんとかして映画に組み込まれたのではないでしょうか。原作も読んだことがなかったので、自分のキャラクターが原作に出てくるのかもわかりませんでした(会場笑い)。私は皆さんを笑わせるために雇われているようですね。だからこの映画での私は“睾丸の力”を持ち──ええ、言ってしまいましたが(会場笑い)──それ(男らしさ、勇敢さ)が私が象徴するものです。私は公爵を守る存在で、わかっていたのはそれだけですね。

Photo: Giorgio Zucchiatti/ASAC

さて、難しいながらも真面目に話すと、私が魅力的だと思うのは、この映画の制作より前に作られたものは、我々が今経験しているものとは異なる点です。それが何であるかや、フランク・ハーバートが作り出したものは皆さんご存知だと思いますが、私はもし仮にフランク・ハーバートが今この会話を聞いているとしたら、彼は誇りに思うのか、これが彼の意図したことだったのか、これが彼が60年代アラン・ワッツと話していたことなのか、彼が60年代にLSDをやっていた時に私たちのことを想像していたのか、と考えるときがあります。でも彼はとても力強いものを意図していたと思うし、この映画には、確かにその力強さを感じました。

「デューン/砂の惑星」ファンに関する話をあまりするべきではないのはわかっていますが、私はこの映画の試写に、とある大ファンの男性を連れて行きました。8歳か9歳の頃にこのシリーズを3回は読み、今はニューヨークに住む48歳の方なのですが、上映の後しばらく経った後に、彼は大声で叫び始めました。「これこそ私が思い描いたものだ」「子どもの頃に見たのはまさにこれだ」「イエス、イエス、イエス!」と。このような反応を目の当たりにすると、この映画が非常に根幹的なレベルで心に響く、単なるスペクタクル映画以上の影響力を持つものになったのだとわかりました。

──[フランス語での質問にシャラメと監督が回答 ※後日追記予定]

──ティモシーへ。“サンドウォーク”(※砂の惑星でサンドワーム=砂虫に襲われないようにする特殊な歩き方)についてお話いただけますか。もしよければ実際にやってみてもいただけると。
シャラメ サンドウォークは、世界最高峰のコレオグラファーの一人で映画監督としても活躍しているベンジャミン・ミルピエが考案してくれました。最初にレベッカと僕が彼からもらった動画では、ロサンゼルスのサンタモニカビーチで彼がサンドウォークをしているものでした。もし今実演したら、リズムにのりすぎてこの部屋全体がサンドワームに襲われてしまうと思うのですが…ひどいジョークでしたね(笑)。先ほどのフランス語の質問にあったことと関連しますが、これもドゥニが冷静に取り組んだ点で、現場でとりわけ大事にしたり真剣になりすぎたわけでもないのですが、「ふざけずに、きちんとやろう」という感じで取り組みました。レベッカ、もし間違っていたら直してほしいのですが、そのシーンはアブダビで撮影して、セリフは後から付けました。TikTokでサンドウォークをする人が出てくると良いなと思っています…(笑)。

Photo: Giorgio Zucchiatti/ASAC

ファーガソン 最初は、撮影の前に研究しておかないとと思ったけれど、実際のところサンドウォークのやり方を知らないということになっているのに気づいたのを覚えています。幸いなことに。やり方がわからず変な動きになっても良いんだ、と(笑)。

──監督は以前にサウンドトラックが壮大だと言及されていましたが、ハンス・ジマーに音楽を依頼する考えは以前からあったのですか。それとも途中からそうなったのですか?
監督 この映画を作ることを決めた後、最初に声をかけたアーティストが、実はハンスでした。『ブレードランナー 2049』の完成間近の頃でしたが、彼が「『DUNE』のスコアを手掛けることが最大の夢の1つだ」と言っていたのを覚えています。彼にとって大きな夢すぎて、まっさらな状態でいるために過去作は一切観ておらず、「きっといつか」と言っていました。それから彼はモントリオールに来て、一緒に夕食を共にしたのですが、そこでは、最も古い最も大切な夢の1つを現実のものにしてしまって良いのか、それが本当に良いことなのか、という話をしました。答えは出なかったのですが、やることにしました。

彼は私に、「この映画の“心”のために良いから、砂漠には原作本を持って行くように」と言い、持っていた古い原作本を渡してくれました。それから何ヶ月にも渡り一緒に探求し続けました。彼はいつもの慣れ親しんだものではない、これまでとは異なるアプローチで、新しい音を取り入れたがっていました。そんな中、奇遇にもパンデミックが起き、彼は新しい手法を見い出さなければならなくなりました。楽器の演奏家も歌い手も、みんな自宅に閉じ込められましたからね。時には世界最高峰のシンガーが家のクローゼットで歌っている時もありました。様々な場所にいる皆それぞれが、小さなバブルの中からスコアを持ち寄り曲を作り上げるのは、とても美しく思いました。

それと、ハンスとは最初に合意ことが1つあり、それは音楽はフェミニンであるべきだということ。女性的な感覚は原作の非常に重要で根幹にあるものだと感じていたので、脚本と同様に音楽でもその存在感を高め、女性の力を引き出したいと思いました。

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『DUNE/デューン 砂の惑星』(原題:Dune)

全宇宙から命を狙われる、たった一人の青年、ポール・アトレイデス。彼には“未来が視える”能力があった。宇宙帝国の皇帝からの命令で一族と共に、その惑星を制する者が全宇宙を制すると言われる、過酷な<砂の惑星デューン>へと移住するが、実はそれはワナだった!アトレイデス家と宇宙支配を狙う宿敵ハルコンネン家の壮絶な戦いが勃発。父を殺され、巨大なサンドワームが襲い来るその星で、ポールは全宇宙のために立ち上がるのだが…。

監督/ドゥニ・ヴィルヌーヴ
脚本/エリック・ロス、ジョン・スペイツ、ドゥニ・ヴィルヌーヴ 
原作/「デューン/砂の惑星」フランク・ハーバート著(ハヤカワ文庫刊)
出演/ティモシー・シャラメ、レベッカ・ファーガソン、オスカー・アイザック、ジョシュ・ブローリン、ステラン・スカルスガルド、ゼンデイヤ、シャーロット・ランプリング、ジェイソン・モモア、ハビエル・バルデム ほか

日本公開/2021年10月15日(金)全国公開
配給/ワーナー・ブラザース映画
公式サイト
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