Report

2021.02.13 17:41

【全文レポート】『夏への扉』山﨑賢人らが完成報告会に登壇!

  • Fan's Voice Staff

ロバート・A・ハインラインの伝説的SF小説を実写映画化した『夏への扉 ─キミのいる未来へ─』の完成報告会が2月13日(土)に都内で開催され、キャストの山﨑賢人、清原果耶、藤木直人と、三木孝浩監督が登壇しました。

1956年にアメリカで発表されたロバート・A・ハインライン著の「夏への扉」は、色褪せぬSF小説の名作として今日も世界中で愛され続けています。今回の実写版では舞台をアメリカから日本に、1995年─2025年へと設定を変え、人生のすべてを奪われたロボット科学者が未来を取り戻す冒険物語として蘇ります。

山﨑賢人が演じたのは、本作では罠にはめられ、すべてを失いながらも、未来を変えるため30年の時を超える科学者・高倉宗一郎。恩人の娘で、孤独に生きてきた宗一郎が家族のように大切に想う璃子役を清原果耶、30年後に目覚めた宗一郎の手助けをする人間にそっくりなロボット役を藤木直人が演じています。

メガホンをとったのは、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』『フォルトゥナの瞳』の三木孝浩監督。約60年前に描かれた原作を、リアリティを徹底的に追求し映像化しました。

本記事では完成報告会の模様を全文レポートします(※司会:奥浜レイラ)。

登壇者は”扉”から登場

──まずはご挨拶をお願いします。
山﨑 高倉宗一郎を演じました山﨑賢人です。本日は完成報告会にお越しいただきありがとうございます。この作品は『夏への扉』というタイトルで、これだけ聞くとどういう話なのかわからないという部分があると思いますが、SFで、恋愛もあり、バディの友情もあり、1995年と2025年という時代を描いていて、本当にどんな世代の人にでも楽しんでもらえる作品になっています。ぜひ今日はその魅力を伝えられるように頑張りたいと思います。よろしくお願いします。

清原 みなさん、はじめまして。松下璃子役を演じました清原果耶です。今日は完成報告会ということで、山﨑さんと、藤木さん、監督とこの場に立てていることがすごく嬉しいです。今日は最後までよろしくお願いします。

藤木 ロボット役の藤木直人です(場内笑い)。こうやって自分の役どころを言うのは、たぶん人生で最初で最後だと思います(笑)。本当にいろんな要素が詰まった素敵な作品です。そんな作品に参加できたことを光栄に思っています。ぜひ多くの方に観て欲しい作品だと思っています。今日はよろしくお願いします。

三木監督 本作を監督した三木孝浩です。今日はありがとうございます。本当に僕にとってもすごくチャレンジの多い作品で、でも素敵なキャストの皆さんと一緒に楽しみながら現場で作って、やっと完成して皆さんにお届けできるのを本当に嬉しく思います。今日はよろしくお願いします。

──キャストの皆さん、出演の話を聞いたときはどんな心境でしたか?
山﨑 最初に『夏への扉』というタイトルを聞いた時に、「どういうこと?」って思ったんです。「季節に扉ってあるの?」みたいな。というところから、でもSFだと聞いて、すごくSFが好きというのもあったのと、デビュー映画以来三木さんとご一緒できる、本当に信頼しているチームの皆さんとまた映画が作れると、ワクワクする要素がたくさんあって、楽しみにしていました。

──三木監督とは久しぶりですもんね?
三木監督 
そうなんですよ。(『管制塔』は賢人くんの)初主演作でしたもんね。あの時はまだ15、16歳…くらいかな。久しぶりに賢人くんと会いましたが、もちろんいろんな主演作を重ねて役者としてたくましくなっている一方で、良い意味での…”青臭さ”ではないですけど、ピュアさを失わない、なんかこうすれていない感じがこの物語の宗一郎にすごくピッタリだと思いました。今回素敵に演じてくれました。

三木監督

──清原さん、藤木さんはいかがですか?
清原 私も実は映画のデビュー作は三木さんの作品だったので、また三木さんとご一緒できるのが本当に嬉しいし、お話を聞いた時、「夏への扉」の原作のことは知らなかったので、どういう作品で三木さんと山﨑さんとキャストの皆さんとご一緒できるんだろうというワクワクが大きかったです。

藤木 びっくりしましたね。人間じゃない(笑)。二度見ならぬ二度聞きですよ。「えっ?」みたいな。ちょっとハードルが高いというか、難しそうだったので、あの、一回お断りしました。

三木監督 えっ、そうだったんですか!初耳です。

藤木 だけど、賢人くんと以前連ドラでご一緒させていただいたんですが、その賢人くんと一緒にできる、しかもバディものみたいな役柄だというので、思い切って飛び込んでみました。

三木監督 本当に皆さんに藤木さんのロボット役を観ていただきたい。本当にキュートなんですよ。いわゆるロボットというよりは、本当に一キャラクターとしての魅力に溢れた、でも人ならざるものがこの物語を見つめる──宗一郎が海に抗っていく姿とか──を見て、「人間って面白いな」とか、人間の滑稽さだったり愛しさみたいなものを、藤木さん目線で見るとすごく素敵な作品になっているので、ぜひご覧いただきたいですね。

──原作は世界中で愛され、ハリウッド映画にも多大な影響を与えていますが、映画化にあたって心がけたこと、気をつけたことは?
三木監督 最初に企画を聞いた時は、「いや、これは大変な企画が来たな」と思いました。すごく著名な、古典中の古典と言われるSF小説作品ですし、でも逆に言えば、今まで映画化されなかったのが不思議なぐらい面白い作品でもあるので。1956年に書かれた作品ですので、(小説の中で)過ぎてしまった未来を僕らは生きているわけです。でもせっかく今の日本で映画化するのだから、今の皆さんが観て、自分のことのようにワクワクしながら観てもらいたいなと思って、時代設定を変えたりとか、表現をいろいろ工夫して作りました。

──登場人物の役名も工夫されたんですよね?
三木監督
 そうですね。原作オマージュで、璃子は原作だとリッキィなんですよね。そういう言葉遊びをちょっと入れながら、脚本を作りました。

──宗一郎と璃子の時を超えた純愛もひとつの見どころですが、30年後の未来で初めて璃子の大切さに気づくようにも感じられました。時を超えた純愛という意味で、山﨑さんは演じていてどのように感じていましたか?完成した映画を観た感想は?
山﨑 
久々にというか…純愛でピュアな恋愛をやらせていただいて。演ってる時もそうだったんですけど、完成した作品を観てやっぱり、ちょっと恥ずかしかったというか。このピュアな恋愛ものは結構やってきたはずなのに、良い意味で恥ずかしい気持ちは久々の感覚でした。そういう純愛要素があるので、それもやっぱり観てもらいたいです。家族としての愛と、恋人としての愛、友だちとしての愛とかいろいろあると思うんですけど、璃子と宗一郎の関係性では、その愛がどんな形であれずっと続いていくというのが、すごく素敵だと思いました。

──清原さんはいかがでしたか?
清原 璃子も宗一郎も、本当に汚れがないというか、ただ純粋な思いに突き動かされて動いているような人間なので、やりがいがあって楽しかったです。どこまで宗ちゃんのことを思えるかとか、そういうことも考えながら現場にいたので、「あっ、ピュアだなあ」と思いながら完成したものを観れました。

──監督は10年ぶりに山﨑さんとご一緒して、いかがでしたか?
三木監督 
もちろんラブストーリーではあるんですけど、いわゆる恋愛ものというよりは、璃子と宗一郎の関係性はある種似たような境遇で、いろんなことを諦めざるを得ない状況でも諦めず前に進んできて、宗一郎はそれだけ自分の道を作ってきて、やっぱりそれに憧れて璃子は宗一郎に寄り添って、でも璃子も実は知らず知らず宗一郎の力になっていた。そういう切っても切れない関係性というか、やっぱり相手を失って初めてその大切な存在がわかる二人だと思います。そういう意味では、それこそ家族以上の愛情をこの作品で二人には演じてもらえたと思います。

──もう一つ見どころといえば、宗一郎のパートナーとも言える猫のピート。本当にカワイイですね。
山﨑 カワイイですね〜。

──現場で一緒に過ごしていて、何か印象に残っているエピソードはありますか?
山﨑 
やっぱり現場に猫がいるだけで、すごく癒されます。

三木監督 現場が朗らかになります。

山﨑 朗らかになるし、猫にちゃんとお芝居で動いてもらえるように、みんなで協力し合っている感じも楽しかったです。初めて自分のお芝居よりも(猫のことを意識して)、猫の餌を持って、引きつけながら──引きつけてるのは自分なのに、来たら、「おぅ〜、来てくれた」というのを同時にやるというのは我ながら器用だなと(笑)。すごい楽しかったですね。

三木監督 パスタちゃんと、サブでベーコンちゃんという猫がいたんですが、思った以上に良い芝居をしてくれるんですよ。動物が出てくる映画って撮影に時間がかかるんだろうな〜とか、大変だろうな〜って現場に入る前は思っていたんですが、意外と現場に入ったら、1テイク、2テイクOKになって。それにびっくりしました。

山﨑 あと、猫が気になる音楽とかをカメラ後ろとかでかけてたりしましたよね。

三木監督 (笑)そうそう。いろんな気を引く方法を教えてもらってやっていましたね。

──清原さんもピートの気を引きながら演じることもあったんですよね?
清原 
そうですね。だから手とかに猫の餌を付けて、”おいでおいで”ってしてみたりとか。ブリーダーさんから「こうしたら動かないでいてくれるよ」とか、そういうポイントを教えてもらいながら撮影していましたね。でもパスタもベーコンもすごいお利口さんで、順調に進みましたね。

三木監督 やっぱり相手が動物というか猫だと、一緒に芝居をしていて表情がすごい自然になるんですよね。作品でも、璃子の回想シーンで使っているんですけど、顔をなめられる時のリアクションとかもすごい自然で、「あ、これカワイイ」と思いながら編集で使っていましたね。

──藤木さんは猫のピートは…?
藤木 
僕はそんなにピートと絡みがなくて。出来上がりを観たら素晴らしい演技をしていて、すごいなと思って。以前、猫を飼っている、猫が相棒の役をやって、その時はすごく大変だったんですよね。ここからここまで歩いてって言ったってなかなか歩いてくれず、そこで何十分も止まっちゃったりとか。動物が出ている作品にはなるべく近づかないようにしようと思っていたんですけど(笑)、でも今回はちょっとだけでも、すごく良い賢い猫ちゃんだったし、今の話を聞いても、「あ、すごいな、そういう猫とだったらまた作品を撮りたいな」と思いました。

──パスタとベーコン、結構肝が座ってますよね。
三木監督 
全然動じないですね。ライトがあろうが、周りに何人いようが、どし〜っと一点を見つめていて。そのふてぶてしさも含めて可愛かったですね。

──本作のタイトル『夏への扉』を、監督はどのように捉えていましたか?
三木監督 
情緒ある素敵なタイトルだと思います。猫のピートは冬が嫌いで、夏へ通ずる扉があるんじゃないかと思って家中の扉をずっと探し回るというのが、ある種の宗一郎の諦めないキャラクターのメタファーというか、物語としてもテーマになっています。ちょっとひねった、“夏への扉”というタイトルで表現でしているところが、大好きですね。

──撮り終わって、山﨑さんはこのタイトルについてどのように感じられましたか?
山﨑 
僕もこのタイトルはすごく好きで、冬に夏への扉を探すというのは、真逆の状況でも、どれだけ逆境であっても探し続ける、進み続けるという、すごく素敵な意味があると思います。すごく好きなタイトルですね。

──「諦めなければ失敗ではない」というセリフも出てきますね。
山﨑 宗一郎のセリフですが、まさにそう。というか自分もやっぱりそういう気持ちはすごく共感できて、好きなタイトルです。

──みなさんにとって、決して諦めないと決めていること、つまり“夏への扉”にあたるものを教えていただけますか?
山﨑 
撮影していて、まあ猫がいたりと…、どんな状況でもOKが出るまで諦めない。自分が100%上手くできたと思ってもOKにならないことがあると挫けそうになるんですけど、そこは”総合芸術”だと考えて、諦めない。そこは信念をもってやっていました。

──今作ではピートもいたし、テイクを重ねたシーンもあったのですか?
山﨑 ま、でも割と…すごく良い子で。普通に難しいシーンとか。

三木監督 そうなんだね。役者ってそうか。自分が「おっ、いけた」と思っても、「あれ、OK出ない」って思う瞬間があるんだね。

山﨑 そこで「あっ…」ってなるんですけど…。

三木監督 この現場であった?

山﨑 いやいや、どの現場でもあります(笑)。やっぱりそこで挫けちゃったら勿体ないじゃないですか。結局作品として残っちゃうので。というのは自分の中で決めていることですかね。

──清原さんは?
清原 
なんだろう…私も芝居の話なんですけど、どれだけ極寒の場所に行っても、時間タイトすぎるよって時があっても、毎回芝居を楽しんでやることを諦めずにできたら良いなと思います。諦めないで頑張りたいよねってスタッフさんとかともよく話すことでもあるので、それですかね。

──今作でもありましたか?極寒だったり、挫けそうになったりながらも、諦めないぞと思うような場面。
山﨑 再会するシーンとか、極寒だったよね。

清原 あ、極寒でしたね。

三木監督 そうですね、冬の外でね。大変でしたね。

──撮影は寒さとの戦いでもあったのですか?
三木監督 そうですね。あと果耶ちゃんでいうと、海辺のシーンとかも。夕方で寒かったですし。

清原 でもこの組に関しては、太陽のような三木監督がいつも微笑みかけてくれたので、楽しく撮影できました。

──藤木さんは?
藤木 
マラソンですかね。これは諦めそうになっている自分への戒めで、走るのは全然好きじゃないんですけど。一生に一度でいいからやってみたいことはいくつかあって、例えば富士山に登ってみたいとか。その中の一つに、マラソンを完走してみたいというのがあったんですよ。で、実は去年の東京マラソンにエントリーしていたのですが、この映画のオファーをいただいて、撮影があったのでスケジュールが(あわず)走れなかったんですけど、結局新型コロナの影響で一般ランナーの方は参加できないことになって。で、その後いくつか大会を探していたのですが、ことごとく中止になっていて。走るのはもともと好きじゃないし、トレーニングしなくていいならいいやと思って最近サボっているので、いかん、人生1回だけマラソン頑張りたいなと思いました。

──普段は結構走っているんですか?
藤木 今は全然走っていないです。その前はハーフマラソンとか参加して、一応頑張っていたんですけど。

──今フルマラソンのオファーがきたらどうします?
藤木 
走りますよ。オファーが来ないから、多分走らない…(笑)。

──三木監督が諦めないことは?
三木監督 
なんでしょうね…でも果耶ちゃんが言ってくれてちょっとそうだなと思ったのは、楽しむこと。撮影とか、また大きく言えば人生でいろんな大変なことがいっぱいありますけど、どんな状況でも楽しんで、そこからなんとかなるよって思うのが、やっぱり状況を打破する力になったり。人の幸福度って…、どんな時でも楽しめば幸せになったりもできるので、どんな状況であっても楽しむことを諦めないというのが一つある気がします。

──原作ファンも多い本作の初の映画化を、チャレンジャーとして楽しんでされたということですね?
三木監督 
はい(笑)。プレッシャーを楽しみました。

──最後に、本作を楽しみにしている皆さんへ、ひと言お願いします。
三木監督 
今作は壮大なSFでありながらも、どこかレトロでユーモアもあって、すごく温かみを感じる作品になっています。大人から子どもまで楽しめるエンターテインメント作品になっていますので、ぜひ皆さんで劇場に足を運んでいただければ嬉しいです。本日はありがとうございました。

山﨑 本当にこの作品はいろんな愛が詰まっています。監督から最初に、レトロでチャーミングな、みんなに愛されるような映画にできたらいいねって言われて、本当にそんな映画になっていると思います。公開が延期してしまいましたが、すごく良いこのタイトルと同じような、良い扉を開けて公開できる日を楽しみにしています。楽しみにしていてくださったら嬉しいです。ありがとうございました。

==

『夏への扉 ─キミのいる未来へ─』

出演/山﨑賢人、清原果耶、夏菜、眞島秀和、浜野謙太、田口トモロヲ、高梨臨、原田泰造、藤木直人
監督/三木孝浩
脚本/菅野友恵
主題歌/LiSA「サプライズ」(SACRA MUSIC)
原作/ロバート・A・ハインライン「夏への扉」福島正実訳(ハヤカワ文庫)

日本公開/近日公開
配給/東宝、アニプレックス
©2021「夏への扉」製作委員会