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2020.10.06 23:00

【全文レポート】『窮鼠はチーズの夢を見る』大ヒット記念舞台挨拶に成田凌と行定勲監督が登壇!

  • Fan's Voice Staff

9月11日(金)に公開され好調が続いている映画『窮鼠はチーズの夢を見る』の大ヒット記念舞台挨拶が10月6日(火)に都内の劇場で開催され、出演した成田凌と行定勲監督が上映後の観客の前に登場しました。

学生時代から受け身の恋愛を繰り返してきた大伴恭一(大倉忠義)と、7年ぶりに再会した大学時代の後輩の今ヶ瀬渉(成田凌)の、狂おしくも切ない恋を、時に繊細に時に大胆に描き出す本作。水城せとなの傑作コミック「窮鼠はチーズの夢を見る」、「俎上の鯉は二度跳ねる」を、『ナラタージュ』、『劇場』の行定勲監督が映画化したものです。

本記事では舞台挨拶の内容を全文レポートします(※司会:奥浜レイラ)。

──ご挨拶をお願いします。
監督 いま急に呼ばれてびっくりしましたね。ずーっと二人でこの大倉くんを愛でていたんです(笑)。よろしくお願いします。

成田 こんにちは、成田凌です。と、(ぬいぐるみにふれながら)大倉忠義です。今日は大ヒット舞台挨拶ということが行われていることが、すごく嬉しいですね。そして久々にお客さんを前にして舞台挨拶ができるという環境に、本当に感謝したいと思います。今日はせっかくなんで楽しんでいってください。ありがとうございます。

──9月11日の公開から大ヒットしている作品ですが、今日観ていただいている方は、どれくらいの方がリピーターなのか気になるのですが、聞いてみませんか。
成田 2回目以上の方?(場内挙手)す〜ごい〜。逆に初めてご覧になった方というのは?(場内挙手)ありがとうございます。今日は来てよかった。(場内の観客を指して)そう、高校生だよね?いや、高校生にこの作品を観ていただけるのは本当に嬉しいですよね。

監督 それは本当に嬉しいですね。この間もそういう話になって、高校生の人たちが、「R15ってなんでR15なんですか」って聞いてきたんですよ。その人は15歳の方だったのですが、「14歳までは観ちゃダメって言われてるのに、15歳の私が観れるって超ヤバいね」ってなって、どんなだろうってみんなで観に来たと。そしたら「確かに14歳には観せらんないなあ」って言った15歳の言葉。これは大きいですね。14歳の自分じゃなくて、今15歳だったから、私はこれを受け入れられましたという。1年ですごい大人になったという。

成田 この作品を観て、自分は大人になったんだっていうことを実感するということなんですね。

監督 その子なりの言葉でしたね。「愛のあり方を知りました」と。「愛ってこういうことなんですねえ」みたいなことを言われた。

成田 それを行定さんに伝えるっていう。「愛を覚える」とか言葉にすることってないじゃないですか、しかも15歳になりたてで。それはとてもいい機会になったっていうことですよね。

──その方、絶対に忘れないでしょうね。
監督 人が人を好きになるってこういうことなんだ、という。人を好きになったことありますかと聞いたら、いや、彼氏が出来たことないです、みたいな。だけど、人が人を好きになったり、受け入れるとかっていうことはわかった。それで、今ヶ瀬に感情移入したと言っていました。

成田 あーーー。

監督 それはそうかー、という。

──恋をして愛を知るより先に、まず今ヶ瀬に感情移入するっていうのが、興味深いですね。
成田 興味深いですね。15かーー、まだだったなあ。

監督 その頃、サッカーしてたでしょ。

成田 サッカーしかしてなかったですねえ。

──そんな成田さんにとって、本作は撮影からちょっと時間が経っていますが、成田さんにとってはどういう作品になりましたか?
成田 まずやっぱり、友だちがダントツで観てくれる作品で、興味を持ってもらっているんだなっていうことがあって、とても嬉しかったですね。母親が唯一感想を言ってこなかった作品ですかね。「今から観てくるよ、友達と、4人で」ってうっきうきで写真撮って、ずらって並んでる看板とか、「楽しみ」って……音信不通っていう(笑)。オレたちの親子にとっても、1個こう、ボコッとスタンプを押されたような作品だと思いましたけど。

──お母さんにとっても新しい扉を開いた作品なんですね。お友だちからは結構感想来てます?
成田 そうですね、実際にゲイの方の評判がものすごく良いです。泣いたーとか、もう一回観てくるとかすごい言ってくれているので、やはりこれをリアルに感じてくれたっていうことが本当に嬉しいですね。なんかこう、安心するかなって思いました。安心します、すごく。

──官能的なシーンはきちんと官能的に描かれているというのもね、重要な要素だとは思います。行定監督はインタビューで度々、成田さんと大倉さんでこのキャスティングは本当に良かったというお話をされています。今観ていただいたばかりのお客さんなので、どのあたりのシーンで特にそれを思われたのか、具体的にお聞きしたいのですが。終始なのかもしれませんが。
監督 終始ですよね、本当に。部屋のこう、大倉のちょっとツンデレぶりがあるでしょ、冷たさと優しさ。あの感じの塩梅と、そこにちゃんとやっぱり、そう来るか、その空気がやっぱりそうだから、今ヶ瀬の入り込み方とか、そこの彼の懐に入っていく感じというのが、やっぱり違ってくると思うんですよね。だから思った以上に、大倉忠義はちょっとこう、暗い部分を持っているということなんです。明るいだけじゃなくて。そのコントラストが彼にはちゃんとあって、ただ今ヶ瀬という存在はそこで彼にすごくアプローチしてるわけだけども、彼の持っているそのアンニュイな感じに、今ヶ瀬がこう、翻弄されないようにする。翻弄してたんだけど、ちょっと翻弄される空気にされているところが、一つのトーンになっているんですよね。それがこの二人に上手く合ったっていう感じかな。

──司会をしていてこんなにシーンを思い出してニヤニヤする作品ってあんまりないのですが、今ポテチのシーンを思い出しちゃって、今ヶ瀬が隣にいる恭一にあげるじゃないですか。髪をさっと撫でるじゃないですか。あのあたりの応酬というか、あの辺の感じは自然に生まれていったのですか。
成田 
全体的な割合でいうと、幸せなシーンってすごく少ないですよね。二人が幸せを感じているところ。ああいうシーンが幸せに見えていれば見えるほど、すべてのシーンが生きるので、あそこはただただ楽しく幸せな時間ってことだったんでね。今行定さんが言ったように、今ヶ瀬ってこう、翻弄しているようで実は翻弄されている側なんで、だからこう自分でガンガン攻めておいて、いざリアクションがあった時に、「へっ」てなるっていうこの謎の矛盾があるので、その辺はやっぱり楽しかったのかなあ、やっぱり。

──お二人ともインタビューで、そこが逆になることにとても意味があるよっていう話もされていますよね。あそこもドキドキするというか、観ていてときめいたりする感じがしてきます。
成田 確かに、そういう感じかな。二人の生活を覗いているような感じですよね。ポテチとか。

──今ヶ瀬に感情移入される方が本当に多いですが、成田さんご自身は、今ヶ瀬というキャラクターが人に感情移入されていることについて、どう捉えていますか?今ヶ瀬という人物をどう捉えていましたか?
成田 
今ヶ瀬は、心が強いですからね。くじけないというか。あたって砕けないというか。あたって、入る、みたいな。あたったまま、みたいな感じなんで、そこは、たぶんそう簡単にできじゃないですか。やっぱりあたったら跳ね返されちゃうし、砕けちゃうんで。それをなんかこう、羨ましさもあるのかな。僕は自分でやってて、今ヶ瀬みたいにはなれないなーとは思いましたね。すごく貪欲さもありつつ、湿度を持ち、ペラっとくっつくみたいな、独特な感じ。

──この二人でしか成り立たなかったというのは、その湿度みたいなものもスクリーンの中から現れているような気がするのですが、そのあたりは映画を撮られる前にはどれぐらい計算されていたものですか?
監督 
いや、してないです、そこまでは。やっぱり二人の作り出す空気を見ながらですからね。ただね、どっちかというと、寒色というか、色はブルー寄りというか、青みがかっているっていうか。あんまり暖色、温かいっていう感じにあえてしていないんです。でもそうしていると、意外とそれぞれの人の体温が感じられるようになってくる。肌の出方ですよね。よく観てもらうとわかるんですが、肌がちょっと、肌の色を出せるようなフィルターを入れて撮っているんですよ。肌感というか。冷たいトーンなんだけど、人間の肌の色だけはちゃんと出る、みたいなことができない?って言ったら、良いフィルターがあるって言って、それを入れてもらったんですね。これがすごく功を奏しているというか、美しいだけじゃなくて、人の人間臭さなみたいなところが、ブルートーンみたいにしてしまうと画のトーンしてはすごく決まりすぎるんですよね。冷たくて、スタイリッシュな感じ。そういうのじゃない方がいいなと思って。もうちょっと泥臭くなっていたい。普通の人たちが、ちゃんと恋愛劇の中で、ちょっとコミカルな部分も笑いたかった。そういう部分にしたいという意味でいうと、人間の体温を感じる映像に。すごい抽象的なんですけど、カメラマン的には、肌にこだわっていましたね。裸のシーンもあるから、余計にそう考えたっていうのもありましたね。

成田 雨とかね。多いしね。

監督 肉体的にはすごく感じられるでしょ。すごく身近に感じる。

──成田さんは二人の関係性において、どちらがどういう力関係になっていくみたいなことで、やりながら感じられていたんですか?
成田 格好つけているわけじゃなくて、本当にその瞬間にならないとわからないことがたくさんあるんで。そっか、そういう気持ちじゃないといけないのか。ちょっとわかんないなあ。さっきの二人の話なんか、直前まで俺はメイクさんとかと話したりとかしてて、それで、よーい、はい、で芝居する感じなんで、なるべくその瞬間以外は忘れていないと出来ないんですよ。集中しちゃうと逆にほかのこととか、「あ、照明の、あの、寝てる」みたいな。すっごいそういうのが気になるんですよ。ものが落ちるのとか。ロケとかで、代官山とかで撮ってた時とか、ちょっとうるさい車とか、そういうので散っちゃうようになっちゃうので、ギリギリまで、なるようになれ、なるようになれっていう気持ちにしながらやって。なかなか、なんとも。

──先ほどから小さい大倉さんをしきりに動かしていらっしゃるのもとてもキュートで。
成田 
雑には扱えないから、と。あともう一つ気になっているのが、靴紐ほどけているの…、結んでいいですか。

んで、今日は大倉くんの色の、緑のコンバース。そしたらさっきこれ(ぬいぐるみ)を渡された。だからずーっとあのポスターのポーズをしている。

監督 さっき裏で人形渡されて、やっぱり今ヶ瀬らしかったね。いちおうTシャツの下を見てました(笑)。やっぱりちゃんとTシャツとパンツの下をいちおう確認して……、今ヶ瀬っぽいなあと思って。

成田 いや、みんな一回確認しますよ。「さっき着替えさせたんです」ってスタッフさんが言ってたんで。あ、ってことは、ってなりますよ。

監督 かわいいよね、なかなかね。

──嬉しいお知らせがありまして、8月18日から31日に開催される予定だった香港国際映画祭。映画祭自体はコロナの影響で直前に中止になっていたんですが、実は本作がクロージング作品に選ばれておりました。そして台湾と韓国でも上映が決定しております。

監督 韓国に友だちがたくさんいるんですけど、韓国もそうですが、台湾の友だちがずっと、何度も、公開しないんですかと聞いてきてました。台湾とか、LGBTQとかテーマにしているわけでもなくて、普通に同性の人たちが愛しあったりする映画が日本より全然進んでいる。

──同性婚もいち早く取り入れてましたからね。
監督 そういう社会ですから、すごく映画を楽しみにしている。どうも日本の友だちの感想を聞いて、むちゃくちゃ観たい、って。予告編はみんなもちろん観てるわけですけども、そういうところで熱狂的に言ってくださっているから。

成田 そうですよね、感想にとても熱を感じますよね。

監督 香港もすごくよかったですよ。『リバーズ・エッジ』で行った時に実はもうこれ(『窮鼠〜』)を準備してたから、その話をしたら、その時からぜひ観たい観たいと、向こうのディレクターの方たちが言っていたんですね。それでやっぱり、観て、クロージングに選んでくれるんだっていうのは、ものすごく光栄なことなんですよね。一本ですよ。何百本やる中の、一本しか上映できないですから、最後に。来年につなげるための映画はなにかっていう。これからの映画っていう映画祭のひとつの意思が感じられるから、すごく嬉しいな、と。本当に嬉しかったんですけど、残念ながらコロナで、実際の上映自体はできないと……。

──香港では上映の交渉がされているみたいですね(※記事末尾にて補足)。映画祭ではクロージング作品に選ばれ、成田さん、本当は行きたいですよね……

成田 行きたいですけどね。でも、しょうがないですね。嬉しいですね。逆に、一生でこんなことないですから、ね、思い出ですよ。うん、いいです。

──日本だと追いチーズと言ったり、追い窮鼠と言ったり、いろんな呼び方がありますけど……
監督 さっきから気になってるんだけど、(ぬいぐるみの)パンツが脱げてる…(笑)

成田 あっ、ごめん、大倉くん!

焦った様子でパンツを上げる成田

監督 それが気になってしょうがない(笑)

──いま、まったく意識せずに、でしたよね?

成田 そんなことしませんよ!

──これはちょっと今ヶ瀬が…(笑)。海を超えて届いて、どのような感想が日本に返ってくるか、とても楽しみにしております。おめでとうございます。

──ここでフォトセッションに移らせていただきます。特別なものをご用意しております……

成田 すごい…(笑)、渋めの……

監督 思った以上に渋めだね……

成田 くす玉って、「ピカーーっ」って。渋め……

──ちょっと燻した感じの金色のくす玉が来てます。
成田 僕はその方が好きです。

──今日はお二人に割っていただきたいと思います。
成田 初めてかも!くす玉割るのって。

監督 そうだよ、俺も初めてかも。だいたい失敗することが多いんだよね、くす玉って。

──そんなこと言わないでくださいよ!大丈夫です。それでは、『窮鼠はチーズの夢を見る』大ヒット、おめでとうございます!

──大成功おめでとうございます。よかったー!

──最後に一言ずついただきたいと思います。

成田 今日は本当にお越しいただきましてありがとうございます。個々の感想がみなさんにあると思うので、感想はお任せしますが、SNSもいいですけど、大切な人に、直接、面白かったよーとか、感想とか言っていただけたらと思っております。本当の口コミっていう方が僕は信じていますので、口コミをよろしくお願いします。あと、追いチーズもぜひ。本当に何度観ても感想が変わってくるような作品だと思うので、皆さんの大切な1本になればと思っています。今日はありがとうございます。

監督 いま口コミって言ってたんですけど、映画ってどんどん入れ替わっていっていて、ロングランって言葉はなかなか難しい時代。新しい作品が出てくると。ただ、これは久々に自分の映画の中で、ロングランって嬉しいものなんですよ。それってやっぱり、観客の皆さんが繋いでいってるんですよね。だから、繋いでいくってことは、だんだん、今1ヶ月、これが2ヶ月、3ヶ月とかいくと、本当にだんだんその作品が印象づくというか、2020年の中で「『窮鼠はチーズの夢を見る』って作品があったよね」っていう記憶になっていうのがすごく嬉しいことなので、この映画を気に入ってくださった方たちにはぜひとも繋いでいってほしいなという気持ちでおります。あと、大倉くんからメールが来ていて、「いやー、もうすいません。行きたかった」と。「もうちょっと落ち着いたら、なんかやりたいですね。面白いこと考えてください」と言ってました。なんか考えなきゃいけないな、と。そのためにはロングランしていくと嬉しいな、という気持ちでいます。あと、この作品が成田凌の代表作になってくれたらいいなと。いろいろな代表作がある方なんで、最終的に代表作のひとつになる作品になってくれると嬉しいなと、そういう風に記憶に残る映画にしていただいたら嬉しいなと思っております。本日はありがとうございました。

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※8月18日~31日に開催される予定だった香港国際映画祭はコロナの影響で一旦中止になりましたが、10月末~11月の間で新たに香港国際映画祭上映企画が開催。そのクロージング作品として『窮鼠はチーズの夢を見る』が上映されることが決まりました。

以下、映画祭からのメッセージです。
「香港国際映画祭は、これまで行定勲監督の素晴らしい作品の数々を招待しており、監督には映画祭にもご出席頂いています。最近では『リバーズ・エッジ』と『ピンクとグレー』を上映し、観客に熱烈に受け入れられました。『窮鼠はチーズの夢を見る』も、多くの人々を惹きつけるであろう若者の心情と恋愛の鼓動を見事にとらえています。第44回香港国際映画祭のクロージング作品にこの並外れた作品を選出できたことをとても光栄に思います」

また、台湾/韓国での上映も決定、香港とも交渉が進んでいる状況です。

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『窮鼠はチーズの夢を見る』

7年ぶりの再会 突然の告白 運命の歯車が動き出す──
学生時代から「自分を好きになってくれる女性」と受け身の恋愛ばかりを繰り返してきた、大伴恭一。ある日、大学の後輩・今ヶ瀬渉と7年ぶりに再会。「昔からずっと好きだった」と突然想いを告げられる。戸惑いを隠せない恭一だったが、今ヶ瀬のペースに乗せられ、ふたりは一緒に暮らすことに。ただひたすらにまっすぐな今ヶ瀬に、恭一も少しずつ心を開いていき…。しかし、恭一の昔の恋人・夏生が現れ、ふたりの関係が変わり始めていく。

原作/水城せとな「窮鼠はチーズの夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」(小学館「フラワーコミックスα」刊)
監督/行定勲
脚本/堀泉杏
音楽/半野喜弘
出演/大倉忠義、成田凌、吉田志織、さとうほなみ、咲妃みゆ、小原徳子
映倫区分:R15 

日本公開/2020年9月11日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
配給/ファントム・フィルム
公式サイト
©水城せとな・小学館/映画「窮鼠はチーズの夢を見る」製作委員会