Report

2019.12.27 20:44

【全文レポート】『パラサイト 半地下の家族』来日舞台挨拶にポン・ジュノ監督&ソン・ガンホが登壇

  • Fan's Voice Staff

※本記事では映画『パラサイト 半地下の家族』に関する若干のネタバレが含まれます。

第72回カンヌ国際映画祭最高賞パルムドールを受賞したポン・ジュノ監督最新作『パラサイト 半地下の家族』の日本先行公開初日となる12月27日(金)、来日中のポン・ジュノ監督とソン・ガンホを迎えた舞台挨拶が都内の劇場で開催されました。

満席となったTOHOシネマズ 六本木ヒルズ スクリーン7で、本編上映後に行われた舞台挨拶。二人揃っての来日は13年ぶりとなるポン・ジュノ監督とソン・ガンホが、万雷の拍手で迎えられました。

ポン・ジュノ監督 こんにちは、お会いできて嬉しいです。ポン・ジュノと申します。お越しくださいまして本当にありがとうございます。今日が公開日なので、日本で初めてこの映画をご覧いただいた皆さんですよね。まだ映画を観ていない方々がたくさんいらっしゃるので、皆さん外に出られたら、この映画についていろいろなお話をしていただいて良いのですが、後半の展開については絶対にお話しないでください。お願いします。

ソン・ガンホ お会いできて嬉しいです。ソン・ガンホです。皆さんにこの映画を通してご挨拶できることを光栄に思っています。皆さんはこの映画をご覧になったのでおわかりかと思いますが、チェ・ウシクさんは出演している分量が私より若干多いんですね。なので自分が主人公だと言い張っているんですけれども、本当の主人公は私だということを、大勢の皆さんにお知らせください。(日本語で)ありがとうございます。

続いて、MCとの質疑応答が行われました。

──裕福な家族と貧しい家族が交わっていくことで物語が展開していきますが、この設定にした理由、思いつきはどこから来たのでしょうか?
ポン・ジュノ監督 実際に生きていく中で、裕福な人々と貧しい人々というのは分かれていますよね。お互いに出会う場面、機会というのがあまりないと思います。それぞれが行くレストランも違いますし、それぞれ利用する場所も違うと思います。この映画の中では、お互いが匂いを嗅げる程の近い距離に一度近づけてみたいという意図が最初からありました。日本でも大学生の方々はよく家庭教師をされていますよね。僕も大学生の時に、中学生の男の子の家庭教師をしていたのですが、裕福な家の息子さんでした。1990年代半ばのことでした。当時の僕の彼女がもともとその家の息子を教えていたのですが、その彼女の紹介で僕もその家に家庭教師として入るようになりました。なので、一人ずつその家に入っていったわけです。その頃ちょうど僕も別の友人をその家に紹介しようと思っていたんですけれども、その矢先にクビになってしまったんですね。2ヶ月目にしてクビになってしまったので、その先には進めませんでした。生まれて初めて見る裕福な家の内部を覗き見る機会になりました。意図せずその家の私生活のひとつひとつを覗き見るような、妙な気分になりました。脚本を書く時には、その当時の気分を思い出しながら書いていました。

──ソン・ガンホさんはポン・ジュノ監督からどのようにオファーを受けたのでしょうか?
ソン・ガンホ ポン・ジュノ監督は脚本をすべて書き終えてから俳優にその脚本を渡す方ではありません。この『パラサイト』に関しても、かなり前、今から4年ほど前に、すでにイメージに対しての説明がありました。例えば、酔っぱらいが立ちションをするんだけど、それがずっと窓をつたってだらだらと降りてきて、壁伝いに降りてくるという、そういう半地下に住んでいる家族の話だというイメージを聞いたのを覚えています。そして2回目に会った時には、その貧しい家族の方が、一人ずつお金持ちの家に入っていくという話を聞かされました。なので当然のことながら、私は裕福なお金持ちの社長の役だと思っていました。ところが蓋を開けてみたら、半地下に連れて行かれるとは夢にも思っていませんでした。

──監督と話している間に、アイディアを出されたりしたのですか?
ソン・ガンホ アイディアを出したというよりも、最初はてっきりそのお金持ちの家の社長の役だと思っていたので、そのことばかり考えていました。でもいざ映画を撮り、撮影が終わって真っ先に思ったのが、これからは雨が降るシーンがある映画、階段が出てくる映画には決して出まいと、心に誓いました。

ポン・ジュノ監督 映画の中でパク社長はベンツの後部座席に乗っているシーンが多いですが、一方でソン・ガンホ先輩は本当に苦労されましたよね。雨に打たれたり、階段を上がったり下がったりとかしながら、膝の関節にも苦痛が多かったのではないかと思います。

ソン・ガンホ そして次の脚本もくれると監督はおっしゃっているのですが、なんとそのタイトルが『梅雨時の男』だそうです。(会場笑い)

──4度目のタッグになりましたが、改めて一緒に仕事をしてみて、今はどんな印象をお持ちですか。
ソン・ガンホ ポン監督とはもう20年来一緒にお仕事をしていますが、監督は韓国においてこの20年間、作家としてまた監督として、社会に向ける温かい眼差し、そして鋭い眼差しというものがどんどん発展していき、深くなり、そして広くなっていると思います。それを俳優として見守れるのは興味深いことですし、とても感動的なことだと思っています。これからもさらに深く広くなっていく監督の世界を見せてほしいと思います。そして次の作品は、『梅雨時の男』でなければ出演したいと思っています(笑)。

ポン・ジュノ監督 まずは、ありがとうございます。僕は『パラサイト』撮影で、クライマックスのシークエンスに、日差しが燦々と降り注ぐ中、修羅場となるガーデンパーティーがありますが、あのシーンは撮る前にいろいろなことを悩みました。決定的なクロースアップのシーン、インディアンの帽子をかぶっているそのシーンは、すごく悩んだところでした。でもいざ撮る時になったら、とりあえず撮ってみようかという気持ちになりました。その瞬間、主人公がしでかしてしまう爆発的で突発的な瞬間というのがありますが、一部の観客にとってはおかしく感じられてしまうのではないか、説得が出来ないのではないか、そして論争を巻き起こすのではないか、ということを悩んだり考えたりしていました。でもそのモニターの画面を見た瞬間、それまで抱えていた悩みはすっかり洗い流されてしまいました。この姿は、この時のこの人物そのものだ、という風に思いました。大きなクロースアップで映し出された時の俳優の眼差しや表情、そこから醸し出されてくるものを見た瞬間、それまで悩んできたことが無意味なことだったように感じられました。本当にその瞬間を目の当たりにした時は、神秘的な瞬間だったも言えます。言葉で言い表すのがなかなか難しい瞬間でもありました。最近あるアメリカの評論家がそのシーンを指して、「今年のクロースアップだ=Close-up of the Year」と評価していました。それを見てとても嬉しく思いました。そういう瞬間こそ、偉大な俳優だからこそ成し遂げられるものなのではないかと思います。

──オスカー最有力とも言われていますが、今どんなお気持ちですか?
ポン・ジュノ監督 オスカーですか(笑)?そればかりはどうなるか本当にわからないですね。予測するのはとても難しいと思います。今年のトロント国際映画祭で是枝裕和監督にお会いしたのですが、昨年是枝監督はパルムドールを獲られた後、オスカーにノミネートされて、今私が歩んでいるコースと全く同じプロセスを辿っていらっしゃいました。私と会って、「今年一年、忙しくなると思うよ。きっと大変だと思うけど、頑張ってね」というコメントをいただいて、とても嬉しかったです。もし万が一『パラサイト』がオスカーにノミネートされた暁には、ぜひ映画をもう一度ご覧ください。分析もしていただたらいいかなと思います。(場内拍手)

ここで、『パラサイト』を観て興奮がやまないという俳優の吉沢亮が登場。ポン・ジュノ監督、ソン・ガンホそれぞれに花束を贈呈しました。

『母なる証明』が好きだという吉沢は、自身のカレンダーで「僕の好きな映画12本というモチーフに、月ごとに作ったのですが、『母なる証明』を入れさせてもらいました。お母さんの格好をして、草原でフラフラして」とコメント。「緊張しすぎて上手く喋れる気がしないのですが、本当に昔から観ていた方々なので、嬉しいです」

MC 『パラサイト』を観た感想は?

吉沢亮 純粋にすげーーってなったというか、本当にここ何年かで観た作品の中でも一番の圧倒的なエンタメ感というか、すごいいろいろな要素が入っていて、笑いもあり、涙もあり、ホラーだったりサスペンスとか、いろんな要素が入っているのに、それが一切邪魔をせず、完璧に融合されていて、それでその中で韓国の格差社会が根底にあり、絶対に観るべき映画だと思いました。映画好きの方は100%観るでしょうが、あまり映画館で映画を観ないような方々にも、そういう方にこそ、こんな作品があるのだと観てもらいたいと思いました。

ポン・ジュノ監督 (日本語で)うーん、そうですねえ(笑)。吉沢さんの今の映画評により、この映画が実際よりも素敵なものに感じられるような気がします。ご自身がこれだけイケメンだと気づいたのは何歳の時ですか?本当にカッコいいですよ。

吉沢亮 小学校5年生ですかね。

ポン・ジュノ監督 4年生の時までどうして気づかなかったのでしょうか(笑)。

MC ポン・ジュノ監督は吉沢さんの作品を以前にご覧になったことがあるとか?

ポン・ジュノ監督 行定勲監督とは親しくさせていただいていて、作品も観ているのですが、『リバーズ・エッジ』ではとても素敵な青春の姿を演じられていると思いました。

吉沢亮 嬉しいですね。こんな場所に僕がいるのがおこがましいと思うくらいすごい方々で、そんな方の目にとまっていた、観てもらっていたというのはすごく不思議な気持ちです。

MC いつかご一緒とか……?

吉沢亮 いやーーーーっ、お願いします(監督に向かってお辞儀)!夢のような日がくれば嬉しいです。

MC ソン・ガンホさんやポン・ジュノ監督に聞きたいことはありますか?

吉沢亮 特に好きだったシーンが、家が洪水になって娘がトイレに座ってタバコを吸っているところ。すごいなと思って、あの画だけでいろいろな感情が見える感じで、すごい好きでした。あのシーンはどうやって撮ったのか。あれだけ水浸しの中で、どういう風に撮影が行われたのか、気になりました。

どちらが回答するか、譲り合う素振りを見せる二人

ポン・ジュノ監督 劇中のソン・ガンホさんの家とその周りの近所の街というのは、すべてセットです。そのセットをプール(ウォータータンク)の中に作っているんです。あの貧しい家、そして周辺でのシーンを撮った後、最後の4日間に水を投入しました。汚い下水溝のような、汚水のように見えますが、俳優さんたちの体に決して害が無いよう、綺麗な水が使われています。その水に、肌用の泥パックを入れて色を出して。体に良い水が使われているんです。スキューバダイビング用のスーツを着たスタッフと作業をしましたが、実際には俳優さんが本当に苦労されたと思います。きれいとは言え、冷たい水の中で夜に撮影をしていたわけですから、大変だったと思いますが、そこについてはソン・ガンホさんに直接お聞きしたいと思います。

ソン・ガンホ 私は以前から水と縁があるんです。『殺人の追憶』の時にもかなり雨に濡れましたし、『グエムル -漢江の怪物-』ではハンガンから怪物が飛び出してくるという設定でしたし、ポン監督の作品ではないのですが、 パク・チャヌク監督の『復讐者に憐れみを』という映画では、川の冷たい水の中に入ったりして撮影したので、もう水にはうんざりしています。でも、皆さんご覧になっておわかりかと思いますが、ポン監督は水が与えてくれる印象をすごく大事にされています。悲しみを表したり、哀れみを表したり、人間として、また映画を観る観客として感じることが出来る偉大な感情を、水を通して作り出してくださっていますので、今は水を愛するようになりました。

MC ポン・ジュノ監督の現場の話を聞いていかがですか?

吉沢亮 ここでしか聞けない話ですね。まさかあの家がセットだったというのは、びっくりしました。

パネルに描かれた桃に反応するポン・ジュノ監督

フォトセッションを終え、吉沢亮はここで降壇。最後にポン・ジュノ監督とソン・ガンホが、日本のファンに向けてメッセージを送りました。

ソン・ガンホ 初めての上映の時に大勢の方が来てくださって、本当に嬉しく思っています。どうもありがとうございます。この映画は誰かが誰かを恨んだり、憎んだり、対立したりする映画ではありません。この映画は韓国に限らず、日本でもアメリカでもヨーロッパでも、どこの人たちも感じることができる、つまりはどう生きていったらいいのか、そうした問いかけをしてくれる映画だと思います。ですので、皆さんもこの映画を観て、幸せな気持ちになってくださったら嬉しいです。どうもありがとうございます。

ポン・ジュノ監督 今日日本でいちばん早くこの映画を観てくださった観客の皆さんなので、本当に大切な皆さんだと思います。改めて感謝申し上げます。この映画が一つの映画的なパラサイトになって、皆さんの頭と胸に深く刻み込まれ、永遠に抜き取ることの出来ない映画的な”寄生虫”になって、長く皆さんの頭の中に残ってくれたら嬉しいです。(日本語で)ありがとうございます。

最後には観客からの撮影タイムも30秒設けられ、会場がシャッター音で包まれました。ポン・ジュノ監督はそのまま、手に持っていたパネルを脇に抱えて退場しようとすると、ソン・ガンホも息ピッタリに加わり、二人は小走りでステージを後にしました。

以下、イベントでの他写真です。

==

『パラサイト 半地下の家族』(英題:Parasite)

全員失業中で、その日暮らしの生活を送る貧しいキム一家。長男ギウは、ひょんなことからIT企業のCEOである超裕福なパク氏の家へ、家庭教師の面接を受けに行くことになる。そして、兄に続き、妹のギジョンも豪邸に足を踏み入れるが…この相反する2つの家族の出会いは、誰も観たことのない想像を超える悲喜劇へと猛烈に加速していく──。

出演/ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン
監督・共同脚本/ポン・ジュノ
撮影/ホン・ギョンピョ
音楽/チョン・ジェイル 
2019年/韓国/132 分/2.35:1/原題:Gisaengchung/PG-12

日本公開/2019年12月27日(金)よりTOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズ梅田にて先行公開|2020年1月10日(金)、TOHO シネマズ日比谷ほか全国ロードショー!
配給/ビターズ・エンド
© 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED