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2019.09.12 20:38

ブラッド・ピット来日!主演最新作『アド・アストラ』記者会見に登壇

  • Fan's Voice Staff

9月20日(金)公開となるSFアドベンチャー『アド・アストラ』。第76回ベネチア国際映画祭でワールドプレミアされ、高い評価を得た本作は、ブラッド・ピットが初の宇宙飛行士役を演じることでも話題です。

近未来、初の太陽系外有人探査計画“リマ計画”の司令官として宇宙に旅立ってから16年後に消息を絶った父を探し出すミッションを与えられた、宇宙飛行士のロイ・マクブライド(ブラッド・ピット)は、複雑な思いを抱えながら宇宙へ旅立つ……。

長年の友人、ジェームズ・グレイ監督から持ちかけられた企画に賛同し、主演だけでなくプロデューサーも手掛けるなど、自身のキャリアの中でも思い入れの深い作品を携え、ブラッド・ピットが、日本公開を前に緊急来日。9月12日(木)、東京・お台場の日本科学未来館にて記者会見が開催されました。

尚、会見後半には、ゲストとして、日本科学未来館館長で宇宙飛行士の毛利衛氏、同じく宇宙飛行士の山崎直子氏も登壇されました。

ピットは、会見会場の背後にある地球ディスプレイ「ジオ・コスモス」を取り囲む螺旋通路を歩いて登場。途中立ち止まってポーズするなど、開始から嬉しそう。

会場となった日本科学未来館を「素晴らしい場所。普通の記者会見場よりずっと好きですね」と始終、笑顔で会見に臨みました。

──この作品では、プロデューサーと主演を兼ねていますが、俳優だけのときとどのように違うのでしょうか?チャレンジだったことは?
まず、プロデューサーもやると、普段より責任を感じます。物語を語る作業であるということでは、プロデューサーも俳優も一緒ですけれどね。プロデュースでも参加しているときは、出演だけのときより、現場にも早く行きますし、撮影の後も仕事があります。映画制作は、みんなで共同で取り組むスポーツのようなものです。チャレンジといえば、毎日が挑戦です。映画を作っているとミスもあります。チャレンジとミスの繰り返しです。私の場合は、昼間が俳優、朝と夜がプロデューサーとして働いている感じですね。ルービックキューブをやるようなものでもあります。ああ、この作品で一番大変だったことと言えば、宇宙服を着ていろいろなことを行うことでしたね。

──初めての宇宙飛行士役でしたが、初めて体験したことは?
これまで挑戦しなかったのは、このジャンルにはすでに素晴らしい作品があるからです。(宇宙ものを)やるなら違うものをやりたかったんです。このジャンルになにか貢献できるような。今回、友人のジェームズ・グレイがそういう企画をもって来てくれました。

撮影中は、ピーターパンのように、ワイヤーで宇宙服を着た状態で吊るされることがたくさんありました。それがかなり大変でしたね。トレーニングの間は、くるくると回転させられたり、高く吊るされたり、今度は降下させらたり、いろいろやりました。どれくらいまで、吐かずに耐えられるか限界をテストをされたんです。

──この映画は、壮大なスケールな話ですが、ひとりの男の繊細な感情が素晴らしかったと思います。今後、俳優業をセーブするというニュースに驚きましたが、今後の仕事、あるいは夢は?
まず、最初のコメントについてですが、ジェームズ・グレイがデザインした物語は、壮大な宇宙が舞台ですが、ひとりの男の心の葛藤や自分探索の旅を描いています。これはとても表現するのは難しかったですが、自分としては満足しています。ふたつ目の質問についてですが、私は今まで通り、訴えかけてくる物語や、自分が本当に心惹かれるプロジェクトに参加していくつもりです。つまり、私の場合、いつも複雑なストーリーに惹かれるということですけど。俳優もプロデューサーもやっていきますよ。

──冒頭の宇宙空間がリアリティがありました。制作する側からの立場として、どんな工夫をされたのでしょうか。
それは主にジェームズ・グレイと(撮影監督の)ホイテ・ヴァン・ホイテマの考えですけど、今回は、あまりCGに頼らず、昔ながらの方法で撮りたいという方針でした。実際に海王星に行くことはできないので、セットの中でいかにレンズを通してリアリティがあるように撮るかということが重要でした。レンズのフレアとか月面とか、特に月面の闇とか。アナログとCGをミックスしたこのやり方で、結果的には非常に臨場感のある、体感的で、真実味のある映像になったと思います。

──これまで10回以上、日本にいらしていますが、今回、日本でやりたいことは?
今回こそ、プライベートでも日本を満喫しようと、早く来る予定でいたんですが、ご存知のように、台風で飛行機がキャンセルになり、早く来られなくなったんです。(やりたいことの)とても長いリストがあるんですけどね。

東京を出て、地方に行きたかったです。もちろん、京都ももちろん行きたいですね。庭園や建築、竹林も見てみたいですね。鯉がいるところにも行くつもりです……鯉を育てている有名なところ、どこでしたっけ……?

日本文化はとても好きなんです。日本の作り出すものはとてもアーティスティックです、和食からジーンズからとてもクオリティが高いですからね。

そう、私は鯉が大好きなんです。鯉の話なら1時間でもできます(笑)。

──宇宙という広大な世界を描いている中で、観ている人は、悩んだりする自己の葛藤というところに共感すると思いました。なぜ、この物語を宇宙を舞台にして描きたいと思ったのでしょうか。
いい質問ですね。これは、「オデッセイア」のような、自分を探す旅でもあります。広い宇宙が体現しているのは、ミステリーであり、孤独です。私が演じたキャラクターのロイは、人生のすべてが上手く行っていなくて、自分の存在価値や自分への疑念、喪失などといった、自分の中で押し殺してきたものと、宇宙の果てまで行って対面することになります。

映画の魅力は、人間の葛藤に焦点を当てることにあります。これは、喜劇でも同じです。人間の多面的な面を映し出し、人間のそういう部分を笑い飛ばす。それが映画の力であり素晴らしさです。そこに私は惹かれるのです。

──プロデュースだけでなく、主演しようと思った理由は何ですか?プロデューサーとして理想の監督とは?
共同脚本と監督を務めたジェームズ(・グレイ)とは、長い友人なんです。90年代半ばから、いつか仕事をしたいと言っていました。でも、なかなか機会がなかった。これは、とても題材にも強く惹かれ、興味を持ちました。今は、1年に1本くらいしか映画は撮れないので、誰と仕事をするかはとても大事です。

監督に求めるものといえば、いつもその視点です。最初に会って話を聞くときは、視点、その強さ、独創性、そしてそれが面白い方向にいくのか、ということを考えています。

──ジェームズ・グレイは、長い友達ということですが、この役は難しい役で、あなたに寄ったショットも多いですね。ある意味、裸にされているようなものでもありますが、監督はどのように、あなたを説得したのですか。
監督は道筋を示してくれる人です。信用している監督なら、どんなにクレイジーなものでも、おかしなことでもやってみようと思います。でも、反対に信用していない監督だと、やってみようという気にならないものです。

ジェームズは正直な人で、彼とはなんでも話せるとてもオープンな関係なんです。自分たちの欠点の話もできます。朝にジェームズがメールを送ってきて、プライベートな話をしたりします。それによって、その撮影の日のトーンが決まったりするんです。嫌なことも恥ずかしがらずにできたりもします。このロイの演技は、ある意味、静かで控えめな演技なので、抑揚が無さすぎたら言ってくれとお願いしました。

──少年は宇宙に行きたいという夢をみるものですね。あなたは、この映画で夢をかなえたといえるんでしょうか?
子供の頃、私が宇宙飛行士になりたかったかどうかは、定かでありませんね……。むしろ宇宙船には心惹かれますね。私はパイロットのライセンスは持っているのですが。コックピットでスイッチを押したりするのは、やっぱり楽しいですね。

──映画の中で、何回か、心理テストをするシーンがありますが……
今の私は、時差ボケでお腹が空いている。でも、まだ寝ませんよ。まだ、東京の町をもっとみたいからです(笑)

本物の宇宙飛行士にピットが逆質問

ここで、日本人としてスペースシャトルに搭乗した宇宙飛行士の毛利さんと、国際宇宙ステーションの組み立てに携わった山崎さんが登場しました。

ピット みなさん、本物(の宇宙飛行士)ですよ!

毛利 9月12日は、1992年に私が(宇宙へ)飛んだ日なんです。そんな日に、ブラッド・ピットさんが来てくださって本当に嬉しいです。この映画を観て、一番、胸を打たれたのは、父親と息子、愛する人、チームワークといった点です。宇宙飛行士はミッションが大事です。それらを演じるときのピットさんの繊細な表情が、本物以上で、すごい俳優だなと思いました。

山崎 素晴らしい映画でした。壮大な宇宙の物語は、監督やスタッフが、細部に魂を込めていた賜物だと思います。宇宙飛行士からいうと、実際に、宇宙に行くときは、子供を残していくことが、とても辛い部分でもあります。そういう意味では、心をえぐられる映画でした。宇宙に行くと、地球のことがよくわかります。これは外側から見ることで、自分を再構築していく映画だと思いました。そして、いつかブラッド・ピットさんが宇宙を旅する日を見てみたいと思います。

ピット 私から質問していいですか?なんといっても本物(の宇宙飛行士)ですから。実際に宇宙に行く人は稀ですからね。宇宙から地球を見た感想は?

毛利 私がこの日本未来科学館の館長をしているのは、いまブラッド・ピットさんが言ったことを大事に思っているからです。科学技術が宇宙にいくことを可能にしています。同時に、科学技術だけでは、私たちが大事にしている地球を守ることができません。でも、外から見ると、地球が美しいということを伝えたいですね。

子供の頃に、ガガーリンの言葉「地球は青かった」という言葉を知って、それはどんな青さなのかとずっと考えていました。実際に見たら、それ以上の深い意味がありました。

山崎 地球は青く、丸いということは、みんな知っています。(それを実際に見たときは)理屈でなく、すとんと体に入ってきました。懐かしいという感じもしました。宇宙に行くことは、冒険という意味もあるけれど、ふるさとを訪ねにいく感じもしました。

ピット もう一回行きたいですか?

山崎 行きたいですね。

毛利 次は違うことはしたいですね。月ではなく、火星に行きたいです。

以下、会見での他写真です。

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『アド・アストラ』(原題:Ad Astra)

監督/ジェームズ・グレイ
製作/ブラッド・ピット、ほか
脚本/ジェームズ・グレイ&イーサン・グロス
出演/ブラッド・ピット、トミー・リー・ジョーンズ、ルース・ネッガ、リヴ・タイラー、ドナルド・サザーランド

日本公開/2019年9月20日(金)全国公開
配給/20世紀フォックス映画
© 2019 Twentieth Century Fox Film Corporation