ティモシー・シャラメが最新作『キング』のベネチア会見で”若さと権力”について語る
- Fan's Voice Staff
ティモシー・シャラメ主演、デヴィッド・ミショッド監督のNetflixオリジナル映画『キング』が第76回ベネチア国際映画祭でワールド・プレミアされ、公式会見が開催されました。
『キング』は、シェイクスピアの戯曲「ヘンリー四世」と「ヘンリー五世」をべースにした史劇です。
15世紀初頭のイングランド。国王のヘンリー四世(ベン・メンデルソーン)は長男のハル王子のやんちゃぶりを心配し、ハルの弟のトーマスに王位を譲ろうとしていた。だが、トーマスは戦死、ヘンリー四世も病に倒れ、ハルはヘンリー五世の座に就く。若き王となったハルが、裏切り、戦争などさまざまな試練を経て成長していく──。
会見には、デヴィッド・ミショッド監督、主演のティモシー・シャラメ、ハルの友人である騎士フォルスタッフ役だけでなく共同脚本と製作も手掛けたジョエル・エドガートン、ヘンリー四世役のベン・メンデルソーン、後にハルと結婚するフランスの王女カトリーヌ(キャサリン)を演じたリリー=ローズ・デップ、ホットスパー役のトム・グリン=カーニーらが出席しました。フランス王太子役で出演したロバート・パティンソンは残念ながら欠席。
名優エドガートンはこれまで、『アニマル・キングダム』(10年)や『奪還者』(14年)などのミショッド監督作品に携わっており、そもそも本作はエドガートンが、シドニーで近所に住むミショッドに話を持ちかけたのが始まりだといいます。
ミショッド監督「ジョエルから、”「ヘンリー五世」はどうかな?”と持ちかけられ、なんらかの形でこの物語を描くというアイディアがとても気に入りました。中世を舞台にした映画を作ったり、馬と剣の映画を作るなんて、自分では絶対に思いつかないことで、そのアイディアを聞いた途端に、私が作ったらどんな映画になるのだろうと思ってすごく興奮しました」
エドガートン「シェイクスピアの戯曲をそのまま映画化したわけではありませんが、でも私はずっと昔、25、26歳だった頃に「ヘンリー四世」の第1部と第2部や「ヘンリー五世」の舞台に出演したことがあって、その世界観が大好きでした。デヴィッドとのコラボレーションでは、実際の歴史と、シェイクスピアが作った構成やキャラクターをヒントに、この男が王になっていく成長の自分たちなりの物語をどのように描くか、というところから始まりました」
ミショッド監督「製作の早い段階から、戯曲の物語からは離れることにしました。私が映画作りで大好きなリサーチも膨大な量を行いましたし、我々が作り上げた部分もあります。そのため、いまこの場でこうして話しているわけですが、正直言って、もはやなにが史実で、なにがフィクションで、なにがシェイクスピアから取ってきた部分だったのか、はっきりと思い出せないほどです(笑)」
主役のハルを演じたのは、『君の名前で僕を呼んで』(17年)をきっかけに大ブレイク中のティモシー・シャラメ。現代劇のイメージが強い彼ですが、甲冑をつけた中世の王の姿は新鮮です。
シャラメ「この役の一番の魅力は、自分にとって大きな挑戦になることでした。僕はデヴィッドとジョエルの映画の大ファンでしたし。この役は自分の守備範囲の外で、だから怖くもありました。学校で教わった演劇教師の全員からは“挑戦になる役を選びなさい、慣れた役を演じていてはただ消耗するだけ”と言われました。でもそれは、自分が本当に信頼して尊敬出来る監督と一緒でなければ、出来ない気がしました。それから本作では素晴らしい共演陣とも一緒で、この場にはいませんがロバート・パティンソンや、ジョエル(・エドガートン)、ショーン・ハリス、ベン・メンデルソーン、リリー=ローズ(・デップ)、それからトーマシン(・マッケンジー)と一緒にベンの子どもになれましたからね。あらゆる面で挑戦となった役でしたが、非常にワクワクする機会でした」
ニューヨーク育ちのシャラメですが、この役ではブリティッシュ・アクセントにも挑戦しています。
シャラメ「とにかく優れた映画や自分にとって挑戦になるプロジェクトに参加するようにしています。先ほど言ったように、自分の守備範囲外のことですね。この重要性は何度言っても言い表せませんが、僕はまだ学んでいる途中ですし、自分がなれる最高の俳優の姿を追い求めているところです。まだ23歳ですから、それがどんなものなのか、ピースを集めているところです」「この映画ではショーンとベンと本当にいろいろなことがあって、言葉や音で説明して他の人に伝えられる学びもありますが、潜在的に入り込んでいくような学びもあって。共演した全員から学ぶことはありましたが、特に”真の俳優”であるこの二人とは、非常に勉強になる経験となりました」
『キング』は若い王子が権力をもつことによって、成長していく物語でもあります。若くして成功し名声を手にした若手俳優にとっても、考えさせられるテーマです。
シャラメ「最初の頃、リリー=ローズ、トム、この場にはいないけどジョン王子役のディーンがキャスティングされた時にデヴィッドが話したアイディアの一つに、当時は世襲や境遇により、非常に若い人が権力を持つことがあったということです。これは深く掘り下げていくのに新しくてユニークな感じがしました。ある本を読んでいて知ったのですが、過去1、2世紀のシェイクスピアの舞台では、若い俳優を使うのを嫌うことがあったというのです。素晴らしく濃密な内容なのだから、それを表現するには大人の役者が必要だったとのことなのですが。若者が強大な力を持つこと怖がったり不快に思うことは、ジョン王子やキャサリン王女を巡るホットスパーのシーンでも比喩的に描かれていますが、現代でも、特に具体名を挙げるわけではありませんが、血筋により権力を持ち、その力を好きなように、特に悪い方向に使う人々は存在してます」
デップ「この映画は様々な人の、権力の利用の仕方についても描いていますね。舞台となった時代は、女性ほとんど力がなく、自分の運命や人生を自分で選ぶことができなかったのです。私が演じたキャサリンは、とても穏やかに、でも強く毅然と力を利用していったので、特にそうした時代では、良いメッセージになったのではないでしょうか」
この作品にはシャラメやリリー=ローズのほかにも注目の新進俳優たちが出演しており、シャラメ演じるハルと対決するホットスパーは、『ダンケルク』で人気となり、最近では『トールキン 旅のはじまり』にも出演しているトム・グリン=カーニーが演じています。
グリン=カーニー「映画の中でティモシーと僕が大乱闘するシーンがありますが、僕にとってあれは子どものケンカのような感じでした。デヴィッドとジョエルは、大人の対立や問題の扱い方をよくわかっていない若者だという印象を与えたかったとわかっていたので、不安や怒りなどに対するホットスパーの向き合い方がよく理解できました。彼は怒りに満ちていて、それが彼の力でした。反抗するのが彼の力で、ハルと衝突する瞬間には、とにかく影響を与えたいと必死な人間と、生まれた時から権力を与えられた人間の、どちらが勝つかという思いがあるわけです。これがホットスパーの力の顕れだと思います」
ちなみに豪華キャスト陣の中で、残念ながら記者会見に参加できなかったのが英俳優ロバート・パティンソン。ハルがフランス征服に乗り出した際に対決するフランスの王太子を演じ、映画中ではフランス語と“フランスなまりの英語”を披露しています。
ミショッド監督「ロブ(=ロバート・パティンソン)は私が監督した『奪還者』にも出演したのですが、とても独創的かつ意欲的で、大胆なことにもとにかく挑戦してくれて、一緒に仕事をするのが本当に楽しかったです。今回の役はこれまで彼がやったことのないような役だったので、きっと気に入ってくれるだろう、そして楽しい役にしてくれるだろうという気がしました。彼が演じたのは脇役で、途中まで登場しませんが、いざ登場した時には鮮烈な印象を与えることが非常に重要でした」
以下、フォトコールと会見での他写真です。
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Netflixオリジナル映画『キング』(原題:The King)
監督/デヴィッド・ミショッド
脚本/デヴィッド・ミショッド、ジョエル・エドガートン
出演/ティモシー・シャラメ、ジョエル・エドガートン、ロバート・パティンソン、ベン・メンデルソーン、ショーン・ハリス、トム・グリン=カーニー、リリー=ローズ・デップ、トーマシン・ハーコート・マッケンジー
2019年11月1日(金)独占配信開始
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第76回ヴェネチア国際映画祭
会期/2019年8月28日(水)〜9月7日(土)
開催地/イタリア・ヴェネチア
フェスティバル・ディレクター/アルベルト・バルベーラ
© La Biennale di Venezia – Foto ASAC.