【レポート】『アリータ:バトル・エンジェル』フッテージ映像が世界最速上映!WETAデジタルのニック・エプスタインが来日登壇
- Fan's Voice Staff
遠い未来、サイボーグの少女アリータは、ふとしたことから自分は300年前に失われたテクノロジーで創られた“最強の兵器”だということに気付いてしまう──。SF漫画の最高峰として語り継がれ、日本はもとより世界15の国と地域で出版された木城ゆきと原作による伝説の漫画「銃夢」。長年に渡り映画化を切望してきた『アバター』で知られる巨匠ジェームズ・キャメロン製作・脚本、ロバート・ロドリゲス監督による実写映画『アリータ:バトル・エンジェル』がついにスクリーンへ!
2019年2月22日(金)の日本公開に先駆け、12月10日(月)、都内で”アリータ・デイ”世界最速特別映像試写会が開催され、約30分間のフッテージ映像がIMAX 3Dにて上映されました。
イベントには、シークエンスVFXスーパーバイザーを務めたWETAデジタルのニック・エプスタインが登壇。『アバター』からの技術の進歩についてや新たなチャレンジ、制作陣とのエピソードを語りました。
フッテージ映像が始まる前には、ジェームズ・キャメロンからの動画メッセージが上映され、当初は自分が本作の監督を希望したものの、『アバター』続編の制作のため叶わなかったこと、キャラクターや物語、世界観に関する600ページのノートを付けた脚本を、監督を引き継いだロバート・ロドリゲスに託したことが語られました。
続いて上映された最新映像には、目覚めたアリータがイド博士と対面する場面、アリータが初めてアイアンシティの街に出る場面、”モーターボール”をプレイする場面、そして敵と戦う場面などが登場。アクション満点かつ、後半になるに連れてアリータの心の変化が伝わる、短いながらも濃密な映像でした。
過酷な運命に向き合うドラマティックなヒロイン、アリータは『メイズ・ランナー:最期の迷宮』のローサ・サラザールがモーション・キャプチャーによって演じています。共演は、クリストフ・ヴァルツ、ジェニファー・コネリー、マハーシャラ・アリ、ジャッキー・アール・ヘイリーら。
上映後、ニック・エプスタイン氏と、ライターの杉山すぴ豊氏(以下、すぴさん)、そして、WETAワークショップ特製のアリータフィギュアも登場。ちなみに、このフィギュアは肌はシリコン製で、目や髪もプラスチックではなく、各箇所に合った素材で作られているとのこと。
映像を観たばかりのすぴさんは「アクションの素晴らしさは確かにあるのですが、観ているうちにアリータというヒロインに恋する、好きになるっていう感じがして、ここまで彼女を愛らしくするのに公開が遅れたのでは、と思いました」と、アリータの人間らしい描写を絶賛。
本作でニックのチームは、今上映されたばかりの水中のシーンや、バーでの戦いなど、戦いのシーンを中心に、約600ショットを担当したとのこと。「ミーティングを行うのが日々の仕事で、ロバート(・ロドリゲス)、ジョン(・ランドー)をはじめとした制作陣との”デイリー”を行い、我々のアーティストが彼らのビジョンをきちんと反映できているか確認するのが主な業務」というニックは、ジェームズ・キャメロンが提示した600ページのノートは「我々にとっては彼のビジョンのバイブルのようなものでした」とコメント。「脚本、バイブル、アートワークの数々は、彼が長い年月をかけて用意したもので、彼のビジョンや方向性は、WETAが参加する前から、既にプロセスに盛り込まれていました。日々の監督業はロバートが担いましたが、ジェームズのノートは、我々が原作漫画のエッセンスを忠実に捉えてるためのものでした。例えばジェームズは、アリータの目の下の血のマークの位置が違うと言い出して、原作の正確な巻数・ページを覚えている彼は、”原作3巻の31ページを見て”といった具合に言ってくるのです」。
アリータのキャラクターについては、原作コミックに忠実なビジュアルにするよう、ジェームズ・キャメロンが指示をしたといわれています。「大変じゃなければやる価値がないと我々は言っていますが、この作品はやる価値があったと思いますよ。最も難しかったのは、アリータの人間らしさを表現することでした。WETAではこれまで、ゴラム、ネイティリ、サノス、(『猿の惑星』の)シーザーといった特徴的なキャラクターを数々手がけてきましたが、これらはみんなエイリアン的、動物的なところがあります。一方でアリータは非常に人間的なので、我々にとっては最も難しいところでした」と語るニック。その対処法の一つとして「ローサの演技は実際にキャプチャしたので、ローサの口と目をアリータのCGに当てはめてみると、非常に現実味が出て人間らしくなりました。これがターニングポイントとなりました」と明かします。
上映されたフッテージでは、アリータが涙を流すシーンが印象的でしたが、ニックによると「アリータの表情の演技はすべてローサによるものです。今作の撮影では、ローサの演技全体を、実際のセットでライブでキャプチャしました。顔を含め、全身の動きです。ですので、感情表現は、すべてキャプチャされたローズの演技によるものです。もちろん涙自体はCGで再現されましたがね。これを実現させるのに、いくつかの技術的革新があったのですが、その話はちょっと長くなるので……」。
『アバター』と比べて、技術面で一番進歩した点は「回答は長くなりますが、いくつか進歩があって、一つは今のフッテージにもあった、髪の毛のシミュレーションです。『アバター』では、髪の毛をリボン状の髪の束で再現していたので、簡略化したものになっていました。アリータでは髪の毛一本一本を再現できていて、アリータが水から上がってくるところなどは、髪の再現と水の再現を同時に行っています。簡略化なしでね。これは監督に対して言える非常にパワフルなことで、現実でも実際にこういう表現になるのですよと。もちろんそこに変化を加えたければ可能なわけで、現実的表現をそのベースにすることができるのです」
キャメロンの指示に応える形で、WETAの技術は日々進歩していっているよう。「我々の進歩は、映画制作で必要に迫られて起こっています。もちろん『アバター』は大きなブレイクスルーで、我々にとっても大きな成功となりましたが、我々が携わる映画一本一本で、進化は求められます。『アリータ』では、我々にとって初となる、2台のカメラでフェイシャルキャプチャを行いました。以前は平面的なキャプチャだったのか、今回は奥行きの情報も加わり、非常に綿密なものになりました。ですので、我々がローサの演技を正確に再現できているのか確認するのに、役立ちました。また、『アリータ』では、俳優の”パペット”を作りました。単純なアイディアと思われるかも知れませんが、『アバター』ではゾーイ・サルダナの演技がそのままネイティリになっていったわけですが、今作ではローサの影技をまずパペットに投影することで、彼女の演技をきちんと再現できているか確認することができるようになりました。そして忠実に再現できていると確認できた後に、その演技をアリータ(のCG)に反映していくのです」
当初は2018年7月公開が予定されていたところ、2018年12月、ついに2019年2月への公開が延期された本作。キャメロンがどこにこだわって公開が遅れたのか探ろうとしたすぴさんに対し、ニックは「我々サイドではそんなに大きな違いはなく、公開が延期された理由も特に把握していません。ですので、我々のスケジュールに影響があったわけではありません。一部のシークエンスは、より時間をかけて完成度を上げることができました」と明かしました。
続けて、『スター・ウォーズ』などで知られるILMをはじめとした他のVFXスタジオに比べて、WETAが最も優れていると思うところについては、「WETAはコミュニティです。WETAは世界の映画産業から離れた小さな街にあり、社交的な人も多くお互いのことを知っています。でも結局は、美術的なことも技術的なことも、より早く効率的に、どうやって問題を解決できるか、自由にアイディアを出し合う雰囲気があるところだと思います。個人の発言を奨励する社風のある会社です。そういった点が、WETAをオープンで、他社に対しても競争力の高いな場にしているのだと思います」と語り、加えて「4回のオスカー受賞歴があるジョー・レッテリが我々のリーダーで、我々の活動の全ては、彼に牽引されています。WETAのみんな彼から学び、彼のおかげで今日の我々があるといっても過言ではありません」。
『アリータ』をこれだけ良く表現できているというのは、WETAが日本のマンガやカルチャーをよくわかっているからなのではと分析するすぴさん。人気の日本のアニメや、WETAでやってみたいと声があがる作品を尋ねると、ニックは「ポケモンは非常に人気です。ポケモンGOの影響なのでしょうか。妻と『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』を観に行ったのですが、劇場の客席にはWETAの同僚が大勢いました。スタジオジブリの作品も皆好きで、特にとなりのトトロは私のお気に入りでもあります。同僚には女性は、車のナンバープレートをとなりのトトロのデザインにしている女性もいますよ。ジブリのアートワークを家に飾っている人も大勢いますよ。私はリビングルームに。ジブリはとても人気です」
WETAのテクノロジーで、ネコバスなどジブリを描くとどんな映像になるのでしょうかと興味津々のすぴさんに対し、「ぜひやってみたいですね!」と笑顔で話すニックのコメントで、イベントは幕を閉じました。
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『アリータ:バトル・エンジェル』(原題:Alita: Battle Angel)
舞台は、“支配する者”と“支配される者”の2つの世界に分断された、謎めいた遠い未来。サイバー医師のイドは、瓦礫の中から少女の人形の頭部を拾い上げる。彼女は300年前のサイボーグであり、なんと脳は生身のまま生きていた。イドは、過去の記憶を失っていた少女に新たな機械の身体を与え、アリータと名付けて成長を見守る。ある日、自分の中に並外れた戦闘能力が眠っていることに気づいたアリータは、自分が300年前に失われたテクノロジーで創られた“最強兵器”だということを知る。逃れられない運命に直面した少女は、与えられた自分の命の意味を見つけるために、二つの世界の秩序を揺るがす壮大な旅に出る──。
原作/「銃夢」木城ゆきと
脚本・製作/ジェームズ・キャメロン
監督/ロバート・ロドリゲス
出演/ローサ・サラザール、クリストフ・ヴァルツ、ジェニファー・コネリー、マハーシャラ・アリほか
日本公開/2019年2月22日(金)全国ロードショー
配給/20世紀フォックス映画
公式サイト
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