トリビア満載!『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』イースターエッグ・小ネタまとめ
- Akira Shijo
※本記事には、映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のネタバレが含まれます。
4月27日(金)に公開されたマーベル・スタジオ最新作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』。MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の第19作目であり、『アベンジャーズ』シリーズの3作目。地球最強のヒーローチーム“アベンジャーズ”をはじめ、至高の魔術師ドクター・ストレンジや親愛なる隣人スパイダーマン、単独作が世界的に大ヒットしたばかりのブラックパンサー、そして銀河を股にかけるはみ出し者チーム“ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー”らが総出演する一大クロスオーバー・イベントとして、世界中のファンが待ち望んでいました。
そんな『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を徹底分析、あちこちに隠されたさまざまなトリビアや小ネタ、これまでの経緯、そして元ネタとなった原作キャラクターなどを解説・考察・予想していきます!
移民船ステイツマン
本作の冒頭、『マイティ・ソー バトルロイヤル』(17年)のラストでアスガルドの住人たちが乗り込み、地球へと移住するために旅を続けていた移民船がサノスによって襲撃されました。アスガルドの軍隊がヘラによって壊滅状態にあった不運も重なり(あるいはそもそもアスガルドで起こった事件を見越した上での襲撃だったのか)、ソーによると、生き残っていたアスガルドの民の「半数」が殺されてしまいました。この戦いは詳細には描写されませんでしたが、彼の言葉通りであれば、民たちのもう半数は本編開始時点より前に船から脱出していた可能性があります。ステイツマン自体も真っ二つに引き裂かれてしまっていました。
本作の公開後に米・アイオワ州の高校で生徒からの質問に応じたジョー・ルッソ監督によると、アスガルド人の一部は脱出ポッドにより生きながらえ、またヴァルキリーも生き延びた、とのこと。あれだけ巨大な船でしたので、相当数の脱出艇が搭載されていたことでしょう。彼女のことですから、避難民の指揮に当たったのかもしれません。一方で、コーグの生死に関しては監督は明言を避けたとのことです。
ちなみに”ステイツマン”とは、『~バトルロイヤル』で登場したパーティー用の宇宙船コモドールと同じく、オーストラリアの自動車メーカーであるホールデン社の自動車の名前から取ったものです。
闇の四天王
”サノスの子”を自称する四人の戦士、ブラック・オーダー。コミックにおける彼らについて、ざっくり紹介していきましょう。
エボニー・モウ
本作では強力な念力を操る策士でしたが、コミックでは念力ではなく巧みな話術を武器としており、ドクター・ストレンジさえも手玉に取りました。サノスの息子セインの才能を見抜いた際には、彼の側につきサノスをも裏切った食わせ者です。
コーヴァス・グレイヴ
原子そのものを破壊できる異次元の薙刀(グレイヴ)を操る残忍で忠実な戦士。サノスに最初に選ばれたメンバーでもあり、武器が破壊されない限り不死身です。
カル・オブシディアン
サノスを凌ぐ巨体をもつ重戦士。コミックにおけるブラック・ドワーフというキャラクターを元にしています(”カル・オブシディアン”はブラック・オーダー自体の別名)。兵を率いた先遣隊としてワカンダへと攻め込みますが、成長して能力を身につけ”ブラックパンサー”の称号を受け継いだシュリ(参考:『ブラックパンサー』トリビア記事「16歳の天才少女」)とティ・チャラのダブルパンサー、王家親衛隊ドーラ・ミラージュ、そしてワカンダの精鋭部隊ホワイトウルフらの抵抗を受け撤退し、その咎でサノスに追放されました。
プロキシマ・ミッドナイト
オーダー中最強の女戦士で、コーヴァスとは元夫婦です。ワカンダに攻め込んだ際は圧倒的な戦闘力を見せつけ、その防衛網を破壊しました。
「こっちにはハルクがいる」
サノスらに追い詰められたロキのセリフ。『アベンジャーズ』(12年)の終盤、トニーが「軍隊がある」と嘯くロキに向かって言い放ったセリフのリプライズ(再現)となっています。
「お前は神にはなれない」
同じく、サノスらに追い詰められたロキのセリフ。『アベンジャーズ』にて、S.H.I.E.L.D.エージェントのフィル・コールソンがロキに殺されてしまう直前に言い遺した「お前は王にはなれない」というセリフのリプライズとも取れます。
墜落と警告
ドクター・ストレンジが住むニューヨークのサンクタム(聖地)へと墜落し、サノスの到来を警告したハルクことブルース・バナー。
このシーンは本作の原作のひとつであるコミックシリーズ「インフィニティ・ガントレット」の冒頭、宇宙を駆ける銀色の男シルバー・サーファーが同じくサンクタムへと墜落し、サノスについてストレンジに警告する場面へのオマージュだと思われます。
原作コミック
ここで、本作の主な原作となったコミックをご紹介しましょう。まずは1991年のシリーズ「インフィニティ・ガントレット」。
世界に散らばっていたインフィニティ・ジェム(MCUにおけるインフィニティ・ストーンの元になったアイテム)を六つ集めてしまったサノスが指を弾き、全宇宙の生命を半分に減らしてしまう衝撃的な展開から始まる本作。マーベル・ユニバース全体を巻き込んだ大事件としてコミック史に残る名作であり、全体的な展開だけでなく、ストーンの力を使ったサノスが自分に反抗する者たちをバラバラに分解してしまう場面など、さまざまな面で本作に影響を与えています。
なお、この「インフィニティ・ガントレット」の一番のメインキャラクターとしてサノスに対抗した超人アダム・ウォーロックは本作には不在(MCUにおけるアダムは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(17年)のおまけシーンで名前のみ登場)であるほか、サノスが狂気的な計画を抱いた動機のひとつである”死”の具現化、女神デスなども登場していません。映画という媒体であるだけに、あくまでサノス自身のドラマを強調して描いたということでしょうか。
さらに、2013年の「インフィニティ」。
アベンジャーズが宇宙で起こった戦いへ赴き、サノスは警備が手薄となった地球、そして当時地球の上空に浮かんでいたインヒューマンズの都アティランへと攻め込みます。本作に登場したブラック・オーダーや四本腕の戦闘種族アウトライダーズが登場するほか、ワカンダでの大きな戦闘が勃発するなど、ストーリー上ではあまり関連はないものの、先述の”インフィニティ・ガントレット”から映画への翻案に当たり、随所に影響が見られます。
また、サノスという男についてより深く知りたい方には「サノス:ライジング」もあわせてオススメです。
本作との直接の関連は薄いものの、本作の”裏の主人公”ともいえるサノスの生い立ちから、なぜこれほどまでに危険な思想を抱くことになったのかが克明に描かれており、本作に引き続きサノスが登場するであろう「アベンジャーズ」第4作目の予習にもなるかもしれません。
夢を見たんだ
モーガンという名前の赤ん坊をもった夢を見た、とペッパーに告げるトニー。今後これが正夢になるかどうかは不明ですが、コミックにおいては同じく”モーガン・スターク”という名をもつ人物が存在します。
このモーガンはトニーの従兄弟にあたり、彼に嫉妬して幾度となくその富や会社を狙っている人物です。殺人ロボット・ウルティモに取り込まれてしまったことも(その後ウォーマシンに救われました)。
クモの第六感
UFOの襲来を察知し、鳥肌を立たせるスパイダーマンことピーター・パーカー。壁登りやウェブ(糸)の発射と並ぶスパイダーマンの代表的な能力のひとつ、危機察知能力スパイダー・センスがMCUで初めて具体的に映像化されました。
今回のスタン・リーは
マーベルの生ける伝説、おなじみスタン・リー。マーベル・コミックス原作の映画作品にはほぼ毎回カメオ出演しています。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』で登場した際、多元宇宙の監視者ウォッチャーの使者である可能性が(ギャグとして)示唆されていたスタン。今回はピーターと相棒ネッドが乗っていたバスの運転手として登場し、またもや大事件のはじまりに立ち会いました。宇宙船の襲来に騒ぐ生徒たちとは対照的に、彼にとっては宇宙船くらい見慣れたものだったのでしょう。
ナノ粒子のスーツ
MCUシリーズの歩みと共に進化を続けてきたアイアンマン・スーツ。今回登場した最新モデル”マーク50”はなんとナノマシンによって構成されており、逆三角形の新型リアクターの周りにあるパーツに格納されていると語られました。
前作『ブラックパンサー』においてシュリが開発したブラックパンサーのスーツもネックレス内部に格納されたナノマシンによって構成されており、同作の終盤でワカンダが国交を開いたことから、このマーク50にはワカンダ由来の技術が使われているのではないか?とも予想できます。
が、本作では特に言及されませんでした。『ブラックパンサー』にて「いずれ他国の技術も我々に追いつく」と語られていたように、トニーが自身の手でパンサーのスーツと同じ構造に辿り着いた、とも十分考えられるでしょう。
また、このマーク50のデザインや機能はコミックにおける”ブリーディングエッジ・アーマー”が元になっていると思われます。
トニーの体内に仕込まれたナノマシンによって形成されるスーツは傷付いても瞬時に修復され、彼の想像した通りの武器や装備を自由自在に作り出すことすら可能です。本作においても、地面に踏ん張るための鉤やサノスがガントレットを閉じるのを防ぐためのストッパーなどを生成していましたね。このブリーディングエッジ・アーマーは日本でもオリジナルの解釈を加えたフィギュアが発売され、人気を博しました。
サポートAI・フライデーとの接続も途切れている中、ハルクすら圧倒するサノスをあそこまで苦戦させたのも、このスーツとトニーの積み上げてきた戦闘経験によるものだったのでしょう。
スケイルアーマー
スーツといえば、キャプテン・アメリカの衣装の変化も見逃せません。
当局からの逃亡を続けながらも世界中のテロリストなどと戦いを続けていた(参考:『ブラックパンサー』トリビア記事の「キャプテンはどこへ?」)キャプテンことスティーブ・ロジャース。コスチュームは薄暗く変色し、ところどころに破れも見えます。破れている箇所をよく見てみると、なんとスーツの下地には鱗のような構造が。これはコミックにおけるキャプテン・アメリカのコスチュームの代表的な特徴のひとつであるスケイル(鱗)アーマーを元にしていると思われます。
似てる?似てない?
トニーがニューヨークに現れたエボニー・モウを例えて言った名前、”Squidward”。これはアメリカの人気アニメ「スポンジ・ボブ」に登場するボブの毒舌なおとなりさんの名前。日本では”イカルド”と訳されています。本作の吹替え版では”イカ野郎”でした。
動物の風船
トニーがストレンジの魔術をバカにして言った「動物の風船を作るとか?」、エボニー・モウが言った「子供たちに人気だろうな」という下り。当然ながらMCUの正史には組み込まれていませんが、『ドクター・ストレンジ』(16年)公開時、ジミー・キンメルによる人気トーク番組”Jimmy Kimmel Live”にストレンジがゲスト出演した際、彼はパーティーで暴れ回る子供たちに風船で動物を作らせられていました。
Zuneより一曲
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーといえば、ノリノリの70年代ポップチューン。本作における彼らの登場シーンで流れていた曲はザ・スピナーズで「The Rubberband Man」でした。『ガーディアンズ~』シリーズのジェームズ・ガンが本作の監督であるルッソ兄弟に提案した3曲のうちの一つで、『〜リミックス』終盤に登場した、ヨンドゥがクイルのために手に入れていた音楽プレイヤー・Zuneに入っている曲であると、ガン監督は自身のツイッターで明かしています。
グルートのゲーム
少年に成長したグルートが始終遊んでいたのはアーケードゲーム「ディフェンダー」の電子ゲーム版。世界初のスクロール型シューティングゲームとして知られています。クイルが宇宙のガラクタ市で手に入れたものでしょうか?
義理の父
サノスがガモーラの父だと知ったソーに、義理の父だ」と弁解するクイル。これは『アベンジャーズ』にてソーがロキを「義理の弟だ」と言い、『〜バトルロイヤル』にてロキがソーを「義理の兄だ」と言ったことのリプライズだと思われます。
ケビン・ベーコン
ソーがアベンジャーズについて紹介する際、マンティスが口にした名前。ケビン・ベーコンはクイルの大好きな映画『フットルース』(84年)などに主演した俳優で、『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』(14年)から幾度となくその名前が登場しています。同作でガモーラをダンスに誘おうとした時と同じように、マンティスにも彼のことを教えていたのでしょうか?
ヴィジョンとワンダ
『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(15年)にて、崩壊するソコヴィアからヴィジョンがワンダを救い出して以降、なんだか時々いい感じになっていた二人。今回は彼らがスコットランドに駆け落ちしていたことが判明し、驚いた方も多いのではないでしょうか。
コミックにおける彼らもかつて恋に落ち、結婚していたことがあります。やがて二人は双子を授かりました。
しかし人造人間であるヴィジョンとの間に子供ができるはずもなく、彼らはワンダがその魔力で創り出した存在であったことが判明し、消滅してしまいます。悲しみに暮れたワンダはその記憶を封じ込めました。
ちなみにその後、彼らの子供たちの魂は無事に生まれ変わり、それぞれスーパーヒーロー”ウィッカン”、”スピード”として活躍しています。
「そっちがどけ」
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』にて、かつてスティーブと惹かれあっていたペギー・カーターが遺した言葉「たとえ世界中があなたにどけと言っても…」。元はコミックにおけるキャプテン・アメリカのセリフですが、まさにスティーブの生き方を象徴している言葉だと言えるでしょう。本作においても、緊急時においてなおアベンジャーズの活動を縛ろうと立ちはだかるロス国務長官に対し、一歩も譲らない姿勢を見せていました。
ホワイトウルフ
キャプテン・アメリカの相棒として活躍した後、洗脳を施されヒドラ最強の暗殺者”ウィンター・ソルジャー”に仕立て上げられていたバッキー・バーンズ。彼は本作において、ティ・チャラから”ホワイトウルフ”という名で呼ばれていました。
前作『ブラックパンサー』のトリビア解説記事でもご紹介した通り、原作におけるホワイトウルフとバッキーは全く違うキャラクターではあるものの、呪われた呼び名である”ウィンター・ソルジャー”を捨て去った彼の新しい名前として相応しいと考えられたのかもしれませんね。
……が、本作のエンドロールにクレジットされていた名前は”Winter Soldier”でした。アリャリャ。
アイアン・スパイダー
『スパイダーマン:ホームカミング』(17年)の終盤で登場し、本作でようやくその活躍がお披露目となったアイアン・スパイダースーツ(参考:『〜ホームカミング』トリビア記事「アイアン・スパイダー」)。コミックでは背中から伸びる3本のアームを操っていましたが、本作で登場したもののアームは4本。これで手足と合わせて8本となり、まさに”スパイダー”の名に相応しい姿になりますね。
ちなみに、晴れてアベンジャーズとなったピーターの肩にトニーが手刀をかざしていましたが、これは騎士の叙任式で主君が騎士の肩に軽く剣を当てる儀礼を模したものだと思われます。
時系列問題ふたたび
「6年前からサノスを忘れたことはない」と語るトニー、「リアリティ・ストーンをこの数年コレクターに預けていた」と語るソー、そして2年間アベンジャーズから離れていたというヴィジョンとワンダ。MCUにおける正確な時系列がどうなっているのかはまだ不明のままですが、『アベンジャーズ』〜『スパイダーマン:ホームカミング』の期間が『〜ホームカミング』劇中のテロップ通り8年であるとすると、本作が『〜ホームカミング』の後の出来事であることからトニーの「6年前」は『アベンジャーズ』におけるニューヨークへのチタウリ襲来より後の出来事を指していると思われます。『アイアンマン3』(13年)でそれまで開発していたアーマーの多くを廃棄したことでしょうか?あるいは『〜エイジ・オブ・ウルトロン』にてワンダに見せられたアベンジャーズ全滅の悪夢?
考えたくはないですが、もしこれが2012年に公開された『アベンジャーズ』のチタウリ襲来を指しており、「実は”8年前”は間違いでした!」なんてことがあれば、「8年前」のテロップに衝撃を受け毎日のように考察を重ねてきたファンたちには大変なショックでしょう。そんなことはないと思いたいところなので、正確な時系列が発表されることを期待したいものです……。
エイリアン
エボニー・モウを宇宙に放逐するという奇策を考えついたピーター。この策の元となったのは、『エイリアン』(79年)の終盤、エイリアンことゼノモーフを殺すため、主人公リプリーがエアロックを開いて宇宙船の外に追い出すシーンと思われます。
グリマス
クイルはサノスを”グリマス”(吹替え版では”ずんぐりむっくり”)と呼んでいましたが……
……見たことのある人も多いのではないでしょうか。世界的なハンバーガーチェーンであるマクドナルドのキャラクターである”グリマス”は紫色の巨体を持つ男の子で、マックシェイクが大好きです。ちなみに筆者も好き。
ニダベリアとエイトリ
”9つの世界”、すなわちアスガルドの定義する遠く離れた9つの惑星のひとつであるニダベリア。鍛冶に長けたドワーフたちの工房として知られるこの惑星はこれまで映像化されていませんでしたが(MCUと同一の世界観で描かれたコミックには登場済)、とうとう本作にて登場。
ドワーフの王で優れた鍛冶職人でもあるエイトリを演じたのはピーター・ディンクレイジ。小人症の俳優として知られ、『X-MEN:フューチャー&パスト』(14年)のトラスク博士や『ピクセル』(15年)のエディ・プラントなどを演じ、一度見たら忘れられないインパクトをもつ演技派です。本作ではなんとCG合成で2メートルを超える体躯に巨大化し、ファンに衝撃を与えました。
ストームブレイカー
ソーがムジョルニアに代わる新たな武器として手に入れた大斧”ストームブレイカー”。コミックではもともと、ベータレイ・ビルという馬のような外見と高潔なる魂をもつサイボーグ宇宙人の武器でした。
MCUでは『~バトルロイヤル』で描かれた惑星サカールの塔にて、彼のものと思われる顔の像のみが登場(参考:『~バトルロイヤル』トリビア記事「かつての戦士たち」)。ちなみに、同じくコミックにおけるソーはムジョルニアを手にする以前に斧を武器として使っており、ムジョルニアを失った際には再び斧を手に戦っていました。
レッド・スカル
惑星ヴォーミアを訪れたサノスとガモーラの前に現れた、ローブ姿の男。彼こそは”レッド・スカル”ことヨハン・シュミット、第二次世界大戦時に悪の秘密結社”ヒドラ”の総統としてキャプテン・アメリカと戦い、彼に敗れた男です。
スペース・ストーンが封じ込められていたテッセラクト(四次元キューブ)を兵器化しようと企んでいた彼でしたが、その力の暴走により跡形もなく消滅。しかし死んでしまったようにも見えず、彼はどこか別の惑星に飛ばされてしまったのでは?という説がささやかれてきました。
そして今回、まさかの場面で再登場。”かつてインフィニティ・ストーンを追っていた者”としてサノスに助言を与える彼に往年の邪悪さはほぼ見えず、まるで悟りを開いた仙人のように変貌していました。ちなみに、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(11年)でレッド・スカルを演じたのはオーストラリア人俳優のヒューゴ・ウィービングでしたが、今回演じたのはアメリカ人俳優のロス・マーカンド。人気ドラマ『ウォーキング・デッド』のアーロン役で知られる彼はモノマネを得意としており、本作でもその才能を遺憾なく発揮していました。
そういえば、六つのインフィニティ・ストーンそれぞれに関連したアイテムの頭文字を集めると”THANOS”すなわちサノスの名前になる、という俗説がありました。これまで登場したものは……
Tesseract(テッセラクト、スペース)
H……(ソウル)
Aether(エーテル、リアリティ)
Necklace(ネックレス、タイム ちょっと無理やり?)
Orb(オーブ、パワー)
Scepter(セプター、マインド)
となり、説どおりにいくと六つ目のソウル・ストーンは”H”に当たります。
…………Hydra(ヒドラ)……?
ソウル・ストーン
気を取り直して、最後のストーンとなった”ソウル・ストーン”についてまとめていきましょう。MCUでは最後に現れたストーンとなりましたが、コミックにおけるソウル・ジェムは最初に登場したもの。というより、もともと”ソウル・ジェム”として登場し、後から「六つのインフィニティ・ジェムのひとつ」という設定になったアイテムです。
そんな経緯をもっていることもあり、物語上重要な役割を果たすことも。中でも他のジェムにはない特性として「内部に世界がある」ということが挙げられます。
”ソウル・ワールド”と呼ばれるこの世界は外界とは別の次元に存在しており、先述した超人アダム・ウォーロックをはじめ、かつてサノスに殺されてしまったガモーラの魂が滞在していたことも。
本作終盤でサノスが幻視したオレンジ色の世界はもしかすると、MCUにおけるソウル・ワールドなのでは?だとするとガモーラはまだソウルストーンの中で生きているのでは?
コミックにおいてキャラクターが死から復活することはほぼ当たり前に近い現象ですが、こと映画となるとそうもいきません。ガモーラの死という絶望的な展開を前に、コミックを知るファンたちはなんとか希望を見出そうとしていました。
そんな中、先述のアイオワ州の高校における質疑応答にてジョー・ルッソ監督は「ガモーラはソウル・ストーンの中にいる」と明言。
同シーンにおけるサノスが「全てを犠牲にした」と語るとおり、彼は目的達成のため、唯一愛した存在であるガモーラをも失ってしまいました。ルッソ監督はこのシーンを通じ、サノスにもリアルな感情があることを観客に念押ししたかったと語っています。
魔女の力の源は
ヴィジョンによって「インフィニティ・ストーンは同質のエネルギーによって破壊できる」と説明され、実際スカーレット・ウィッチことワンダの能力によってマインド・ストーンが破壊されていました。ワンダと彼の弟ピエトロ(クイックシルバー)は、コミックではミュータントの”磁界王”マグニートーの子供たちですが、MCUにおける彼らはヒドラの実験によって能力を得た改造人間という設定です。
彼らの能力の元になったと思われるのが、『アベンジャーズ』におけるニューヨークの戦いの後S.H.I.E.L.D.に回収され、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(14年)におけるヒドラの蜂起で彼らの手に渡ったロキの杖”セプター”の内部に封じ込められていたマインド・ストーン。
インフィニティ・ストーンから得た能力、それも同じマインド・ストーンから得た能力だったからこそ破壊が可能だった、ということでしょう。
イバンべ!
ワカンダ国境を防衛するため集まった面々を鼓舞するため、ティ・チャラらが叫んでいた言葉 ”Yibambe!”。
この掛け声はワカンダの公用語であるコサ語(『ブラックパンサー』では先王ティ・チャカやオコエ、族長らも使用)の言葉。英語に直訳すると”Hold”、“Hold fast”となるそうで、しっかり「持ちこたえろ!」という意味になります。専守防衛に努めてきたワカンダにとっても史上最大の戦い、その最前線にふさわしい掛け声と言えるでしょう。
義手を盗もう
共闘するバッキーの義手を見て軽口を叩くロケット。彼は『ガーディアンズ~』ではクイルに意味もなく義足を盗ませ、『~リミックス』ではグルートが義眼を盗んできたことを面白がっていました。趣味なのかもしれません。
サイトラックのクリムゾン・バンド
ストレンジがサノスを動けないよう縛り上げる際、コミックにおける彼の魔術”サイトラックのクリムゾン・バンド”のように見える赤い紐状のエネルギーを使用していました。
ちなみに、MCUにおいてはすでに同名のアイテムが登場済み。『ドクター・ストレンジ』にて、サンクタムを襲撃したカエシリウスを拘束するために使っていた道具がそうです。
平和な世界
インフィニティ・ストーンを揃えてしまったサノスのフィンガースナップ(指パッチン)によって、全宇宙の生命体の半数が消滅。ガントレットは彼の左腕ごと黒焦げとなり、ヒーローたちもそのほとんどが消えてしまいました。
使命をやり遂げたサノスは、どこかの惑星で太陽を眺めながら静かに腰を据えていました。コミックにおける「インフィニティ・ガントレット」の終盤では、ヒーローたちに敗北しガントレットを失った彼は辺境の惑星に居を構え、農業を始めます。
本作における彼の様子もこの展開へのオマージュであると思われます。遠くには鎧と兜を着せたカカシも立っていました。
クラインに連絡を
市民たちが突然消滅しはじめ、緊急事態を察知したS.H.I.E.L.D.元長官のニック・フューリー。「クラインに連絡を!」と叫んでいましたが、このクラインとはおそらく、かつてS.H.I.E.L.D.でオペレーターを務め、ヒドラ蜂起の際には”キャプテンの命令”を守り、ウルトロンがソコヴィアを襲撃した際にもヘリキャリアで避難民の誘導を行っていたキャメロン・クラインのことではないかと思われます。
マザー××××
消えていくフューリーが言い残した言葉。彼を演じるサミュエル・L・ジャクソンの代名詞ともいえるこのセリフですが、過激な内容であるためか言い終える前に消滅してしまいました。なにかの大いなる力が働いたのかもしれません。ちなみに、同じくサミュエルが出演した『キングコング 髑髏島の巨神』(17年)でも、彼は同じセリフを言い切る前に吹き飛びました。
キャプテン・マーベル
フューリーが本当の緊急事態に備えて温存していたと思われる謎の小型機械。まるで90年代を代表する通信機器・ポケベルを改造したように見えるこの機械がどこかへの通信を終えると、その画面にはその画面にはあの”キャプテン・マーベル”のエンブレムが浮かび上がりました。
飛行能力や怪力、そしてエネルギー操作能力をもつ、マーベルのキャラクターでも一二を争う最強のスーパーヒロイン、キャプテン・マーベルことキャロル・ダンバース。彼女を主人公としたMCUシリーズの映画『キャプテン・マーベル(原題)』は、全米では2019年3月8日に公開予定です。90年代を舞台にすると発表されている同作にて、このアイテムが再登場するのでしょうか?また彼女は”クリー”(『ガーディアンズ~』に登場したロナンなど)や”スクラル”などの宇宙人種族とも関わりの深いキャラクターであり、その知識や経験をサノスとの戦いに活かしてくれるかもしれません。
1400万分の1の希望
アベンジャーズは敗北し、サノスが勝利。ガントレットも失われ、残ったものはもはや絶望しかない……本当にそうでしょうか?
まず引っかかるのは、惑星タイタンでの戦いの直前にストレンジが言い残した言葉。タイム・ストーンの力であらゆる未来の可能性を見通した彼は「勝利の可能性は1400万605通りのうち1通り」と語りました。1通り、すなわち”ゼロではない”のです。
当初はタイムストーンを守るためならトニーやピーターの命もいとわないと話していたストレンジ。にも関わらず、トニーがサノスに殺されそうになった際、ストレンジは彼を救うためタイム・ストーンを引き渡しました。「こうするしかなかった」と言っていましたが、あの行動は果たして”敗北”と言えるのでしょうか?あるいは、”タイム・ストーンを一旦サノスの手に渡すこと、トニー・スタークを生存させること”が最終的な勝利への道だったのかもしれません。
そのストレンジもサノスによって消滅し、タイタンにはトニーとネビュラだけが残されました。一見すると絶望的な状況ですが、人類最高の頭脳の持ち主とサノスのことを知り尽くした全身兵器の改造人間が、かつて非常に発達した文明をもっていたサノスの故郷にいるのです。反抗の糸口を見つける可能性は十分にあると言えるでしょう。また、あらゆる種族を半分だけ殺すことに執着していたサノスが、唯一ニダベリアに住むドワーフの一族だけは”皆殺し”にしていたことも不可解です。何かサノスの計画の妨げになる可能性があったのでしょうか?
本作において、サノスがストーンをコントロールするための道具”インフィニティ・ガントレット”もまたニダベリアで造られていたことが判明し、試作品と思われるガントレットも登場しました。先述の通り「ストーンのエネルギーがストーンを破壊できる」ことを鑑みると、もしかするともう一度ガントレットにストーンをはめ込みその能力を行使すれば、ガントレットによってなされた惨劇をも打ち消すことができるのではないでしょうか。そう仮定すると、「もう一つのガントレット」を造れないようドワーフたちを皆殺しにしたのもうなずけます。ソーによってニダベリアの心臓が再生され、エイトリも職人としてふたたび立ち上がった今、サノスに対抗する新たなガントレットを打ち直すこともできるかもしれません。
さらに先ほど述べたように、ガモーラがソウル・ストーンの中で生きている可能性も残っています。かつてマインド・ストーンの中に秘められていた精神からウルトロンやヴィジョンが生み出されたように、諦めさえしなければ、ガモーラの魂もまた復元することができるかもしれません。
また、本作に登場しなかったホークアイやアントマン、地球にいるであろうインヒューマンズやディフェンダーズ、そしてまだ見ぬヒーローたちの存在も無視できません。中でもアントマンはMCUシリーズ最新となる次回作『アントマン&ワスプ』(2018年8月31日日本公開)の公開を控えているうえ、同作では前作『アントマン』(15年)や『ドクター・ストレンジ』でもその存在を示唆されていた極小の異次元空間”量子世界”ともついに本格的な関わりが生まれることが、先日公開されたUS版予告編にて示唆されています。その知識がサノスへの反逆の鍵になるのかも?
ここで、今回登場したキャラクターたちの中でストーンによって消滅してしまったメンバー、そして消滅を免れたメンバーをおさらいしておきましょう。
消滅
ウィンター・ソルジャー/バッキー・バーンズ
ファルコン/サム・ウィルソン
スカーレット・ウィッチ/ワンダ・マキシモフ
スパイダーマン/ピーター・パーカー
ブラックパンサー/ティ・チャラ
ドクター・ストレンジ/スティーブン・ストレンジ
スター・ロード/ピーター・クイル
ドラックス
グルート
マンティス
ニック・フューリー
マリア・ヒル
生存
アイアンマン/トニー・スターク
キャプテン・アメリカ/スティーブ・ロジャース
ソー
ハルク/ブルース・バナー
ブラック・ウィドウ/ナターシャ・ロマノフ
ウォーマシン/ジェームズ・ローズ
ロケット
ネビュラ
オコエ
エムバク
不明
ペッパー・ポッツ
ホークアイ/クリント・バートン
アントマン/スコット・ラング
シュリ
ウォン
ネッド
ほか
スティーブの心の支えであったバッキーや、トニーを慕っていたピーターがそれぞれの目の前で消滅、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーはほぼ壊滅状態となるなど、非常にショッキングな結果となりましたが、ここで注目していただきたいのはこの”洗礼”を生き延びた面々。今回の戦いに参加しなかったホークアイことクリント・バートンを除き、ニューヨークの戦いを生き延びた初代”アベンジャーズ”の全員の生存が確認されており、彼らが再び団結することこそが、サノスへの逆襲の第一歩となると言えるでしょう。
さらに、2019年公開予定の「アベンジャーズ」第4作目に先立って公開される『キャプテン・マーベル(原題)』には、若き日のニック・フューリーらと並んであのフィル・コールソンが登場する予定とのこと。『アベンジャーズ』で死亡したのち秘密裏に復活を遂げて以降、徹底的に影からアベンジャーズを支え、世界を混乱から守り続けてきた彼ですが、このタイミングで映画に再登場ということは「アベンジャーズ」第4作目への登場の可能性も無きにしもあらず、といったところでしょうか。MCUの集大成となるであろう同作で、そしてなんと言っても全宇宙規模の危機に、ヒーローたちと肩を並べて反撃(Avenge)してくれる姿を期待したいですね!
ここに挙げた以外にも、本作には原作コミックを踏襲したシチュエーションや設定、今後に繋がるかもしれない隠し要素がまだまだ盛り込まれていること、また私見による予想や未確定な要素が多分に含まれていることをご了承ください。
この記事を読んだ後は、ぜひもう一度本作を観に行ってみてください!字幕版で、吹替版で、あるいはIMAX版で!きっと観るたびに、新たな魅力を発見できることでしょう。
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『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(原題:Avengers: Infinity War)
6つすべてを手に入れると全宇宙を滅ぼす無限大の力を得るインフィニティ・ストーン。その究極の力を秘めた石を狙う”最凶”にして最悪の敵<ラスボス>サノスを倒すため、アイアンマン、キャプテン・アメリカ、スパイダーマンら最強ヒーローチーム”アベンジャーズ”が集結。人類の命運をかけた壮絶なバトルの幕が開ける。果たして、彼らは人類を救えるのか?今、アベンジャーズ全滅へのカウントダウンが始まる!
監督/アンソニー・ルッソ&ジョー・ルッソ
製作/ケヴィン・ファイギ
出演/ロバート・ダウニー・Jr.、クリス・エヴァンス、ベネディクト・カンバーバッチ、トム・ホランド
全米公開/2018年4月27日
配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン
日本公開/2018年4月27日(金) 全国公開
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