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2016.12.18 23:11

【東京コミコン 2016】『スター・ウォーズ』プロダクションデザイナー、アラン・ロデリック=ジョーンズ独占インタビュー!

  • Takashi Fujii

12月3日(土)、千葉県・幕張メッセにて開催された東京コミコンのメインステージにて、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』でアシスタント・プロダクションデザイナーを務めたアラン・ロデリック=ジョーンズさんのFandom<ファンダム>によるトークセッションが開催。『スター・ウォーズ』1作目の制作スタッフによる貴重なお話を聞くため、多くのファンでにぎわいました。

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トークセッションは30分という時間の制約もあったので、まだまだお話を聞きたかった!という方も多かったかと思います。

そこで、アラン・ロデリック=ジョーンズさんにさらに貴重なお時間を頂き、独占インタビューをさせて頂きました!『スター・ウォーズ』を中心に、様々なお話を伺えましたよ!

──『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(以下、『スター・ウォーズ』)のコンセプトデザイナーである、ラルフ・マクウォーリーさんとの仕事の思い出についてお聞かせください。彼のコンセプトアートを具現化する際に、どのような形の工夫をされたのでしょうか。また、制作する上ではラルフ・マクウォーリーさんとはどのようにコミュニケーションしながら作業をされたのでしょうか。
(ラルフ・マクウォーリーとは)1回しか会っていないよ。ほとんど何も議論はしていないんだ。本当に変わった映画で、それぞれのスタッフがそれぞれの仕事だけをしていた。それまで様々な映画の制作で働いてきたが、“存在への哲学”というものを考えたことがないままだった。が、『スター・ウォーズ』に出会った時には、みんなから以前に比べて変わったと言われるようになった。若くてチャラチャラしている自分ではなくなったんだ。だから、その時は自分の仕事からある程度精神的に距離を置くことが出来ていた。本当に自分の仕事だけにフォーカスしているというか、他のことには目もくれないというような状態でやっていた。

1974年に、サンフランシスコで出会った女性が同じような哲学を持っている人で、私が今度映画の仕事でロンドンに行くというのを聞いて、「私は結婚したので会いに来てよ」と言われた。そこで、私は妻と子ども2人と一緒にロンドンに行って、彼女の家のドアを開けたら、彼女はビートルズのジョージ・ハリソンと結婚していたんだ!だから『スター・ウォーズ』の製作中は、ずっとジョージ・ハリソンと住んでいたんだよ!映画の現場から帰って来たら、ちょうどジョージ・ハリソンが起きたばかりで、スタジオ入りに立ち会ったこともあった。『スター・ウォーズ』に関係ない話ですまないね(笑)。

──なんと、それはすごいですね!『スター・ウォーズ』を制作している時、大ヒットする作品になる予感はありましたか。
誰も思っていなかったよ。ひどい映画になるんじゃないかと思っていた。前日に撮影された映像の仕上がりを見て、みんな「なんだよこの映画」という感じでただのSF映画どころかひどい映画だ、という話になっていたんだ。ラッシュを観たフランシス・フォード・コッポラやスティーブン・スピルバーグも、「これ、どうするんだ」というようなことをルーカスに対して言っていた。みんな若かったからね。

みんながその映像を見ても全然よくわからなかった理由は、当時は視覚効果が後付けで、完成図がその時にまったく見えていなかったためだ。その感覚がなかったから、みんな「どうすんの?」という感じだった。ミレニアム・ファルコンのアートが送られて来たのは、まだラルフ・マクウォーリーのコンセプトアートを見ていない状態の時だった。そのミレニアム・ファルコンのアートは、コクピットの部分にコーヒーカップがそのままくっつけられていた状態だったんだ。形が面白いからこれをベースに何か作ってみようかという話になって、その後にラルフ・マクウォーリーのイラストを見て、彼はいろんなコクピットの形を想像して描いていたがその中に似たようなものがあったので、これにしようということになった。ルーカスは、1940年代の実際の戦闘機の映像をジョン・ダイクストラに渡して、この動きを再現するように言ったんだ。

ちなみに、そのジョン・ダイクストラと私が初めて会ったのは、1978年。映画制作の仕事は子どもたちと会えなくなってしまうから、アメリカへ引っ越してCM制作の仕事を始めたときだけどね。

──雑誌「スター・ウォーズ インサイダー」のインタビュー記事には、プロダクションデザイナーのジョン・バリーさんがカンティーナにジュークボックスが必要ではないかと話したことがきっかけで、アランさんがそれをデザインしモデリングされたとありました。そのジュークボックスとは、このドロイド探知機のことでしょうか?

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出典:Wookieepedia

これのことだ。私がデザインしたよ。この壁をわざわざ作り、中に入れる場所を作ってこれを置ける場所を用意した。そして、甲虫のようなロゴを作って貼り付けた。私の作品だ。これはその場で絵を描いて、すぐにOKをもらって作ったんだ。

──日本の『スター・ウォーズ』ファンにメッセージがありましたらお願いします。
ジョージ・ルーカスが一番言いたかったこと、みなさんに伝えたかったことはフォースの存在だと思う。私は、13歳のとき、フォースが覚醒するような体験をさせてもらった。あるお父さんは、自身の死期が近づいていることを知ったとき、8歳になる息子に色々なことを教えた。

そしてお父さんが亡くなった後に、幼いながら息子は、その死を悼む人々の前で「なぜみなさんは泣いているんですか。完璧な師というのは、絶対にいなくなることはありません。何度でも現れるし、そしてその人が生きている間に、その人の持つ知識を身に付けることが出来れば、その師の意思は貫かれます」といったんだ。

一緒に働き始めた時に、ジョージ・ルーカスにこの話をして、「本物のジェダイマスターを見たことがある」と話したのを覚えているよ。

今日、ひとつでもみなさんに伝えたいことがあるとすれば、フォースというあらゆるものの存在だ。自分自身がフォースの一部であり、そしてフォースそのものだ。自分というものを捨てるように、そのフォースと入れ換わるような感じにすると、呼吸ひとつにしても、一番最初から最後の呼吸に至るまでフォースがそれを導く。それが、ジョージ・ルーカスが最も伝えたかったことだったのだと思う。

「伝説のはじまり」に携わったスタッフの、生の声を聞いたひととき

このフォースについての思いを語るアラン・ロデリック=ジョーンズさんは、じっと私の目を見つめながら、ひとことひとことを大切にされるようにお話をされており、背筋が引き締まりました。まさに『スター・ウォーズ』で語られているような、時を超え、世代を超えて伝えられていく意思や知識といったものを感じられた時間でした。

また、『スター・ウォーズ』制作中はザ・ビートルズのジョージ・ハリソンの家で同居していたという、意外なエピソードにも驚きましたね!1970年代のロンドンは、いくつもの「レジェンド」が交差する街だったのでしょうね。

カンティーナのドロイド探知機の制作話といった、あのエルストリースタジオにいた方だからこそ知るマニアックなエピソードも伺え、『スター・ウォーズ』1作目のスタッフが目の前にいる!ということを実感。

このほかに伺ったアラン・ロデリック=ジョーンズさんのインタビューは、「スター・ウォーズ ウェブログ」にて掲載されておりますので、さらにアランさんのお話を読みたい方はこちらもご覧頂ければ幸いです。