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2020.07.31 7:00

第45回トロント国際映画祭のラインナップが発表!西川美和監督『すばらしき世界』ワールドプレミア決定

  • Atsuko Tatsuta

第45回トロント国際映画祭(TIFF)で上映される長編映画のラインアップが、現地時間7月30日(木)に発表されました。

今年はコロナ禍により各国の映画祭が中止あるいは規模縮小を余儀なくされている中、トロント国際映画祭では長編映画50本、短編映画プログラム5本と、例年の4分の1程度に絞られ、オンラインとリアルイベントのハイブリッドで現地時間9月10日(木)〜19日(土)に開催されます。

クロエ・ジャオ監督『Nomadland』© 2020 20th Century Studios All Rights Reserved

コーネル・ムンドルッツォ監督『Pieces of a Woman』Photo: Courtesy of TIFF

直前に開催されるベネチア国際映画祭でプレミアされる作品からは、フランシス・マクドーマンド主演のロードムービー『Nomadland』(クロエ・ジャオ監督)、フレデリック・ワイズマン監督によるボストン市庁舎のドキュメンタリー『City Hall』、ワン・ジン監督『The Best is Yet to Come』、コーネル・ムンドルッツォ監督『Pieces of a Woman』、ヤスミラ・ジュバニッチ監督『Quo Vadis, Aïda?』の上映が決定。

ヴィゴ・モーテンセン監督『Falling』Photo: Courtesy of TIFF

本年度のリアルイベントとしての開催がキャンセルされたカンヌ映画祭のオフィシャル・セレクション「Cannes 2020」選出作品では、ヴィゴ・モーテンセン監督の『Falling』(サンダンス映画祭で1月にプレミア上映済み)、フランソワ・オゾン監督の『Summer of 85』、ベン・シャーロック監督の亡命者コメディ『Limbo』、マッツ・ミケルセン主演『Another Round(Druk)』(トマス・ヴィンターベア監督)、ケイト・ウィンスレット&シアーシャ・ローナン主演『Ammonite』(フランシス・リー監督)、スザンヌ・リンドンの監督デビュー作『Spring Blossom』などが上映予定です。

フランソワ・オゾン監督『Summer of 85』Photo: Courtesy of TIFF

フランシス・リー監督『Ammonite』Photo: Courtesy of TIFF

選出された長編50作品中23本(46%)が女性監督もしくは女性の共同監督によるもので、クロエ・グレース・モレッツ主演のアクションホラー『Shadow in the Cloud』(ロザンヌ・リアン監督)、ハル・ベリーの監督デビュー作『Bruised』、『ビール・ストリートの恋人たち』でアカデミー賞助演女優賞を受賞したレジーナ・キングの監督デビュー作『One Night in Miami』などが含まれます。

ロザンヌ・リアン監督『Shadow in the Cloud』Photo: Courtesy of TIFF

ハル・ベリー監督『Bruised』Photo: Courtesy of TIFF

日本からも、西川美和監督の最新作『すばらしき世界』がワールドプレミアとして上映されることが決定。同監督のトロント出品は本作で3作品連続。本記事末尾では西川監督と主演・役所広司から到着したコメントを掲載しています。また「Cannes 2020」に選出された河瀬直美監督の『朝が来る』も上映されます。

西川美和監督『すばらしき世界』配給:ワーナー・ブラザース映画、2021年春全国公開予定 ©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

ほか主な作品には、ロザムンド・パイク主演のスリラー『I Care A Lot』(J・ブレイクソン監督)、ナオミ・ワッツ主演『Penguin Bloom』(グレンディン・アイヴィン監督)、イドリス・エルバ主演『Concrete Cowboy』(リッキー・スタウブ監督)、アンソニー・ホプキンスとオリヴィア・コールマンを共演に迎えたフローリアン・ゼレール監督の『The Father』、メキシコの麻薬紛争とその社会的影響を扱ったニコラス・ペレダ監督の『Fauna』、マーク・ウォールバーグ主演&『ブロークバック・マウンテン』の脚本家で、息子の自殺を受けいじめ防止啓発のためアメリカを徒歩で横断する旅に出る父親の実話を映画化した『Good Joe Bell​』(レイナルド・マーカス・グリーン監督)、本年度SXSW映画祭に選出されていたエマ・セリグマンの監督デビュー作『Shiva Baby』、『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』でベネチア映画祭金獅子賞を受賞したイタリアのジャンフランコ・ロッシ監督の『Notturno』など。

グレンディン・アイヴィン監督『Penguin Bloom』Photo: Courtesy of TIFF

リッキー・スタウブ監督『Concrete Cowboy』Photo: Courtesy of TIFF

レイナルド・マーカス・グリーン監督『Good Joe Bell​』Photo: Courtesy of TIFF

オープニングを飾るのは、デヴィッド・バーンのブロードウェイ舞台「アメリカン・ユートピア」をスパイク・リー監督が映画化した『David Byrne’s American Utopia』。

第45回トロント国際映画祭 上映作品(長編)

180 Degree Rule』Farnoosh Samadi(イラン)
76 Days』ウー・ハオ、匿名、チェン・ウェイシ(アメリカ)
Ammonite』フランシス・リー(イギリス)
Another Round(Druk)』トマス・ヴィンターベア(デンマーク)
Bandar Band』Manijeh Hekmat(イラン、ドイツ)
Beans』トレーシー・ディアー(カナダ)
Beginning (Dasatskisi)』Dea Kulumbegashvili(ジョージア、フランス)
The Best is Yet to Come (Bu Zhi Bu Xiu)』ワン・ジン(中国)
Bruised』ハル・ベリー(アメリカ)
City Hall』フレデリック・ワイズマン(アメリカ)
Concrete Cowboy』リッキー・スタウブ(アメリカ)
David Byrne’s American Utopia』スパイク・リー(アメリカ)※オープニング作品
The Disciple』チャイタニヤ・タームハネー(インド)
Enemies of the State』ソニア・ケネベック(アメリカ)
Falling』ヴィゴ・モーテンセン(カナダ、イギリス)
The Father』フローリアン・ゼレール(イギリス、フランス)
Fauna』ニコラス・ペレダ(メキシコ、カナダ)
Fireball: Visitors from Darker Worlds』ヴェルナー・ヘルツォーク、クライヴ・オッペンハイマー(イギリス、アメリカ)
Gaza mon amour』タルザン・ナサール、アラブ・ナサール(パレスチナ、フランス、ドイツ、ポルトガル、カタール)
Get the Hell Out(Tao Chu Li Fa Yuan)』ワン・イーファン(台湾)
Good Joe Bell』レイナルド・マーカス・グリーン(アメリカ)
I Care A Lot』J・ブレイクソン(イギリス)
Inconvenient Indian』ミシェル・ラティマー(カナダ)
The Inheritance』エフライム・アシリ(アメリカ)
Lift Like a Girl(Ash Ya Captain)』Mayye Zayed(エジプト、ドイツ、デンマーク)
Limbo』ベン・シャーロック(イギリス)
Memory House (Casa de Antiguidades)』ジョアン・パウロ・ミランダ・マリア(ブラジル、フランス)
MLK/FBI』サム・ポラード(アメリカ)
The New Corporation: The Unfortunately Necessary Sequel』ジョエル・ベイカン、ジェニファー・アボット(カナダ)
New Order(Nuevo orden)』ミシェル・フランコ(メキシコ)
Night of the Kings (La Nuit des Rois)』フィリップ・ラコテ(コートジボワール、フランス、カナダ、セネガル)
Nomadland』クロエ・ジャオ(アメリカ)
No Ordinary Man』アイスリング・チン・イー、チェイス・ジョイント(カナダ)
Notturno』ジャンフランコ・ロッシ(イタリア、フランス、ドイツ)
One Night in Miami』レジーナ・キング(アメリカ)
Penguin Bloom』グレンディン・イヴィン(オーストラリア)
Pieces of a Woman』コーネル・ムンドルッツォ(アメリカ、カナダ、ハンガリー)
Preparations to Be Together For an Unknown Period of Time(Felkészülés meghatározatlan ideig tartó együttlétre)』リリ・ホルヴァート(ハンガリー)
Quo Vadis, Aïda?』ヤスミラ・ジュバニッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ、ノルウェイ、オランダ、オーストリア、ルーマニア、フランス、ドイツ、ポーランド、トルコ)
Shadow In The Cloud』ロザンヌ・リアン(アメリカ、ニュージーランド)
Shiva Baby』エマ・セリグマン(アメリカ、カナダ)
Spring Blossom』スザンヌ・リンドン(フランス)
A Suitable Boy』ミーラー・ナーイル(イギリス、インド)※クロージング作品
Summer of 85(Été 85)』フランソワ・オゾン(フランス)
The Third Day』フェリックス・バレット、デニス・ケリー(イギリス)
Trickster』ミシェル・ラティマー(カナダ)
True Mothers(朝が来る)』河瀨直美(日本)
Under the Open Sky(すばらしき世界)』西川美和(日本)
Violation』Madeleine Sims-Fewer, Dusty Mancinelli(カナダ)
Wildfire』キャシー・ブレイディ(イギリス、アイルランド)

※タイトルは英題、()内は原題

『すばらしき世界』西川美和監督&役所広司コメント

西川美和(監督・脚本)
トロント国際映画祭には格別な思い出があります。『夢売るふたり』(12年)の上映中、ラスト20分のところで観客の目の前でフィルムが燃えたのです。映画は突然中断し、私は映写技師のところに駆け込み、スタッフは大慌てでしたが、応急処置で上映が再開されるまでの30分間、地元の映画ファンのほとんどが席を立たずに辛抱強く待っていてくれており、最後は同じ旅を終えた仲間のような拍手で迎えてもらいました。北米最大の映画祭であると同時に、市民や映画ファンと距離の近い、大好きな映画祭です。コロナの影響でたくさんの映画が人に観てもらう場を失う中で、『すばらしき世界』の招待を決断して頂いたことに、心から感謝しています。今作も、“燃えるような”上映になりますように!

役所広司(主演・三上正夫 役)
(第50回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した)『うなぎ』で初めてカンヌ国際映画祭に参加しました。その時、海外の観客と一緒に観て「こんなにも、笑ってくれるんだ!」って驚きましたが、この『すばらしき世界』にも、『うなぎ』と共通するような、ユーモアや笑えるところがあります。まっすぐ過ぎて不器用な三上と本作を、是非楽しんで頂けたらと思っています。