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2020.07.28 21:00

第77回ベネチア国際映画祭ラインナップが発表!コンペティション部門に黒沢清『スパイの妻』選出!

  • Atsuko Tatsuta

第77回ヴェネチア国際映画祭(9月2日〜9月12日)のラインナップが、7月28日(水)に開催された記者会見にて映画祭ディレクターのアルベルト・バルベーラ氏より発表されました。

クロエ・ジャオ監督『Nomadland』© 2020 20th Century Studios All Rights Reserved

カンヌを始めとした映画祭がコロナ禍により次々と中止される中、大型の国際映画祭としては初めて”リアルイベント”として再開されるベネチア映画祭。先に発表された審査員陣は、パンデミックの影響の多い地域を避けてか、ほとんどをヨーロッパ勢が占めましたが、コンペティション部門の作品には、ヨーロッパ、北米、アジアからバランスよく18本が選出されました。

『運動靴と赤い金魚』(97年)で知られるイランのマジッド・マジディ、フランスのニコール・ガルシア、イスラエルのアモス・ギタイ、ロシアのアンドレイ・コンチャロフスキーといった名匠らが揃いながらも、例年に比べるとスター監督の名前が少なく、一方でフレッシュな顔ぶれも多く見られます。

コンペ18作品の中で、女性監督によるものは8本。特にハリウッドのスタジオ系からの2本は注目されます。ソニー・ピクチャーズの『The World to Come』は、ノルウェー出身でアメリカを拠点に活動する女優モナ・ファストヴォルドが監督を務め、キャサリン・ウォーターストン、ヴァネッサ・カービー、ケイシー・アフレックが共演する話題作。

モナ・ファストヴォルド監督『The World to Come』

『ザ・ライダー』で脚光を浴び、MCU映画『エターナルズ』の監督にも抜擢されたクロエ・ジャオが監督を務めるフランシス・マクドーマンド主演・製作の『Nomadland』もコンペ入り。同じくサーチライト・ピクチャーズ配給によるウェス・アンダーソン監督の『The French Dispatch』がカンヌのオープニングに決定していたものの、その後、公開日未定になっていることを考えると、『Nomadland』は今後の賞レースに絡んでくることも大いに予想されます。

日本からは、黒沢清監督の『スパイの妻』が選出。太平洋戦争前夜、偶然国家秘密を知ってしまった夫と、その夫を信じ支える妻の姿を描く歴史ドラマです。NHKで放映された同名のドラマを、スクリーンサイズを新たにした劇場版で、『寝ても覚めても』の濱口竜介監督が共同脚本家として参加、主演は蒼井優、その夫役を高橋一生が演じています。

黒沢清監督『スパイの妻』

一昨年は『ROMA/ローマ』がプレミア上映され、去年は『マリッジ・ストーリー』など3本が上映されるなど、ベネチアを席巻してきたNetflix作品の上映は今年は1本もなし。Netflixが戦略的にエントリーを控えたのかどうかは定かでありません。

コンペ外では、『ノッティングヒルの恋人』の名匠ロジャー・ミッシェルがヘレン・ミレン、ジム・ブロードベントというベテランを主演に迎えたコメディ『The Duke』、またスペシャル・スクリーニングとして、『幸福なラザロ』のアリーチェ・ロルバケルとフランスのアーティストJRの短編『Omelia Contadina』などが選出。ドキュメンタリー作品では、シューズ・デザイナーのサルヴァトーレ・フェラガモの半生を追ったルカ・グァダニーノ監督の『Salvatore – Shoemaker of Deams』、90歳の巨匠フレデリック・ワイズマンによるボストン市庁舎をテーマにした『City Hall』、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリをテーマにしたネイサン・グロスマン監督の『Greta』なども上映されます。

ルカ・グァダニーノ監督『Salvatore – Shoemaker of Deams』

サイドバーのオリゾンティ部門に選出された、ソフィア・コッポラの姪ジア・コッポラの『Mainstream』、2016年のベネチアで『立ち去った女』で金獅子賞を受賞しているフィリピンの巨匠ラヴ・ディアスの『Lahi, Hayop(Genus Pan)』も注目です。

オープニング作品には、ダニエーレ・ルケッティ監督のイタリア映画『The Ties(LACCI)』(アウト・オブ・コンペティション)が上映されます。

ダニエーレ・ルケッティ監督『The Ties(LACCI)』Photo credit: Gianni Fiorito

また会期中に、ライフタイム・アチーブメント(生涯功労賞)として香港の映画監督アン・ホイとスコットランド出身の俳優ティルダ・スウィントンに金獅子賞が授与されることが発表されています。

コンペティション部門の審査員長をケイト・ブランシェット(オーストラリア/俳優)が務め、ほか審査員には、ヴェロニカ・フランツ(オーストリア/監督・脚本家)、ジョアンナ・ホッグ(イギリス/監督・脚本家)、ニコラ・ラジョイア(イタリア/作家)、クリスティアン・ペッツォルト(ドイツ/監督・脚本家)、クリスティ・プイウ(ルーマニア/監督・脚本家)、リュディヴィーヌ・サニエ(フランス/俳優)が決定しています。

審査員長を務めるケイト・ブランシェット

以下、コンペティション部門に選出された18本です。

『In Between Dying』ヒラル・バイダロフ(アゼルバイジャン、アメリカ)
『Le Sorelle Macaluso』エマ・ダンテ (イタリア)
『The World to Come』モナ・ファストヴォルド(アメリカ)
『Nuevo Orden』ミシェル・フランコ(メキシコ、フランス)
『Amants(Lovers)』ニコール・ガルシア (フランス)
『Laila in Haifa』アモス・ギタイ(イスラエル、 フランス)
『And Tomorrow The Entire World』ジュリア・フォン・ヘインズ (ドイツ、フランス)
『Dorogie Tovarischi(Dear Comrades)』アンドレイ・コンチャロフスキー(ロシア)
『スパイの妻(Wife of a Spy)』黒沢清(日本)
『Khorshid(Sun Children)』マジッド・マジディ(イラン)
『Pieces of a Woman』コーネル・ムンドルッツォ(カナダ、ハンガリー)
『Miss Marx』スザンナ・ニッキャレッリ(イタリア、ベルギー)
『Padrenostro』クラウディオ・ノーチェ(イタリア)
『Notturno』ジャンフランコ・ロッシ(イタリア、フランス、ドイツ)
『Never Gonna Snow Again』マウゴシュカ・シュモフスカ、ミハウ・エングレルト (ポーランド、ドイツ)
『The Disciple』チャイタニヤ・タムヘイン (インド)
『Quo Vadis, Aida?』ヤスミラ・ジュバニッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ、オーストリア、ルーマニア、オランダ、ドイツ、ポーランド、フランス、ノルウェイ)
『Nomadland』クロエ・ジャオ (アメリカ)

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第77回ヴェネチア国際映画祭

会期/2020年9月2日(水)〜9月12日(土)
開催地/イタリア・ヴェネチア
フェスティバル・ディレクター/アルベルト・バルベーラ
© La Biennale di Venezia – Foto ASAC.