トリビア満載!『スパイダーマン:ホームカミング』究極のイースターエッグ・小ネタまとめ
- Akira Shijo
※本記事には、映画『スパイダーマン:ホームカミング』のネタバレが含まれます。
8月11日(金)に日本公開となったMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)最新作『スパイダーマン:ホームカミング』。
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16年)で初登場した、原作でも長い歴史と高い人気を持つスパイダーマンを主人公に据えた本作には、やはり多数のイースターエッグが仕込まれていました。
本記事では、そんな『スパイダーマン:ホームカミング』に隠された様々なトリビアや小ネタ、隠しネタ、そして元ネタとなった原作キャラクターなどを解説・考察・予想していきます!
スパイダーマンに関する小ネタ
オープニングテーマ
本作において、おなじみマーベル・スタジオロゴのBGMとして使われていたこの曲。
Who’s ready for your friendly neighborhood you-know-who?@SpiderManMovie @MarvelStudios pic.twitter.com/iSHk4IvVgk
— Michael Giacchino (@m_giacchino) 2017年5月19日
これは、1967年に放送されたスパイダーマン初のアニメシリーズのテーマソングを、作曲家であるマイケル・ジアッキーノがアレンジしたものです。
♪クモのように獲物を狙い
スパイダーマンを象徴するメロディとして、『スパイダーマン2』(04年)ではストリートミュージシャンの歌、『アメイジング・スパイダーマン2』(14年)ではピーターの口笛や着信音として使用されていました。
ウェブ・ウィング
本作のスパイダースーツに搭載されていた、滑空用の“ウェブ・ウィング”。
原作コミックでも、スパイダーマンが初登場した1962年から数年間、そしてトッド・マクファーレンが関わった1990年代のシリーズなどで、脇の下に同様の構造が見られます。
そんな本作のスーツデザインが際立つポスタービジュアルも公開されています。
ベンおじさんはどこに?
ピーター・パーカーがスパイダーマンとして活動を始めるきっかけとなった、育ての父親・ベンおじさんの死。
本作『ホームカミング』で彼の姿は描かれなかったものの、ピーターはネッドに「おばさんにはつらい思いもさせた」と語っていました。もしかすると、これはMCU世界でのベンおじさんのことなのかもしれません。
2人のショッカー
強力な振動波を放つガントレット(籠手)を装着して襲い来るヴィラン(悪役)、ショッカー。原作ではいわゆる“いつも出てくるやられ役”、“B級ヴィラン”のような立ち位置ですが、一部のファンにカルト的な人気を集めるキャラクターでもあります。
本作に登場したショッカーはなんと二人。一人目はジャクソン・ブライス、コミックでは“モンタナ”と呼ばれるごろつきで、アニメ『スペクタキュラー・スパイダーマン』でもショッカーとなった人物です。
蒸発してしまった彼に代わってショッカーとなった二人目はハーマン・シュルツ。彼が原作でもショッカーを名乗るキャラクターで、ガントレットと衝撃吸収スーツを自作した元・金庫破りの犯罪者です。
バルチャー
鋼の翼でスパイダーマンを苦しめた本作のメインヴィラン、バルチャーことエイドリアン・トゥームス。
原作では1963年『Amazing Spider-Man (Vol.1) #2』から登場する古参のヴィランで、スパイダーマンとも因縁の深い強敵です。
飛行装置を身につけた禿頭の老人というイメージの強いバルチャーですが、本作では大胆なアレンジが施され、機械的なスーツでの登場となりました。まさに“バルチャー(ハゲワシ)”そのもののマスクが非常にカッコよかったですね。
過去には『アメイジング・スパイダーマン2』終盤でも彼の翼と思われる物体が登場するなど、映像化が長く待ち望まれていたヴィランでもあります。
スパイダーマンの正体が娘のボーイフレンドだと気付いて逃げるチャンスを与えたり、自分を救ったピーターに恩を感じたのか彼の正体を最後まで隠し通したりと、悪党ではあるものの人間味を感じさせる人物であり、ぜひ再登場してほしいキャラクターです。
鳥男、ふたたび
バルチャーを演じたマイケル・キートンは、かつてティム・バートン版『バットマン』(89年)シリーズにバットマン/ブルース・ウェイン役で主演したほか、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(14年)で“バードマン”ことリーガン役として主演し、カムバックを果たした名優です。
それぞれ異なった“翼を持ちマスクを被ったダークヒーロー”像。見比べてみるのも面白いかもしれません!
スコーピオン
フェリーでのスパイダーマンの活躍で逮捕され、終盤では収監されたトゥームスと話していたサソリの刺青の男、マック・ガーガン。
原作での彼は“スコーピオン”と呼ばれるヴィランで、もとは私立探偵をしていた男です。カメラマンであるピーターがなぜスパイダーマンの写真を次々に撮影できるのか疑問に思ったデイリー・ビューグル新聞社のジェイムソン編集長に依頼され、その理由を探っていましたが、なかなか成果は上がりませんでした。
そんな中、ガーガンはしびれを切らしたジェイムソンに大金を渡され、とある生物学者のもとでスパイダーマンを倒せるほどの強化人間として改造されます(とんでもない設定ですね)。
実験は成功したものの、力に溺れたガーガンは良心を失っていき、強盗などを繰り返しながらスパイダーマンの強敵となりました。宇宙からやってきた寄生生物・シンビオート(ヴェノム)の宿主となっていた時期もあり、グリーン・ゴブリンことノーマン・オズボーンが自らのチーム“ダーク・アベンジャーズ”を率いた際には、投薬によってシンビオートの暴走を抑え込みながらスパイダーマンを演じていたこともあります。
余談ですが「ショッカー・バルチャー・スコーピオン」といえば、隠れた名作ゲーム『スパイダーマン』(03年、アクティビジョン/カプコン)が思い起こされます。02年の映画版と同じキャストを声の出演に起用し、同じストーリーを元にしながらも、原作コミックからこの三人をボスキャラクターとして登場させるなどオリジナル要素を盛り込み、単なる“映画のゲーム化”に留まらない挑戦的な作品となっていました。
ティンカラー
忘れちゃいけないのがこの人。トゥームスのビジネスを支える発明家、フィニアス・メイソンことティンカラー。
原作でもバルチャーと同じく『Amazing Spider-Man (Vol.1) #2』から登場する古参キャラクターで、多数のヴィランに武器や装備を提供している老人です。
プロウラー
ショッカー1号2号との武器取引の中、そのあまりの超兵器っぷりにビビりながらも“反重力クライマー”に興味を示していた男、アーロン・デイビス。
原作での彼は“プロウラー”という名で知られるヴィランで、設定を現代風にアレンジされた仕切り直しのシリーズ『アルティメット』の舞台となる並行世界・アース1610の住人です。
スパイダー・スーツによって分析される場面でも、画面右下あたりにハッキリと“別名:プロウラー”と表示されていました。プロウラーはコミックの基本世界であるアース616でも登場するキャラクターであり、窓の清掃員だった経験から“壁をよじ登る”装置を発明したものの、その力を悪用し強盗となったヴィランとして知られています。
そういえば、ピーターに捕まった彼は「自分には甥っ子がいる」とも語っていました。
マイルズ・モラレス
原作におけるデイビスの甥っ子の名前は、マイルズ・モラレス。アルティメット世界(アース1610)において、戦いの中で倒れたピーター・パーカーの後を継ぎ“二代目”スパイダーマンとなった少年です。
ちなみに、本作で登場した彼の叔父・デイビスの車のナンバープレートをよく見てみると“UCS-M01”とありましたが、マイルズがデビューを飾ったのは『Ultimate Comics Spider-Man (Vol.2) #1』(11年)です。
デイビスが盗みに入ったラボから意図せず連れてきてしまった遺伝子操作グモに噛まれたことで能力を手に入れ、メイおばさんからピーターのウェブ・シューターを託されたことでスパイダーマンとなったマイルズ。
現在では不動の人気を誇る彼ですが、そうとは言っても比較的新しいキャラクターであり、たとえ新設定であっても大胆に盛り込んでいく、というマーベルの意気込みが感じられます。もしかすると、今後の作品にてWスパイダーマンの共演が実現するかもしれませんね!
受け継がれる意志
デイビスを演じたドナルド・グローヴァーは、ラッパー“チャイルディッシュ・ガンビーノ”やコメディアン、作家、声優としても活動する俳優です。
『アメイジング・スパイダーマン』(12年)の制作が発表された際、グローヴァーは「僕もオーディションを受けたい!」と(半ば冗談めかして)Twitterに投稿。ネット上のファンたちも#Donald4Spiderman のタグで「ドナルドを新スパイダーマンに!」という声を上げていました。
結果的には叶いませんでしたが、コメディドラマ『コミ・カレ‼︎』(09年〜)のあるエピソードにて、グローヴァー演じるトロイがスパイダーマンの服を着るシーンがあったこともあり、トロイの写真が『アメイジング・スパイダーマン』に登場。ピーターの部屋の壁に貼られていました。
同シーンをライターであるブライアン・マイケル・ベンディスが観たことで、新たなスパイダーマン=黒人のティーン、マイルズというキャラクターの創造にインスピレーションが与えられたという話も。
その後、2015年のアニメシリーズ『アルティメット・スパイダーマン ウェブ・ウォーリアーズ』では、異世界のスパイダーマンたちが集合する「スパイダーバース」のエピソードに登場したマイルズ・モラレスの声をグローヴァーが担当しました。
そんな背景を踏まえると、本作でのキャスティングもとても感慨深いものに思えます。
グローヴァー自身もブレイク街道を邁進中で、今後は『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー(原題)』で若きランド・カルリジアン、実写版『ライオン・キング』でシンバを演じるほか、弟であるステファン・グローヴァーと共に『デッドプール』の新アニメシリーズの制作も手がけるとのこと。今後の活躍から目が離せません!
ピーターの学友たち
ここからは、ミッドタウン科学技術高校に通うピーターの学友たちについて解説していきます。
リズ
まずはピーターの想い人、リズ。
エリザベス(リズ)・アランは、原作でもスパイダーマンがデビューした『Amazing Fantasy (Vol.1) #15』から登場する最古参のキャラクターで、ピーターの同級生でした。
元々はフラッシュ・トンプソンのガールフレンドでしたが、次第にピーターの知性に惹かれるようになり、ベティ・ブラントとの三角関係になりますが、高校卒業後に距離は離れていきました。その後、後述のネッドの結婚式で知り合ったハリー・オズボーンと結婚し、息子をもうけます。
ちなみに、アルティメット世界(アース1610)のリズはミュータントで、空を飛び炎を操る“ファイアスター”としてX-MENに入ったりもしています。
本作ではバルチャーの娘という設定でしたが、これは本作のオリジナル設定。アルティメット世界の彼女の父親は、マグニートー率いるブラザーフッドの一員であるミュータント・ブロブでしたが、このことも参考にされているのかも。
フラッシュ・トンプソン
ピーターにとってのいじめっ子といえばこの人、フラッシュ・トンプソン。『アメイジング・スパイダーマン』にも登場した魚、“ブランジーノ”も食べていましたね。
映画『スパイダーマン』、『アメイジング・スパイダーマン』にも登場していたフラッシュですが、原作でも『Amazing Fantasy (Vol.1) #15』から登場するピーターの同級生です。
アメフトのプレイヤーで、近所に住む科学オタクのピーターをいつもいじめていたフラッシュ。ヒーローであるスパイダーマンに(その正体を知らず)憧れていた彼は根っからの悪人ではなく、成長するにつれて改心し、ピーターとも和解しました。
その後、軍に入隊したフラッシュは、イラク戦争で仲間たちを救い、その代償として両足を失ってしまいます。
アメリカ政府はこの時、先述のガーガンを逮捕したことで、彼にとりついていたシンビオートの捕獲に成功していました。そして、かつてキャプテン・アメリカを生み出したのと同様、超人血清ではなくシンビオートを利用して強化兵士を作り出す“再生計画”を進めていたのです。
政府にその勇敢さを認められたフラッシュはその適合者として選ばれ、軍人としての身体能力とヴェノムの再生能力、そしてスパイダーマンの持っていた特殊能力を兼ね備えた“エージェント・ヴェノム”として生まれ変わりました。
48時間の活動制限、かつて悪人たちと結合していたシンビオートから湧き上がる破壊衝動、そしてヴェノムに向けられるヒーローたちの疑いの目などさまざまな困難を跳ね除けながら、ヒーローとして活動を続けています。いずれ映画にも登場してほしいカッコ良さ!
フラッシュの車
本作終盤、バルチャーを追うピーターがフラッシュから車を借りますが、この車のナンバープレートは「FLASHDRV」。これはDJフラッシュがリズの家のパーティで流していた彼のオリジナル曲のタイトルで、本作のエンドロールでも確認できます。フラッシュは父親の車だと言っていましたが、そうすると彼はなかなか愛されている息子のようですね。
また、本作のスポンサーであるアウディとのコラボCMにも同車が登場。
このCMの冒頭に、ピーターがフラッシュの車で暴走する様子を写した動画がYouTubeにアップされている描写が!つまり、このCMは映画公開前に公開されたものでありながら、本編の後に起こった出来事を描いたもののようです。
ミシェル
何かとピーターを気にかけていた不思議な少女・ミシェル。
本作終盤、ミシェルは自身の愛称が“MJ”であることを明かしましたが、これは原作でのピーターの恋人(だったり奥さんだったり)、メリー・ジェーン・ワトソンの愛称でもあります。
なお、本作でミシェルが読んでいた本はサマセット・モームの『人間の絆』。『痴人の愛』(34年、ジョン・クロムウェル監督)というタイトルで映画化もされた同作は、おじ夫婦に育てられた主人公が女性たちを巡って人生を歩んでいく自伝的作品で、ピーターともどこか通じる点のある小説です。
ネッド・リーズ
ピーターの親友にしてサポート役も務めた好漢、ネッド・リーズ。
原作でのエドワード・“ネッド”・リーズはピーターの友人であり、デイリー・ビューグル新聞社の記者でした。
ビューグルの編集長秘書であり、弟を亡くしたばかりだった傷心のベティ・ブラントを支えたことで、ネッドは彼女と結婚することに。
ピーターはかつてベティと交際していましたが、ネッドはその事を知りながらも彼と親友になりました。仲人としてピーターを呼んだふたりの結婚式がヴィランに襲撃されることもありましたが、スパイダーマンが彼らを救います。
そんな中、ある事件が起こります。取材のためにヴィランであるホブゴブリンを追っていたネッドでしたが、逆に捕まってしまい、洗脳を受けます。彼はホブゴブリンの影武者として利用されたあげく、本物の放った暗殺者によって殺害されてしまうのでした。
ところで、先述の二代目スパイダーマンことマイルズ・モラレスの親友に、ガンケ・リーという少年がいます。
LEGO好きなオタクでもある彼は、マイルズの正体を知りながらその活動をサポートするほか、なんといってもビジュアルが本作のネッドにソックリ。名前こそネッドですが、キャラクターとしてはガンケが元になっていると考えていいかもしれません。
ピーターはクモを呼べる?
ネッドは、スパイダーマンという正体を明かしたピーターに「クモ軍団を呼べる?」と聞いていましたが、これは同じく(正確には異なりますが)虫をモチーフにしたヒーローで、アリ軍団を呼ぶことができるアントマンを意識したのかもしれません。
実際、ピーターはスパイダー・ドローンや発信機つきの子グモなどを装備していたことから、“クモ軍団を呼べる”と言っても差し支えないように思えます。ちなみに、原作でも「スパイダーマンだからスパイダーを呼べる」というネタはたびたび使われるほか……
また、ピーター・パーカーのクローンの一人“ケイン”こと二代目スカーレット・スパイダーは、本当にクモと話したりクモを操ったりする能力を持ちます。
ベティ・ブラント
ピーターたちの同級生で、校内ニュース番組にも出演していた少女ベティ・ブラント。
長い金髪、黒いカチューシャ、白い服というというビジュアルから、公開前はグウェン・ステイシーなのではないかと噂されていた彼女。
原作ではデイリー・ビューグルの編集長秘書として登場し、ピーターが最初に交際した女性として知られているキャラクターです。
映画『スパイダーマン』ではエリザベス・バンクスが演じていました。
シンディ・ムーン
原作でも2014年に登場したばかりのキャラクター、シンディ・ムーン。「ピーターを噛んだクモが、実はもう一人女の子を噛んでいた」という設定で生まれたシンディは“シルク”の名で活躍するスーパーヒロインで、スパイダーマンを上回る能力を持っており、登場して日も浅いながらも人気の高いキャラクターです。
その他の同級生たち
ここで挙げた以外にも、“ブルーバード”ことサリー・アヴリル、“ブラックタイガー”ことエイブ・ブラウンをはじめ、原作コミックでもピーターの同級生だったキャラクターたちが複数登場しています。
ちなみに、原作では“ジュエル”の名でヒーロー活動を始める前のジェシカ・ジョーンズも(後付けではありますが)ピーターの同級生という設定で、彼に片思いしていた少女でした。
ハリントン先生
ピーターたちを引率していた教師、ロジャー・ハリントン先生(上写真右端)。どこかで見たような覚えはありませんか?
『インクレディブル・ハルク』(08年)に登場していた、バナーにピザで買収された学生。実はこの人も、ハリントン先生と同じく俳優のマーティン・スターが演じていました。映画での役名は特になく、もしかしたら同一人物なのかもしれません。
ちなみに同作『インクレディブル~』の小説版では、彼の名は「アマデウス・チョ」とされていました。
原作では同名の天才少年がバナーからハルクの力と名前を受け継いでおり、そこから取ったものと思われます。彼の母であるヘレン・チョ博士は『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(15年)で本格的にMCUに登場しており、『インクレディブル〜』の青年がアマデウスだったという設定はほぼ無くなったと見ていいかもしれません。
アニメ『アルティメット・スパイダーマン』に登場したアマデウスもまた本作終盤に登場した“アイアン・スパイダー”スーツを装着していました……が、さすがにこれは考えすぎかもしれませんね。
高校の設立年
ミッドタウン科学技術高校の校章にも記されている通り、同校が設立されたのは1962年。これはスパイダーマンが初登場した『Amazing Fantasy (Vol.1) #15』が出版された年です。
にせアベンジャーズ強盗団
本作冒頭、ATMを襲いに現れたお面の一団。
同様のシーンが『Ultimate Spider-Man (Vol.1) #42』(00年)にもあります。
ヒーローの重圧
バルチャーの攻撃により、瓦礫に潰されそうになりながらもスパイダーマンとして立ち上がるピーター。これは『Amazing Spider-Man (Vol.1) #33』のオマージュであると明言されています。
またこの時、水たまりに映ったピーターの顔には半分スパイダーマンのマスクが重なっていましたが、これはコミックやグッズなどでもよく使われる表現です。
たびたび見かけるものではあるものの、マーベル・キャラクターの中に関してのみ言えば、特にスパイダーマンによく見られる表現です。やはり「ピーター・パーカー=スパイダーマン」という二面性が強調された、彼の特異なキャラクター性によるものなのかもしれません。
即死モード
ピーターがヴィラン軍団を追い詰めようとしていた際、スーツ・レディは“即死モード”を起動させようとしましたが、すぐにキャンセルされてしまいました。
この時、スパイダーマンの目のシャッターは絞られ、その中心が赤く輝いていましたが、これは並行世界アース8351のスパイダーマン、通称アサシン・スパイダーマンを想起させるものでした。
この世界での彼はウルヴァリンと行動を共にし、躊躇いもなく敵を殺すようになったことで世界的な暗殺者として知られています。
アイアン・スパイダー
本作終盤、トニーがピーターに贈ろうとしていた赤、黒、金を基調とした新スーツ。これは原作における“アイアン・スパイダー”スーツを基にしたものだと思われます。
シビル・ウォー開戦直前にスタークが開発したこの新アーマーには様々な機能が搭載されていましたが、中でも特徴的なのはその背から伸びる3本のアーム。自由自在に動かすことができ、敵を翻弄します。
トニーとの記者会見
スパイダーマンとトニー・スタークの開く記者会見といえば、原作における一大イベント『シビル・ウォー』開戦のきっかけになった会見が思い起こされます。
この記者会見では、スパイダーマンが“超人登録法”への賛成を表明するため、全世界に向けてピーター・パーカーとしての素顔をさらけ出しました。
他のどのヒーローよりも正体を隠し続けていた大物ヒーロー・スパイダーマンが素性を明かしたことは多くのキャラクターに衝撃を与え、戦いが激化する要因のひとつになったほか、ピーター自身の人生にも大きな変化を及ぼすことに。
ちなみに、その後『ワン・モア・デイ』というイベントにて歴史が改変され、このカミングアウトは“なかったこと”になりました。
本作、すなわちMCUの世界ではこれをトニーからの試練だと(勘違いして)考え、あえて拒否したピーター。世界を守るスーパーヒーローとしてではなく、“親愛なる隣人”として活動を続けていくという彼の選択によって、ヒーローたちの悲しい分裂がすでに終わりを告げたことが暗示されているのかもしれません。
インフィニティ・ウォー
そしてこれからは、再び団結して戦う時!今年のサンディエゴ・コミコンで公開された『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(18年予定)のコンセプトアートでは、宇宙規模の巨悪たちに対抗するべくアイアン・スパイダースーツを装着したスパイダーマンが描かれています。
MCUに関わる小ネタ
ここからは、これまでの/これからのMCU作品に関わる小ネタをご紹介していきましょう。
8年後
作品冒頭にテロップで示された通り、本作の舞台となったのは「ニューヨークの戦い」から8年後……
………8年後!?
単純に考えるなら『アベンジャーズ』が2012年、本作が2017年ということで“5年後”というのが自然です。
しかし、テロップでデカデカと表示された以上はミスということも考えにくいでしょう。『アイアンマン』での出来事を2008年とすると、そこから1~2年以内に『アベンジャーズ』での出来事が起こったと考えればなんとか辻褄が合うのかもしれません。この「MCU世界の時系列」については、後日別記事にてじっくり考察してみようと思います。
アイアンマン マーク47
本作に登場した、胸部より下が銀色のアイアンマン・マーク47。
これは先述のアルティメット世界、すなわちアース1610のトニーが主に装着していたアイアン・テック・アーマー、通称アルティメットアーマーへのオマージュであると思われます。
スーツ・レディ/カレン
スパイダースーツに搭載されていたAI、“スーツ・レディ”ことカレン。彼女の声を担当したジェニファー・コネリーは、かつてアイアンマン・スーツに搭載されていたAI・ジャーヴィスの声、そして現在は人工生命体・ヴィジョンを演じているポール・ベタニーの奥さんです。
ダメージ・コントロール
『アイアンマン』、そしてMCUを舞台としたコミック作品ではこれまで幾度となく見え隠れしていた“ダメージ・コントロール”ですが、ついに本格的に登場。
当初はS.H.I.E.L.D.の一部門として登場していたものの、後に行政機関として(表向きに、だけかもしれませんが)トニー・スタークの支援を受けて運営されるようになったようです。
原作ではトニーとウィルソン・フィスク(キングピン)が共同所有していた会社で、ヒーローやヴィランの戦いで破壊された街や建物の後処理や修繕を請け負っています。このダメージ・コントロール社をメインに据えたドラマがABCにて制作されるというニュースもあったのですが、結局続報がないまま、現在1年半が経過しています。
ステルス輸送機
アベンジャーズ・タワーから新基地(『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』から登場)へと荷物を輸送した飛行機の外壁には、他者から機体が見えなくなるステルス機能が搭載されていました。これは、S.H.I.E.L.D.やアベンジャーズが所有するクインジェットやヘリキャリア、そしてコールソンのチームが所有する飛行機“バス”や“ゼファー・ワン”に搭載されているものと同様の機能であると思われます。
特に『エージェント・オブ・シールド』シーズン2序盤では、クインジェットのステルス技術を取り戻すために多大な犠牲が払われ、MCU世界におけるこの技術の重要性が描かれました。
ソコヴィア協定
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で重要な争点となった“ソコヴィア協定”。アベンジャーズの行動を縛り、世界中の超人たちをも管理する同協定は『エージェント・オブ・シールド』シーズン3でも描かれた通り、あの戦いの後に締結されたようです。
本作でも、ピーターたちが受けていた授業の中でその名前が出てきていました。スパイダーマンであるピーターやその他の超人たちが半ば放置されているのを見る限り、ほとんど名ばかりの協定となってしまっているようです(あるいは、トニーら賛成派の面々が規制の激化を抑え込んでいるのかも)。
モリタ校長
ピーターたちの通うミッドタウン科学技術高校の校長、モリタ先生。彼はかつてキャプテン・アメリカと共に戦った部隊“ハウリング・コマンドーズ”の一員、ジム・モリタの子孫(おそらく孫)です。
校長室にも彼の写真が飾ってありました。生徒たちにキャプテン・アメリカの体操ビデオを見せ続けるのも、もしかしたらそういう決まりだからというだけではなく、先祖の恩人への敬意からかもしれません。
ちなみに、かつてコールソンと共に戦ったエージェント・トリプレット(トリップ)も、モリタと同じくハウリング・コマンドーズのメンバーの孫でした。
新型シールド?
基地引っ越しのため輸送機に荷物を積み込む最中、ハッピーが読み上げた中に「キャップの盾の試作品」とありました。これは原語では“prototype for Cap’s new shield”、キャップの新型シールドの試作品、と言っています。
これまでキャップが使っていた丸いシールドは、あらゆる振動を吸収する最強金属・ヴィブラニウム製。トニーの父親・ハワードによって作られたものです。『シビル・ウォー』の戦いでは、同じヴィブラニウムの爪をもつブラックパンサーに傷を付けられた後、トニーのもとに放置されました。
お互いの正義の在り方の違いからスティーブと袂を分かったトニーですが、傷付いてしまった盾の代わりに、友として新しい盾を作ってあげているのかもしれません。
『エイジ・オブ・ウルトロン』の戦い以降、ウルトロンが持ち出した大量のヴィブラニウムが回収されたであろうこともあり、材料には事欠かなさそうですね。
原作における新型シールドといえば、エネルギーによって展開・構成されるタイプのシールド(コールソンが『エージェント~』にて同様のものを使用)や、縁がブレードになっているものなども存在。この世界の新型シールドがどんな物になるのか、あるいは特に変わらず修復されるのか、それはまだわかりません……
ソーのベルト
ソーのマジックベルトこと、Megingjörð(メギンギョルド)。北欧神話では雷神ソーの力を増加させる帯として知られ、原作でもほぼ同様の効果をもつアイテムです。
ソーが兜を!?
原作コミックでのソーは、よく翼のついた兜を着用しています。
が、MCU世界でこの兜が登場したのは『マイティ・ソー』(11年)での戴冠式のみ。結果的にまだ王になってはいないソーは、この後も兜を装着することはなかったと思われます。
しかし本作では、兜をかぶったソーを模したお面が登場。
この世界における北欧神話のソーも兜はかぶっておらず、どういう経緯で地球に”兜をかぶったソー”のイメージが持ち込まれたかは不明のままです。
『エージェント・オブ・シールド』や『ジェシカ・ジョーンズ』では、アベンジャーズを模したオモチャが確認されており、このことから彼らの肖像権、版権を管理している会社があると思われます。もしかしたら、そこにソー自身が兜の存在を吹聴した、のかもしれませんね。
アスガルド教会
ソーやロキのような宇宙人が“神”として地球に降臨したこともあってか、『エージェント・オブ・シールド』ではアスガルドを信仰するカルト集団が登場するなど、MCU世界における宗教や神話は混乱に陥りました。
ピーターとメイがラーブを食べていたレストランの隣の建物をよく見てみると、そこには韓国語で「韓国人アスガルド教会」と書かれています。先述のカルト集団とはさすがに異なる団体と思われますが、ニューヨークに教会ができるほどメジャーな宗教に成長しているのでしょうか。
あの少年はピーターなのか?
『アイアンマン2』(10年)終盤、スターク・エキスポを訪れていた名も無き少年を覚えているでしょうか。
アイアンマンに憧れていたであろう彼は、果敢にもハマーロボに立ち向かい、本物のアイアンマンに救われます。ファンたちの間では「もしかしたら彼が幼い頃のピーター・パーカーなのではないか?」という説が(いつものごとく)ささやかれていました。トム・ホランドはこの説を気に入り、自らケヴィン・ファイギ(マーベル・スタジオ社長)に確認したというニュースがあったものの、続報ではケヴィンがこの説を明確に認めたわけではなく、トム・ホランド自身がこの説を公言することは認めたようだ、とのこと。当然のことながら後付けであり、いわゆる“公式設定”と認めてしまうのはまだ早計と言えるでしょう(それはそれとして、ステキな設定だとは思います)。
ハワード・スターク
ピーターたちが通うミッドタウン科学技術高校の壁には、歴代の偉大な科学者たちが描かれています。その中には、トニーの父でありスティーブの親友であったスターク・インダストリーズの創業者、発明家ハワード・スタークの顔もありました。
アースキン博士
かつて“超人血清”を開発し、キャプテン・アメリカを誕生させたエイブラハム・アースキン博士もまた、ハワード同様に壁画に描かれていました。
ブルース・バナー
ハルクことブルース・バナー博士も、本来は優秀な科学者です。そのため、教室には歴代の偉大な科学者たちと共に写真が並べられていました。
あのガントレット、再び
こちらはショッカーが使っていたガントレット。
本作中でティンカラーが語っていた通り、コレは『シビル・ウォー』冒頭のラゴスの戦いの後に回収されたもの、すなわちブロック・ラムロウことクロスボーンズが使っていたガントレットを、チタウリの技術を用いて改造したものと思われます。
原作のショッカーはいつも両手にガントレットを装着しているものなのですが、今回は片手だけに装着していました。なぜでしょうか?
ラゴスでの戦闘中、キャップはクロスボーンズの“右腕”のガントレットを引き剥がし、打ち捨てていました。
その後、クロスボーンズは自爆。装着したままだった左腕のガントレットは、彼もろとも木っ端微塵になったものと予想されます。
ブラックホール・グレネード
ショッカーたちが武器取引の場で名前を出した“ブラックホール・グレネード”。これは『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』に登場したダークエルフたちが使っていた武器で、同作での戦いのあと地球に放置されていたものだと考えられます。
ちなみに『アントマン』終盤、ピムテック・ビルが爆破された際にも同様の現象が起こっていましたが、これは大量に貯蔵されていた擬似ピム粒子(ダレン・クロスが開発したもの)によるものだと考えられます。
その他の小ネタ
ピーターのTシャツ
本作でピーターが着ていたTシャツは、どれもユニークなものばかり。
例えばこの“THE PHYSICS IS THEORETICAL but the FUN IS REAL” Tシャツ。これはドラマ『ビッグバン・セオリー』にて、シェルドン・クーパーが作ったボードゲーム“リサーチ・ラボ”のキャッチコピーです。
そのほか、『タクシー・ドライバー』を意識したと思われる“I Survived My Trip To NYC” Tシャツや“LETTUCE, THE TASTE OF SADNESS(レタス、悲しみの味)” Tシャツ、そして『アイアンマン3』でペッパーが着ていたTシャツの色違いのものも。
Positiveが「確かな・本当の」と「陽性の」という意味を併せ持つことにかけた科学ギャグです。
フェリスはある朝突然に
ピーターが住宅街の塀や垣根をぶち壊しながら走り抜けるシーンは『フェリスはある朝突然に』(86年)へのオマージュであり、同シーンに登場するテレビにもその元となったシーンが映し出されていました。
「スパイダーマンはビルがないとうまく移動できない」という定番のネタを拾いつつ、80年代青春映画の傑作である『フェリスは〜』を踏襲した形になります。同作のポスターデザインを踏襲したビジュアルも公開されていますね。
ほかにも『ブレックファスト・クラブ』や『タクシー・ドライバー』にオマージュされたポスターも公開されています。ちなみに、『フェリス〜』はいわゆる“第四の壁”を破った映画としても有名で、スパイダーマンとはなにかと縁のある(?)『デッドプール』(16年)のラストでも引用されていました。
自動フィットスーツ
全身タイツのヒーローといえば“服の下にあらかじめスーツを着ておく”というのがお約束のパターンですが、本作では“着てから自動でサイズが調節されるスパイダー・スーツ”が登場していました。
ジョン・ワッツ監督は、本作の制作にあたって『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズを意識したとも語っており、もしかしたら“あの”自動調節ジャケットを参考にしたのかもしれません。
エンディングテーマ
本作の冒頭とエンディングを飾ったのは、『Blitzkrieg Bop(電撃バップ)』!
ニューヨーク・クイーンズが生んだ伝説のパンク・ロックバンド、ラモーンズのデビュー曲です。。
いかがだったでしょうか?ここに挙げた以外にも、原作コミックに似たシチュエーションや名作へのオマージュがまだまだ隠れていること、また私見による予想や未確定な要素が多分に含まれていることをご了承ください。
この記事を読んだ後は、ぜひもう一度本作を観に行ってみてください!字幕版で、吹替版で、あるいはIMAX版で!きっと観るたびに、新たな魅力や小ネタを発見できることでしょう。
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『スパイダーマン:ホームカミング』
監督/ジョン・ワッツ(『コップ・カー』)
出演/トム・ホランド、ロバート・ダウニー・Jr.、マイケル・キートン、マリサ・トメイ、ジョン・ファヴロー、ゼンデイヤ、トニー・レヴォロリ、ローラ・ハリアー、ジェイコブ・バタロン
配給/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公開/2017年8月11日(祝・金)全国ロードショー
2017年7月7日全米公開、2時間13分
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