Column

2025.04.02 7:00

【単独インタビュー】『デーヴァラ』はなぜ“恐怖”を描いたのか?NTR Jr.&シヴァ監督が語る壮大な復讐叙事詩の舞台裏

  • Atsuko Tatsuta

※本記事には映画『デーヴァラ』のネタバレが含まれます。

『RRR』の歴史的大ヒットで注目を集めたNTR Jr.の主演最新作『デーヴァラ』が3月28日(金)に日本公開されました。

1996年、クリケット・ワールドカップの開催を控えたインド。巨大犯罪組織による破壊工作を阻止すべく、特別捜査班のシヴァムは犯罪組織のリーダーを追って、南インドのラトナギリへと向かう。4つの村から成るその地域は、「赤海」と呼ばれる海域を縄張りとする凶悪な密輸団の巣窟として恐れられていた。密輸業者になりすましたシヴァムに、長老シンガッパは、12年前に始まった抗争事件と、英雄デーヴァラとその息子ヴァラの伝説を語り始める──。

南インドの海洋と辺境の村を舞台に、巨大なサメを操る海の勇者デーヴァラとその息子を巡る復讐と正義の物語を描いたのは、プラバース主演作『ミルチ』(13年)、NTR Jr.とモーハンラールが共演した大ヒット作『ジャナタ・ガレージ』(16年)などのトリウッド屈指のヒットメイカー、コラターラ・シヴァ監督。音楽には歌手出身で『ダルバール 復讐人』(20年)、『JAWAN ジャワーン』(23年)など話題作を次々と手掛けるアニルド・ラヴィチャンダル、撮影には『ロボット』(10年)、『ランガスタラム』(18年)のR・ラトナヴェールと、注目の才能が名を連ねています。

総製作費55億円をかけた『デーヴァラ』は、2024年9月27日に全世界一斉公開。約90億円の興行成績をあげてインド年間興行成績第4位となったほか、NTR Jr.にとっては『RRR』に次ぐ自身の歴代2番目のヒット作となりました。

日本公開に合わせ、主演の“タラク”ことNTR Jr.とコラターラ・シヴァ監督が来日。Fan’s Voiceの単独インタビューに応じてくれました。

──日本公開タイミングでの来日ということで、昨日(3月24日)もジャパンプレミアで舞台挨拶に登壇されましたが、観客の反応はいかがでしたか?
NTR Jr. 最も印象的だったのは、昨日、ステージで踊れたことです(笑)。観客の反応を生で見られて、すごく盛り上がってくれました。昨日一番嬉しかったことですね。そして、観客からの歓声や、皆さんがサメのシーンに大いに反応してくれたことも印象に残っています。

──とても素晴らしい作品で、楽しく拝観しました。インド映画には英雄を主人公にした作品は多くありますが、この作品の主人公デーヴァラは、冒頭では密輸に加担しており、裏切り者は容赦なく殺すというダークな側面もある、いわゆる“ヒーロー”とはかなり異なるキャラクターです。このような男の物語をどのように構築したのでしょうか?
コラターラ・シヴァ監督 この物語は“恐怖”を中心に展開しています。主人公には、“勇敢”なヒーローではなく、“恐れられる存在”になってほしかった。というのも、映画におけるヒーローはいつも、勇敢さの象徴として描かれますからね。でも私は彼を“恐怖そのもの”として描きたかった。恐怖は一般的にはネガティブな感情として描かれますが、それを良いもの、ポジティブなものとして見せたかった。だから、極めて悪い人々で構成された悪の世界を作り、その中で彼が際立つようにしました。彼が“恐怖”になる。そうしてこの物語が生まれました。

──タラクさんは、デーヴァラと息子のヴァラの二役を演じられていますが、このキャラクターのどういう側面に魅力を感じたのでしょうか?
NTR Jr. 僕にとってデーヴァラというキャラクターは、本当に本当にとても奥深い人物です。驚くほど深い。

映画の中に、デーヴァラが語る物語を息子ヴァラが聞くシーンがありますが、僕たちも皆、そうやって育ちました。子どもの頃に、親から物語を聞かされる。それと同じように、デーヴァラは毎晩、寝る前にヴァラに物語を語っています。ある時、デーヴァラが祖父や先祖の話を始めると、ヴァラはそれを遮って「そんな話は聞きたくない。退屈だよ。父さん自身の話をしてよ」と言います。するとデーヴァラは「自分の話には語る価値がない」と認めます。なぜなら、彼の人生はあまりにも多くの闇に満ちているから。彼自身、自分がやっていることが間違っていると、どこかでわかっている。でも、人々も彼を止めることができず、どうしようもない。実際、彼は村で最も強い存在かもしれませんが、それでも村の人々は(密輸に加担するしか)生きるすべがないわけです。

でもある日、デーヴァラは自分たちの行いによって仲間が傷つけられたことで、それが間違いだったと気づき、立ち上がります。そして、「これ以上(密輸を)やらせない。自分がお前たちの“恐怖”になってやる」と決意し、そこから彼は変わります。

一方、父デーヴァラから「自分には語る物語がない」と言われた息子ヴァラは、父のためにもっと壮大な物語を書くことを決意します。だからデーヴァラは、息子だけでなく、観客にとっても素晴らしいインスピレーションなわけです。デーヴァラというキャラクターの多層的な面が本当に大好きです。ヴァラのキャラクターについては、映画の終盤でようやくそのベールを脱ぎます。それが観客の興味を引くわけですが、それがこの映画の語りの構成の狙いでもありました。

──海に浮かぶ島、そしてそこには4つの村があるという設定は、神話、あるいは民間伝承の語り口を彷彿とさせます。下敷きとなるような、インドの古くから伝わる物語などはあるのでしょうか?
NTR Jr. いいえ、まったくありません。ただ、僕たちインド人は伝承物語が大好きです。子どもの頃に、祖父母、両親、先生、偉大な作家たちからたくさんの物語を聞かされて育ちました。だから、伝承的な語り口がとても好きです。

この映画のように、非常に強烈でドラマチックな要素が含まれている作品──“恐怖”について、戦士たち、氏族、水、海賊といったものを描くには、伝承のように語るのがとても合っていると思いました。それで意図的にこのような語り方を選びました。そして多くの人々が、その語り口に魅了されたのだと思います。

──海が重要な舞台であり、モチーフともなっています。海を舞台にした理由は何でしょうか?ビジュアル的な理由からでしょうか?
監督 海はこの映画の一部です。4つの村の男たちには、“恐れを知らない”という特別な資質を持たせたかった。一般的に、海というのは恐ろしいものです。特に夜には、浜辺に近づくのもためらうほどですよね。

NTR Jr. 夜の海はとても荒れますからね。

監督 でも、彼らはそんなことを全く気にしないし、恐れもしない。夜でも舟に乗って海に出ていく、そういったシーンひとつで、彼らがいかに恐れを知らないかが伝わると思いました。

──インドにおいて海とは何を意味するのでしょうか?
監督 インドではあらゆる自然の要素が神として讃えられています。

NTR Jr. それらを“五大元素”と呼んでいます。

監督 海は“水の神”として、太陽は“太陽神”として。風もまた神とされ、非常に神聖な存在です。

──この物語は、クリケット・ワールドカップ開催を控えた1996年から始まります。この年は、実際にインドでワールドカップが実施された年でしたね。
NTR Jr. はい、1996年はインドでクリケット・ワールドカップが開催された年です(※インド、パキスタン、スリランカ共催)。インドにとっては非常に大きな出来事で、国中が大変な盛り上がりとなりました。インド人はクリケットが大好きですからね。だから、その大会を物語の中で非常に大きなイベントとして描き、そこに“脅威”があるという要素を組み込みました。

──本作にもインドでお馴染みの群舞シーンがいくつか挿入されています。音楽とダンスは、どのようなコンセプトで物語の中に組み入れたのでしょうか?
監督 基本的に、物語の中に楽曲を自然に組み込むようにしました。その曲のために物語を書いているわけではありません。たとえば「アーユダ・プージャ」という曲は、4つの村の人々の儀式のシーンで使われます。また、デーヴァラが初めて“恐怖”になるときの“恐怖の歌”もあります。ロマンティックな歌もあります。

NTR Jr. 映画は一部の観客層のためではなく、あらゆる年代の観客にとっての“体験”であるべきです。若い観客はメロディックでロマンティックな曲を求めますし、年配の方には彼ら好みの楽曲があります。また、物語の語りそのものに集中したい人々もいます。インドでは、物語を“歌とダンス”で語る伝統があるので、楽曲はインド映画において重要な役割を果たすわけですが、あらゆる観客層にそれぞれが求める“何か”を届けられるようにしています。そしてもちろん、大勢のファンにとって“踊り”は必須となる要素です(笑)。

──この物語は裏切りに次ぐ裏切りで、誰が善人で誰が悪人なのかわからない。誰が生き残るのかもわからない。とてもツイストが効いていますが、この展開をどういう意図を持ってデザインしたのでしょうか?
監督 裏切りと陰謀によって映画を構成するようにしました。

NTR Jr. “叙事詩”と呼ばれるような映画においては、裏切りや陰謀は非常に重要な役割を果たします。僕たちは皆「ラーマーヤナ」や「マハーバーラタ」といった叙事詩からインスピレーションを受けていますし、歴史を見ても、裏切りや陰謀はどこにでも存在しています。それが物語をより面白くし、観客を惹きつける要素になります。

──歴史を振り返るというと、インドだけでなく欧米の歴史も含まれるのでしょうか?
監督 はい、もちろんです。裏切りや陰謀というのは世界中どこにでもあります。

NTR Jr. 時代や言語が違うだけで、最終的にはみんな“玉座”をめぐって争っていますね(笑)。

──暴力と正義は、この映画のテーマのひとつだと思います。今日では暴力は絶対悪として嫌われていますが、歴史を振り返れば、人間と暴力は切っても切り離せない存在ですね。
監督 基本的にどんな物語においても、“正義”とはその土地の“法”です。でも実際のところ、“悪”が存在しなければ、“法”は必要ありません。でも、“悪”はどこにでも存在する、だから“法”もどこにでも存在する。つまり、すべての国に“法”があるということは、どこにでも“悪”が存在するということでもあります。だから、“法”が戦い、“正義”をもたらす。これがこの物語の核でもあります。

──タラクさんは、これまでもさまざまなアクションに挑戦してきましたが、本作ではサメ乗りを始め、海を舞台にさまざまな種類のアクションを披露していますね。本作での見せ場、あるいは最も大変だった場面は?
NTR Jr. 水中シーンはこれまでで最も大変なシーンでした。俳優に求められることが本当に大きかったですね。多くのスタントを、厳格な動きで、非常に美しく見えるようにこなさなければなりませんでした。水というのはそれ自体が美しい要素ですから、水中や水上で“虐殺”をするシーンであっても、“美しさ”と“完璧さ”が求められます。そういったスタントを、息を止めながら演じるのは非常に難しい。1ショットにつき45秒ほど息を止める必要がありました。息がもたないときもありました。水中シーンは、僕だけでなく、チーム全体にとっても非常に難しい挑戦でした。でも、あれだけこだわり抜いたからこそ、完成度の高い美しい仕上がりになったと思います。

──水中シーンは、大きなプールのようなセットで撮ったのですか?
NTR Jr. はい、スタジオ内に建設した巨大なプールで撮影しました。インドでも最大級のプールのひとつですね。最先端の設備を備えたオリンピックサイズのプールで、水深は約20フィート(約6メートル)。水温調整機能や浄化装置も完備されています。

──水中のシーンの撮影には、どれくらいの日数を費やしたのですか?
NTR Jr. 水中シーンの撮影にはおよそ25日間を費やしました。水上シーンについては、正確な日数は覚えていません(笑)。とにかくずっと撮っていた気がします。舟のシーンがとても多かったですね。

監督 水上シーンは40日ほど撮影しました。

NTR Jr. 水上と水中だけで映画の半分くらいは撮ったかもしれません(笑)。

──では、泳げる俳優をキャスティングしたのですね?
NTR Jr. はい、最善を尽くしました。でも時には、“泳げる”よりも“演技ができる人”が必要なときもありました。その時は、すぐに泳ぎの練習を始めてもらいました(笑)。

──この映画にはパート2があるのですよね?
NTR Jr. そうです。今作はもっと大きな物語の半分です。次作は……驚くようなものになると思います。今回、皆さんにはデーヴァラについて多く知ってもらいましたが、次はヴァラについて知ってもらう番です(笑)。そして、デーヴァラに何が起きたのかも。

──インド映画には脅威の象徴として虎もよく登場しますが、今回はサメでしたね。次作にはサメか、他のクリーチャーのようなものは登場するのでしょうか?
NTR Jr. まだ決めていません(笑)。でも、皆さんがサメをとても気に入ってくれたようなので、深堀りできないか考えてみます。

監督 虎は『RRR』にも出てきたしね(笑)。

──武器に関してもお伺いさせてください。武器は国や文化によって種類も使い方も違います。本作でも多くの武器が登場しますが、何種類くらいの武器を用意したのでしょうか?
NTR Jr. はい、本当にたくさん…

監督 数百種類も。

NTR Jr. 最終的にはその中のいくつかしか使いませんでしたがね。彼らにとって神聖な武器を選びました。

監督 古くから伝わる武器です。

NTR Jr. そう、先祖たちが使っていたようなものです。

──すべての武器をデザインしたのですか?
NTR Jr. 素晴らしいプロダクションデザイナーであるサブ・シリルのおかげです。彼は『RRR』『バーフバリ』も担当しましたが、彼は、どんな武器が使われていたであろうか、膨大なリサーチを行いました。

──その中でも、デーヴァラを象徴する武器はどれですか?ポスターに使われている剣ですか?それともデーヴァラがよく使っている半月型のナタのようなものでしょうか?
監督 その剣は彼の武器のひとつですね。

NTR Jr. そう、それも彼の武器のひとつですが、メインとなるのは“D”の形をした武器ですね。

──その“D”の武器に名前はあるのですか?
監督 うーんと…

NTR Jr.&監督 ない(爆笑)

監督 名前は考えていませんでした。

NTR Jr. でもほら、“D”が見えますよね?(ポスターの文字ロゴを指差して)デーヴァラのD…。武器に名前をつけていなかったとはね(爆笑続く)。でもとても良いアイディアですね!とても気に入りました。パート2ではこの案を使わせてもらって、この武器にまつわる話も考えてみるかも(笑)。

──『ゴッドファーザー』に代表されるように、こうした復讐劇では殺し方のバリエーションを見せることも重要です。あなたが気に入っている殺しのシーンは?
監督 デーヴァラが暴走するシーンが大好きです。彼が酔っていて何もできないと相手が思っているときに、目を覚まして怒りのままに襲いかかる。僕の映画の中でも最高のアクションシーンのひとつです。

NTR Jr. 僕のお気に入りは、彼が二人を殺し、三日月が満月になるシーンです(笑)。

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『デーヴァラ』(原題:Devara)

1996年、クリケットのワールドカップを控えたインドに衝撃が走る。巨大犯罪組織による破壊工作の情報を得た警察本部は、それを阻止すべく作戦を開始。犯罪組織のリーダーを追って、特別捜査班が凶悪な密輸団の巣窟として恐れられていた“赤海”と呼ばれる村へと向かった。困難を極めた捜索の末、捜査班は十数年にわたって凄惨な抗争が続くその土地で、愛と正義を貫いたデーヴァラという英雄とその息子の血塗られた伝説を知ることになる──。

監督:コラターラ・シヴァ
出演:NTR Jr.、ジャーンヴィー・カプール、サイフ・アリー・カーン
2024年/インド/172分/シネマスコープ/5.1ch/字幕翻訳:藤井美佳/字幕監修:山田桂子/PG12

日本公開:2025年3月28日(金)より、新宿ピカデリー他にて全国ロードショー!
配給:ツイン
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