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2023.08.21 14:00

『ヨーロッパ新世紀』日本版予告編&新場面写真14点が解禁!

  • Fan's Voice Staff

ルーマニアのトランシルヴァニアを舞台に人間の対立と凶暴性を描き、第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出されたクリスティアン・ムンジウ監督最新作『ヨーロッパ新世紀』の日本版予告編と新場面写真14点が解禁されました。

予告編は、出稼ぎ先のドイツで問題を起こした男マティアスがルーマニアのトランシルヴァニア地方に帰郷し、関係が冷え切った妻と幼い息子ルディの家に戻ってくるところから幕を開けます。少年ルディは森での“あること”をきっかけに口がきけなくなっています。マティアスの元恋人シーラが責任者を務めるパン工場で働き始めた外国人労働者をめぐって、不穏な空気が流れ出します。やがて村のSNSに過激な発言が投稿され、村から外国人を追放する署名運動にまで発展。そして、幼いルディが突如行方不明になり、シーラと外国人たちが夕食を囲む部屋に火炎瓶が投げ込まれる事件が発生し──。

舞台となるトランシルヴァニア地方は、ブラム・ストーカーの古典的な恐怖小説「吸血鬼ドラキュラ」の舞台になったことで有名。カルパチア山脈に囲まれたこの地方は、古くからの伝統行事が受け継がれ、ヨーロッパ有数の野生動物の生息地でもあります。そうしたトランシルヴァニア特有の風土をあますところなくカメラに収めた本作は、ルーマニア語、ハンガリー語、ドイツ語、英語、フランス語のセリフが飛び交う多民族の村の複雑怪奇な人間模様を映し出しています。村で起こったささいな対立が深刻な紛争へと発展していく様を描きながら、幾多の火種を抱えたヨーロッパ、そして分断された世界の危うい現状を、まざまざとあぶり出した戦慄の社会派サスペンスに仕上がっています。

ルーマニアの巨星クリスティアン・ムンジウは、1980年代のチャウシェスク独裁政権下のおぞましい社会状況を描いた『4ヶ月、3週と2日』(07年)でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞し、『汚れなき祈り』(12年)では同映画祭の脚本賞と女優賞、『エリザのために』(16年)では同映画祭の監督賞を獲得。『ヨーロッパ新世紀』は6年ぶりの新作となります。

以下、本作のテーマについて、クリスティアン・ムンジウ監督のコメントが到着しています。

クリスティアン・ムンジウ(監督)
本作は連帯対個人主義、寛容対利己主義、ポリティカル・コレクトネス(政治的妥当性)対真摯さといった現代社会が抱えるジレンマに疑問を投げかけている。また、自分の民族や部族に帰属し、他の民族、宗教、性別、社会階層を問わず他者を遠慮や疑惑の目で見るという、根源的な欲求にも疑問を投げかける。これは古き良きと思われている昔の時代と、混沌としていると思われている現在の時代の話であり、実行性よりも批判に価値が置かれるヨーロッパの裏側と偽りについての話でもある。不寛容と差別、偏見、固定観念、権威、そして自由についての物語。臆病と勇気、個人と大衆、個人的な運命と集団的な運命についての物語。また生存、貧困、恐怖と険しい未来についての物語でもある。

本作は世俗的な伝統に根ざした小さなコミュニティで、グローバル化がもたらした影響について描いている。情報・モラルが混沌とした現代において、真実と自分の意見を区別することの難しさを背負うことになった。

この物語は、「政治的に正しくない」意見を特定の民族や集団に結びつけている訳ではない。意見や行動は常に個人的なものであるため、集団のアイデンティティに依存するのではなく、もっと複雑な要因に依存するのだ。社会的な意味合いを超えて、もっと根源的な人間そのものに根ざしている。信念がいかに選択を形成するか、本能、不合理な衝動、恐怖について、人間の中に埋もれた動物的な部分について、感情や行動の曖昧さとそれを完全に理解することの不可能性について、この物語は語っている。映画の中で最も好きなのは、言葉にはできない何かだ。

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『ヨーロッパ新世紀』(原題:R.M.N.)

監督:脚本:クリスティアン・ムンジウ
出演:マリン・グリゴーレ、エディット・スターテ、マクリーナ・バルラデアヌ 他
2022年/ルーマニア・フランス・ベルギー/カラー/シネスコ/127分/5.1ch/日本語字幕:関美冬/G

日本公開:2023年10月14日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開    
配給:活弁シネマ倶楽部/インターフィルム
後援:在日ルーマニア大使館
公式サイト
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