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2023.06.13 17:00

『青いカフタンの仕立て屋』日本版新ビジュアル&新場面写真7点が解禁!

  • Fan's Voice Staff

第75回カンヌ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞したモロッコ映画『青いカフタンの仕立て屋』の日本版新ビジュアルと新場面写真7点が解禁され、あわせて、モロッコ刺繍作家のアタマンチャック中山奈穂美によるカフタンについての解説が到着しました。

モロッコの海辺の町・サレで、伝統衣装カフタンの仕立て屋を営むハリムとミナ。ハリムは、結婚式やフォーマルな席に欠かせない伝統衣装のカフタンをミシンを使わず、全てを手仕事で仕上げる職人です。

新ビジュアルは、ハリムが一針ずつ繊細に施したペトロールブルーが鮮やかなカフタンを大きく配置され、ミナのボタニカル柄の服装と、カラフルな刺繍色が、“魅惑の国”モロッコの仕立て屋の雰囲気をよりエキゾチックに表現するデザインとなっています。

新場面写真では、体力がなくなってきたミナが、25年連れ添ったハリムと楽しい思い出を残そうと、ご馳走を作って一緒に食べたり、繊細なハリムの指先で髪を洗ってもらったり、大好きなタンジェリンの香りを嗅いだりと、何気ない幸せを噛みしめる姿が切り取られています。

カフタンはペルシャ起源で、イスラム社会で広く着用される前開きの長着。モロッコでも古くから権威の象徴とされ、やがて人々の憧れにより、儀式的なものから普段着寄りのものまで広く着用されるようになります。20世紀になると社会習慣の西洋化が進み、20世紀後半から国民性の回帰が言われるようになると再びカフタンが見直されますが、徐々に現代の華やかでモダンな結婚式などで着るものへと変わってきています。

作り方も変わり、手縫いより時間が短縮できるミシンが多くなり、刺繍も機械や輸入品、市販のレースなどに変わり、腕の良い職人も少なくなってきています。映画の中で仕立て屋ハリムの妻・ミナが嘆いていたように、できたものを受け取ってしまえばお金はいつ払うかわからない人も多く、カフタンの作り手は、長い修行と工賃が労力に合わず安いため、人気職業とはとはいえないのが現状です。

モロッコで伝統的なフェズ刺繍を習得して作家として活動するアタマンチャック中山奈穂美は「映画の中で、ハリムが新入りのユーセフに細かく指示しながら糸を撚る場面が何度も出てくるが、糸の縒り方で刺繍の出来栄えが決まってしまうため、ハリムがこだわる気持ちが分ります」「また糸を作る人と縫う人の感性がしっくり合わないと、均一な美しい糸の輝きが生かせません」と話しています。

以下、アタマンチャック中山奈穂美よりコメントと写真(2007年〜2011年撮影)が到着しています。

アタマンチャック中山奈穂美(フェズ刺繍作家)
画面をたゆとうペトロールブルーの絹の光沢は時に伝統の輝きとして美しく、
時に時代の翳りとしてもの哀しく描かれています。
愛惜だけでは説明できない執念にも似た人生と愛の深淵。
繊細な描写の全シーンに感動せずには見られませんでした。

モロッコではよく見かける結婚式用のカフタン/ブルー:見事な金の機械刺繍/白:オーガンジーに伝統的なフェズ刺繍が施されている

2枚重ねの下側の赤のサテンがカフタン/上のオーガンジーの刺繍を際立たせるためカフタンはシンプルなデザインだが、最近はウエストを絞った袖広がりの形が好まれる

織り込まれたように均一に細かな金糸刺繍がされたカフタン/年代は不詳だが刺繍の細かさとストレートなシルエットからかなり古いものと思われる

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『青いカフタンの仕立て屋』(英題:The Blue Caftan)

監督・脚本:マリヤム・トゥザニ
出演:ルブナ・アザバル サーレフ・バクリ アイユーブ・ミシウィ
2022年/フランス、モロッコ、ベルギー、デンマーク/アラビア語/122分/ビスタ/カラー/5.1ch /字幕翻訳:原田りえ 

日本公開:2023年6月16日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開
提供:WOWOW、ロングライド
配給:ロングライド 
公式サイト
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