【単独インタビュー】『RRR』NTR Jr.、ラーム・チャラン、S.S.ラージャマウリ監督
- ISO
大ヒット作『バーフバリ』シリーズを生み出したS.S.ラージャマウリ監督の最新作『RRR』が10月21日(金)に全国公開されました。
1920年、英国植民地時代のインド。拉致された村の少女を救い出すため、ゴーンド族の優しき戦士ビーム(NTR Jr.)は巨大な英国政府に立ち向かうことを決意。一方その頃、警察官ラーマ(ラーム・チャラン)はある野望を胸に、英国政府下で手柄を立てるため反逆者を捕らえようとしていました。敵対する宿命を持つ二人の男は、運命に導かれるまま邂逅し、互いの素性を知らぬままかけがいの無い親友となりますが──。
インド映画史上最高製作費7,200万ドル(日本円で約97億円/1ドル=135円)をかけた今作でラージャマウリ監督が描くのは、英国植民地下のインドとその時代に実在した二人の革命家。実際の歴史では出会うことのなかったという二人の英雄をモデルに、“もし彼らが出会って親友になっていたら…”というIFストーリーがラージャマウリ監督らしい、ヒロイックで神話的な物語が紡がれます。
そんな二人の主人公を演じるNTR Jr.とラーム・チャランは、ラージャマウリ監督の過去作でも主演を務めたテルグ語映画の大スター。豪華絢爛な宮殿での闘いや壮大な橋からのダイブ、大自然の中でのバラエティあふれるアクションなど、これでもかという程のパワフルなアクションが詰め込まれており、二人のビルドアップされた身体から繰り出される肉弾戦や、野生の動物たちとの規格外のバトルにも注目です。
『RRR』は、Rise(蜂起) Roar(咆哮) Revolt(反乱)の頭文字に由来。そのタイトル通り、まさに観客を奮い立たせ、熱狂させている本作は、世界興収においてもオープニング(2022年3月25日〜3月27日)で5,400万ドル(約74億円)を叩き出し、本年度のインド映画世界興行収入No.1の座を獲得しています。
日本公開に際し、今作で一気に世界的なトップスターへとのし上がった主演のナンダムリ・タラーカ・ラーマ・ラオ・ジュニアことNTR Jr.とラーム・チャランの初来日、そしてS.S.ラージャマウリ監督の2018年以来4年ぶりの来日が実現。Fan’s Voiceの単独インタビューに応じてくれました。
──今作はテルグ語映画としては世界中で大ヒットとなっていますが、それを受けてどのような心境ですか?
ラージャマウリ監督 もちろん、非常に嬉しく思っています。『RRR』は世界中で成功していますが、いま最も大切なのは、日本でどうなるかということです。実在したスーパースターである2人の偉大な“自由の戦士”の友情の物語を日本でご紹介できることを、本当に、本当に楽しみにしていますし、観客の皆さんの反応を心待ちにしています。
NTR Jr. (監督の回答を)カット、コピー、ペースト(笑)。
ラーム・チャラン はい、とても嬉しいです。『バーフバリ』のように、ミスター・ラージャマウリの映画が海外に進出していることは以前から知っていました。今回、『RRR』でそれが実現し、そんな素晴らしい作品に参加できたことを非常に嬉しく思っています。
NTR Jr. あなたが「世界中で」とおっしゃったように、『RRR』は各地で評価を得ていますが、僕が特に楽しみにしているのは、ラージャマウリ監督も言ったように、日本のファンにどのように受け止めてもらえるかということです。『バーフバリ』チームが来日した際に、日本のファンから大きな歓声や叫び声を浴びた動画を見たのを覚えています。僕たちも同様の反応を得られることをただただ願っていますし、映画館でファンの反応を見るのが楽しみです。
──本作は歴史だったり実在の人物をモデルにされていますが、脚本を描くにあたり、また演じるにあたり、気にかけたところはありますか?
監督 (二人の主人公のモデルとなった)コムラム・ビームとアッルーリ・シータラーム・ラージュに共通するのは、二人とも歴史から“姿を消した”時期があることです。その前に何があったのか、その後に何があったのかは歴史に残っているのですが、その“未知の期間”を映画の舞台に設定することで、必要に応じて好きなように物語を創り上げることができました。ただ、ひとつだけ史実に忠実にしたかったのは、戦士としての精神です。彼らは、自由を求めて国のために自らの命を顧みずに戦いました。その精神だけは、決して忘れないようにしました。
NTR Jr. 彼らについてはそれなりの知識もありましたが、僕たち俳優にとっては、監督が望むことがすべてです。ですから、自分の知っていることは気にせず、ラージャマウリ監督が求めるように演じました。ラージャマウリ監督は十分にリサーチをしていると思うし、長年の付き合いもあるので、僕たちは彼に全幅の信頼を寄せています。監督が何を言おうとも、僕たちは演じるだけ。彼はすべてのリサーチを自ら行い、僕たちに何をすべきか教えてくれる。俳優が安心して演技ができる演出家の一人です。ですから、僕たちは今回のキャラクターに関する多くの知識を持っていましたが、それよりもラージャマウリ監督がやってほしいと思うように演じることが大切でした。(映画に登場する)キャラクターは、ラージャマウリ監督のものですからね。
チャラン 同じくです。彼らの物語は学校に通っている頃から何度も何度も読み聞きしてきました。でも、この映画はそうした知識から来るものではなく、監督のビジョン、監督の書いた物語によるものとして捉えています。
──ラーマとビームの濃厚な兄弟愛のような関係は日本でも人気を博すと思いますが、あえてフラットな友情ではなく兄と弟のような関係性として描いた理由はあるのですか?
監督 ビームの出身の部族は、全員を“兄弟”と呼ぶ習慣があります。「アンナ」は兄という意味ですが、彼らの感覚では、それが自然な呼び方なわけです。また、その部族は皆が“土の子”だと考えるため、その延長線上で、皆が兄弟姉妹となるわけですね。
──俳優のお二人の普段の関係はどんなものですか?
NTR Jr. 僕たちはずっと前からとても良い友人です。ラージャマウリ監督ともそうですがね。その関係は今でも続いています。その友情があるからこそ、『RRR』が素晴らしい超大作になったのだと思います。
つまり、ラージャマウリ監督は良き友人を必要としていたので、僕たちがいるわけですね(笑)。だからこれからもずっと友人でいられると思います。それが最も大事なことだと思います。ラージャマウリのような監督は、俳優に絶大な自信を与えてくれます。俳優としては不安を感じないようにしなければなりませんが、その点、僕とチャランは友人同士だったので、互いに不安を感じることもありませんでした。ただ、僕たちはバックグラウンドも異なることから、演技のスタイルも違います。それぞれ自分のやり方で、最終的にラージャマウリ監督が求めるものを創り上げました。
チャラン ……僕もです。
(一同笑い)
──今作は最初にお二人がキャスティングされ、それから物語やキャラクターが生まれたと伺いました。お二人とも監督の過去作に出演されていますが、今回改めてこのお二人をキャスティングをした理由と、お二人の魅力をお聞かせいただけますでしょうか。
監督 まず第一に、複数のスターが登場する映画を撮りたいと長い間思っていました。1人のスターでも十分に頭痛の種ですが、2人いるとさらに大変です。
(俳優二人、爆笑)
ですので、彼らの間に良い関係があることは非常に重要です。いま話にあったように、二人は良い友人同士なので、(今回のキャスティングが)実現したわけですね。
複数のスターを主役にするというアイディアから、いくつかイメージが思い浮かびました。全体のストーリーではなく。例えば、バイクに乗ったヒーローと馬に乗ったヒーローがぶつかり合うというようなイメージ。具体的なシーンもなければ、ストーリーもなく、ただそのイメージだけ。もともとは三角関係のラブストーリーを考えていて、二人にもその話をして「いいよ」と言われたので、映画の製作を発表したのですが、そうしたら妻から「あなたが撮ったラブストーリーなんて誰が観るの?」と言われました(笑)。
NTR Jr. 『バーフバリ』の後だしね(笑)。
監督 それで怖くなっていろいろと調べていたら、同時代に同じように姿を消した自由の戦士たちに行き当たりました。これは素晴らしいと思いました。実在の2人の自由の戦士を、人生の友である2人のスーパースターが作り上げる──良いアイディアだと思いました。二人(NTR Jr.とチャラン)は一緒にいると興奮するし互いをイジりまくるので、撮影を中断してケンカになることもありました。本当に子どものような問題ばかり起こすので、頭が痛かったです(笑)。
(一同笑い、俳優二人がブツブツ言い合う)
──物語は『モーターサイクル・ダイアリーズ』や『イングロリアス・バスターズ』にもインスパイアされたと伺いましたが、アクション面で影響を受けた作品はあるのですか?
監督 具体的なものは特にありませんが、私の映画では、実際にアクションが起こる前に多くの感情的な展開があります。観客が「今こそ何かすごいアクションが起きて欲しい」と思う瞬間に、アクションが起きるようにしたい。これは、メル・ギブソンからインスピレーションを受けました。特に『ブレイブハート』を敬愛しているのですが、アクションが起きる前に、多くの積み重ねがあります。『RRR』だけでなく、私の映画全般に言えることですね。
──ナートゥ・ナートゥのダンスシーンはウクライナのキーウで撮影したと伺いました。ウクライナ情勢に限らず世界的な分断が大きな問題となっていますが、二人の思想を超えたつながりは心に刺さりました。今作を通して伝えたいメッセージ等はありますか?
監督 私は映画で特に何かメッセージを伝えたいとは思っていません。ただ、映画が終わる頃に、観客がとても価値ある3時間を過ごしたと満足し、幸せな気分で帰ってもらえる物語を描きたいだけです。その過程で何らかのメッセージが伝わっても、それはそれで良いですが、私の意図するところではありません。今回は、友情を根底にした特別な物語を描きたかったので、この映画を観て「人生にこんな友達が欲しい」と思ってくれたら、嬉しいですね。
チャラン 彼が言ったように、今作にはとてもエモーショナルなところもあり、アクション映画として観客に楽しんでもらうことが純粋な目的だったと思います。一方で、私はいち観客として、このような映画が観られることを誇りに思っています。この映画はとてもインドらしく、私たちの文化に根ざし、僕たちらしい絆を描いています。西洋の感覚や映画を真似しようとはしたのではなく、僕たちのインドの物語が語られていると感じます。その点がとても素晴らしく、世界中で評価されているのだと思います。
NTR Jr. 映画はエンターテインメントと考えているので、映画に何かメッセージを込めることに興味はありませんでした。映画館で2時間、3時間、あるいはそれ以上の時間を過ごすのなら、楽しませてもらいたい。だから映画は、僕にとっては純粋なエンターテインメントです。そして、『RRR』のような映画で最も興奮させられるのは、俳優の世界を広げる機会を与えてくれることです。今、僕たちは日本にいます、東京にいます。夢のようなことです。僕たちは日本に来ることをいつか必ず実現させたいと思い、夢見てきました。監督が『バーフバリ』(での来日)から戻ってきた時には、日本の「食べ物はどうだった?」「お寿司は(ほかの国と)同じだった?」と、いろいろ質問していました。とにかく、ずっと日本に来たかった。『RRR』のような映画は、私たちにその機会を与えてくれます。
『RRR』までは、僕たちの知名度は限定的で、テルグ語圏が中心でした。でも、『RRR』のおかげで僕たちは国民的ヒーローになり、さらには国際的に知られるようになりました。欧米で知ってもらうことができ、そして日本に来て、東洋でも知ってもらうことができました。これが映画の可能性です。チャランも言ったように、インドのローカルな物語がもっと世界へ出て行く必要があります。『グリーン・デスティニー』で東洋文化がグローバル化した思いますが、『バーフバリ』や『RRR』、そしてラージャマウリ監督のおかげで、テルグ語映画もグローバル化を成し遂げたと思います。
──ちなみに、もうお寿司は召し上がったのですか?好きなネタは?
NTR Jr.&チャラン はい!
NTR Jr. ウナギ!
チャラン 同じく!
NTR Jr. あとウニも!
==
『RRR』
監督・脚本/S.S.ラージャマウリ
原案/V・ビジャエーンドラ・プラサード
出演/N・T・ラーマ・ラオ・Jr.、ラーム・チャラン
2022年/インド
日本公開/2022年10月21日(金)全国公開
配給/TWIN