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2021.09.10 10:00

ダン・スティーヴンス主演『ブライズ・スピリット』公開記念トークイベントによしひろまさみち氏が登壇!

  • Fan's Voice Staff

『ダウントン・アビー』のスタッフ&キャストがオスカー女優ジュディ・デンチを迎えて名作戯曲を現代に蘇らせた映画『ブライズ・スピリット~夫をシェアしたくはありません!』の日本公開を記念したトークイベントが8月24日(火)に開催され、映画ライター・編集者のよしひろまさみち氏が登壇しました。

あの世から帰ってきた妻が夫とやり直したいと願うおかしさと切なさが織り交じった本作の原案は、天才エンターテイナーのノエル・カワードによる、1941年の発表当時に約2,000回にわたって上演された戯曲「陽気な幽霊」。

1945年には、“20世紀の三大監督”の一人と言われたデビッド・リーンにより映画化もされた名作を現代にフィットする物語として蘇らせたのは、「ダウントン・アビー」の監督のひとりであるエドワード・ホール。同ドラマのマシュー・クローリー役で大ブレイクを果たしたダン・スティーヴンスが、霊媒師の力を借りて亡き妻をあの世から召喚させるベストセラー作家をコミカルに演じ、オスカー俳優のジュディ・デンチが、不思議な力を持つ霊媒師マダム・アルカティを快演。レトロでエレガントなファッションとインテリアで彩られた英国のアール・デコ様式の豪邸を舞台に、タイムリミット付きの切ない再会を描き出しました。

映画の感想を尋ねられたよしひろ氏は、「ダン・スティーヴンスの困り顔から笑顔まで全て観られましたね。マッツ・ミケルセンも百面相的なところが観られて、それがかわいらしいのが彼のよさですが、ダンもそういう系統の俳優だったのかと…」と驚きの様子。

ノエル・カワードの魅力については、「今でいうところの”ザ・エンターテイナー”です。なんでもできちゃうのと、交遊歴がすごく幅広いんですよね。ウィンストン・チャーチル(元イギリス首相)が友達だったり、イアン・フレミング(『007』シリーズの原作者である作家)も友達で別荘が隣同士だったりと豪華すぎる。いわゆるエンターテイナーというのは、交遊歴の幅広さもひとつの魅力ですが、それの最初のような人ではないかと思います。セレブの走りということです」と紹介。

俳優としても活躍したカワードは、友人であるイアン・フレミングから『007 ドクター・ノオ』のドクター・ノオ役のオファーを断った逸話を持ち、「調べたら、その断り方もすごかったんです。“ノーノーノー、1,000回言われてもノーだ”と(笑)。そこまで頼まれても断れるぐらいの間柄だったということですよね」

さらに、「ガウンやスカーフを巻いたりって、カワードが作り出したスタイルなんです。ガウンはそもそも寝巻なんですが、それを表にも着て出ていけるリラックスできるカジュアルウェアで、しかもオシャレというスタイルをカワードが出してきた。それをこの映画でダン・スティーヴンスがやっている。ある意味でカワードのコスプレと言えますが、それが彼へのリスペクトの現れなんじゃないかと思います」と、本作のファッションに繋げたトークを展開。

本作のキャラクターが持つモダン性にも触れ、「時代を越えて語り継がれる戯曲だと思うんです。原案の戯曲でも、例えば幽霊が話しかけてくることで人生が変わっていくことや、奥さんが亡くなってしまったという悲しいエピソードなど、今この時代にリメイクされるということに意味があると思う。デヴィッド・リーン版の映画を観ていただくと分かるんですが、それとは明らかに違う部分がある。そこがすごく今らしい」

重要な役どころとして関わってくるジュディ・デンチの懐の深さについては、「なんでもできちゃう人だから。ジュディは、もともとエドワード・ホール監督のお父さんであるピーター・ホールとつながりがあった人なんです。ピーターは、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーというシェイクスピアの里である場所があり、それを作った人です。それで、”出てくれない?とお父さんから誘われたのよ”とかジュディから言われてしまったら、監督は緊張しちゃいますよね(笑)」とコメント。

さらに、「ジュディもそうですが、イギリスの俳優にインタビューしていて、アメリカ人俳優と全然違うと感じるところは、度胸の据わり方です。舞台という生で鍛えられた上で”メソッドなんてどうでもいい”と多くが言うんです。お客さんを相手に絶えず変わっていく生ものの舞台をずっとやっているから、台本を渡されてもサッとできてしまう。その器用さでイギリスの俳優が今、ハリウッドで大活躍してるんです。ハリウッドで”この俳優いいな”と思う人は、大体イギリスの俳優か舞台の経験がある人です」と、数々の取材経験をふまえた洞察を披露しました。

本作の舞台となる1930年代は、ヨーロッパでは霊媒師が大ブームの時代。「小学校の頃、ものすごい心霊ブームで雑誌『ムー』を皆で回し読みしていて、その中に出てくるエクトプラズム(霊媒の身体から発出されるといわれる正体不明の物質)の写真は、大体この時代の少し前に撮られてるんです。いまだにこの時代の写真が使われています」と紹介。その上で、本作で霊媒という題材が使われたことについて「カワードは、その時々の流行を敏感に察知して作品に入れ込んでるんです。だからこそですが、『007』も断ったんだと思うんです。”これは流行のものではなく、永遠に残ってしまうものだ”ということで、刹那でないものにはあまり魅かれないということなんでしょうか」と分析しました。

最後に「オリジナルの映画を知っている方は今は多くないと思うので、これを新作として広げていっていただきたいと思います。その上で、“実はオリジナルの映画もあるんだよ”という楽しみ方ができるんじゃないかと思います」とメッセージを寄せて、イベントは幕を閉じました。

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『ブライズ・スピリット~夫をシェアしたくはありません!』(原題:Blithe Spirit)

監督/エドワード・ホール
原案/ノエル・カワード
出演/ダン・スティーヴンス、レスリー・マン、アイラ・フィッシャー、ジュディ・デンチ
2020年/イギリス/英語/100分/カラー/スコープ/5.1ch/字幕翻訳:中沢志乃

日本公開/2021年9月10日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー!
配給/ショウゲート
公式サイト
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