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2019.08.26 18:00

鬼才ジョーダン・ピールをベタ褒め!『アス』宇野維正×立田敦子トークイベント

  • Fan's Voice Staff

『ゲット・アウト』でアカデミー脚本賞を受賞したジョーダン・ピール監督による最新作『アス』の日本公開に先立ち、映画・音楽ジャーナリストの宇野維正氏と、映画ジャーナリストの立田敦子によるトークショーが8月23日(金)に開催されました。

都内の試写室にて、本編上映後に実施された本イベント。立田は今年5月のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』を引き合いに出し、「こんな脚本書ける人がいるんだ、これはナンバー1だ、と思っていたところに『アス』を観て、双璧をなす脚本だなと。ジョーダン・ピールの脚本を書く能力は『ゲット・アウト』でアカデミー賞の受賞でも証明されていますが、その先をいってきたなと驚きました」と絶賛。

それに対して宇野も「今や世界を代表する韓国の監督とアメリカの新人監督が、こんなに近いテーマの作品を作るのかと、びっくりしましたね」と語り、両作品のテーマの一つでもある格差問題に関して、「アメリカと韓国、最近は日本映画でも取り扱う作品が増えてきている」と指摘。さらに、ジョーダン・ピールが本作に込めたテーマはアメリカだけでなく私たちにとっても身近なものであると説きます。

『アス』では、1986年にあったニューヨークからカリフォルニアまでを約600万人が手をつなぐチャリティ活動“ハンズ・アクロス・アメリカ”が印象的に描かれていることに立田が触れ、「『ボヘミアン・ラプソディ』で有名な“ライヴエイド”など、アフリカ救済のチャリティは成功していたのに、自国の貧困の救う“ハンズ・アクロス・アメリカ”は成功していないというダブルスタンダードですよね。そのアメリカの忘れ去られた人々というのを、のっけからボンと出してくるジョーダン・ピールは本当にすごい」と語ります。一方宇野も、「作中に出てくるマイケル・ジャクソンの『スリラー』のTシャツは、その年代に合った風刺ですね。彼の『スリラー』も、実はこの作品と通じるところがあります」とコメント。

立田は「今までの黒人監督作品では差別などの社会派のテーマを厳しい視点で描いていますが、この作品が新しい時代だと感じさせるのは、ジャンル映画の強みを使ってそれをやっているというところ。ワンランク上だと感じさせますね」と監督の手腕を褒めたたえる。宇野は、ジョーダン・ピールがスティーヴン・スピルバーグと同じく『トワイライトゾーン』を手掛けるなど類似点を挙げ、「彼は80年代のスティーヴン・スピルバーグと同じくらい重要な人だと思います」と熱く語ります。立田も「このまま彼は何年も撮り続けてジャンル映画でトップをとると思いますよ!」と賛同しました。

語りだすとネタばれが多くなってしまう本作に、宇野は「深読みができていくらでも話せる!」「この作品ほどリピートする必然性がある作品はない!」とヒートアップ。立田も「最低3回は観てほしい」と投げかけ、イベントは幕を閉じました。

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『アス』(原題:Us)

監督・脚本・製作/ジョーダン・ピール
製作/ジェイソン・ブラム
出演/ルピタ・ニョンゴ、ウィンストン・デューク、エリザベス・モス、ティム・ハイデッカー、シャハディ・ライト・ジョセフ、エヴァン・アレックス、カリ・シェルドン、ノエル・シェルドン
ユニバーサル映画

日本公開/9月6日(金)TOHOシネマズ 日比谷他、全国ロードショー!
配給/東宝東和
公式サイト
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