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2019.03.03 20:45

『グリーンブック』ピーター・ファレリー監督初来日!舞台挨拶に登壇

  • Fan's Voice Staff

本年度アカデミー賞作品賞など3部門で受賞を果たした『グリーンブック』のピーター・ファレリー監督が初来日し、3月3日(日)に都内の劇場で舞台挨拶に登壇しました。

 

 

1962年アメリカ。粗野で無教養だけれど人間的魅力に溢れるトニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)は、天才黒人ピアニスト、ドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)の運転手兼用心棒として、偏見と差別が根強い南部に演奏ツアーへと旅立つ。二人の旅の道標となるのは、当時の黒人が安全に旅をするために欠かせない旅行ガイドブック〈グリーンブック〉だった。

 

ガサツだけれどハートのあるイタリア系運転手と黒人天才ピアニストの友情を描いた本作は、父トニー・リップからドクター・シャーリーとの旅の話を聞いた息子ニック・バレロンガがプロデューサーとして映画化した感動の実話です。

 

3月1日(金)に満を持して封切られた本作は、国内興収20億円を目指せる大ヒットスタートを切り、現在150館で公開中のところ、来週以降250館への拡大公開が決定したばかり。

 

 

TOHOシネマズ 日比谷での上映終了後に実施された今回の舞台挨拶。

 

満員御礼の会場に拍手喝采で迎えられ、「こんにちは」「ありがとう」と日本語で挨拶しながら登壇したピーター・ファレリー監督は、「この場にこれて、言葉で言い表せないくらい嬉しく思います。今回が初来日ですが、日本にはずっと来たく思っていました。(配給の)ギャガさん、お呼びいただきありがとうございます。非常に光栄です」と挨拶。

 

本国を始め、世界中で大反響を呼んでいることに対しては、「本当に驚かされています。こんなことになるとは、撮影中は全く想像していませんでした。これまで私はコメディ作品を作ってきたので、賞というものに縁はありませんでした。賞レースでこの映画がこれ程の反響を呼ぶことになるとは、とにかく驚きで、夢のようです」と胸中を明かします。

 

 

また、「日本は大好きです。ファンタスティック。非常に美しい街で、安全で、どこにでも行ける気がします。こうした洗練された美しいワクワクする街に旅するのが、私は大好きです。噂に聞いていたとおりのところです」と初めて訪れた日本の印象を語りました。来日経験のある弟・ボビーからは、「とにかく食べろ。日本の食べ物は本当にすごいから。それからウィスキーもオススメ」と言われていたそう。

 

ヴィゴ・モーテンセン(左)とマハーシャラ・アリ

 

『グリーンブック』は、ヴィゴ・モーテンセンとマハーシャラ・アリの絶妙な掛け合いが、映画の肝となっていますが、「ヴィゴとマハーシャラは、1,2年前に少しだけ話したことがあったそうですが、撮影前のプリプロダクションの段階で顔を合わせた時、二人はすぐに打ち解けあいました。二人とも意見を出すタイプの俳優で、脚本にも彼らなりの意見があったので、細かく話し合いました。ヴィゴは、作中に登場する”石”ですら、自分で選んだのですよ。彼はどんな石を使うのか、とてもこだわっていました。二人は非常に優れた俳優ですし、当初から仲良くなっていたので、素晴らしい現場になるのはわかっていました」と、制作の様子を明かしました。

 

 

注釈を加えながら丁寧に訳す通訳者に対して「通訳さん、内容を追加して翻訳しているのでは?」とツッコミを入れながらも、監督はさらに続け、「私はコラボレーションが好きで、俳優が意見を出してくれるのは歓迎します。いつもは弟と映画を作っているので、意見が合わないこともあります。私はそうやって他人の意見を聞きたく思っていて、俳優の声にも耳を傾ければ、さらに良くなります。必ずしもその意見が取り入れられるわけではないのですが」と、自身のポリシーを語りました。

 

映画に入れられなかったエピソードがあるか?との問いには、「たくさんあります。実際の旅は1年かかっていて、10月からクリスマスイブまでの最初の2ヶ月の後も、彼らは1年近く旅に出たわけです。その一年間の書かれた67通の手紙が残っていて、最初の2ヶ月の後にも様々なことが起きています。映画では、その手紙を我々なりの順で使いました。8ヶ月目の手紙を使ったりもしましたが、実際の手紙です。カットする結果となった大きな出来事には、JFKの暗殺がありました。事件発生当時、彼らはまだ旅行中で、実際には葬儀に参列しています。JFKのシーンを使わなかったのは、二人の男の関係を描くストーリーから外れてしまう感じがして、そのシーンを入れてしまうと、私が思い描いてた映画とは違ったものになるような気がしたからです」。

 

ここで、女優として活躍中で、ピアニストでもある松下奈緒さんが花束を持って登場。春らしい黄色のワンピースに身を包んだ松下さんは「”グリーン”ブックですが、イエローで(笑)。もう春ですので、イエローにしてみました」とコメント。

 

 

監督に花束を贈呈後、松下さんは、「監督にもっと日本を好きになって欲しい」ということで、自身が大好きという京都のお箸屋さんのお箸も、監督のご家族の分も含めプレゼント。それを受け取った監督は、「ワオ。信じられない。ありがとうございます」と、非常に喜んだ様子。

 

 

「“またこの二人に会いたいな”と思えるエンディングだった」と松下さんが映画の感想を述べると、監督は「そのエンディングがあったからこそ、この映画を作りたいと思いました。希望のあるエンディングです。彼らは実際に友人となり、その友情は長く続きました。もし彼らが、反りが合わないまま終わっていたら、この映画化に私は興味を持たなかったでしょうね。私は希望のあるストーリーを伝えたかったのです。シャーリーは本当にクリスマスイブにトニーの家を尋ね、その時彼は、子どもたちのために2足のスケート靴を手に持っていたそうです。私はこの話が本当に好きで、だからこの映画を作りたかったのです」と答えました。

 

 

本編終盤、バーでシャーリーが「木枯らしのエチュード」を弾き出して、そこからジャズのセッションになっていくシーンで心を鷲掴みにされたと話す松下さん。監督は、「私もそのシーンは大好きですが、長々と描くわけにはいきませんでした。本編でかなり後の方に出てくるシーンですので、観客の集中力が途切れてしまうのではという心配がありました。あのシーンは、”ジューク・ジョイント(juke joint)”と呼ばれた黒人限定のクラブで撮影しました。アメリカ南部のルイジアナでそうした店を探し出したのですが、古くからある店で内装を作り変える必要もなく、そのまま使いました。今はもう黒人限定ではありませんが、30〜60年代当時は黒人しか入れないお店だったのです。リアルな店だからこそのエネルギーを、中に入るだけで感じました」と撮影秘話を明かしてくれました。

 

 

「音楽が人と人をつなぐ感じがした」と松下さんが感想を伝えると、監督は「人々はドン・シャーリーを聴かなくなってしまったので、彼の曲は記憶から失われていました。ですが彼の音は本当に独特で、彼はクラシックのピアニストになりたかったものの、実現できなかったので、ブルースやジャズを様々なスタイルにミックスして、あのような音楽を創り出しました。この作品で、また彼の曲が注目されるのは、嬉しいことです」。

 

終了間際、監督は、「繰り返しになりますが、私をお呼びいただきありがとうございます。初めて日本に来ましたが、期待通りのところでした。日本はいま、世界でいちばんヒップな国のようで、私の大学生の子どもたちは、ファッションをはじめ日本のものは何でも好きなようです。本当にみなさん温かいですし、非常に洗練されていて、ここに来れて本当に光栄です」と話し、加えて、まだこの映画を観ていない人に向けて「ぜひこの映画を観て、アメリカの公民権運動の歴史や、かつて黒人が直面した、そして今も直面する困難を知っていただければと思います。それから、他の人、自分とは違う人に対して、少しでも心を開くきっかけにもなればと思います。とても単純な話のようですが、我々は皆同じ人間なのです。お互いに話しさせすれば、なにかしらの共通点を見つ出すことができると思います。それがこの映画のメッセージです」と語りました。

 

 

フォトセッション中、MCからの提案で、掛け声として監督が「グリーンブック」、松下さんが「アカデミー賞受賞」、観客が「おめでとう(拍手)」と順に声を出そうということに。

 

リハーサルでMCが「3,2,1 …」とカウントし、場内が監督の第一声に向けて構えると、すかさず「Shoplifters!」と叫ぶ監督(『万引き家族』の英題)。さすがコメディ映画の名手、会場一同、どっと笑いと拍手に包み込まれました。監督は、「『万引き家族』は大好きなんです。まだ観ていない人は、ぜひ観てください。本当に素晴らしい作品です」と、本年度の賞レースを共にした是枝監督にも称賛を贈りました。(※『万引き家族』は『グリーンブック』と同じくギャガ配給)

 

再リハーサルに続き、本番では正しく「グリーンブック!」と声を上げた監督。キャノン砲から飛び出したリボンが舞う中、舞台挨拶は華やかに幕を閉じました。

 

 

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『グリーンブック』(原題:Green Book)

1962年、差別が残る南部でコンサートツアーを計画する黒人ジャズピアニスト、ドン・シャーリーは、粗野で無教養のイタリア系、トニー・リップを用心棒兼運転手として雇うことに。黒人用旅行ガイド〈グリーンブック〉を頼りに正反対のふたりは旅を始めるのだが…。

 

監督/ピーター・ファレリー
出演/ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリーニ
2018年/アメリカ/130分/字幕翻訳:戸田奈津子

 

日本公開/2019年3月1日(金)TOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー
提供:ギャガ、カルチャア・パブリッシャーズ
配給:GAGA
公式サイト
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