Report

2018.12.27 17:15

『マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!』ピーター・バラカン氏トークイベントレポート

  • Fan's Voice Staff

英国を代表する名優マイケル・ケインがプレゼンターとして、彼が生きた激動の1960年代のロンドン・カルチャーを案内するドキュメンタリー映画『マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!』の日本公開に先駆け、特別試写会が12月26日(水)に都内で開催され、上映後に本作の字幕監修を務めたブロードキャスターのピーター・バラカン氏が登壇しました。

“スウィンギング・ロンドン”といわれ、世界のポップカルチャーやファッションに今でも影響を与え続ける60年代のロンドンカルチャー。本作には、アイコンともいうべき数多くの人々が登場。ポール・マッカートニー、ローリング・ストーンズのミック・ジャガー、ザ・フーのロジャー・ドールトリーといった大物ミュージシャン、女優で歌手のマリアンヌ・フェイスフル、人気モデルのツィギー、カメラマンのデイヴィッド・ベイリー、ミニスカートの発案者であるファッション・デザイナーのメアリー・クヮントに加え、ジョン・レノン、デイヴィッド・ボウイ、ヴィダル・サスーン、デイヴィッド・ホックニー、ジョーン・コリンズ、サンディ・ショウ等、数多くのカルチャーの開拓者たちの貴重なアーカイブ映像が、たっぷり盛り込まれています。

本作で、プロデューサーを担うとともに、語り手としてロンドンの60年代カルチャーを紹介するマイケル・ケインは、その60年代にコックニー訛りで話す労働者階級の出身ながらも、『キングスマン』の元ネタの一つなった『国際諜報局』や『アルフィー』などでブレイク、新しい時代の追い風を受けることで自らの道を切り開きトップランナーとなりました。『ハンナとその姉妹』、『サイダーハウス・ルール』で2度のアカデミー賞を受賞する英国を代表する俳優です。また、クリストファー・ノーランの『バットマン』シリーズや『キングスマン』シリーズなど、85歳となった今でも第一線で活躍し続ける英国の大スターです。

1960年代にイギリスで青春時代を過ごし、当時の空気感を直接肌で感じていたピーター・バラカン氏は、本編上映後にステージに登場、観客から大きな拍手で迎えられました。

「本作で描かれている1960年代はまさに僕の青春時代だから、何とも言えない懐かしさがありました。それと同時にこの時代は自分が子供だった時なので、今映画を通して60年代を見直すことができるのはまた時代の見え方が変わってくるし、当時自分が意識していなかった社会への変革もなるほど、と思うことがずいぶんありました」と映画の率直な感想を述べました。

また、本作で使用されたアーカイブ映像は未公開のものが大部分を占めていることに対しては、「これらの映像は主にテレビ用に撮られたものではないかと思います。昔コメディドラマを撮っていたスタッフが本作でもクレジットされていて、とても懐かしくなりました。また、60年代を如実にとらえているものが多く、そしてカット割りがすごく早いんですよね。何回も観てやっと気が付くこともありました」とコメント。

MCが「イギリスの階級制度とアクセントが密接につながっていたことに驚いた」と話すと、「今もありますが、昔は階級社会がもっと顕著で、イギリス人にとってはそれが当たり前の時代でした。イギリス人は“口を開けば誰かに嫌われる”という格言みたいな言葉があります。要するに口を開けばそのアクセントで階級がすぐにわかってしまう。そしてどういう人か判断されてしまうのです。一方で僕が20代で日本に来た時は、アクセントがどうこうというよりは、会って5分くらいで大学を探り合い、それで優劣をつけようとしていましたよね。どこの国でもそういうことがあるのだなと思いました(笑)こういうものは潜在意識で持っているものですから、ビートルズが持つ力は本当にすごいと思いました。彼らはリバプールのアクセントで歌っていたし、インタビューもされていました。それによって人々の価値観もだいぶ変わりましたし、逆に、中流階級の標準語を話す人がわざわざ労働者階級的なアクセントで喋ったりすることが多くなったんです。その方がカッコよくなってしまった。60年代からその後も少なくとも音楽の世界ではずっと労働者階級のミュージシャンがかっこいいとされていますよね。とにかく若者が主役になれたことも画期的だったと思います。どこの国でもそうなったと思いますが、イギリスがとても早かったのではと思います」。

日本でも馴染み深いヴィダル・サスーンやミニスカートの発案者メアリー・クヮントについては、「ビートルズと同じ時代に革命を起こした人たちですよね。モデルのツィギーも、雑誌を開けば必ず彼女がいて、今のモデルの形を作ったとも言っていいと思います」とコメントしました。

劇中で使われている音楽については「キンクスやアニマルズの曲といった使用されている楽曲が、映像や内容とかなりリンクしており、確かにこの時代はこうだったと思えることが多く、歌詞もぴったりでしたね」と語り、音楽映画のつながりとして現在大ヒット中の『ボヘミアン・ラプソディ』をどのようにとらえているかと問われると、「音楽を題材とした映画が日本でここまでヒットするのは驚きました。一つの娯楽映画としてすごくよくできていると思いました。日本では洋楽を聞く人口がかなり減っているから、何かこれをきっかけに面白い音楽が海外にもあるんだなと知ってもらいたいですね」と明かしました。

最後に観客から字幕監修に関する質問が出ると、「いくつかイギリス人にしか分からないニュアンスの表現があったので気を配りました。また、固有名詞のカタカナ表記は仕事を受ける時からかなりこだわりました!」と字幕に込めた思いを語り、トークを締めくくりました。

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『マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!』(原題:My Generation)

監督/デイヴィッド・バッティ
プレゼンター・プロデューサー/マイケル・ケイン
出演/マイケル・ケイン、デイヴィッド・ベイリー、ポール・マッカートニー、ツィギー、ローリング・ストーンズ、ザ・フーほか
2018年/イギリス/カラー(一部モノクロ)/85分/PG12/英語/日本語字幕:野崎文子/字幕監修:ピーター・バラカン

日本公開/2019 年1月5日(土)、Bunkamura ル・シネマほか全国順次ロードショー
配給/東北新社、STAR CHANNEL MOVIES
公式サイト
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