Column

2017.03.07 17:40

『ディフェンダーズ』への道 〜 Marvel × Netflixシリーズの軌跡 〜

  • Aquila

『アイアンマン』から始まった映画シリーズ、TVドラマ、原点のコミックなどその世界を急速に広げているマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)。中でも特に革新的なシリーズが、Netflixにて配信されているオリジナル・ドラマシリーズだ。

 

© Netflix

 

2015年、定額映像配信サービスとして満を持して日本に上陸したNetflix。ローンチの目玉コンテンツのひとつとして配信されたのが『Marvel デアデビル』だ。

 

Netflixオリジナルドラマは、映画に比肩する高いクオリティに加えて、インターネット配信限定という特性から、既存のTVでは描けない容赦のない暴力・性描写をも含むことがある。『デアデビル』、続けて制作された『Marvel ジェシカ・ジョーンズ』『Marvel ルーク・ケイジ』も例にもれず、その洗練された激しい格闘アクションやニューヨークを舞台としたダークな作風によって多くのファンに支持されている。

 

ただ暗いというだけではない。派手なコスチュームを着用しないジェシカ・ジョーンズや、差別に晒され続けているアメリカの黒人社会の中で誇りを守るために立ち上がるルーク・ケイジ。彼らは、アイアンマンやキャプテン・アメリカのような表舞台で活躍するスーパーヒーローたちとはまた違う、現代における新しいヒーロー像を体現しているのだ。

 

本記事では、3月17日に配信開始予定の最新作『Marvel アイアン・フィスト』、そしてデアデビル、ジェシカ・ジョーンズ、ルーク・ケイジ、アイアン・フィストの4ヒーローが集結するクロスオーバー作品『Marvel ディフェンダーズ』(2017年中に配信予定)に向けて、これまでのシリーズを復習し、そのみどころを紹介していきたい。

 

(※本記事では未見の方に配慮し、核心部分のネタバレはできるだけ避けて紹介します)

 

『デアデビル』

まずはシリーズ第1作、『デアデビル』。

 

©2012 Marvel & Subs.

 

ニューヨークの空に現れたエイリアン軍団をヒーローチーム、アベンジャーズが撃退した「ニューヨークの戦い」から2年。街の半分が破壊されたニューヨークは急速に復興していたが、その裏で治安は悪化。警察は脅迫・買収され、犯罪組織による武器や麻薬の密売、果ては人身売買までもが公然と行われるようになっていた。

 

© Netflix

 

そんな中、大手建設会社であるユニオン・アライドの社員であった女性カレン・ペイジは、ふとしたことから犯罪組織に大量の金が横流しされている記録を見つけてしまう。口封じのため殺人事件の犯人に仕立て上げられた彼女を救ったのは、新米弁護士のマット・マードックとフォギー・ネルソンだった。ふたりは事務所を立ち上げたばかりで、依頼人を探していたのだ。

 

© Netflix

 

しかし、マットには秘密があった。彼が幼い頃、交通事故を起こしたトラックが積んでいた化学物質を目に浴び、視力を完全に失ってしまった。しかし、スティックと名乗る老人と出会ったことで彼は再び立ち上がる。厳しい修行により、肉体を極限まで鍛え上げたのだ。
また、化学物質の影響によって視覚以外の四つの感覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚、が非常に鋭敏になっていた。

 

© Netflix

 

これにより、マットは視覚に頼らずとも周囲の状況を”見る”ことができる。彼はその力を使い、夜な夜なフードを被って街へ繰り出しては、犯罪阻止のため自警団として活動していたのだった。

 

©Netflix

 

彼を唯一サポートするのは、ある夜に出会った看護師クレア・テンプル。何度傷付き倒れても戦うことをやめないマットを、クレアは献身的に治療する。しかし、親友であるフォギーにすらその正体を隠し孤独に戦いを続けるマットの正義は、次第に暴走してゆく。血まみれになりながらも容赦なく悪人を叩きのめすその姿は、“ヘルズ・キッチンの悪魔(デビル)”と呼ばれ、恐れられるようになった。

 

© Netflix

 

彼が相対することになるのは、裏社会を牛耳る帝王(キングピン)ウィルソン・フィスク。強靭な肉体と明晰な頭脳を誇り、街を自分ひとりが支配することで完全に浄化しようと考える男である。ロシアや中国のマフィア、日本のヤクザまでもがヘルズ・キッチンの覇権を狙って参入する中、フィスクは彼らを傘下に置くことで逆に利用し、一大勢力を築き上げる。冷酷な手段を躊躇いもなく駆使するフィスクには、警察や記者ですら手出しできないのだ。

 

© Netflix

 

犯罪王としての一面を持ちながら、ロマンチストでもある彼は、ある日画廊でひとりの女性・ヴァネッサと出会う。次第に彼女と恋に落ちてゆくフィスクは、自身の壮絶な過去や、犯してきた数々の過ちと向き合うこととなるのだった。

 

© Netflix

 

法の無力さを知らしめられ、自警団の必要性を痛感するマット。もはや法では裁くことのできないほどの権力を握ったフィスク。後戻りのできない二人は、お互いの全てを賭けてぶつかり合う。

 

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〜本作のみどころ〜

MarvelとNetflixのタイアップによるドラマシリーズの最初の作品である『デアデビル』。連続ドラマでありながらビンジ・ウォッチング(一気見)を想定した作劇や、ネット配信だから可能な暴力描写、武器やCGではなく肉弾での格闘戦をメインに据えたアクションなど、本作には挑戦的な要素が多く盛り込まれている。キャプテン・アメリカが一撃で数人倒してしまうであろうギャングですら、常人であるマットには強敵となる。当然ナイフや銃による反撃も全身に受け、血まみれになりながら何度も相手を殴りつけ、ようやくノックアウトする。その姿には確かに痛々しさを覚えるが、同時に胸には熱いものがこみ上げてくる。ただの人間でありながら、しかも世界や銀河を救うためではなく、路地裏の子供を守るために立ち上がる”ヒーロー”。そんな男の物語を見てみたいとは思わないだろうか?

 

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『ジェシカ・ジョーンズ』

次に制作されたのは『ジェシカ・ジョーンズ』。2015年末に配信。

 

© Netflix

 

ヘルズ・キッチンで私立探偵を営む女性、ジェシカ・ジョーンズ。超人的なパワーと頑強な肉体をもつ彼女は、かつてヒーローとして人々を救うため活動していた。しかし、人の行動を操ることができる謎の男・キルグレイヴに出会ってしまう。ジェシカは彼に精神を掌握された経験から心に傷を負い、第一線を退いていたのだった。

 

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そんな中、彼女のもとにある老夫婦からの依頼が舞い込む。行方不明になっている娘を探してほしいというのだ。事件の影にキルグレイヴの存在を感じ取ったジェシカは、義姉トリッシュや看護師のクレア、そして同じく超人であるバーテンダー、ルーク・ケイジらと共に、過去のトラウマと戦いはじめることになる。しかし、キルグレイヴは周囲の人間を操り際限なく巻き込み続ける。ただの超人でしかないジェシカにとって、彼との戦いは困難を極めるのだった。

 

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〜本作のみどころ〜

ジェシカ・ジョーンズは、普段着のまま戦う女性ヒーローである。主演を務めたクリステン・リッターがインタビューなどで語る通り、ジェシカは露出の多いコスチュームを着て戦うのではなく、レザージャケットとジーンズのみのシンプルな衣装に身を包む。画一的な「ヒロイン」のイメージを打破したキャラクター造形は評価に値するだろう。これからの女性ヒーロー観を一変させた名キャラクターであることは言うまでもない。

 

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また、本作のヴィラン(悪役)であるキルグレイヴも魅力的な人物だ。言葉だけで他人を洗脳し、その行動を操ることができる彼は非常に傲慢な性格で、この世に手に入れられないものはないと信じ込んでいる。

 

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劇中でも多くの人々、特に女性たちを操って自分の好きなように弄ぶ彼はまるで”支配”そのものの象徴のような存在。ジェシカは仲間たちを巻き込まないよう、無敵ともいえる彼に孤独に立ち向かっていく。“無敵”ともいえるその圧倒的な能力の描写も必見である。

 

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『デアデビル』シーズン2

2016年春に配信されたのが『デアデビル』シーズン2。

 

© Netflix

 

夜の闇に紛れ、ヒーローとして戦いを続けるうち、命知らず(デアデビル)と呼ばれるようになったマット。そんな彼の前に新たな敵が立ちはだかる。犯罪者やギャングを独自のルールで裁き、問答無用で射殺する”パニッシャー”ことフランク・キャッスルである。

 

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かつては家族を愛する父親だったフランク。しかし、家族で訪れた公園で偶然ギャング同士の抗争に巻き込まれ、妻と二人の子供を失ってしまう。彼自身も重傷を負うが生き延び、復讐のため武器を取ったのだった。犯罪者を痛めつけはしても決して殺さないマットは彼に反発するが、一切手加減のないパニッシャーの攻撃に圧倒されてしまう。

 

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さらに、かつてスティック老人のもとで共に修行した女性暗殺者・エレクトラも現れる。かつてマットとも惹かれ合った仲である彼女の心は、殺人衝動と彼への愛の間で揺れ動く。

 

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しかし、彼女やスティックの所属する暗殺者組織”闇の手”はそれを許さない。絶大なパワーを持つといわれる謎の存在”ブラック・スカイ”、そして死んだはずの強敵の復活。ニューヨークを舞台にした”闇の手”による巨大な計画が進行する中、デアデビルの戦いは熾烈さを増してゆくのだった。

 

〜本作のみどころ〜

『ジェシカ〜』でその人気を不動のものにした本ドラマシリーズ。そんな中で制作された『デアデビル』シーズン2では、全編に渡って『ディフェンダーズ』に繋がる謎や強大な敵の存在が示唆されている。

 

もちろん、単独作品としても十分楽しめる。本シーズンの魅力はなんと言っても”パニッシャー”の存在だ。

 

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悪党を徹底的に粛清・処刑するクライムファイターとして、マーベル屈指の名キャラクターである。原作でも根強い人気を誇る彼の登場は、多くのファンが待ち望んでいたものだろう。パニッシャーことフランク・キャッスルはこれまで何度も映像化されてきたキャラクターだが、今作では特に彼の心の闇、精神面での弱さについて重点的に描かれた印象である。超然としたダークヒーローでありながら人間の部分を捨てきれておらず感情移入できてしまう、そんなパニッシャーは世界中のファンからも絶賛をもって受け止められた。その熱狂的な反響を受けてか、なんと彼を主役としたドラマシリーズ『Marvel パニッシャー(原題)』も制作が予定されている。

 

『ルーク・ケイジ』

そして2016年秋『ルーク・ケイジ』が配信された。

 

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ルーク・ケイジは元囚人で、刑務所内での違法な実験によって鋼鉄の皮膚と怪力を得た超人である。愛する妻を失ったことから生きる目的をなくした彼は、ヘルズ・キッチンで小さなバーを経営していた。

 

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しかし、ジェシカ・ジョーンズと関わったことによってキルグレイヴに店を爆破されてしまう。行き場を失い、ジェシカとも別れてしまったルークはニューヨークのハーレムへと流れ着く。妻とも親交があった街の顔役で、かつて不良少年たちを束ねるリーダーであった男・ポップの理髪店に身を寄せた彼は、アルバイトで日銭を稼ぎながら生活していた。

 

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そんなある日、ポップが面倒を見ていた不良少年のひとりが、武器の闇取引で起きたトラブルに巻き込まれてしまう。ポップは中立地帯となっている理髪店に彼をかくまうが、彼が怒らせてしまったのはハーレムの大物・コットンマウスだった。

 

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自らを帝王と称し、あらゆる犯罪に手を染めながらも独自の流儀をもつコットンマウス。そして恩あるポップと彼の店を守るため、彼の前に立ちはだかるルーク・ケイジ。二人のプライドを賭けた戦いが始まった。

 

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〜本作のみどころ〜

ルーク・ケイジ。パワーマンの愛称で呼ばれるこの男は、ただ平和や正義のためだけに戦うのではない。ヴィランのコットンマウスやブラックマリアは、確かに平和を乱す悪人たちである。しかし、ルークが戦うのはあくまで”誇り”を守るため。ただのし上がるためだけに、彼らは手段を選ばず邪魔者を排除し、悪行を重ねていく。黒人たちの夢と希望の象徴であるハーレムを牛耳ろうとする彼らに立ち向かうため、無敵のルーク・ケイジは拳を振るうのだ。

 

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アメリカの黒人社会で生まれた独特の文化の影響は、本作品自体にも如実に現れている。登場人物たちの語る、歴史を刻んできた偉人たちへの敬意に満ちた言葉や、ヒップホップやソウル・ミュージックの名曲をバックに戦うルークの姿。そこには往年のブラック・ムービーの系譜を感じずにはいられない。その極致ともいえるエピソードが、第12話『混沌に謳う詩』である。

 

ウータン・クランの一員メソッド・マンがゲスト出演するこの回では、ハーレムという街の希望の象徴としてのルーク・ケイジの姿、そして抑圧され差別されてきた黒人たちの”誇り”が如実に描き出されている。ぜひその目で、その魂で確かめてほしい。

 

ここまで三人のヒーローたちを紹介してきたが、彼らは決してひとりではない。同じニューヨークで戦うこのヒーローたちはチームを結成し、力を合わせて強大な敵に立ち向かってゆく。
それが『ディフェンダーズ』である。

 

© Netflix

 

マット・マードック(デアデビル)、ジェシカ・ジョーンズ、ルーク・ケイジ、そして3月17日に配信される最新作『アイアン・フィスト』の主人公ダニー・ランドを加えた四人のヒーローたち。彼らを主役としたクロスオーバー・ドラマシリーズ『ディフェンダーズ』は2017年夏頃に配信される予定だ。

 

『アイアン・フィスト』

 

ではここで、最後の”ディフェンダー”となる四人目の男、アイアン・フィストについて簡単に予習しておこう。アイアン・フィストことダニエル(ダニー)・ランドは崑崙(クンルン)で修行し、”気”を操る拳法を学んだ武術家。不死身の龍シャオラオの心臓の力をその手に宿し、鋼の拳とアイアン・フィストの称号を手に入れた人物である。

 

アイアン・フィスト、デイビッド・アジャによる

 

パワーマンことルーク・ケイジとはヒーローズ・フォー・ハイアー(雇われヒーロー)というチームを組んだこともあり、非常に関わりが深い。

 

Power Man and Iron Fist Vol.1 #50, 1978

 

では、原作におけるディフェンダーズとは一体どういうチームなのか?

 

Marvel Feature #1, 1971

 

ディフェンダーズは、異世界の脅威から地球を守るためドクター・ストレンジによって結成されたチームである。創設メンバーはハルク、ネイモア(サブマリナー)、そしてシルバーサーファー。2011年に始まったシリーズでは、ハルクの代わりにレッドシーハルクとアイアン・フィストが加入した。

 

……実は、ドラマ版とはメンバーや設定が大きく異なっている。このことから、名前だけを借りた全く別のチームになるとも予想されている。

 

また、今後の展開として、先述した『パニッシャー』の他にも『デアデビル』シーズン3、『ジェシカ・ジョーンズ』と『ルーク・ケイジ』はいずれもシーズン2の制作が決定している。

 

より広がり、深まっていくMCUの世界。いつか彼らディフェンダーズが映画で活躍するスーパーヒーローたちと出会い、肩を並べて共に戦う日が来ることに期待したい。

 

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© Netflix

 

Marvel × Netflixドラマシリーズ最新作『Marvel アイアン・フィスト』は、2017年3月17日に全話配信開始。

 

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