【インタビュー】『クリード 過去の逆襲』マイケル・B・ジョーダンが乗り越えた“未知の恐怖”と新たな挑戦
- Ron Sekiguchi
伝説のボクシング映画『ロッキー』のDNAを継承した『クリード』シリーズ最新作『クリード 過去の逆襲』が5月26日(金)に日本公開されます。
ロッキーの魂を引き継いだチャンプ、アドニス・クリード(マイケル・B・ジョーダン)の前に現れたのは、ムショ上がりの幼馴染デイム(ジョナサン・メジャース)。実はクリードには、家族同然の仲間を宿敵に変える、誰にも言えない過ちがあり──。栄光を掴んだ最強チャンプと、全てを失ったムショ上がりの幼馴染との血と涙の壮絶な死闘が始まる!
シルベスター・スタローンからサーガを託された主演のマイケル・B・ジョーダンは、先日発表された米タイム誌「世界で最も影響力のある100人」でアーティスト部門に選出されて表紙を飾ったほか、『ブラックパンサー』(18年)のキルモンガー役などで、幅広い世代から人気を集める若手。大の日本のマンガ・アニメ好きとしても知られ、本作では「僕が愛する日本アニメの友情や絆の複雑な描き方を、旧友が宿敵となる本作に取り入れた」と語っています。
初監督にも挑戦した本作では、スポーツ映画初となるIMAX認証デジタルカメラでの撮影を敢行。ド迫力のファイトシーンはさらなる飛躍を遂げ、まるでリングサイドにいるかのような圧巻の臨場感を与え、3月に公開された全米では『ロッキー』&『クリード』サーガ史上最高の興行収入記録を更新する大ヒットを遂げました。
日本公開に先立ちマイケル・B・ジョーダンが初来日を果たし、インタビューに応じてくれました。
──『クリード』シリーズ3作目となる本作の監督は、いつ頃からやりたいと思っていたのですか?実際にやってみて、やりがいや難しかったことがあれば教えてください。
『クリード 2(炎の宿敵)』制作の中盤から終わり頃にかけてだったかと思いますが、『クリード 3』を監督をすることについて…少なくとも『クリード3』がどんな風になってほしいか、空想し始めました。僕は長い間俳優をやってきましたが、何をすべきか指示を受ける一方で、自分のアイディアややってみたいことが実現しなかったり、完成した映画に反映されなかったりすると、「もし自分が監督する機会があればこんな風にできる、こんなことをやってみたい」と、自分の中に溜め込むようになりました。そして今回、『クリード 3』を監督する機会が訪れて、そうしたことを引き出してつなぎ合わせるようにして始められたし、監督として挑戦できることが本当に楽しみでした。
本当に多くのチャレンジがありましたが、監督業における最も難しいことのひとつといえば、時間管理だと思います。僕はこれまでに撮影現場での経験は十分ありますが、監督をしたことがなかったため、その未知の恐怖を乗り越えることが最も大きな挑戦でした。その不安を乗り越えてしまえば…初日を終えた後は、本当に自然体でリラックスした気持ちで臨むことができました。それ以降は最も高度なマルチタスクといいますか、衣装、ヘアメイク、美術、視覚効果、ボクシング、振り付けなど多岐にわたるマルチタスクをこなすのは初めてだったので、それが最大のチャレンジだったと思います。
──映画の中でトレーニングをする場面もありましたが、実際のシーンにあわせて体作りのアプローチを変えたりしたのですか?
特に変えたわけでもなく、普段このシリーズではボクシングのシーンを最初の2~3週間で撮影します。というのも、あのカラダを撮影中ずっと維持するのは本当に大変なので。(トレーニングに励むアドニスを映した)モンタージュのシークエンスを撮影する頃にはカラダが少し緩くなってきていて、その状態でトレーニングの撮影をすることで、またカラダが出来上がっていく感じがします。そして、その冒頭に撮った部分に合ってくるわけですね。
僕は肩の手術を受けた後だったので、基本的にゼロからのスタートでした。回復のためほぼ1年間ワークアウトをしていない状態で、そこからできる限り時間を確保してベストな状態になるようにして、あとはただひたすら祈りました(笑)。というのも、(撮影中は)他にやることがたくさんあり、ワークアウトする時間がなかった。なので僕自身のコンディションは、思うような仕上りにまで持っていけなかったという気持ちがあります。でもそれは、ジョナサン(・メジャース)演じるデイミアンのルックがすごかったからかもしれません。彼は絶好調で、とんでもないくらいに出来上がっていましたね。僕は引退して楽をしているお父さんみたいな感じでしたが、今回のキャラクターにはそれが合っていて、上手くいったと思います。
──オープニングでのドクター・ドレーの曲や、モンタージュのシーンでのJ. コールの曲は、物語や、アドニスとデイミアンの関係について伝えるものがありましたが、それは狙ったものだったのですか?またこの選曲は他の曲も聴いてから決めたのですか?
いいえ、どちらかといえば編集段階で決まったことです。撮影していた時には、そのどちらの曲も使うとは思ってはいませんでした。どの曲を使うかまだ考えていた段階で…これは事前に計画できたことでもなく、魔法のように上手く事が運び、自然とあのような形になりました。というのも、今回はカリフォルニアでの物語ということで、カリフォルニアらしいアーティストや曲が必要でした。『クリード 1(チャンプを継ぐ男)』ではザ・ルーツを使っていましたが、それは彼らがフィラデルフィア出身だったから。今回はLAを象徴するような曲を使いたいと思いました。実はこの話をするのは初めてなのですが、LAでのケンドリック・ラマーのコンサートに行ったらドクター・ドレーと偶然出会い、電話番号を交換しました。僕が撮った映画を観に来て欲しいと伝えると、彼は映画を観て、とても気に入ってくれました。そして、「あなたの曲を使ってもいい?」と聞いたら、OKしてくれました。
モンタージュの部分は撮影が比較的難しいシーンのひとつだと思いますが、編集でどうしようか考える中で、「『ザ・ウォッチャー』をリミックスして、『ザ・ウォッチャー 3』のような感じにしたらどうだろう?」「『ザ・ウォッチャー』『ザ・ウォッチャー 2』があったし、『クリード 3』に向けた『ザ・ウォッチャー 3』ができたら良いね(笑)」と。今回、J. コールとドリームヴィルがサウンドトラックの製作総指揮を務めてくれることになり、J・コールにオリジナルのヴァースを書いてもらえたら最高だなと思っていたら、本当に書いてくれて。最高なものになりました。本当に興奮しました。
──今作であなたらしさを出せたような、イースターエッグ的な小ネタはありますか?
いくつかありますが、例えば冒頭のベッドルームのシーンは…長くなりすぎてかなりカットしなければならなかったのだけど、部屋にはHBCUという“歴史的黒人大学(Historically Black Colleges and Universities)”のアイテムや、旗が飾ってあったりします。それから、ナルトやガンダム、ハル・ベリーといった僕が一目惚れしたもの(笑)。本当に、ハル・ベリーにはベタ惚れしていました。あとは、僕が好きなエア・ジョーダンのスニーカー、『ブラックパンサー』のソフト、テレビの上にはコミックス。小さなものばかりですがね。
より大きなテーマ性のあるもので言えば、アニメですね。皆さんにとってのイースターエッグというわけではないかもしれませんが、僕にとってはそうで、自分が成長する中でインスピレーションを受けたたくさんのアニメやアニメのシーンにオマージュを捧げたく、このシーンの他にも映画の中に盛り込んであります。
──衣装のカラースキームについて。特にデイムとの試合での白と黒が対照的でしたが、その意図は?
デイミアンの服は映画の大部分で黒にするようにしました。そのデイムとアドニスの衣装の対比というのは面白い点で、冒頭でアドニスはデイミアンを尊敬し、兄のような存在として見ているわけで、デイミアンの後を追ってリングに行きました。でも物語が進み、デイミアンが刑期を終えて出てきた後には、その関係性は逆転します。カットしてしまったのですが、ダイナーに行く時にアドニスの後をデイミアンがついて行っているという画も撮りました。二人は似たような格好もしていて、アドニスはブレーザーにパーカーを合わせていて、デイミアンはワークベストとグランジパーカー。アドニスの家に行ったデイミアンは、“男部屋”の中を見回したり、家の中を案内してもらう中で、自分ももう少しアドニスのような格好をして“追いつきたい”と思う瞬間があります。ビーチで出会った時には、デイミアンは黒の着物のような服をまとっています。特に黒と緑をデイミアンの色として使うようにしました。
最後のファイトシーンでは、デイミアンのアグレッシブさを出したかったので、ローブも着ずに登場してきます。もう何も隠すものはない、というね。最初のファイトでは、昔のマイク・タイソンのような黒のローブを着ていましたが、その時は服を着せておくことで、後で服を脱いだ彼を皆が初めて観て、「ヤバい」「アドニスが危ない」と感じたと思います。
アドニスの衣装はもともとアメリカ国旗がモチーフとなっていて、それは父(アポロ)の頃からの表現ですが、今作ではアメリカ国旗をそのまま使いたくもないし、最後でアメリカ国旗のショートパンツを履くというのは前にも観たことがある。どうやったら違いを出せるだろう、と考えました。その頃のアメリカ国旗というのは、政治的な影響で、僕にとって意味するものがちょっとなくなったというか、違うものも意味するようになりました。アメリカ国内では、国旗を他人を脅すための手段として使う人々を目にするようになっていたので。そこで僕は、この国旗から色を取り払い、リセットしたいと思うようになりました。「どうすればこの国旗を再び自分のものにできるか」。それは、赤、白、青という色彩を取り除き、国旗のシルエットだけを残す。それで、オフホワイト一色とすることにしました。そして、戦いで流れる血がその白を染め、再び赤が戻ってくる──この点は視覚的に十分に表現しきれていないかもしれませんが、この背景にあるストーリーは、白と黒のコントラストが際立つとても良いものだと思いました。
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『クリード 過去の逆襲』(原題:Creed III)
監督:マイケル・B・ジョーダン
出演:マイケル・B・ジョーダン、テッサ・トンプソン、ジョナサン・メジャース、ウッド・ハリス、フロリアン・ムンテアヌ、ミラ・ケント、フィリシア・ラシャド 他
製作・原案:ライアン・クーグラー
日本公開:2023年5月26日(金)全国ロードショー IMAX®/Dolby Cinema®/4D同時公開
配給:ワーナー・ブラザース映画
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