『DAU. ナターシャ』日本版予告編が解禁!
- Fan's Voice Staff
第70回ベルリン映画祭において、あまりにも衝撃的なバイオレンスとエロティックな描写が物議を醸し賛否の嵐が吹き荒れながらも、映画史上初の試みともいえる異次元レベルの構想と高い芸術性が評価され銀熊賞(芸術貢献賞)を受賞した『DAU. ナターシャ』の日本版予告編が解禁されました。
ソ連の秘密研究所に併設された食堂の責任者として働くナターシャの慌ただしそうな“昼間”の姿は、夜に閉店すると一変。同僚ウェイトレスのオーリャと店内の食糧を肴に夜な夜な気だるくお酒を飲みかわします。ナターシャは、オーリャに対して上司としての優越性だけでなく、娘ほどに年の離れた若い女性への複雑な感情など、抱える思いは単純ではありません。そんな姿をはじめ、研究所に関わる人達が繰り広げる異常なまでにハイテンションな宴の様子、ナターシャが高名な科学者リュックと繰り広げる濃厚なラブシーン、謎めいた研究装置、歩くのもおぼつかないほどに酩酊したオーリャ、全てに嫌気がさしブチ切れるナターシャの様子など、この都市に生きる人々の生々しい姿が切り取られています。そして、ナターシャはリュックとの関係を疑われ、KGBに連行され、激しい拷問を受けることになり──。
本作の監督のひとりで「DAU」プロジェクトの責任者でもあるイリヤ・フルジャノフスキーは、ソ連全体主義を呼び起こさせるともいえるこのプロジェクトに取り組んだ理由について、「私はユダヤ人の家系です。母はウクライナ出身で、故郷のユダヤ人は全員殺害されました。もし母が戦争の初めの頃に逃げていなかったら、私は今ここに座っていなかったでしょう。ドイツ兵たちはただの普通の男性だったことを理解する必要があります。『DAU』を通じて人間の本性が非常に複雑であることが分かるでしょう。この虐殺を伝える言語をどうすれば見つけられるでしょうか?それについてどのように話し、その記憶をそうやって新しい世代に引き継ぐことができるでしょうか。『DAU』は、ソヴィエトのトラウマについて語ります。バビ・ヤール(1941年に、ホロコーストにおける1件では最大の犠牲者を出したと言われる虐殺が起こったウクライナの地名)もグラーグ(ソ連時代の強制労働収容所・矯正収容所の管理部門の名称だが、ソ連の奴隷労働システムそれ自体を表す言葉としても使用される)も、最近起こったことです。ソヴィエト連邦以降の世界には、犠牲者または加害者、あるいはその両方がいない家族は存在しません。それこそがソヴィエトのトラウマです。ソヴィエトが残した病は記憶喪失です。誰もが覚えておきたいことだけを覚えています。この記憶喪失を克服しない限り、それは何度も何度も繰り返されます。意識的に覚えていないのかもしれませんが、魂は覚えています。反省し二度と繰り返さないための努力をしない限り、何度でも同じ経験をすることになるでしょう」と語っています。
また、当初は「DAU」プロジェクトのメイクスタッフとして参加し、後に編集も担当することになる共同監督のエカテリーナ・エルテリは、撮影現場から作品に関わっていたことについて「大きなアドバンテージがあったと思います。私は少なくとも500時間の映像を乗り越えて、ナターシャについての伝えたいストーリーを見つけました。彼女は困難な生活を送ってきました。彼女が発する言葉の全てにそれを感じることができます。とても孤独で傷つきやすいように見えるにも関わらず、とてもタフな行動をした彼女にとても感動しました。その硬い殻の中に隠された憧れ、希望、絶望、そして強さの層を見て、これを共有したいと思ったのです」と振り返っています。
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『DAU. ナターシャ』(原題:DAU. Natasha)
ソ連の某地にある秘密研究所。その施設では多くの科学者たちが軍事的な研究を続けていた。施設に併設された食堂で働くウェイトレスのナターシャはある日、研究所に滞在していたフランス人科学者と肉体関係を結ぶ。言葉も通じないが、惹かれ合う2人。しかし、当局から呼び出された彼女は、冷酷なKGB職員の待つ暗い部屋に案内され、スパイの容疑をかけられ厳しい追及を受けることになる…。
監督・脚本/イリヤ・フルジャノフスキー、エカテリーナ・エルテリ
撮影/ユルゲン・ユルゲス
出演/ナターリヤ・ベレジナヤ、オリガ・シカバルニャ、ウラジーミル・アジッポ
2020年/ドイツ、ウクライナ、イギリス、ロシア合作/ロシア語/139分/ビスタ/カラー/5.1ch/R-18+/日本語字幕:岩辺いずみ/字幕監修:松下隆志
日本公開/2021年2月27日(土)シアター・イメージフォーラム、アップリンク吉祥寺他
配給/トランスフォーマー
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