第77回ベネチア国際映画祭ラインナップが発表!コンペティション部門に黒沢清『スパイの妻』選出!
- Atsuko Tatsuta
第77回ヴェネチア国際映画祭(9月2日〜9月12日)のラインナップが、7月28日(水)に開催された記者会見にて映画祭ディレクターのアルベルト・バルベーラ氏より発表されました。
カンヌを始めとした映画祭がコロナ禍により次々と中止される中、大型の国際映画祭としては初めて”リアルイベント”として再開されるベネチア映画祭。先に発表された審査員陣は、パンデミックの影響の多い地域を避けてか、ほとんどをヨーロッパ勢が占めましたが、コンペティション部門の作品には、ヨーロッパ、北米、アジアからバランスよく18本が選出されました。
『運動靴と赤い金魚』(97年)で知られるイランのマジッド・マジディ、フランスのニコール・ガルシア、イスラエルのアモス・ギタイ、ロシアのアンドレイ・コンチャロフスキーといった名匠らが揃いながらも、例年に比べるとスター監督の名前が少なく、一方でフレッシュな顔ぶれも多く見られます。
コンペ18作品の中で、女性監督によるものは8本。特にハリウッドのスタジオ系からの2本は注目されます。ソニー・ピクチャーズの『The World to Come』は、ノルウェー出身でアメリカを拠点に活動する女優モナ・ファストヴォルドが監督を務め、キャサリン・ウォーターストン、ヴァネッサ・カービー、ケイシー・アフレックが共演する話題作。
『ザ・ライダー』で脚光を浴び、MCU映画『エターナルズ』の監督にも抜擢されたクロエ・ジャオが監督を務めるフランシス・マクドーマンド主演・製作の『Nomadland』もコンペ入り。同じくサーチライト・ピクチャーズ配給によるウェス・アンダーソン監督の『The French Dispatch』がカンヌのオープニングに決定していたものの、その後、公開日未定になっていることを考えると、『Nomadland』は今後の賞レースに絡んでくることも大いに予想されます。
日本からは、黒沢清監督の『スパイの妻』が選出。太平洋戦争前夜、偶然国家秘密を知ってしまった夫と、その夫を信じ支える妻の姿を描く歴史ドラマです。NHKで放映された同名のドラマを、スクリーンサイズを新たにした劇場版で、『寝ても覚めても』の濱口竜介監督が共同脚本家として参加、主演は蒼井優、その夫役を高橋一生が演じています。
一昨年は『ROMA/ローマ』がプレミア上映され、去年は『マリッジ・ストーリー』など3本が上映されるなど、ベネチアを席巻してきたNetflix作品の上映は今年は1本もなし。Netflixが戦略的にエントリーを控えたのかどうかは定かでありません。
コンペ外では、『ノッティングヒルの恋人』の名匠ロジャー・ミッシェルがヘレン・ミレン、ジム・ブロードベントというベテランを主演に迎えたコメディ『The Duke』、またスペシャル・スクリーニングとして、『幸福なラザロ』のアリーチェ・ロルバケルとフランスのアーティストJRの短編『Omelia Contadina』などが選出。ドキュメンタリー作品では、シューズ・デザイナーのサルヴァトーレ・フェラガモの半生を追ったルカ・グァダニーノ監督の『Salvatore – Shoemaker of Deams』、90歳の巨匠フレデリック・ワイズマンによるボストン市庁舎をテーマにした『City Hall』、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリをテーマにしたネイサン・グロスマン監督の『Greta』なども上映されます。
サイドバーのオリゾンティ部門に選出された、ソフィア・コッポラの姪ジア・コッポラの『Mainstream』、2016年のベネチアで『立ち去った女』で金獅子賞を受賞しているフィリピンの巨匠ラヴ・ディアスの『Lahi, Hayop(Genus Pan)』も注目です。
オープニング作品には、ダニエーレ・ルケッティ監督のイタリア映画『The Ties(LACCI)』(アウト・オブ・コンペティション)が上映されます。
また会期中に、ライフタイム・アチーブメント(生涯功労賞)として香港の映画監督アン・ホイとスコットランド出身の俳優ティルダ・スウィントンに金獅子賞が授与されることが発表されています。
コンペティション部門の審査員長をケイト・ブランシェット(オーストラリア/俳優)が務め、ほか審査員には、ヴェロニカ・フランツ(オーストリア/監督・脚本家)、ジョアンナ・ホッグ(イギリス/監督・脚本家)、ニコラ・ラジョイア(イタリア/作家)、クリスティアン・ペッツォルト(ドイツ/監督・脚本家)、クリスティ・プイウ(ルーマニア/監督・脚本家)、リュディヴィーヌ・サニエ(フランス/俳優)が決定しています。
以下、コンペティション部門に選出された18本です。
『In Between Dying』ヒラル・バイダロフ(アゼルバイジャン、アメリカ)
『Le Sorelle Macaluso』エマ・ダンテ (イタリア)
『The World to Come』モナ・ファストヴォルド(アメリカ)
『Nuevo Orden』ミシェル・フランコ(メキシコ、フランス)
『Amants(Lovers)』ニコール・ガルシア (フランス)
『Laila in Haifa』アモス・ギタイ(イスラエル、 フランス)
『And Tomorrow The Entire World』ジュリア・フォン・ヘインズ (ドイツ、フランス)
『Dorogie Tovarischi(Dear Comrades)』アンドレイ・コンチャロフスキー(ロシア)
『スパイの妻(Wife of a Spy)』黒沢清(日本)
『Khorshid(Sun Children)』マジッド・マジディ(イラン)
『Pieces of a Woman』コーネル・ムンドルッツォ(カナダ、ハンガリー)
『Miss Marx』スザンナ・ニッキャレッリ(イタリア、ベルギー)
『Padrenostro』クラウディオ・ノーチェ(イタリア)
『Notturno』ジャンフランコ・ロッシ(イタリア、フランス、ドイツ)
『Never Gonna Snow Again』マウゴシュカ・シュモフスカ、ミハウ・エングレルト (ポーランド、ドイツ)
『The Disciple』チャイタニヤ・タムヘイン (インド)
『Quo Vadis, Aida?』ヤスミラ・ジュバニッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ、オーストリア、ルーマニア、オランダ、ドイツ、ポーランド、フランス、ノルウェイ)
『Nomadland』クロエ・ジャオ (アメリカ)
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第77回ヴェネチア国際映画祭
会期/2020年9月2日(水)〜9月12日(土)
開催地/イタリア・ヴェネチア
フェスティバル・ディレクター/アルベルト・バルベーラ
© La Biennale di Venezia – Foto ASAC.