ミニシアター支援クラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」本日開始!16時より深田晃司、濱口竜介らによる記者会見配信
- Fan's Voice Staff
新型コロナウイルスの感染拡大により全国の「ミニシアター」が閉館の危機にさらされる中、ミニシアターに資金を送るためのクラウドファンディングプロジェクト「ミニシアター・エイド基金」が、4月13日(月)13時よりスタートしました。
小規模映画館「ミニシアター」は、経営規模は小さいながらも、「多様性」という観点から見て日本文化への貢献度は非常に大きなものです。4月5日に立ち上げが宣言された「ミニシアター・エイド基金」では、全国62団体68劇場が支援を受ける予定。多くの映画監督も賛同と参加の意思を示しており、署名活動を通じて政府への提言を進めている「SAVE the CINEMA」とも連携して、活動していくとのことです。
本日16時からは、DOMMUNEにて本プロジェクト立ち上げの記者会見が行われ、その後17時30分からは、同チャンネルでアップリンク配給作品『ソウル・パワー』が投げ銭方式でフリー生配信されます。
以下、発起人の深田晃司監督と濱口竜介監督によるステートメントです。
発起人:深田晃司(映画監督・独立映画鍋共同代表)
日本を訪れた世界の映画人が等しく感嘆と賞賛の声を挙げるのが、ミニシアター文化の存在です。なぜこれほどまでに国家の支援の少ない国で、シネコンとは違う、非常にローカルでユニークな映画館が日本中に存在できているのか、と。撮影所システムの崩壊後に広がったミニシアターの存在によって、私たちは娯楽大作だけではなく、様々な国、様々な時代の映画を鑑賞することが叶いました。
そこでの鑑賞体験がどれだけ映画を愛する人たちの人生を豊かにし、映画ファンを育てたか。また私たち映画監督や映画人にとっては作品を映画ファンに届けるための貴重な「場」をミニシアターが創出してくれたか、感謝してもしきれません。そのミニシアターが、今まさに危機的状況にあります。それはつまり、映画の多様性の危機であると言えます。
そもそもなぜ、映画の多様性は守られるべきなのでしょうか。その方が面白いから。それも大事ですが、さらにひとつ理由をあげるとすれば、それは民主主義を守ることにつながるからです。民主主義の本質は多数決ではなく、いかに多様な視点を掬い取り社会設計に取り込んでいくかですが、そのためにはまず、多様な価値観が社会に可視化されてなくてはなりません。耳に届かない声、目に見えない感情を可視化するのに、文化芸術の果たす役割はとても大きいと言えます。ある作家がカメラで世界を切り取り人間を捉え、そこにはいない誰かへと届けることのできる映画もまた、世界に多様性をもたらす強力な表現のひとつです。
日本においてミニシアターはその多彩なプログラムによって、世界の多様性に貢献し続けてきました。外国の映画人からミニシアター文化を無邪気に賞賛されると、我が事のように誇らしくなる反面、素直には喜べない複雑な思いもまた抱かされます。なぜなら、特に地方の多くのミニシアターが、経済的にギリギリの状況で、そこに携わる人々の人生を犠牲にするような覚悟によって成り立っていることを知っているからです。
今回のコロナウィルスのような有事に、まっさきに存続の危機に立たされるのは、大手の資本のバックアップもなく、ときに家内工業のような規模で営まれる多くのミニシアターです。平時においても、日本は諸外国と比べ映画館にはほとんど文化予算が降りることはありません。本来なら、こういったときこそ国が支援に乗り出すべきだと思いますし、私たちは文化芸術の公的価値に見合った支援を今後も要求し続けなくてはなりませんが、今はそれを待っている時間もありません。ぜひ、映画の多様な文化を絶やさないためにも、ミニシアターの支援にご協力ください。
最後に。なぜ配信隆盛のこの時代に映画館なのか。簡潔に言えば、私たち映画製作者は、映画を作るときにスクリーンに上映されることを前提に、映画館で最高のポテンシャルが発揮されるように映像も音も設計するからです。配信やテレビで鑑賞するのも構いません。ただ、それはいわば画集のようなものです。画集はとても見易いですが、だからと言って美術館が不要になるわけではありません。
発起人:濱口竜介(映画監督)
深田さんが上に書いてくださっていることに、全く同意します。なので、私(濱口)が書くのは蛇足ですが、個人的な思いのみ、書きつけます。
私はミニシアターの存在によって、映画ファンに、そして映画監督にしてもらった、という思いがあります。その「恩返し」のために今回の基金の発起人として名を連ねました。その誇るべき文化をなくすことは決定的損失です。今、動かなくてはなりません。同じ思いを持つ、映画ファンの皆さんの参加と協力をお待ちしています。
深田さんの書かれた通り、ミニシアターの多くは市民団体や、ときに一個人など「有志」とも言うべき人たちによって支えられています。劇場の規模が小さいということは、収益の規模もまた小さいということであって、利益を期待するのみで、運営することはできません。映画というメディアがこの世界において持つ価値を信じる人たちがいなくては、決して成立しない場です。ただ、志のみでは現在の状況を持ちこたえることはできないでしょう。
私が監督として参加した『うたうひと』というドキュメンタリー映画の制作中に、出演者である小野和子さんという方から、少なからぬ額のカンパを手渡されたことがあります。恥ずかしいことに、制作資金の不足を見通されてのことでした。小野さんはそのとき「お金なんかに負けちゃダメよ」と言いながら、そのお金を渡してくれました。このことが深く心に残っています。お金に負けずに志を持ち続けるには、最低限のお金がやはり必要なのです(ただそれは、何より志のために必要なのです)。
とは言え現在、大多数の人が日々、不安の中にいると思います。あくまで自分の生活を最優先に、物・心両面で支障がない範囲での支援をお願いしたいと思っています。相対的に「余裕のある人」が少しだけ、現時点でそれの「ない人」にシェアするだけでよいのです。「余裕」そのものを社会全体が保持するよう、個々に分配する、その方策の一つとして、この基金があるものとしてご理解ください。
公に向けたアクションを並行して進めることも、非常に重要です。あくまでこの基金は、劇場や関係者がまとまった公的補助を得るまでの「つなぎ」です。ただ公的機関が動くまでには一定の時間を要するでしょう。まずは緊急支援策として、1映画ファンとして映画ファンコミュニティでの「互助」を可能にするために、このプロジェクトを立ち上げました。
他の業種も等しく危機に瀕していることは重々理解をしています。同様の試みが、必要とされる、あらゆるジャンルで「有志」によって始まることを願っています(意外とここから、新たな経済の形が始まるかもしれません)。
目標金額は、私自身、一生で一度も見たことのないような金額です。本当に、お一人お一人の力が必要です。ご理解と、ご協力を賜われたら幸いです。何卒、よろしくお願いいたします。
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ミニシアター・エイド基金 × DOMMUNE キックオフイベント無観客記者会見(投げ銭方式)
日時: 4月13日(月)16:00~17 30
配信CH:DOMMUNE
出演者:深田晃司(発起人・映画監督 、濱口竜介(発起人・映画監督 )、浅井隆(アップリンク代表)、斎藤工(俳優・映画監督)、渡辺真起子(俳優)
※全国の劇場支配人も中継を繋ぎ参加予定
※感染拡大を防ぐため、本記者会見は配信のみとなります。また、出演者は全員モニター越しで、リモートでの参加となります。
ジェームス・ブラウン出演ドキュメンタリー映画『ソウル・パワー』フリー生配信(投げ銭方式)
日時: 4月13日(月) 17:30~19:03
配信CH:DOMMUNE
※権利の都合上、日本国内にお住いの方のみ視聴可
『ソウル・パワー』
『ソウル・パワー』は、ジェームス・ブラウン、B.B.キングなど超豪華アーティストがザイールの地に一挙集結したブラックミュージックの祭典「ザイール’74」。 伝説の音楽祭を収めたドキュメンタリー映画です。
舞台は1974 年、ザイール(現・コンゴ民主共和国)。エンターテイメント史上もっとも記憶に残る瞬間といわれた世界ヘビー級王者決定戦、モハメド・アリ対ジョージ・フォアマンとの一戦“キンシャサの奇跡”に先がけ、世界最大のブラックミュージックの祭典が行わることなり、これ以上は望めないアーティストがザイールに集結しました。最も脂が乗った時代のジェームス・ブラウンをはじめ、 “ブルースの神様”B.B.キング、“サルサの女王”セリア・クルースとファニア・オールスターズ、“フュージョン界のスーパーグループ”ザ・クルセイダーズなどが出演。また、3月24日に新型コロナウイルス感染症により死去したサックス奏者マヌ・ディバンゴがキンシャサの路上で現地の人々とジャム・セッションを繰り広げるシーンは必見です。
そして、3月30日に心臓疾患の合併症により亡くなったソウル歌手のビル・ウィザースのパフォーマンスも収められています。代表曲「リーン・オン・ミー」が、新型コロナウイルス感染症が世界中で蔓延するこの時代に、希望と連帯のアンセムとして再び注目を集めている彼のソウルフルなナンバー「Hope She’ll be Happier」をぜひご堪能ください。
監督/ジェフリー・レヴィ=ヒント
プロデューサー/デヴィッド・ソネンバーグ、レオン・ギャスト
出演/ジェームス・ブラウン、ビル・ウィザース、B.B.キング、ザ・スピナーズ、セリア・クルース&ザ・ファニア・オール・スターズ、モハメド・アリ、ドン・キング、スチュワート・レヴァィン、マヌ・ディバンゴ ほか
2008年/アメリカ/93分