【ネタバレ無し感想・評価】『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』美少年作家になりすました女性の内面に迫る衝撃のドラマ
- Fan's Voice Staff
2000年代半ばに文壇を賑わせたスキャンダルの裏側を、美少年作家になりすましたサヴァンナ・クヌープの視点から描く『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』。本記事では、日本公開に先駆け開催された試写会でのファンの感想を軸に、映画の見どころを紹介します。
2001年、女装の男娼だった金髪の美少年J・T・リロイが書いた自伝的小説「サラ、神に背いた少年」がベストセラーが話題に。J・T・リロイは、ローラ・アルバート(ローラ・ダーン)が創り出した架空の人物でしたが、ローラはある日、近所に引っ越してきたパートナーのジェフ(ジム・スタージェス)の妹サヴァンナにJ・Tを演じてもらうことを思いつきます。
金髪のウィッグとサングラスで、美少年作家として写真を撮られることで、50ドル。バイト感覚で引き受けたサヴァンナ(クリステン・スチュワート)でしたが、謎めいたルックスは話題となり、J・T・リロイとして公の場に登場する機会も増えていきます。小説が映画化され、さらに脚光を浴び、セレブとの交流も広がりますが、そんな大ブレイクの影で、サヴァンナは偽りの姿を演じ続けることに、違和感と罪悪感を感じ始めていました──。
イタリアのホラーの巨匠ダリオ・アルジェントの娘アーシア・アルジェントの監督作『サラ、いつわりの祈り』の原作者としても知られるJ・T・リロイ。本作は、ふたりの女性が創り上げた”彼”をめぐる一連のスキャンダル事件の当事者であるサヴァンナ・クヌープの自伝「Girl Boy Girl: How I Became JT Leroy」の映画化したものです。
監督には、アビー・リー、ケイレブ・ランドリー、ライリー・キーオ主演の『ストレンジャーズ 地獄からの訪問者』(18年)のジャスティン・ケリー。ガス・ヴァン・サントやウィノナ・ライダーなど多くのセレブリティを巻き込んだ大騒動として今も語り継がれる“J・T・リロイ”の新たなる真実がここに明らかにされます!
セレブも騙された華麗なウソ、信じられないその真実
母親の元を離れ、兄の住むサンフランシスコに移り住んだサヴァンナは、兄の恋人の作家ローラが創り出した“J・T・リロイ”という金髪の美少年作家の役を演じてしまったことから、脚光を浴び、あれよあれよという間に文壇の寵児として祭り上げられていきます。セレブリティとの交流や、カンヌ国際映画祭への出席、数々のインタビューや撮影会──ローラが創り出した虚構のキャラクターがあまりにも魅力的だったため、文壇も映画界もみんな金髪の美少年に夢中になりました。ウソのような事実とはまさにこのこと!
#ふたりのJ・T・リロイ@FansVoiceJP さんの試写会にて鑑賞。2000年初頭に実際にあったお話。アーシア・アルジェントは映画まで撮っちゃったし、出演していたコートニー・ラブも騙されたし、ガス・ヴァン・サントがエレファントの脚本を依頼したとか色々逸話がありますが、全てオバサンのフェイク! pic.twitter.com/kREglT18RG
— ミキ (@yoku3137) January 22, 2020
サヴァンナはそのゲームから抜け出せなくなりますが、一方で、ローラの操り人形でいることに限界を感じていました。いつまでもウソを突き通すことはできない……。綱渡りのような毎日を送るサヴァンナの危うさと心の揺れを、サスペンスばりのスリリングなカメラワークで捉えます。
「#ふたりのJ・T・リロイ」試写(@FansVoiceJP)
詐欺事件の裏側を描いた、というよりも、架空の人格を演じるうちに自己との境目が見えなくなり、その人格が得た名声を手放せなくなる人たちの話。
その2人がクリステン・スチュワートとローラ・ダーンなんですよ。破綻するの明らかなのに目が離せない。 pic.twitter.com/6ZwfhUweQT— Teatro dell’asino (@robasuke2015) January 22, 2020
世間に認められたい、その欲望が生んだ哀しきドール
著作がベストセラーとなるほどの筆力を持ちながら、ローラはなぜ、 “J・T・ リロイ”というアバターを作り出さなければならなかったのか?「こんなおばさんが書いたものに誰も興味をもつはずがない」というローラのセリフのように、人は外見や肩書で人は判断しがちであり、目新しいものに飛びつきがち。母親に虐待された美少年の実体験としてセンセーショナルに売り出された小説が、40代女性の空想だとしたら、本当に人は興味をもったのでしょうか。J・T・リロイは、ローラのコンプレックスと承認欲求から生まれた、哀しい人形でもありました。
『#ふたりのJ・T・リロイ』@fansvoicejp試写。嘘で固めた「理想の自分」という虚像。偽る快感にハマっていく2人の姿はなんだかインスタやツイッターで見たことあるような…暴走した自己承認欲求の行き着く先を見た…あとクリステン様のビジュアルは反則な!鼻の穴パンパンに膨らませちゃったぞ!!! pic.twitter.com/Yri3S3QbuW
— Y・タカギ (@JBillm73) January 22, 2020
@fansvoicejp #ふたりのJ・T・リロイ 試写会。実話の犯罪映画だが「今の自分より優れた別人になりたい」欲や「ありのままの自分じゃ愛されない」不安を描いている人間臭い作品だった。感情のまま暴走していく彼女達の最後は…?選曲が良くエモーショナルでスタイリッシュ。彼女達の未来に光も感じた。 pic.twitter.com/tDr1AjDepr
— たぷにゃん (@TOP_BIG_LOVE) January 22, 2020
#ふたりのJ・T・リロイ 最速試写会🎩世界中が騙された実際の事件に基づく作品。JTリロイに魅せられて騙されたのはメディアや群衆だけじゃなくて、JTリロイを創り上げた、演じ上げた本人達もなのかも。JTリロイは存在こそしないけれど確かにそこに”いた”んだと思う。@FansVoiceJP pic.twitter.com/oc86pzVB5J
— ごとう あやの (@ayanogoto) January 22, 2020
注目のスキャンダルの映画化にスターが豪華競演
J・T・リロイを演じていたサヴァンナの存在を暴露したニューヨーク・タイムズの記事が掲載された2006年から15年あまり経った今でも、このストーリーへの人々の感心は止まりません。2016年には、ローラ・アルバートの視点からこの事件を語るドキュメンタリー映画『作家、本当のJ・T・リロイ』が製作され、日本でも話題となりました。
ローラが仕掛けたこと全部がドラマティックで魅力的だったことは事実。どこまでシナリオなのかが、この映画を観てより一層気になった。まさかサヴァンナの自叙伝まで、ローラが仕掛けてはいないわよね???@fansvoicejp
— ring (@ringring709) January 23, 2020
サヴァンナの視点から映画かれた『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』にも、今をときめくスターたちが名を連ねました。サヴァナを演じたのは、『トワイライト』シリーズで大ブレイクし、フランスの名匠オリヴィエ・アサイヤス監督の『アクトレス〜女たちの舞台〜』(14年)などインターナショナルに活躍するクリステン・スチュワート。「当時は、“創られた真実”の方にみんな夢中になってしまって、彼女たちの内面で何が起きていたのか、内面にあった真実はなんだったのか、ということまでは語られなかった。だから今、それに光を当てたこの映画を公開できることはすごくクールだと思う」とコメントしています。
『#ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』架空のカリスマが創り上げられていく過程、巻き込まれ美少年少女を演じるクリステン・スチュワートの好奇心&揺らぎながらも自我の目覚め、クールビューティが完璧過ぎてローラの思惑を超える存在に❣スリルいっぱいで目が離せません @fansvoicejp pic.twitter.com/pxyyfuArtb
— きゃも (@kyamokyamo) January 22, 2020
実際に小説を書いていたローラ・アルバートを演じたのは、ローラ・ダーン。『マリッジ・ストリー』の敏腕離婚弁護士役で本年度のアカデミー賞助演女優賞を受賞した演技派女優も、この真実の物語に感動したひとりです。「この映画でのローラが象徴しているように、自分自身の真実と格闘することは、時に苦痛で、誰かに指摘されるまで自分が何で苦しんでいるのかわからなかったりする」「ローラにとってこれは嘘ではなくて生き延びる手段だった」と、ローラに対し理解示していますが、才能がありながら、自分に対して自身がもてない中年女性の痛みを見事に体現しています。
主演のクリステンスチュワートの美しさと演技力はキャラクターに違和感がなくて流石と思った。そしてローラを演じるローラダーンのエキセントリックさを盛り沢山にした演技は最高だった!マリッジストーリーの時の弁護士役もメーター振り切ってたけど、この役も面白かった! #ふたりのJ・T・リロイ pic.twitter.com/2V9F1mJbxl
— penguinwhipper{ペンギンウィッパー} (@penguinwhipper) January 22, 2020
本作で“第三の女性”として登場するのが、女優であり『サラ、いつわりの祈り』を監督したエヴァ。アーシア・アルジェントをモデルにしていますが、演じているのはドイツ出身でハリウッドやヨーロッパ映画で活躍するダイアン・クーガー。サヴァンナと親密な関係となり、多大な影響を与えるなど、本作のスパイスとなる重要なキャラクターですが、その美しさにはサヴァンナでなくともきっと魅了されるはず。
クリステンは最高に繊細で美しく、ローラは最高にエキセントリックで。彼女の悲哀を感じさせる台詞と瞳にグッと来た。監督役のダイアン・クルーガーはセクシーだしコートニー・ラブ(JTのリアル友達)まで贅沢な布陣で目の保養でもあった💕
— 🦠🍌Stella wedongdal ilinoi chicago🍕🍑 (@Stella_Idiot) January 22, 2020
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『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』(原題:Jeremiah Terminator LeRoy)
アメリカ文壇に彗星のごとく登場し、時代の寵児となった美少年作家J・T・リロイ。映画『サラ、いつわりの祈り』の原作者としても知られる彼は、ふたりの女性が創り上げた架空の人物だった!2000年代に一大スキャンダルとして報じられたこの驚くべき事件について、初めてJ・Tの分身を担ったサヴァンナの視点から映画化。彼女は、なぜローラに言われるがまま数年間もJ・Tを演じ続けたのか?
監督・脚本・製作総指揮/ジャスティン・ケリー
原作・脚本・製作総指揮/サヴァンナ・クヌープ
出演/クリステン・スチュワート、ローラ・ダーン、ジム・スタージェス、ダイアン・クルーガー、コートニー・ラヴ
アメリカ/カラー/108分/スコープ/5.1ch/字幕翻訳:石田泰子/PG12
日本公開/2020年2月14日(金)よりシネマカリテ&YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開!
配給/ポニーキャニオン
公式サイト
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