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2019.08.29 0:02

ベネチア映画祭2019が開幕!是枝裕和監督『真実』公式会見にカトリーヌ・ドヌーヴらが登場

  • Fan's Voice Staff

8月28日(イタリア現地時間)に第76回ヴェネチア国際映画祭が開幕、オープニング作品として上映される是枝裕和監督の『真実』の公式会見が開催されました。

©  Theo Wargo/Getty Images

左より)ジュリエット・ビノシュ、是枝裕和監督、カトリーヌ・ドヌーヴ© Vittorio Zunino Celotto/Getty Images

© Vittorio Zunino Celotto/Getty Images

開会式に先立って開催されたフォトコールと公式会見には、是枝監督をはじめ、主演のカトリーヌ・ドヌーヴ、ドヌーヴの娘役を演じたジュリエット・ビノシュほか、リュディヴィーヌ・サニエ、マノン・クラヴェル、クレモンティーヌ・グルニエら、共演した女優陣が出席しました。

© Vittorio Zunino Celotto/Getty Images

フランスの大女優ふたりの初共演作ということもあり、キャパシティ250人の会見会場は超満員となり、立ち見のジャーナリストも多く出るほど。是枝監督、ビノシュも大きな拍手で迎えられましたが、ドヌーヴが紹介されると、ひと際大きな拍手と歓声が会場を埋め尽くしました。

『真実』は、国民的大女優ファビエンヌ(ドヌーヴ)を主人公にしたドラマ。新進女優(クラヴェル)とともに新作映画を撮影中だが、自叙伝「真実」の出版も控えている。アメリカで脚本家として活躍している娘のリュミール(ビノシュ)は、自分に相談もなしに出版を決めたことを気にかけ、“お祝い”と称してテレビ俳優の夫(イーサン・ホーク)と7歳の娘(クレモンティーヌ・グルニエ)と共に、久しぶりに帰省した。家では、ファビエンヌと現在の夫で“料理担当”のジャック(クリスチャン・クラエ)、ファビエンヌの長年のパーソナル・アシスタント(アラン・リボル)が迎えるが、そこへ元夫でリュミールの父親のピエール(ロジェ・ヴァン・オール)も出版を聞きつけやってくる。果たして「真実」をひと晩で読み終えたリュミールは、虚構に満ちたその内容に憤慨するが、ファビエンヌは“本当のことなんて、面白くもなんともない”と言い捨てるのだった……。

母と娘の確執を核に、女優とはなにか?演じることとは何か?というテーマを、女優家族の1週間を通して描く。

──フランスの俳優を起用して、フランスで撮ったきっかけは?
是枝監督
 まず、この場で、このキャストと作った映画をオープニングに選んでいただいた映画祭の方々に感謝したいと思います。ありがとうございます。

もともとは楽屋のシーンだけでできあがっている舞台を考えていました。実際にこの映画が動き出したのは、いま隣に座っているジュリエット・ビノシュさんから、何か一緒に映画を作る冒険をしてみないかというお誘いを2011年に提案いただいたのが始まりです。日本で撮るのかフランスで撮るのか、まだその段階では確たる目標があったわけではないのですが。

本当にふとなんですが、(その話を)フランスで撮ってみようか、と。それは、その国の映画史を代表するような女優を主人公にした戯曲だったのですけども、もしフランスで撮るのであれば、まさにそういう女優さんでいま現役で活躍されている方を撮るチャンスが生まれるのではと思いました。ということで、その段階で大幅に戯曲の書き直しをはじめて、母と娘の話になりました。

脚本がまだ固まる前の段階で二人(ビノシュとドヌーヴ)に何度もお会いして、長いインタビューをさせていただいて、もちろん自伝ではないんですけれども、女優という人生を送られている方たちの、生の言葉をどういう風に脚本に生かしていくかという作業を、この数年に渡って、継続的な信頼関係の中でやっていきました。その結実したものが今回の『真実』です。

ドヌーヴ 是枝監督が言ったように、脚本の初稿を読んだ後で会いました。それからパリ、そしてカンヌで会って、日本でも会いました。こんなことが1年以上続きました。面会や本読み、コメントを通して、彼が言ったように、作られていったのです。是枝は映画の中で演じる人物を少しずつ私たちに近づけることを考えていました。私の場合、映画に出演する時は、人物を演じるにしても、自分というものを作品に投入します。特に今回は、関係が複雑なのは分かっていました。是枝は英語もフランス語も話さないので、いつも通訳を挟んでの会話です。それも悪いことではありません。大事なことを話すように促されるからです。

カトリーヌ・ドヌーヴ © Vittorio Zunino Celotto/Getty Images

ビノシュ 是枝監督と仕事をすることは数年前からの夢でした。監督は2011年と言ったかと思いますが、私はもっと前からだと思います。12年前…。(会場に向かって)14?2014年?14年前?14年前ね。京都で一緒になりました。特別な機会でした。本当に夢のようでした。是枝監督の映画に出ることは、役者が監督に対して抱く夢を実現することです。さらにカトリーヌとの共演も夢のようです。『ロバと王女』は私が子どもの頃大好きな映画でした。彼女と共演できたことは光栄で夢のようです。だからこの映画は私にとって夢の実現なのです。それに未来の頼もしい才能に出会うこともできました。私にとってとても鮮烈で、貴重な経験でした。

ジュリエット・ビノシュ © Vittorio Zunino Celotto/Getty Images

ドヌーヴ 私もジュリエットと共演したいと思っていました。彼女の映画はほとんど全部、観ています。でも不思議なことに、これまで一度も共演したことがなかったのです。初めての共演はうれしい驚きであり、待ち望んだものでした。

──家族をテーマにした作品を多くお撮りですが、このフランス人とアメリカ人の滑稽で機能不全に陥った家族をどのように説明しますか?
是枝監督
 今回の作品はファミリードラマの要素もあるのですが、演じるということを通して、一組の母と娘が和解とは言わないまでも、お互いがお互いの人生を、つまりは自分の人生を少しだけ受け入れて先へ進むという、そういう女性二人の話を書きたいなと思いました。その周りにさらに女性がいて、男性がいて、輪を広げていくことで、それは血縁関係の外へも広がっている輪なのですけれども、その人達との関係の中で、いろんな場所に魔法が使われて、それは嘘も含まれてるんですけれども、それが人と人とをつないだり、和解させたりするという、そういう物語を自分では描きたいなと思いました。

──(ドヌーヴに向けて)先ほど、ファビエンヌにご自身をかなり込めたとおっしゃいましたが、ご自身とファビエンヌというキャラクターにどれくらい観客が共感することを望んでいらっしゃいますか?
ドヌーヴ 私が映画で演じる時は、どうしても自分が入ります。でもこの人物は私とはかけ離れています。だからとても愉快な経験でした。女優を演じながら、自分とはかけ離れた人物を演じている印象だったのです。この女優の世界は私とかけ離れています。娘との関係も、私のとは非常に異なります。ですから女優を演じるのは興味深くて愉快でした。私とかけ離れている女優ですからね。私が経験したこと、私が知っていることと違います。だから私自身と映画で演じた人物の間に類似性を見い出すのは、難しいですね。彼女のことはよく理解できます。演じるのも楽しかったですが、本当に自分とはまったく別の人物を演じているようでした。

──(サニエとクラヴェルに向けて)出演のきっかけなどを。
サニエ 最初に言いたいのは、私もかなり前から是枝監督を知っているので、彼の映画に出ることは夢の実現でした。ジュリエットほど昔ではありませんが、5~6年前に是枝監督に会いました。女優の役に私を考えてくれていたことに、驚きました。カトリーヌと同じように、私もこの女優と自分が似ているとは思いませんが、演じるのは楽しいものでした。本物らしさを追求したからです。とても軽くて無邪気に見える人物ですが、何と言うか、問題を抱えています。それにコメディーも追究しました。この人物において、コメディーの喜びは、本物で具体的でした。私とは最も離れたところにいる人物を演じたいという欲求もありました。

リュディヴィーヌ・サニエ © Vittorio Zunino Celotto/Getty Images

クラヴェル 第一に、私にとって初めての長編映画で、人生において最も美しく偉大な経験でした。それまでの経験はとても小さなものでした。今回の人物を演じるにあたっては、キャスティングから撮影までの間、さらに撮影中においても、常に話し合いを行いました。この人物を創作するための、真の会話でした。私の場合、この人物は、私に近いところがあります。是枝監督と一緒に作り上げたのです。これは本当に面白い経験でした。私から出発し、ある種の方向性を推し進め、神経症的な要素を加え、それを引き延ばし、ある種の夢や恐怖を加える。こうして私が演じる人物が出来上がりました。

マノン・クラヴェル © Vittorio Zunino Celotto/Getty Images

──(ドヌーヴとビノシュに向けて)映画の準備の話をされました。どんな経験だったかを教えてください。撮影についてお話しいただけますか?言語の壁についても言及されました。どんな経験でしたか?困難や試練があったのでしょうか?
ドヌーヴ とてもユニークで複雑な経験でした。最初の週は少し大変でしたね。ある人を見ながら、他の人の話を聞くのに慣れるまでに時間がかかりました。なぜなら話は是枝監督の通訳を通していたからです。でも時間が経つと…。まず質問したり、何か言いたい時は、肝心なことに絞って話します。撮影についてのおしゃべりがないのです。それはかなり特殊なことでした。でも顔を見て、表情を見れば、何かが読めます。監督が通訳を通してコメントを伝える前に、彼の顔を見て感じました。彼が望んでいる方向に進んでいるのか、そうでないのかを感じたのです。確かに特殊でユニークな経験でしたし、一般的に生活で感じるコミュニケーションの大きな制約を超えるものでした。でも経験してよかったと思います。是枝監督と一緒に撮影できて幸せでした。直接思いを伝えられないというフラストレーションはありましたけどね。

©  Vittorio Zunino Celotto/Getty Images

ビノシュ 私は撮影の前にしっかり準備したいタイプなのですが、準備できるか尋ねた時に、「是枝監督は役者が準備することをあまり好まない」と聞いたので、戸惑いました。最初は是枝監督の指示を待ちましたが、撮影中に彼が私と一緒に演じていることに気付きました。私と一緒に呼吸し、言葉が理解できなくても、一緒に演じていたのです。私は彼が求めるものを漠然と理解しようとしていました。そのうち夕食のシーンの撮影がありました。私がカトリーヌを挑発するシーンです。これは2人の関係がクライマックスに達する瞬間であり、「真実」について、ついに母親を攻撃する場面です。私が演じる人物は母親のウソによって傷ついた女性です。母親の言葉の中に真実を見つけられず傷ついています。私は完全に役に入っていました。カトリーヌが映画の中で「なんて深刻なのかしら」というように、私が演じる人物は実に深刻なのです。その部分を表現すべきだと思いました。わたしは深刻な側面を押し出しました。その瞬間から、確か翌日だったと思いますが、是枝監督はラッシュを見て、「シーンに重みを加えてくれてありがとう」と言ってくれました。穏やかに港を目指す船のようでした。他の役者たちを乗せてくれたのです。カトリーヌと私以外にも人物はいますが、この2人の関係が映画の中心です。これまで映画で共演したことも、他の状況で一緒になったこともない女優たちです。その2人が出会って、何年も待ち続けた映画に出るのです。そういう意味では映画の魔法です。思いもしなかった時に、私たちを引き合わせてくれたのですからね。

──今回のクレモンティーヌ・グルニエ(子役)の立ち位置と演出について。
是枝監督 オーディションで会ったとき、とても自由奔放で、彼女なら、おばあちゃん(ファビエンヌ役)の性格が隔世遺伝で孫に伝わっているという設定に出来るなと思いました。そこで彼女に合わせて、キャラクターを書き直しました。日本での撮影と同じように、事前に台本を渡さずに、おばあちゃんの家に遊びに行く話だよと言うことだけ伝えて、あとは現場では通訳を介して、「おばあちゃんにこういってごらん」、「ママのいったことを繰り返してごらん」と、口伝えで台詞を渡すというやり方で全編撮影しました。彼女の存在が大人たちのお芝居にもいい風を吹かせてくれたなと思っています。そして、ここに並んでくださった女性キャスト陣のアンサンブルの一角をちゃんと担ってくれたなと思っています。本当に感謝しています。

──是枝監督の映画に出演してみて。
グルニエ 撮影した時、最初は言われたことがよく分からなかったけど、途中から何を求められているか分かってきました。どこに立って、何を言えばいいかも。最初は、どこで何を言えばいいか、間違ってばかりだけど、途中から成長して、うまくなりました。

クレモンティーヌ・グルニエ(右)© Vittorio Zunino Celotto/Getty Images

午前中に行われたプレススクリーニングでも、温かい拍手が長く続き、評判は上々。ドヌーヴも、会見中は常にご機嫌で、終了後もひとり残って写真撮影に応えていました。

本作はオープニング作品であるとともに、コンペティション部門にも選出されています。受賞結果は、映画祭最終日の9月7日(土)の閉会式の中で発表されます。

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『真実』(原題:La Vérité)

全ての始まりは、国民的大女優が出した【真実】という名の自伝本。
出版祝いに集まった家族たちは、綴られなかった母と娘の<真実>をやがて知ることになる──。
国民的大女優ファビエンヌが自伝本【真実】を出版。アメリカで脚本家として活躍する娘のリュミール、テレビ俳優の娘婿ハンク、ふたりの娘のシャルロット、ファビエンヌの現在のパートナーと元夫、そして長年の秘書……お祝いと称して、集まった家族の気がかりはただ1つ。「一体彼女はなにを綴ったのか?」
そしてこの自伝は、次第に母と娘の間に隠された、愛憎渦巻く「真実」をも露わにしていき──。

監督・脚本・編集/是枝裕和 
出演/カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホーク、リュディヴィーヌ・サニエ
撮影/エリック・ゴーティエ

日本公開/2019年10月11日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
配給/ギャガ
公式サイト
©2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA

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© Lorenzo Mattotti per La Biennale di Venezia

第76回ヴェネチア国際映画祭

会期/2019年8月28日(水)〜9月7日(土)
開催地/イタリア・ヴェネチア
フェスティバル・ディレクター/アルベルト・バルベーラ
© La Biennale di Venezia – Foto ASAC.