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2017.07.09 16:46

【レビュー】『ワンダーウーマン』、DCEU最古のヒーロー最初の闘い

  • Mutsuki

※本記事には、映画『ワンダーウーマン』に関する若干のネタバレが含まれます。

8月25日(金)に日本公開されるDCEU(DCエクステンデット・ユニバース)第4作目の実写映画『ワンダーウーマン』。

© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(以下:BvS)のクライマックスで衝撃的な登場を果たし、スーパーマンとバットマンの2人から主役を奪うほどの活躍を見せた“ワンダーウーマン”は、イスラエル出身の女優ガル・ガドットの熱演で一気に注目が集まった。『ワンダーウーマン』は、は『BvS』で示唆された彼女の過去に焦点があてられ、ワンダーウーマン誕生の物語が描かれる。女性だけで暮らすアマゾン族の王妃ダイアナが、いかにして世界を救う最強の女性戦士になったのか?

『BvS』ではレックス・ルーサーのパーティーで、発掘品の贋作と本物の行方についてのブルース・ウェイン/バットマン(ベン・アフレック)との会話の中で、本作の舞台となる第一次世界大戦時の写真などについて言及するミステリアスな美女として登場するが、本作は、謎の美女の正体が明かされるワケだ。

ダイアナは、幼少期には戦士たちの訓練を見て真似をするお転婆な娘だった。高所から飛び降りようとしたり、母の言いつけに反して秘密に訓練をつけてもらったり。その旺盛な好奇心と冒険心は大人になってからも変わらず。初めて見る男性であるクリス・パイン演じるスティーブ・トレバーを通して知った、島の外で起きている戦争にも関心を示し遂には彼とともに島を飛び出す。

トレバーとともにやってきたのは、第一次世界大戦下のロンドンである。ダイアナはこの戦いを‘アレス(ギリシア神話における戦争の神。コミック版「ワンダーウーマン」にも登場する大物ヴィラン)’が引き起こしたものと確信する。

ちなみに、本作では最初の予告編の段階でヴィランは登場してはおらず、また公式からのアナウンスも全米公開の2ヶ月前にあたる4月に入ってからと、他のDCEU作品やマーベル作品に比べると予告編での登場も含めてかなり遅い登場となった。予告編の第1弾からプッシュされてきたのはヒーロー対ヴィランの構図ではなく、大軍や銃弾の中を突き進むダイアナだったが、これは本作がヒーロー映画だけではなく戦争映画の側面を持ち合わせていることを示唆する。

戦争とヒーロー

戦争を舞台にしたヒーロー映画で忘れてはならないのは、2011年に公開されたマーベル・コミックス原作映画『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』だろう。ヒーローが歴史上実際に起こった戦争に介入し苦悩するという点では同じだが、本質的には似て非なる作品だ。まず作品の主人公スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)は、人一倍愛国心に溢れ軍の入隊試験を受け続けるが、貧弱な体のせいで試験をパスできずにいるごく普通の青年である。彼は軍の開発した超人血清を体に投与され、人類最高峰の肉体を手に入れた。根本は普通の人間である。ニューヨークで生活し、世界で何が起きているか・何が起きたかを把握している常識のある一般人だ。

一方ダイアナは、最高神ゼウスによって命を吹き込まれた、生まれながらの超人。自分が生まれた島の外の世界の常識は持ち合わせていないし、世界で巻き起こっている戦争の知識もない。ましてや初めて起こった世界大戦であれば尚更だろう。彼女の無情な現実と理想との戦い、そして仲間たちのそれぞれの戦いも本作の見どころである。

初登場作『BvS』は、DCEU第1作『マン・オブ・スティール』以外にコミックや登場キャラクターの前情報が無いとかなり分かりづらい構成で賛否両論であった。第3作『スーサイド・スクワッド』は初心者にもハードルが低く設定されているが、コミックの内容を知るファンからの評価は決して高かったワケではない。

だが、本作はコミックを知っているファン、初めて触れるファンの両方が楽しめる作品になっているといえるだろう。ダイアナの成長過程を丁寧に映像にし、故郷のセミッシラ島(コミックではパラダイス島)も忠実に再現されており、住民たちの生活もきちんと作られている。

これらのリアリティは、DCEU初の女性監督パティ・ジェンキンスの功績といえるかもしれない。ただのヒーロー映画だけでなく、物語の緩急、そしてダイアナの女性像をミステリアスな美女から等身大の女の子としてスクリーンに映し出されている。

YouTube/Furious Trailer

この人間味あふれる人物描写は、男性キャラクターにも関してもいえる。いわば男性の監督があまり描こうとしない、男性特有の“かっこつけしい”な側面や弱い側面もきちんと映画に盛り込まれている(トレバーが島で入浴するシーンなど)。『スタートレック』シリーズのかっこいいクリス・パインもいいけれど、本作のかわいいクリス・パインもかなり良いのでは?

これからのDCEU作品とはどう関わる?

DCEU関連で注目すべきワードは2つ。“神”と“第1次世界大戦”である。

©DC Comics

©DC Comics

まずは“神”。今後DCEUで公開予定の作品に『シャザム!(原題)』とその悪役ブラックアダムを主人公にした単独作品があるが、この2人のキャラクターの共通点は「シャザム!」という単語を口にすることで、ゼウスやヘラクレスといった‘神々の力’を行使できること。ワンダーウーマンもゼウスに命を与えられた経緯がある。今後この2人が共演する時、どんな展開が待ち受けているのか心が躍らずにはいられない。

© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

©DC Comics

もう1つのキーワードは“第1次世界大戦”。ご存知のように、次回作『ジャスティス・リーグ』に登場・参加するヒーロー、フラッシュ/バリー・アレン(エズラ・ミラー)はコミック上では2代目にカウントされている。初代フラッシュ(本名:ジェイ・ギャリック)は1940年に初登場。特殊な薬品で高速で移動する能力を得たヒーローで、以降のフラッシュとは経緯、力の源、コスチュームで大きな違いがある。特に注目すべきはコスチューム。彼が被っているヘルメットは、彼の父が第1次世界大戦で着用していた物なのだ!今後同シリーズに登場するかは不明だが、期待を寄せたいところである(ちなみに、ドラマ版では別世界のフラッシュとしてシーズン2に登場。ここでもヘルメットのことで言及された)。

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© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

『ワンダーウーマン』

女性だけが暮らすパラダイス島。アマゾン族のプリンセス、ダイアナ/ワンダーウーマン(ガル・ガドット)は、ある日、不時着したアメリカ人パイロット、スティーブ(クリス・パイン)を救出、初めて外の世界を知る。やがて傷の癒えたスティーブとともに、戦争の早期終結のためにロンドンへ向かうが……。

監督/パティ・ジェンキンス

出演/ガル・ガドット、クリス・パイン、ロビン・ライト、コニー・ニールセン ほか

配給/ワーナー・ブラザース映画

公開日/2017年8月25日(金) 全国ロードショー 3D/2D/IMAX

2017年、米国映画、2時間21分

公式サイト