『逆火』北村有起哉&円井わん&内田英治監督!完成披露試写会レポート
- Fan's Voice Staff
北村有起哉を主演に迎えた内田英治監督最新作『逆火』の完成披露試写会が6月19日(木)に東京・飯田橋の神楽座で開催され、舞台挨拶に北村有起哉と円井わん、内田英治監督が登壇しました。
映画監督を夢見る助監督の野島(北村有起哉)の次の仕事は、貧困のヤングケアラーでありながらも成功したARISA(円井わん)の自伝小説の映画化。ところが、周辺で話を聞くうちに彼女に“ある疑惑”が浮上。この女は、悲劇のヒロインか、それとも犯罪者なのか?真実を追求する野島に対し、名声を気にする監督、大ごとにしたくないプロデューサーなど撮影を中断したくない面々から圧力がかかり──。
上映に先立ち、北村有起哉と円井わん、内田英治監督は舞台挨拶に登壇。アイディアの着想について「映画制作を題材にした映画を撮りたかった」という内田監督。「映画の現場で殺人事件があったら面白いな」という考えもあり、映画制作を題材にしたミステリー映画とすることに。主人公を助監督にした理由は、「今までにあまり(映画になって)ない人。助監督が探偵のように(事件を)嗅ぎつけてというのを描いてみました」と説明。
内田監督は、参考にした映画は特になしとしながらも、映画をテーマにした映画として、ロバート・アルトマン監督の『ザ・プレーヤー』(92年)やフランソワ・トリュフォー監督の『映画に愛をこめて アメリカの夜』(73年)、クエンティン・タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19年)などを挙げました。
主人公の野島は「古き良きタイプの助監督ではない」という北村。「毎日ちゃんとお風呂に入っているような助監督」「真面目で誠実。それゆえに、こういうストーリー展開になっています」と説明。野島というキャラクターに自身が見てきた助監督のイメージを取り入れているのかと問われた内田監督は、「基本的には入れていません」と即答。助監督にはいろいろなタイプがいるとしながらも、その中に「野島タイプはいないかも」
円井は、「ARISAを演じたからかもしれないけれど、野島はすごくいい人だと思います」とコメント。野島を演じた北村については「普段はすごく優しいのに、カメラが回ると役にグーっと入っていて怖かった。カットがかかった瞬間にやわらかくなるから、そこにホッとしていました」と撮影時の印象を明かしました。
内田監督は北村を「監督が好きなタイプの役者さん。いろいろな監督と北村さんの噂をよくしています!」と紹介。内田監督作品に出演するのは3回目の北村は「一期一会の世界だと思っているから、(何度も)呼んでいただけるのはうれしい。合格だったんだなって思うので(笑)」と会場の笑いを誘う場面も。出演依頼が来るたびに「新しい挑戦はしていかないといけない」と思っているとし、新しい挑戦というハードルはありつつも「やっぱり呼ばれるのはうれしいです」と笑顔を見せました。
円井のデビュー作から9年ほどの付き合いがあるという内田監督。円井の印象は「9年前から変わらない。そう考えると恐ろしい…(笑)。でも、僕の中では変わらない存在感があるのが円井の個性」だとし、本作においては「疑惑を引っ張っていく存在感がある女優が必要でした」と起用理由を説明。
北村は「映画では今日のような素敵な衣装を着ていないので、全然印象が違います」と劇中の円井の様子を語り、「すごくカリスマ性のある、若い人に絶大な人気を誇るみたいな役どころ。こういう人が若者を巻き込んでいくような存在というのを(円井演じるARISAを通して)感じられました」と称賛。さらに「入ってきた瞬間に『おー!すげー!』って思う」と、現場での円井の姿を振り返り、「二人の間で始まる新しい交流も楽しみながら観てください!」とアピール。
もし野島の立場だったら映画撮影を中止するかという質問に、内田監督は「映画はお金がかかる博打のようなところがあります」と答え、「撮影時に道路許可をもらう時に、映画を撮ると伝えると遊んでいるように思われることもあるし、怒られることもあります」「だけど、自分にとっては職場。これで食っているのだから、中止になったら困る。生活があるから、すごく悩むと思います」と、野島と同様に苦悩を経験しそうだと予想。
北村は野島のように「青臭くて情熱家の人はいてほしいという願いはあります。理想をしっかり持ち、妥協できない人がいると、気づかされることってあると思います。破滅型ともいうのかもしれないけれど、もしかしたら(野島のような)そういう選択をしてしまうかもしれない。それであとから大反省して、丸くなるとか…っていうのがあるのかな。でも、(中止にしたら)映画業界では話題になると思います!」
円井は悩みながらも「後々大変なことになると思ったら中止にしたほうがいいかな…」と答えを絞り出し、その姿に北村は、「自分だったら(どうするのか)…と考えてほしい」と続け、さらに内田監督は、「途中で中止にはしないけれど…」「撮影した後にポシャった経験はありますが、撮影途中にというのはないかも」と自身の経験談を披露しました。
本作に描かれている“映画業界あるある”について、内田監督は「いるよね、という感じの監督さんが出ています」としつつ、モデルにした人はいないと補足。さらに、実際の制作部をそのまま制作部として出演させることで、リアルを再現しつつ経費削減も実現。「楽しみながらやっていました。それこそリアルだったと思います。スタッフは本物?という目線で観るのも楽しいかも!」
円井は「何でも助監督に訊くのはあるあるかも!」と語り、何でも尋ねてしまうのは「そこに(助監督が)いるから。シーバーを通していろいろ確認してくれるから」。内田監督は「いろいろなスタイルがあるけれど、現場を回すのが助監督。監督はモニタールームとかにいて、現場にいないからいろいろと訊ける!」「チーフはスケジュール管理、セカンドは現場を回すのと衣装、サードは美術」とその役割を説明。
北村は「あとからアラ探しされても大丈夫なように、手紙とかもちゃんと書いてくださる」と助監督の仕事の細かさ、そのありがたみを語り、内田監督も「あれはすごい。手紙の中は映らないのに手紙の内容がちゃんと書いてある。役者さんによっては気持ちを作るのに使うケースもあるから(ありがたい)。助監督がいないと映画は作れません!」
最後の挨拶で北村は「ワンシーンだけ、台本にもスケジュールにも書かれていないシーンが生まれました。それがどこなのか。そんなことを思いながら観ていただけるのもおもしろいかもしれません」と呼びかけつつ、「答え合わせをどこですればいいのかって感じですが、観た後につぶやいていただければ、それが波紋のように広がって…」「一人でも多くの方に観ていただけることを願っています」と締めくくりました。
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『逆火』
出演:北村有起哉、円井わん、岩崎う大(かもめんたる)、大山真絵子、中心愛、片岡礼子、岡谷瞳、辻凪子、小松遼太、金野美穂、島田桃依
原案・監督:内田英治
脚本:まなべゆきこ
音楽:小林洋平
プロデューサー:藤井宏二、関口海音
製作:映画『逆火』製作委員会(Libertas/Yʼs Entertainment Factory/DASH/move)
制作プロダクション:Libertas
2025年/日本/108分/カラー/シネスコ/5.1ch/PG12
日本公開:2025年7月11日(金)テアトル新宿ほか全国順次公開
配給:KADOKAWA
公式サイト
©2025「逆火」製作委員会