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2023.04.25 15:00

ベルリン金熊賞『アダマン号に乗って』ニコラ・フィリベール監督のインタビュー&メッセージ動画が解禁!

  • Fan's Voice Staff

本年度ベルリン国際映画祭コンペティション部門で最高賞にあたる金熊賞を受賞した日仏共同製作『アダマン号に乗って』の監督を務めたニコラ・フィリベールのインタビューとメッセージ動画が解禁されました。

フランスでは先週、劇場公開されたばかりの『アダマン号に乗って』。映像では、共同製作国である日本の観客にもいち早く届けたいというフィリベール監督の思いが叶い今週末に緊急公開されることとなった日本に向けて、アダマン号について、金熊賞受賞となる映画ができるまでの裏側について語っています。

ドキュメンタリー映画が金熊賞をコンペティション部門で受賞するのは、長いベルリン国際映画祭の歴史においても二度目という快挙。フィリベール監督は、「受賞以前に作品がノミネートされたことが嬉しかったです。今まで参加はしていても、ノミネートされたことはありませんでした。金熊賞受賞は予期していなかったので、本当に驚きました。自分にとっても、作品にとってもいいことだと思っています。作品が今後、精神医療に与える影響にも期待しています。精神医療の世界は今、苦しみの中にあるので、少しでも人間的な精神医療にスポットライトが当たってくれれば嬉しいです」と喜びのコメント。

©Jean-Michel Sicot

毎日いろいろな患者がやってくる「アダマン号」は、精神疾患者のためのデイケアセンター。「アダマン号は2010年に開所しました。パリの中心部、セーヌ川に浮かんでいます。係留されているので、航行する船ではありません。言うならば“浮かぶ建造物”です。乗っているときは水の上にいる感覚があります。船の中にはさまざまな空間があります。患者はその中を自由に移動できて、閉ざされた空間はありません。船に使われている素材はガラスや木材など重厚感があり、光がたくさん入ります。パリの中心にいるのに別の場所に来たような錯覚にとらわれる、とてもゆったりとした場所です。水が近くにあるというのも重要ですね、場所そのものに癒し効果があるんです」と、今作の舞台となった“奇跡”の場所を説明。

アダマン号は基本的には観光客などがふらりと訪れることは出来ず、患者たちの穏やかな時間が守られています。「通ってくるのは主にパリに住む患者さんです。定期的に通う人もいれば、不定期に通う人もいますし、複数や単体のワークショップに来る人もいれば、ただ雰囲気に浸ってコーヒーを飲みに来る人もいます。スタッフも患者さんもみんな私服なので、誰が患者さんで誰がスタッフなのかも区別がつかないくらいで。レッテルがないんですね。患者さんが『病気』の枠に閉じ込められておらず、ちゃんとした『人』として見られているんです。スタッフは、彼らの『勢い』を少し引き出そうとします。彼らを孤独から引き出して、世界とつながる手助けをするのです。アダマン号はそういう思想をもった場所です」と、内部の様子を表現。

映画の中では、そうした患者たちが気ままに弾き語りをしたり、絵を書いたり、ジャム作りをする様子などを観ることができます。気分の良い日もあれば、そうでない日もあり、どんな日でもアダマン号は、ありのままを受け入れてくれる場所に感じられます。彼らの日常を捉えた『アダマン号に乗って』の撮影は7ヶ月間、収録映像は100時間にも及びました。その中でもフィリベール監督が一人きりでカメラを携え、撮影をしたものがほとんどを占めるそう。

©Michael Crotto

ちなみに、“アダマン”とは「フランス語でダイヤモンドの中心という意味です。ダイヤモンドの核となる硬い部分です。英語でadamant は「確固たる」という意味です。フランス語ではあまり使われませんし、私も意味を知りませんでした。『アダマン』って音がきれいですよね」

観客に確実なメッセージを伝えたくて、映画を撮るのではないと言うフィリベール監督。今回で言えば、観客の手を取りアダマン号に誘い、そして観客がそれぞれ、精神医療に興味をもつもよし、他者との交流に関心をもつもよし、ただその場にいる気分になるだけでも良いのだと話しています。

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『アダマン号に乗って』(英題:On the Adamant)

監督:ニコラ・フィリベール
2022年/フランス・日本/フランス語/109分/アメリカンビスタ/カラー/原題:Sur l’Adamant/日本語字幕:原田りえ

日本公開:2023年4月28日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開
共同製作・配給:ロングライド
協力:ユニフランス
公式サイト
© TS Productions, France 3 Cinéma, Longride – 2022