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2022.12.12 23:00

【ノミネート一覧】第80回ゴールデングローブ賞 映画部門(2023年)

  • Fan's Voice Staff

第80回ゴールデングローブ賞(2023年)のノミネーションがLA現地時間12月12日(月)に発表されました。

米国で最も歴史のある映画賞の一つであるゴールデングローブ賞は、HFPA(ハリウッド外国人映画記者協会)のメンバーによる投票で決定する賞ですが、HFPAの差別的および閉鎖的な体質が非難され、2021年にはNBCによる授賞式のテレビ放映が中止に。その後、HFPAは非白人や女性の新会員を増やすなどして組織改革を進めたほか、今回は米国外に在住の批評家103名にも“International Voter”として投票を求めることで、従来の倍以上となる計200名を超す記者の投票により受賞者が選定されることになります。

『イニシェリン島の精霊』©2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

作品賞(ドラマ部門)を含む最多8ノミネートを獲得したのは、マーティン・マクドナー監督の『イニシェリン島の精霊』。舞台を多く手掛けてきたマクドナーが書いた戯曲「アラン島三部作」中の未上演の脚本をベースとし、アイルランドの離島で暮らす親友二人の諍いを軸に、人間の業を描きました。2017年に『スリー・ビルボード』でベネチア国際映画祭脚本賞を受賞しているマクドナーは、今作でも本年度(2022年)ベネチアの脚本賞を受賞しています。

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』Photo courtesy of A24

続いて、A24史上最大のヒット作となった“ダニエルズ”の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が作品賞(ミュージカル・コメディ部門)を含む6部門にノミネート。経営危機に見舞われたコインランドリーを営む中国系移民の夫婦を演じたミシェル・ヨーとキー・ホイ・クァンが、それぞれ主演女優賞と助演男優賞の候補入りを果たしました。

『逆転のトライアングル』Fredrik Wenzel © Plattform Produktion

前作『ザ・スクエア 思いやりの聖域』に続いてカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞したスウェーデンのリューベン・オストルンド監督初の英語映画『逆転のトライアングル』は、作品賞(ミュージカル・コメディ部門)と助演女優賞にノミネート。ベネチア国際映画祭でケイト・ブランシェットが女優賞を受賞したトッド・フィールドの『TÁR』も作品賞、主演女優賞(共にドラマ部門)など主要部門でノミネート入りしました。

『別れる決心』© 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED

非英語映画賞(旧外国語映画賞)では、カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した韓国の名匠パク・チャヌクの『別れる決心』や同映画祭でグランプリに輝いたベルギーのルーカス・ドンの『Close』などが順当にノミネートされた一方、ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員大賞)と新人監督賞を獲得したフランスのアリス・ディオップの『Saint Omer』など有力視されていた作品が落ちるなど、番狂わせもありました。また、日本でもヒットしたインドの『RRR』は作品賞へのノミネートも期待されていましたが、非英語映画賞と歌曲賞でのノミネート止まりとなりました。

『RRR』

監督賞では、ジェームズ・キャメロン、バズ・ラーマン、スティーヴン・スピルバーグといった大御所がノミネートされた一方、女性監督が一人もいないことが目につきます。『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』や『ウーマン・トーキング 私たちの選択』など評価の高い女性監督の作品があるにもかかわらず、その名がノミネートリストに見られないことは、議論を呼ぶことになるでしょう。作品賞においても、女性監督による作品は一切ありません。

『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』© Universal Studios. All Rights Reserved.

女性やインターナショナル(米国外)の投票者を増やすなどの組織改革を経て、ダイバーシティ的な視点を反映させるはずだった今回のゴールデングローブ賞ですが、蓋を開けてみれば、男性優位、スター主義といった旧態依然とした側面の改善は、ノミネーションリストを見る限りは感じられません。今後各方面からどのような反応が出てくるのか、注目されます。

授賞式はLA現地時間2023年1月10日(火)に開催される予定です。

以下、映画部門のノミネーション一覧です。

上位作品

8ノミネート
イニシェリン島の精霊』マーティン・マクドナー監督(サーチライト・ピクチャーズ)

6ノミネート
エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート(A24)

5ノミネート
バビロン』デイミアン・チャゼル(パラマウント)
フェイブルマンズ』スティーヴン・スピルバーグ(ユニバーサル)

3ノミネート
エルヴィス』バズ・ラーマン(ワーナー・ブラザース)
ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』ギレルモ・デル・トロ(Netflix)
TÁR』トッド・フィールド(Focus Features)

上位スタジオ

12ノミネート:サーチライト・ピクチャーズ
10ノミネート:A24 
9ノミネート:Netflix 
7ノミネート:パラマウント、ユニバーサル
5ノミネート:ウォルト・ディズニー・スタジオ
4ノミネート:Focus Features
3ノミネート:ワーナー・ブラザース

作品賞(ドラマ部門)

アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』ジェームズ・キャメロン監督(ウォルト・ディズニー・スタジオ)
エルヴィス』バズ・ラーマン(ワーナー・ブラザース)
フェイブルマンズ』スティーヴン・スピルバーグ(ユニバーサル)
TÁR』トッド・フィールド(Focus Features)
トップガン マーヴェリック』ジョセフ・コシンスキー(パラマウント)

作品賞(ミュージカル・コメディ部門)

バビロン』デイミアン・チャゼル監督(パラマウント)
イニシェリン島の精霊』マーティン・マクドナー(サーチライト・ピクチャーズ)
エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート(A24)
ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』ライアン・ジョンソン(Netflix)
逆転のトライアングル』リューベン・オストルンド(Neon)

主演男優賞(ドラマ部門)

オースティン・バトラー『エルヴィス』
ブレンダン・フレイザー『The Whale』
ヒュー・ジャックマン『The Son』
ビル・ナイ『生きる LIVING』
ジェレミー・ポープ『The Inspection』

主演女優賞(ドラマ部門)

ケイト・ブランシェット『TÁR』
オリヴィア・コールマン『エンパイア・オブ・ライト』
ヴィオラ・デイヴィス『The Woman King』
アナ・デ・アルマス『ブロンド』
ミシェル・ウィリアムズ『フェイブルマンズ』

主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)

ディエゴ・カルバ『バビロン』
ダニエル・クレイグ『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』
アダム・ドライバー『ホワイト・ノイズ』
コリン・ファレル『イニシェリン島の精霊』
レイフ・ファインズ『ザ・メニュー』

主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)

レスリー・マンヴィル『ミセス・ハリス、パリへ行く』
マーゴット・ロビー『バビロン』
アニャ・テイラー=ジョイ『ザ・メニュー』
エマ・トンプソン『Good Luck to You, Leo Grande』
ミシェル・ヨー『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

助演男優賞

ブレンダン・グリーソン『イニシェリン島の精霊』
バリー・コーガン『イニシェリン島の精霊』
ブラッド・ピット『バビロン』
キー・ホイ・クァン『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
エディ・レッドメイン『グッド・ナース』

助演女優賞

アンジェラ・バセット『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』
ケリー・コンドン『イニシェリン島の精霊』
ジェイミー・リー・カーティス『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
ドリー・デ・レオン『逆転のトライアングル』
キャリー・マリガン『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』

監督賞

ジェームズ・キャメロン『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
バズ・ラーマン『エルヴィス』
マーティン・マクドナー『イニシェリン島の精霊』
スティーヴン・スピルバーグ『フェイブルマンズ』

脚本賞

トッド・フィールド『TÁR』
ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
マーティン・マクドナー『イニシェリン島の精霊』
サラ・ポーリー『ウーマン・トーキング 私たちの選択』
スティーヴン・スピルバーグ、トニー・クシュナー『フェイブルマンズ』

非英語映画賞

西部戦線異状なし』エドワード・ベルガー監督(ドイツ)
アルゼンチン1985 ~歴史を変えた裁判~』サンティアゴ・ミトレ(アルゼンチン)
Close』ルーカス・ドン(ベルギー)
別れる決心』パク・チャヌク(韓国)
RRR』S.S.ラージャマウリ(インド)

作曲賞

カーター・バーウェル『イニシェリン島の精霊』
アレクサンドル・デスプラ『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』
ヒルドゥル・グーナドッティル『ウーマン・トーキング 私たちの選択』
ジャスティン・ハーウィッツ『バビロン』
ジョン・ウィリアムズ『フェイブルマンズ』

歌曲賞

Carolina”『ザリガニの鳴くところ』
Ciao Papa”『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』
Hold My Hand”『トップガン マーヴェリック』
Lift Me Up”『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』
Naatu Naatu”『RRR』

アニメーション映画賞

ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』ギレルモ・デル・トロ監督
犬王』湯浅政明
Marcel the Shell with Shoes On』ディーン・フライシャー=キャンプ
長ぐつをはいたネコと9つの命』ジョエル・クロフォード
私ときどきレッサーパンダ』ドミー・シー