Column

2022.10.19 7:00

【単独インタビュー】『耳をすませば』中川翼が挑む、みんなの“王子様キャラ”

  • Atsuko Tatsuta

柊あおいによる青春恋愛漫画を清野菜名と松坂桃李のW主演で実写化した映画『耳をすませば』が10月14日(金)に公開されました。

読書が大好きな中学生・月島雫は、図書カードにいつも自分より先に記された天沢聖司という名前を気にかけていた。ある日、最悪ともいえる出会い方で聖司と知り合った雫だが、彼に大きな夢があることを知り、次第に惹かれていく。やがてその夢を叶えるため聖司はイタリアに渡った。10年後の1998年、雫は出版社で児童書の編集者として働きながら小説を書いていたが、雫の夢は一向に叶う気配もない。そんな時、仕事で大きなミスを犯した雫は、聖司が住むイタリアへ向かい──。

1989年に少女漫画雑誌「りぼん」で連載された「耳をすませば」は、1995年にはスタジオジブリによりアニメーション映画化され、青春漫画の金字塔として今なお愛され続けています。それから四半世紀、『白夜行』や『JIN−仁−』など数々のヒットドラマや映画『約束のネバーランド』で知られる平川雄一朗の脚本・監督により実写映画化が実現。原作を再現した「あの頃」と、完全オリジナルストーリーの「10年後」の二人を描いた二重構成による野心的な実写版は、大人になった雫を清野菜名、聖司を松坂桃李が演じることでも話題です。

中学生時代の聖司を演じるのは、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも注目を浴びる中川翼。重責を担った16歳の新進俳優が、Fan’s Voiceのインタビューに応じてくれました。

──『耳をすませば』のどこに惹かれて、出演したいと思ったのですか?
僕が「耳をすませば」を知ったのは、小学生の頃、確か金曜ロードショーでスタジオジブリのアニメを観たのが最初だったと思います。もう10年近く前ですね。その時は音楽のシーンが印象に残ったことを覚えています。それから、天沢聖司という王子様キャラも。なので、この実写化の話を最初に聞いたときは、どうしてもあの天沢聖司役を勝ち取りたいという気持ちが強かったです。

──小学生で“王子様キャラ”に憧れたんですね!
そうですね。堂々としている感じというか、怖いもの知らずというか。あの佇まいがすごく好きで、憧れでした。出演が決まった時はとにかく嬉しかったのですが、聖司はアニメファンの“みんなの王子様”なので、プレッシャーがものすごくありました。

──今回の映画では原作にない10年後の二人も描いていますが、スター俳優である松坂桃李さんが演じる天沢聖司の若い頃を演じることも、またプレッシャーだったのではないですか?
もちろん、それもありました。でも、それよりも何よりも、監督が、僕と雫役の安原琉那さんに「君たちにかかっているから」と言い続けていたので、そのプレッシャーが大きかったです。何回もリハーサルを重ねていたのですが、撮影が始まるまでも撮影が始まってからもプレッシャー。でも、やるからには全力でやり通したいという思いがありました。

──役作りにあたって、自分なりにどのような天沢像を作り上げようとしたのですか?
監督にお会いする前は、聖司は“キレイな王子様”というか、シュッとしているイメージでした。けれど、監督から「天沢聖司はそんなものじゃない。もっとキラキラ輝いていて、Sっ気があったりツンデレで、思ったより何倍も堂々としている。本当の王子様みたいなキャラなんだよ」と言われました。木村拓哉さんのような風格のある佇まいとか、『花より男子』で松本潤さんが演じた役のような。

──道明寺役ですね。
はい、監督からは「松本潤さんのあの役を研究して来い」と言われました。『花より男子』を最初から全部観て、研究しました。松本さんの話し方や立ち方だったり、オーラの出し方やツンデレな部分、不器用なところも全部研究して真似てやってみたら、監督からは「ちょっと松潤すぎるよ」と言われました(笑)。でも、そこが役作りの土台になったという感じです。松本さんが演じている道明寺はドSっぽいのですが、恋をしているとわかったときの動揺とか、気持ちを隠しきれない不器用さが、天沢聖司の王子様キャラと重なったりすると思います。

──天沢聖司を演じる上で具体的に取り入れたテクニック等はありますか?
よく木村拓哉さんがされているのですが、手の親指だけポケットに入れる仕草。普通だと人差し指から小指をポケットに入れるところ、木村拓哉さんは逆なんです。でも、それも監督から「キムタク意識しているでしょ」と言われてしまいました(笑)。

──バレてしまったんですね。
はい。でも、そう見えたのなら、自分が表現しようとしていることに一歩近づけたのかなと、前向きに解釈しました。

──中川さん自身に、王子様キャラっぽいと思うところはありますか?
僕は結構人見知りですし、王子様キャラではありません。でも、(聖司が)ツンデレだったり、陰で努力しているのに表向きには“全然余裕だよ”という雰囲気を出すところは、自分も似ているかなと思いました。それこそ、好きな人の前で強がるというのは、自分もしてしまうかなと思うし、共感できるところがあります。

──中学3年生の聖司と雫の恋愛については、どのように見ていますか?
出演が決まって原作の漫画もすぐに読んだのですが、キュンキュンしますよね。雫が抱いている感情が恋だとだんだん気づいていくところとか。本当に、ザ・青春という感じがしました。

──初恋というか、微妙の感情の揺れのようなものは、あの年頃特有なのかもしれないですね。
中学生特有の恋というか、思春期ならではの、ちょっと隠してしまう感じが良いと思いました。大人とは全然違うだろうし、高校生になるとまた別物になるのだろうと思います。

──そうした恋や感情に関して、監督とはどんな話をされたのですか?
撮影の休憩中に監督やスタッフの方々が、「僕が中学生のときは、もっとガツガツいってたよ」みたいな話をしてくださったのですが、それと比べると、僕の印象では今の中学生は“引き気味”なのではないかと思います。昔は手紙を直接渡しに行ったりして気持ちを伝えていたのでしょうが、今はインターネットが普及して、顔を見なくてもLINEとかで告白できたりしますし。そういう話をみなさんとしていました。

──中川さんも、直接気持ちを伝えるより、LINEやSNSで伝えるほうが気が楽ですか?
『耳をすませば』に関わって思ったのですが、手紙の交換とか告白とか、すごく好きです。そういうのに憧れます。

──手紙を書いたことはあるのですか?
ないんです。小学校低学年の頃は、周りの女子が手紙の交換とかしていましたが、おそらくそれ以降はみんなスマホを持つようになり、手紙を書く機会があまりなくて。手紙の交換をできる相手がいたら書きたいと思うし、手紙には惹かれるものがあります。実際に文字を書くことも好きですし。手書きの文字はその人特有の字というか、人それぞれの個性が見えるのが楽しいところかなと思います。LINEとかで文字を打っていると、全員一緒ですからね。

──今作の撮影はもう2年前だったかと思いますが、それからご自身の中で変化等はありましたか?
そうですね。当時僕は中学3年生だったので、この作品を撮るのにはベストなタイミングだったと思います。中学生時代を演じた4人組は、リハーサルも重ねていたので一緒にいる時間が結構長く、仲良くなりました。テストや勉強についてとか、他愛もない話をしているだけでしたが、そのあたりの仲の良さも映画に出ていたのかなと思います。

今は高校生になって、行動や考え方が大きく変わりました。今思うと、中学生までは自分から能動的に何かしようと思うことが少なかったと思います。義務教育で守られていた部分もあるのかもしれませんが、周囲に言われるがままに動いていたところも多かった。でも高校生になってからは、自分がしたいことのために自分で考えて、計画性を持って動くというようになったと思います。

──完成した今回の映画を観たご感想は?
僕も同じ楽器に挑戦していたからというのもあるのですが、松坂さんのチェロがとにかく上手すぎて、感動で何回も鳥肌が立ちました。作品全体としても、音楽の素晴らしさを改めて感じました。

内容に関しては、大人になるって素敵なことだなと思いました。聖司くんはプロを目指して遠く海外へ出ましたが、僕も今、俳優という職業に夢を持っているので、海外に行く人生もあるのかなとも考えさせられました。

──まだ16歳ですが、俳優としては10年以上キャリアがありますね。夢は何でしょうか?
夢というか身近な目標のようなもので言うと、最近ホラー映画を観ることに挑戦しています。怖い系が苦手なのですが、観てみようと思って。

──出演もしたいとお考えですか?
まだホラー映画には出ていないので、まずは観て、勉強してからですね。恋愛映画やミステリーとは違った、ホラー作品ならではの演技というのがあると思います。驚き方とか。未体験のものを映画にするという難しさもあると思うので。

──最近観たホラーで好きなものはありましたか?
ホラーではないですが、少し前に観た菅田将暉さん主演の『キャラクター』は震えました。Fukaseさんが演じたサイコパスがめちゃくちゃ怖くて、ああいったサイコパスとかグロテスクな役を演じてみたいと思いました。ホラーは演じる方が(観るよりも)怖くないという話も聞くので、人に「怖い」と思われる役は一度はやってみたいです。

──それが身近な夢だとすると、例えば10年後、20年後の夢や目標はありますか?
松坂桃李さんや菅田将暉さんは、同じ事務所の尊敬する先輩でもあります。10年後、20年後はそうした先輩たちのように、尊敬される俳優になりたいです。そのためには、とにかく経験が大事だと思います。僕は小学生の頃から演技を始めましたが、経験を重ねるに連れて考えも変わりますし、仕事をする度に新たな出会いもあり、自分が磨かれていくように思います。とにかく場数を踏んで努力して、大人になっていくしかないと思っています。

──共演したい俳優や、一緒に仕事をしたい監督はいますか?
最近は、広瀬すずさんの演技をよく観ています。本当にお上手で、惹かれるものがあるというか、見入ってしまうんです。ぜひいつか共演できる日が来ないかなと思っています。監督では、いずれは是枝作品の役を勝ち取りたいという思いがあります。実現できるように頑張ります。

Photography by Aya Kawachi

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『耳をすませば』

出演/清野菜名、松坂桃李、山田裕貴、内田理央、安原琉那、中川翼、荒木飛羽、住友沙来、音尾琢真、松本まりか、中田圭祐、小林隆、森口瑤子、田中圭、近藤正臣
監督・脚本/平川雄一朗
原作/柊あおい「耳をすませば」(集英社文庫<コミック版>刊)
音楽/髙見優
主題歌/「翼をください」杏(ソニー・ミュージックレーベルズ)

日本公開/2022年10月14日 ROADSHOW
配給/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/松竹
公式サイト
©︎柊あおい/集英社 ©︎2022『耳をすませば』製作委員会