Column

2022.06.20 21:00

【特別対談】是枝裕和 × 早川千絵 ─ 命の意味を問う『ベイビー・ブローカー』『PLAN 75』は呼応する映画

  • Atsuko Tatsuta

※本記事には映画『PLAN 75』の一部ネタバレが含まれます。

第75回カンヌ国際映画祭では、“命の重さ”という極めて今日的かつ本質的なテーマに真摯に向き合う2本の日本人監督作品が選出され、高い評価を受けた。

『ベイビー・ブローカー』是枝裕和監督、『PLAN 75』早川千絵監督(2022年5月、フランス・カンヌにて) ©Kazuko Wakayama

“赤ちゃんポスト”に預けられた子どもを闇で養子縁組させるブローカーと子どもの母親、それを追う刑事たちのロードムービー『ベイビー・ブローカー』は、是枝裕和監督が韓国のキャスト、スタッフ、資本で制作した最新作で、コンペティション部門に選出。ソン・ガンホが韓国人俳優として初の男優賞を受賞した。

一方、初監督作品ながら「ある視点」部門に選出された早川千絵監督の『PLAN 75』は、75歳以上が自らの生死を選択できる架空の制度〈プラン75〉に翻弄される人々を媒介に、「生きる」という究極のテーマを問う骨太の人間ドラマで、早川監督はカメラドール賞(新人監督賞)スペシャルメンションに輝いた。

会期中の多忙なスケジュールを縫って、二人にとって思い入れのあるカンヌ映画祭で対談が実現した。

『PLAN 75』

──是枝監督がエグゼクティブプロデューサーを務めた2018年のオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』の一篇を早川監督が撮ったことで縁のあるお二人ですが、この度はどうぞよろしくお願いいたします。
是枝 『十年』で(短編の)『PLAN75』を撮っていた時から、「長編を撮る」と言っていたと思いますが、ここまで何年かかったのですか?

早川 確かにその頃から言っていましたね。2018年、『十年』のサウンドの仕上げが終わった日に、短編のプロデューサーでもある水野詠子さんとジェイソン・グレイさん(共にローデッド・フィルムズ)とお茶をしながら話している時に、「千絵さん、長編も一緒にやってみる?」と言ってくださって、それが始まりでした。それまでは、やりたいという思いはありましたが、プロデューサーもいなかったので現実感がなかった。なのでここまでに、4〜5年かかりましたね。

是枝 脚本はその間に作ったのですか?

早川 はい。何度も何度も書き直して、クランクイン数日前に、やっと印刷できるまでになりました。17稿まで書き直しました。大分かかりましたね。

是枝 (主演の)倍賞千恵子さんがとても素晴らしかったですが、倍賞さんのキャスティングは、どのタイミングで決まったのですか?

早川 最初の脚本が書き上がってからですね。

是枝 書き終わってからなんだ!

早川 そうですね。脚本を書きながら、どなたが良いかなと考えてはいたのですが、キャストを考えられるほど余裕がなく。それで、ようやく出資してくれる会社が決まり、キャスティングが進められるという段階になって、倍賞さんにお願いしたいと思いました。倍賞さんは脚本を読んで、気に入っていただけたのですが、まずは、監督とお会いしてから(出演を)決めたいとおっしゃられて。自分がどういう状態なのかも監督に実際に見てもらった方が良いから、と。それでお会いする機会をいただいて、直接お話をした後、ご快諾いただきました。

 

是枝 倍賞さんに合わせて脚本を書き変えたりしたのですか?

早川 書き変えました。その後、脚本の読み合わせでお会いした時、「なんでここ削ったの?」「なんでここ変えちゃったの?」と言われました。撮影の直前に、予算の関係もあって削ったシーンがあって。でも倍賞さんが、「ここ、やりたかった」とおっしゃって。強く言われたわけではなかったのですが、「なんでなくしちゃったの?なんでかしら?」とおっしゃっているとプロデューサーから聞いて、さらに「そこまで倍賞さんがおっしゃっているんだから、撮ってみたら」と水野プロデューサーが言ってくださったこともあり、脚本を戻したら、そこがすごく良いシーンになりました。

是枝 良いプロデューサーですね。どのシーンですか?

早川 ミチ(倍賞千恵子)が警備員として働くシーンです。別の人が働いているところを倍賞さんが見ている、というシーンに変えていました。体力的にも寒い中、長時間は無理なのではないかとか、いろいろ考えてしまったのですが、本当に戻して良かったと思います。

是枝 本当に印象的なシーンですよね。

早川 まだありますね。倍賞さんとたかお鷹さんがベッドで寝ていて目を合わせるというシーンが脚本に書いてあったのですが、撮影の際に、わざとらしいかなと思って、「見つめ合わなくていいです」と言ったら、倍賞さんは「なんで?見つめ合わなきゃだめじゃない」と一言おっしゃって。前述の件もあり、倍賞さんの判断は正しいとわかっていたので、そこは私も即「やっぱり見つめ合いましょう」と言って、やっていただいたんです。それが結果的に、力強いシーンになりました。もしそのままにしていたら、重要なシーンを失うところでした。危なかったです。

是枝 それは良かったね。そこで我を張る監督もいますからね。

『PLAN 75』

──是枝監督は、意志を通すタイプですか?

是枝 僕は全くないですね。俳優さんから言われたら、「ああそうですか、やってみましょう」と必ず従う方です。

──早川さんの演出方法には共感されますか?

是枝 似ているとは思わないけど、『十年』で関わらせていただいたので、そこから何を膨らませていったのか、どう変えていったのかについては興味深かった。こういう見方が作品を見る場合正しいのかはわからないけれど、そういったことも含めて、とても面白かったですね。いろいろな意味で、非常に筋の通った作り手だな、と。

先ほど倍賞さんのキャスティングについて聞いたのは、当て書きなのかなと思ったからです。倍賞さんの良さを非常に生かしていた。一度、友人の結婚式で倍賞さんが歌うのを聴いたことがあるのですが、鳥肌が立つくらい素晴らしい声でした。(映画の中に)「二度目の夫に声が良いと言われた」というエピソードがあったりしたので、これは当て書きなのかと思っていました。

早川 あれは倍賞さんとお会いしてから作ったセリフでした。お会いして、声がとても素敵だったので。

是枝 そういうことも含めて、倍賞さんがど真ん中できちんと作品を支えているのですね。最初に(ミチが)仕事を辞めさせられた時に、ロッカーをハンカチで拭くシーンがあるでしょう。そして、特上のお寿司を食べ終わった後には、寿司桶をきれいに洗って拭く。その辺りのミチの生活のディテールがおそらく、彼女の最終的な決断に直結しているのだと思います。ディテールやテーマ……テーマという言い方はあまり好きじゃないけれど、その回収の仕方にブレがなく、とても面白くて強い映画だと思いました。

そして、磯村(勇斗)くんの役も面白い。彼がやっているベンチに手すりを付ける仕事とか悪意のない役人仕事は、「凡庸な悪」としか言いようがない。でも彼自身がある時そのことに気がついて、その親戚のおじさんが亡くなった後に、もはや手遅れだけど遺体を取り戻しに行くというのが、面白かったです。モノとして捨てられてしまうであろうことに抗う。あそこは、おじさんを救うという方向に持っていきがちだと思うけど、そこを死体を運び出すという行為にしたのが予想外で、その辺りの膨らませ方は、短編とはずいぶん違って見えましたね。

『PLAN 75』

──その辺りは短編と長編では意図的に変えたのですか?

早川 そうですね。短編では不安を煽るというか、「こんな世の中で良いのですか?」という問題提起だけで終わってしまいました。長編のシナリオも最初はその方向で書いていたのですが、どんどん加速していき、最後は救いのない話で終わらせていました。そんな時にコロナが始まって現実がフィクションを超えてしまい、世界中が不安に陥る中で、さらに不安を煽るような映画を撮るべきなのか、ずっとそこで迷ってしまいました。何らかの形で希望というか、変化し得る可能性みたいなものを描かないといけないのではないか、と。でも、それをどういう風に描いて良いのかがわからず、かなり時間がかかりました。磯村さんや河合(優実)さんら若い世代の人々の存在をどう描くか、ミチの最後の姿をどうやって映像として撮れば良いのか、そこに答えが出たのは撮影前ギリギリでした。

是枝 そういう模索が、良い形で作品に反映された気がしますね。

早川 でも『ベイビー・ブローカー』を観て、高齢者だけじゃないんだ、子どもですら命の価値を選別されているんだと思いました。この映画の素晴らしさをまだ言語化できないのですが、是枝さんには「この作品が本当に好きでした」と、それだけ伝えたいと思いました。

是枝 なるほど。そうやってこの2本を観ると面白いかもしれないですね。

早川 そうなんです。序盤で、赤ちゃんを買いに来た夫婦が「顔が悪いからディスカウントしろ」と言いますよね。凍りつく言葉で、それを聞いた母親のカットが一瞬入りますが、胸が締め付けられる思いがしました。私が『PLAN 75』を作ろうと思った時に感じた憤りというか、命の価値を量るような考え方に対する憤りと似たものをあのシーンでものすごく感じて、シンパシーというか、通じているものがあるのではないかと勝手に思ってしまいました。

是枝 「価値のない命がある」と言葉にしないまでも、今の世の中は、そちらの方向に暗黙の了解として大きく動いてしまっています。そのことを、早川さんは75歳以上の高齢者でやろうとして、僕は赤ちゃんでやろうとしたのだと思います。

© Kazuko Wakayama

是枝 ただ、早川さんの作品で言えば、悪のあり方が今回の長編でより不気味になっていますよね。一番典型的だと思ったのは、広場にある〈プラン75〉の看板に対して、何かをぶつける人が来る場面で、短編では何かを投げる人が映っていたけど、今回は映っていない。(短編の)彼は歩き方とかも面白かったのだけど、長編では投げつける人すら映らないので、その辺に、「なるほどな、こういう方向に行ったんだな」と思いました。〈プラン75〉という制度に関わっている人たちも、決して悪い人たちではないように描かれている。その悪とは、誰もが自分の中に抱えている「凡庸な悪」なのだと。そこがすごく面白かったです。

冒頭は、相模原で起きた障害者施設殺傷事件を彷彿とさせます。それは入り口に過ぎないように見えるけれど、その後展開される2時間弱の物語全体が、実は、ゆるやかに展開される“相模原の事件”そのものですよね。この映画を観ると、そうした事件が自分たちの社会と切り離されたものでは決してなく、私たちがあの行為をシステムとして内包している社会に生きてしまっていることに気付かされます。そこからどう脱出するのかを登場人物たちが模索しているところが、とても素晴らしい出口だと思いました。

早川 ありがとうございます。

──海外とのコラボレーションは、日本映画界も注目しています。『ベイビー・ブローカー』では、韓国映画の社会を見つめるある種の厳しさや残酷さが加わったように思いましたが、韓国のスタッフ、俳優たちの影響があったのでしょうか。

早川 外国のスタッフとやるときの面白さは、是枝さんにぜひ伺いたいです。

是枝 リサーチの時間が十分に取れたので、それが大きかったのではないかと。現地でベイビー・ボックスや児童養護施設の取材をしていると、養護施設を運営している人から、「老人養護施設にしたほうが儲かるんだよな」みたいな本音がポロッと出てきたりしました。それから、ブローカーを逮捕した刑事とか、養子縁組制度を厳しく批判しベイビー・ボックスに対しても非常にネガティブな評価をしている弁護士の方など、いろいろな人たちのいろいろな言葉に触れて、それを吸収する形で脚本を作ったので、普段僕が書いているぼんやりとした脚本よりも、意見が明確な人たちの視点が入ったのだと思います。

『ベイビー・ブローカー』

──日本にも“赤ちゃんポスト”という似たようなシステムがありますが、韓国でやりたかった理由とは?

是枝 まず、役者が先にありました。ソン・ガンホやカン・ドンウォンといった俳優でどういう物語を作ろうかと思った時に、韓国にもベイビー・ボックスがあると聞き、ソン・ガンホが神父姿で出てきて、あの胡散臭い笑顔で子どもを助けるのだけど実は売っている、というイメージが湧きました。それが最初です。

早川 アイディアの種もその前にはなかったのですか?

是枝 『そして、父になる』を作った時に、日本の養子縁組制度や里親制度についていろいろと調べた中で、(熊本市の)慈恵病院の赤ちゃんポストのことも調べて、興味深いと思っていました。なので、ベイビー・ボックスを題材にする種はあったのですが、プロットを書いたのは、韓国でのキャストがある程度決まった後の、2016年ですね。

──韓国での制作はとても上手くいったように見えますし、新しい世界が広がったように思いますが。

是枝 非常に新鮮な経験ではありましたね。大変だったかと聞かれると、どうだろう…。とにかく休めるので、体が楽過ぎてしまって。

──映画制作のシステム的に、快適だったということですね?

是枝 韓国では週52時間しか働かないルールが出来ています。フランスよりは融通が利くので、長いときは1日に12時間とか14時間働くこともできますが、そうすると、週4日働いたら3日休むことになます。2日撮って1日休む、という感じ。日本でも、撮影現場を少しでも良い方向にもっていくために、頑張ってこれをやろうとしていますけれど。

──作り手としては、それは作品にも良い影響を与えると思いますか?

是枝 正直に言うと、3日空いてしまうと、感覚がゼロに戻ってしまいます。自分の緊張感を再び高めていかなければならないことが最初は気になったのですが、ただ、これだけ休めるとみんなイライラしないし、準備の時間はあるし、ストレスもないから誰も怒鳴らない。おそらく良いことだらけですね。

──なぜ韓国での制作についてお聞きしたかというと、韓国映画が高評価されている理由のひとつに、脚本の力があると思います。ポン・ジュノ監督にインタビューした時に、『パラサイト 半地下の家族』は、制作が決まって3、4年は前半部分しかなく、撮影の3ヶ月くらい前に後半部分のアイディアを思いついて一気に脚本を書き上げた、と。最後の最後で絞り出すような、そういう粘り強い脚本の作り方は、韓国映画に感じることがあります。今回の『ベイビー・ブローカー』の最後の展開も、そういった絞り出てきたラストのような気がしました。

是枝 実はこの脚本は、3分の2までしか決定稿を出していませんでした。もちろん僕自身は試し書きをしていますけれど。ソウルに渡る前までに決めたのは3分の2まで、(クランク)インして、「後は撮りながら決めます」と。

早川 ええっ、そういうこともあるのですか。

是枝 半ば強引にですけれどね。韓国映画の場合、脚本はもちろん、ストーリーボードが全てあることが前提で出資も決まります。今回は異例というか、押し切らせていただきました。撮りながら結末を考えます、と。それで、3分の2ほど撮ったところで、「そろそろ決めていただかないと。撮影許可をとる必要がありますし」と言われて、最後をどうするか決めました。途中までは、ソン・ガンホが死んでしまうという結末もありました。でも撮りながら、「この人、死なないな」と思いました。

『ベイビー・ブローカー』

──ソン・ガンホさんご本人の資質からそう思われたのですね?

是枝 撮っている中で、(ソン・ガンホ演じる)サンヒョンの輪郭みたいなものがよりクリアになっていきました。撮影中に「こういう結末はどうでしょうか?」というようなキャッチボールを、3回くらいはスタッフやキャストとしていました。その度に、ソン・ガンホさんからも、「今回のもすごく良いけれど、前回の脚本にあったあのシーンはあったほうが良い」といった意見が出てきました。そういうやり取りがとても大事な気がします。なので後半30分は、“生モノ”のような感じですね。

早川 そうでしたか。

──撮影監督のホン・ギョンピョさんはそれに付き合ってくださったわけですね。

是枝 それは完璧でしたね。全然大丈夫。

──先日ホン・ギョンピョさんにインタビューしたのですが、“撮影の仕方は作品ごと監督ごとに変わる、なぜならば監督と撮影監督の関係は恋愛と同じで、相手によって変わらざるを得ない”とおっしゃっていました。

是枝 僕、ホン・ギョンピョさんとは同じ歳なんですよ。なので現場ではチングと呼んでくれました。同じ歳の相手にしか使わない「友だち」という言葉です。

『ベイビー・ブローカー』カンヌ公式上映前のレッドカーペットにて Photo by Vittorio Zunino Celotto/Getty Images

──カメラマンや撮影のお話もお聞きしたいところですが、お二人ともそろそろ次のスケジュールがあるようです。

是枝 そうですか。早川さんは前にもカンヌに来ているんですよね?

早川 はい、シネフォンダシオン部門(学生部門)で上映しましたので。

是枝 だからこのステップの踏み方というのは、映画祭にとっても早川監督にとっても、ある意味で理想的ですよね。学生部門で来て、「ある視点」部門で来て、次はコンペという流れになっていくと思いますが、それに連れて周りからの注目度も上っていく。それは素晴らしいこと。今回の短編から長編に至るにあたっても、おそらくいろいろなものを身につけて、本当に良い成長の仕方をされたと思います。良い意味での頑固さを失わずに、次の作品をなるべく早いタイミングで見せてください。

早川 ありがとうございます。私が是枝さんの『幻の光』(95年)を観たのは高校生の時でしたが、初めて映画館に2回、3回と通った作品でした。その時は是枝さんの名前の読み方も知らなかったのですが、この監督が大好きだと思いました。その後に、NHKのドキュメンタリー『記憶が失われた時』(96年)を観て心が動いていたら、最後に是枝さんの名前がでてきて、「あの『幻の光』の監督だ!」と驚きました。それ以来、とても尊敬している監督と、今この場でお話ししているのが嬉しく、とても不思議です。私が今まで映画を作りたいと思ってきたこと、今作っているもの、これらはおそらく是枝さんの作品からインスピレーションを受けたものがあると思います。なので、この場を借りてありがとうございますとお伝えしたいです。

是枝 光栄です。けれど、僕を踏み越えていってください!

© Kazuko Wakayama

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是枝裕和(コレエダ・ヒロカズ)
1962年、東京生まれ。早稲田大学卒業後、テレビマンユニオンに参加。2014年に独立し、制作者集団「分福」を立ち上げる。1995年、長編映画デビュー作『幻の光』がベネチア国際映画祭コンペティション部門に選出され、金オゼッラ賞を受賞。『ベイビー・ブローカー』で8度目の参加となるカンヌ国際映画祭では、コンペティション部門に6度選出されており、2004年の『誰も知らない』で、主演の柳楽優弥が男優賞を受賞。2013年には『そして父になる』で審査員賞、2018年には『万引き家族』で最高賞のパルムドールを受賞。『ベイビー・ブローカー』では、主演のソン・ガンホが韓国人俳優として初となる同映画祭男優賞を受賞した。

早川千絵(ハヤカワ・チエ)
NYの美術大学School of Visual Artsで写真を専攻し、独学で映像作品を制作。短編『ナイアガラ』が2014年カンヌ国際映画祭シネフォンダシオン部門に入選。ソウル国際女性映画祭グランプリ、ウラジオストク国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞するなど注目を浴びた。2018年、是枝裕和監督が総合監修を務めたオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』の一篇である短編『PLAN75』の脚本・監督を手掛ける。その短編から脚本・キャストを一新し、再構築した『PLAN 75』で長編デビュー。第75回カンヌ国際映画祭において、初監督作に与えられるカメラドール(新人監督賞)スペシャルメンションを受賞。

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『PLAN 75』

世界でも速いスピードで高齢化が進んできた日本では、超高齢化社会に対応すべく75歳以上の高齢者が自ら死を選び、それを国が支援する制度〈プラン75〉が施行されることになった。制度の運用開始から3年──〈プラン75〉を推進する様々な民間サービスも生まれ、高齢者の間では自分たちが早く死ぬことで国に貢献するべきという風潮がにわかに広がりつつあった。
夫と死別後、ホテルの客室清掃の仕事をしながら、角谷ミチ(78歳)は⻑年⼀⼈で暮らしてきた。市役所の〈プラン75〉申請窓⼝で働いている岡部ヒロムや申請者のサポート業務を担当する成宮瑶子は、国が作った制度に対して何の疑問も抱かずに、業務に邁進する日々を送っていた。また、フィリピンから出稼ぎに来ていたマリアは高待遇の職を求め、〈プラン75〉関連施設での仕事を斡旋される。ある日、ミチは職場で高齢であることを理由に退職を余儀なくされる。職を失い、住む場所さえも失いそうになったミチは〈プラン75〉の申請手続きを行うか考え始め──。

出演/倍賞千恵子、磯村勇斗、たかお鷹、河合優実、ステファニー・アリアン、大方斐紗子、串田和美
脚本・監督/早川千絵
脚本協力/Jason Gray
企画・制作/ローデッド・フィルムズ
製作/ハピネットファントム・スタジオ、ローデッド・フィルムズ、鈍牛俱楽部、Urban Factory、Fusee

日本公開/2022年6月17日(金)より、新宿ピカデリーほか全国公開
製作幹事・配給/ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト
© 2022『PLAN75』製作委員会 / Urban Factory / Fusee

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『ベイビー・ブローカー』(原題:Broker)

古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョン(ソン・ガンホ)と、〈赤ちゃんポスト〉がある施設で働く児童養護施設出身のドンス(カン・ドンウォン)。ある土砂降りの雨の晩、彼らは若い女ソヨン(イ・ジウン)が〈赤ちゃんポスト〉に預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。彼らの裏稼業は、ベイビー・ブローカーだ。しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気づき警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく白状する。「赤ちゃんを大切に育ててくれる家族を見つけようとした」という言い訳にあきれるソヨンだが、成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることに。一方、彼らを検挙するためずっと尾行していた刑事スジン(ぺ・ドゥナ)と後輩のイ刑事(イ・ジュヨン)は、是が非でも現行犯で逮捕しようと、静かに後を追っていくが…。
〈赤ちゃんポスト〉で出会った彼らの、特別な旅が始まる──。

監督・脚本・編集/是枝裕和
出演/ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ペ・ドゥナ、イ・ジウン、イ・ジュヨン
製作/CJ ENM
制作/ZIP CINEMA
制作協力/分福

日本公開/2022年6月24日(金)、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
提供/ギャガ、フジテレビジョン、AOI Pro.
配給/ギャガ
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