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2022.06.16 11:00

『プアン/友だちと呼ばせて』巨匠ウォン・カーウァイの次世代監督育成法に注目!

  • Fan's Voice Staff

余命宣告を受けた青年と、元恋人達を訪ねる旅の運転手を頼まれた友人の青春物語『プアン/友だちと呼ばせて』には、バズ・プーンピリヤ監督の才能に惚れ込んだ巨匠ウォン・カーウァイがプロデューサーとして参加しています。

ウォン・カーウァイ、バズ・プーンピリヤ

『花様年華』『恋する惑星』など数々の名作を撮り、いまだ日本でも特集上映が組まれるなど、新旧のファンから愛され続けているアジアの巨匠ウォン・カーウァイ。そんなウォンを突き動かしたのは、わずか長編2作目ながら「こんな映画アリ!?」と大興奮を巻き起こし、本国タイで年間ランキング1位、アジア各国でタイ映画史上歴代興収1位を奪取、世界中からリメイクを熱望され、日本でも大ヒットを記録した『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』を監督したバズ・プーンピリヤ。彼の才能に心底惚れ込み、自らプロデュースを熱望したウォンが、プーンピリヤに「一緒に映画を作ろう」と声をかけたそう。これまで何作品もプロデュースしているウォンですが、国の垣根を超えて異国の若手監督に声をかけるのは初めての試みでした。

全く面識がなかった憧れの存在からのオファーに飛び上がり、「最初は『嘘だろ?』と驚いた」と振り返るプーンピリヤ。自分にとってアイドルのような監督からのオファーに二つ返事で快諾したといいます。“製作”を担うことになったウォンはまずはプーンピリヤを香港に呼び寄せ、「バケットリスト(死ぬまでにやりたいことリスト)ムービーでいこう」というアイディアを提示。主人公は中国のポップスターで、余命宣告を受けて世界中を旅するが、タイで出会った女性と恋に落ちるという設定で脚本を書いてみようというお題でした。

企画がスタートしてから1年間、プーンピリヤはがむしゃらに書き続けましたが、粘り強いことで知られるウォンは「このストーリーは捨てよう、君に思い入れが感じられない」とあっさりと却下。プーンピリヤはこれにもめげずに食らいつき、「死にゆく男性が元カノたちに感謝と謝罪、そして最後のさよならを言いに行く物語にしたいと閃いた」そう。

新たに脚本を開発するうえでウォンから重要な2つのアドバイスがあり、1つは「余命宣告を受けるキャラクターだけでなく、行動を共にするもう1人の人物を登場させよう」というもの。これは、2人で学んだ人生のレッスンを、1人が生き残ることによって、未来へと継承することができるから。そしてもう1つが、ウォン自身の映画作りでも貫いている「自分らしくあれ、自身のストーリーを綴れ」というもの。

こうしたウォンによる見事な舵取りと的確なアドバイスを真摯に受け止めたプーンピリヤは、若くして他界した親友に捧げた半自伝的な物語の脚本を、3ヶ月という驚異的なスピードで完成させました。

『プアン/友だちと呼ばせて』はサンダンス映画祭でプレミア上映され、ワールドシネマドラマティック部門で審査員特別賞に輝きました。

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『プアン/友だちと呼ばせて』(原題:One for the Road)

NYでバーを経営するボスのもとに、タイで暮らすウードから数年ぶりに電話が入る。白血病で余命宣告を受けたので、最期の頼みを聞いてほしいというのだ。タイに駆けつけたボスが頼まれたのは、元恋人たちを訪ねる旅の運転手。カーステレオから流れる思い出の曲が、二人がまだ親友だった頃の記憶を呼びさます。忘れられなかった恋への心残りに決着をつけたウードを、ボスがオリジナルカクテルで祝い、旅を仕上げるはずだった。だが、ウードがボスの過去も未来も書き換える〈ある秘密〉を打ち明ける──。

監督/バズ・プーンピリヤ
製作総指揮/ウォン・カーウァイ
脚本/バズ・プーンピリヤ、ノタポン・ブンプラコープ、ブァンソイ・アックソーンサワーン
出演/トー・タナポップ、アイス・ナッタラット、プローイ・ホーワン、ヌン・シラパン、ヴィオーレット・ウォーティア、オークベープ・チュティモン
タイ/2021年/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/129分/字幕翻訳:アンゼたかし/監修:高杉美和

日本公開/2022年8月5日(金)新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、渋谷シネクイント他 全国順次公開
配給/ギャガ
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