『FLEE フリー』濱口竜介、小島秀夫、富野由悠季ら20名より称賛コメントが到着!
- Fan's Voice Staff
本年度アカデミー賞にて史上初となる国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞の3部門同時ノミネートを成し遂げたドキュメンタリー映画『FLEE フリー』の公開に先立ち、濱口竜介、小島秀夫、富野由悠季ら20名より称賛コメントが到着しました。
本作では、アフガニスタン出身の青年アミンの幼い頃から十数年後にデンマークに難民として亡命する後までの経験を、親友である映画監督(本作の監督ヨナス・ポヘール・ラスムセン)に初めて打ち明け、その過酷な半生が鮮明に描かれていきます。
主人公のアミンをはじめ周辺の人々の安全を守るために、アニメーションで制作された本作は、アミンの複雑な感情をより忠実な形で伝えるために、シーンに応じて2つの全く異なるアニメーションが用いられています。そんな唯一無二のスタイルを持つ本作について、映画監督の濱口竜介は「柔らかなタッチのアニメーションは監督が主人公・アミンに対して抱く親しみを着実に観客と共有する、その最良の方法となっている」、ゲームクリエイターの小島秀夫は「アニメとも実写ともドキュメンタリーとも違う難民たちの魂の記憶」、アニメーション監督の富野由悠季は「ここまで酷いのかという現実は、アニメ主導の構成でなければ公開できなかっただろう」などとコメントを寄せています。
アミンがデンマークに亡命を果たした直後の16歳の頃からの旧友であるラスムセン監督は、若い頃、好奇心からアミンに過去について尋ねたところ、アミンは何も語ろうとしなかったといいます。それから約20年の時を経て心境の変化もあり、アミンは本作の製作に同意。監督は、アミン本人の声と記憶を通してこれまで誰にも語られなかった彼の物語を聞きたいと考え、その心のペースに寄り添いながら、約4年もの長い時間をかけて断続的にインタビューを敢行しました。
以下、到着したコメントです(順不同・敬称略)。
濱口竜介(映画監督/『ドライブ・マイ・カー』)
柔らかなタッチのアニメーションは監督が主人公・アミンに対して抱く親しみを着実に観客と共有する、その最良の方法となっている。その人の生い立ちからセクシュアリティまでを知るうちに、理不尽への怒りと未来への祈りがないまぜになった感情を抱かずにはおれない。「今まさに見るべき映画」であることは間違いないが、それ以上に「他者を知ること」についての普遍的な作品でもある。
安田菜津紀(認定NPO法人Dialogue for People副代表/フォトジャーナリスト)
故郷から切り離された人々の苦難は、雨風しのげる場所を見つければ終わるわけではない。その途方もなく長い道のりを照らすのが、この映画の力だ。
小島秀夫(ゲームクリエイター)
故郷を奪われたものたちはどう生きていけばいいのか?何処に向かえばいいのか?アニメとも実写ともドキュメンタリーとも違う難民たちの魂の記憶。本作は我々の胸を深く抉り、終わりのない“旅路”を共有する。今だからこそ観るべき、いつまでも胸に刻むべき映画。
富野由悠季(アニメーション監督)
本作が示している現実は、人が構築してきた社会システムが宗教もふくめて、想像以上に人に過酷であるという事実をむき出しにしている。ここまで酷いのかという現実は、アニメ主導の構成でなければ公開できなかっただろう。
その意味で見るべき作品ではあり、知るべき現実である。
その意味でいえば、日本と言う国は楽園であると教えられる。
小川彩佳(「news23」メインキャスター)
余りに過酷な歩みの先、彼が辿り着いた「場所」の温もりに涙が溢れた。私もその「場所」の一部でありたい。
武田砂鉄(ライター)
今日も暗闇の中で過ごしている人たちがいる。
思うことしかできない後ろめたさを抱えながらも、思うことをやめたくない。
遠藤まめた(LGBTユースの居場所にじーず代表)
「難民」という二文字の背景に、数えきれない人のかけがえのない時間があることに心が揺さぶられた。
北丸雄二(ジャーナリスト・作家)
世界中の「アミン」や「アミナ」たちが悲鳴も上げられずに隠れている。
悲鳴を上げたら殺される。「逃げる」ことができるのは、それだけでも幸運な者たちなのだという、とんでもない不幸がこの世界にいまも現存している。
根本かおる(国連広報センター所長)
故郷とアイデンティティを失ったアミンが自分を取り戻していく旅路。生きることの意味を私たちに問いかける。
荻上チキ(評論家・ラジオパーソナリティ)
なんという境遇、なんという人生、なんという映像。この映画がさらにタイムリーになってしまった現実で、それでも人々の安全を願うために。
ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
誰も好き好んで難民になる人はいません。想像を絶するほど悲惨なその体験は淡々と語られるからこそずしっと刺さります。
日本でも、「避難民」と言い換えずにもう少し受け入れることができないものでしょうか。
清水晶子(東京大学 教員)
そこがアフガンであれロシアであれデンマークであれ、この映画では抑圧は常に国家暴力と関わり、同性への思慕は希望として機能する。
ふくだももこ(映画監督『おいしい家族』)
故郷を失う/奪われるということが、その人に何をもたらすかを、アミンは静かに語り出す。アニメーションでしか描けない現実を見せてくれる、唯一無二の映画。
ダースレイダー(ラッパー)
なぜ僕はここにいるのか? それは当たり前ではなく、幾つも可能性の瞬間の積み重ねだとアミンが教えてくれる。
イシヅカユウ(女優、モデル)
「ずっといていい」故郷のある私にも、この映画について言えることがあるとすれば、アニメーションでも、だからこそ、恐ろしいほど伝わる重み、辛さを、どう抱えるか今悩んでいる。
望月優大(ライター)
アミンを追い詰めたのは母国の危険だけではない。
彼の孤独の意味を、彼がずっと語り出せなかった理由を、私たちは知る必要がある。
児玉美月(映画文筆家)
語ること。それはきっと、ここにいる自分を救う。語り継ぐこと。それはきっと、どこかの誰かを救う。
語り合うこと。それはきっと、わたしとあなたをもう一度出逢い直させる。
山村浩二(アニメーション作家・絵本作家)
国と家族の庇護を失った孤独に加え、クィアでもある主人公の声は、真摯で愛があり、忘れがたい。
太田尚樹(LGBTエンタメサイト「やる気あり美」編集長)
誰かを想って苦しみ、誰かを想って救われる。愛の気高さを教えてくれる映画でした。
とんこつたろう(ラジオパーソナリティ)
自分とは何者か──その真実を他者と分かち合う勇気と恐怖、希望を捉えた瞬間に涙が溢れる。愛は知に宿ることを裏付けていたから。
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『FLEE フリー』(英題:Flee)
アフガニスタンで生まれ育ったアミンは、幼いある日、父が当局に連行されたまま戻らず、残った家族とともに命がけで祖国を脱出した。やがて家族とも離れ離れになり、数年後たった一人でデンマークへと亡命した彼は、30代半ばとなり研究者として成功を収め、恋人の男性と結婚を果たそうとしていた。だが、彼には恋人にも話していない、20年以上も抱え続けていた秘密があった。あまりに壮絶で心を揺さぶられずにはいられない過酷な半生を、親友である映画監督の前で、彼は静かに語り始める…。
監督/ヨナス・ポヘール・ラスムセン
脚本/ヨナス・ポヘール・ラスムセン、アミン・ナワビ
製作プロダクション/Final Cut for Real
製作総指揮/リズ・アーメッド、ニコライ・コスター=ワルドー
89分/2021年/デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フランス合作/デンマーク語、英語、ダリー語、ロシア語、スウェーデン語/レーティング:未定/日本語字幕:松浦美奈/原題:Flugt
日本公開/2022年6月10日(金)、新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン 池袋他全国ロードショー
配給/トランスフォーマー
後援/デンマーク大使館
公式サイト
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