【単独インタビュー】『牛首村』ホラーが苦手な莉子も納得の現実感溢れる恐怖
- Atsuko Tatsuta
※本記事には映画『牛首村』の一部ネタバレが含まれます。
ホラーの巨匠・清水崇監督による「恐怖の村」シリーズ第3弾『牛首村』が2月18日(金)に全国公開されました。
雨宮奏音(Kōki,)はある心霊動画に映った、自分そっくりの女子高生を観て驚愕する。牛首マスクを無理やり被せられ閉じ込められたところで、映像は途切れた。この動画が頭から離れない奏音は、クラスメイトの蓮(萩原利久)とともに動画の撮影地である富山県の坪野鉱泉へと向かう──。
日本を代表するホラー映画界の巨匠として世界に名を轟かせる清水崇監督が、実在する心霊スポットにまつわる逸話を題材に仕掛ける恐怖の「村」シリーズ。九州に実在する心霊スポットを題材にした大ヒット作『犬鳴村』(20年)、自殺の名所として有名な富士の樹海を舞台にした『樹海村』(21年)に続く待望の第3弾である『牛首村』は、北陸最恐の心霊スポットといわれる富山県の“坪野鉱泉”や、富山県と石川県の県境の山の中にひっそりと佇む通称“牛首トンネル”などの逸話をベースに、インターネット時代ならではの不安を煽る都市伝説を盛り込んだ戦慄のホラーです。
キャストは、本作で映画主演デビューを飾るKōki,を中心に、萩原利久、高橋文哉、芋生悠、大谷凜香ら若手実力派俳優たちが結集。物語の発端となる心霊動画に登場する高校生ミツキ役として清水組に初参戦したのは、ドラマ『ブラックシンデレラ』で主演を務め話題となった莉子。モデルや動画クリエイターとして絶大な人気を誇り、映画やドラマでも出演作が続く期待の若手です。
『牛首村』の公開にあたり、“怖い話”が苦手ながらホラー映画に初挑戦した莉子に、心境を伺いました。
──『牛首村』に出演することになったきっかけは?
実は、私は怖いものが苦手でホラーはずっと避けてきました。試写で観たこの作品が、初めてのホラー映画だったくらいです。清水監督はホラーが苦手な私でも知っているくらい有名で、「村」シリーズの予告編は2作とも観ていました。そんな清水組にお誘いを受けたので、嬉しくてぜひ出演させていただきたいと思いました。
──怖い話が苦手なら、脚本を読むのも大変だったのでは?
怖かったです。映像でどうなるのかわからない部分があったのですが、それでも会話の中の言葉遣いとか、ホラー特有の表現とか出てきて不気味で……。なので、脚本を読んだ後も、“ああ、読み切った〜”という疲労感と達成感がありました。映像を観る前からこんなに怖がっていて、一体私は大丈夫なのかと思っていました。
──面白かった部分は?
設定がとても面白かったです。双子が物語の展開で重要なポイントになっているのですが、双子という特徴をホラー的に扱っていて。Kōki,さんが一人二役で演じていて大変そうだなと思いましたが、どんな映像になるのか楽しみでもありました。
──「村」シリーズは、日本の地方にあるたくさんある伝説や怪奇談をベースにしていますが、この『牛首村』では北陸地方の若い女性が失踪した事件で知られる“坪野鉱泉”や“牛首トンネル”などの心霊スポットの逸話がベースになっているそうですね。
私は“ビビリ”なので、怪談とかそういうものが耳に入らないようにこれまでの人生を送ってきました。怖い話は一切聞きたくないので、遮断してきたんです。坪野鉱泉のことは、インターネットで調べちゃったらいろいろと出てきてしまい、調べなければよかったと後悔しながら、途中で止めました。この映画のパンフレットとかも怖そうですよね…。でも後で読んでみようとは思っています。
──冒頭の心霊動画のシーンで大谷凜香さん、Kōki,さんと一緒に登場しますが、廃墟のようなところで撮影されていますね。あれはセットでなくロケですよね?
はい。富山に行って、坪野鉱泉の廃墟で実際に撮影しました。本当に怖かったですよ。車で行ったのですが、近づいていくと、山の奥にあの廃墟だけポツンとあるんです。本当に不気味でした。遠くから見えた時に、“あそこに行くの嫌だな”って思っていたのですが、着いたらスタッフのみなさんもいらっしゃったので、それほど怖くはなかったです。
──あの恐怖のエレベーターも、セットではなく元々あの建物にあったものなんですね?
はい。もちろん廃墟なので、壊れてしまっているところもあるため、美術さんが手を入れている部分もあるのですが、基本的には全部廃墟の中にあるものです。壁にも落書きとかもあり、それも怖いんです。
──撮影中、大変だったことは?
凜香さんとのシーンは、スマホで生配信するという設定で、通常のカメラではなく、凜香さんが実際にスマホで撮影したんです。そのフレームにちゃんと入らなければいけないし、(スマホに表示されている)コメントを読むという時も、そのリアル感を出さないといけないのが、通常の撮影と違うので、気を遣いました。台本に書かれたセリフはありましたが、生配信らしさを出すために、その時に出てきた言葉もアドリブで入れたり。そのバランスが少し難しかったですね。
──世代的に、心霊スポットからの生配信はリアルですよね。
台本を読んだ時に、この設定はすごいリアルだと思いました。今どきっぽい。心霊スポットに行っているYouTuberさんはたくさんいるので、それを映画の中に取り込むことで、より現実感が出ていると思いました。怖がらせるポイントとして清水監督がこだわったところのひとつだったのではないでしょうか。
──撮影クルーは何人ぐらいだったのですか?
結構多かったですね。30人くらいかな。カメラマンさん、スタッフさん、共演の(大谷)凜香さんとKōki,さんも一緒でしたし。映画を観ていただくとわかるのですが、配信動画という設定なので、本番もスマホ撮影なんです。周りに誰も映ってはいけないので、近くには本当に誰もいないんですよ。別の階とか外から、モニターで見ているだけ。リハーサルではたくさんのスタッフの方々がいたので平気だったのですが、本番は私たちだけの空間になってしまって、スタートとカットの間は、映画のままの緊張感と臨場感でした。
──怪奇現象には遭いませんでした?
遭わなかったんです!撮影前にスタッフみんなでお祓いする機会があったのですが、私は、スケジュールの関係で行けず、大丈夫かなと心配していました。お清めスプレーを買って行って、ホテルでもシュッシュしていました。共演した松尾(諭)さんがお塩を下さったので、凜香さんと一緒に塩を撒きながら、ホテルに入ったりしていました。
──Kōki,さんや凜香さんとは撮影現場ではどのように過ごしていたのですか?
3人とも年齢が割と近かったので、カメラが回っていないところでは、一緒に写真を撮ったり、風景を楽しんだりしていました。清水組はものすごい怖い作品を作りますが、撮影現場はとても温かい雰囲気です。凜香さんは「村」シリーズは3作目なので、ホラー映画の撮影が実際どんな感じなのか、聞いたりしました。『樹海村』は本当に樹海の中で撮影だったから大変だったよ、とか。私はこの作品では車にぶつかって死ぬのですが、凜香さんは他の「村」シリーズ作品の中で、やっぱり車で死んだことがあって、車にぶつかるシーンのワイヤー撮影の仕方などを教えてくれました。
──莉子さんのあのシーンは、ワイヤーを付けて撮影していたのですか?かなり車に叩きつけられているように見えましたが、痛くなかったですか?
痛かったです!サポーターは着けていたのですが、着けていない部分はアザになったり…。
──上からワイヤーで降りて来たのですか?
いえ、車でゴロンゴロンと2回くらい転がって、ドアに張り付いてから、みなさんがワイヤーで釣り上げてくださった。それを一連のアクションで演じました。
──スタントではなかったのですね!顔のアップのシーンだけ莉子さんで、スタントの方が演じたのかと思いました。
私が自分で演じたんです。最初はスタントを使うという話もあって、私はフロントガラスに張り付つくだけなんだと思っていたのですが、結局はめちゃくちゃワイヤーを付けられたので、「ああ、私が自分でやるんだな」と覚悟しました。でもやってみたら、めちゃくちゃ楽しかったです。
──WEBのドラマなどにもご出演されていますが、映画ならではの醍醐味はありましたか?
凜香さんが演じたアキナと私が演じたミツキのような親友同士を演じる場合、ドラマだと撮影期間も長いのでそれなりにゆっくりと関係性を作っていけますが、映画は限られた期間の中で撮るので、短時間で関係性をどのように築いてリアルに映し出すかは、演者にかかっているのだなと思いました。この撮影で凜香さんと会ったのも、富山に着いてからでした。そのまますぐに撮影を始めるという感じだったので、凜香さんに積極的に話しかけて、親友のような距離感を掴もうとしました。凜香さんはとても素敵な方で、初日からすごく仲良くなれました。
──清水監督は、どんな監督ですか?
未だに掴みきれていないのですが、普段と同じ声のトーンで冗談や怖い話をされるんです。「そういえばここ、この前、出たな」とか、「さっき、いたよ」とか。凜香さんはもう清水監督のキャラクターを掴んでいて、脅かされても「絶対冗談ですよね!」とか返していましたけれど、私は清水組が初めてだったので、そんな脅かしを結構本気にして、ビクビクしながらなんとか頑張っていました。清水監督自身、人が怖がったり、驚いたりするのが大好きな方なんです。そういう遊び心のある、楽しい監督ですね。
──演出方法も淡々としているのですか?
清水監督は、断定的に指示するというより、「これを映して欲しいな」とか、「テンポ感を意識してもらった方が良いかも」とソフトなご指導をされるので、とてもやりやすかったです。
──清水監督の作品のホラーはツボを突いてきますが、莉子さん的に本作の恐怖ポイントはどこですか?
ネタバレになってしまいますけど、本当に怖かったのは松尾さんのエレベーターのシーンですね。あそこは怖かったです!最後の崖のシーンも!
──莉子さんは怖いものが苦手とのことですが、周囲のお友達はホラーをご覧になりますか?
高校で仲の良い友達が6人いるのですが、今回はみんなで一緒に観に行こうかと思っています。みんな「怖いのは苦手だけど莉子が出ているし、ちょっと面白そうだから行きたい」と。でも、「観たらそんなんじゃ済まないよ」と言っています(笑)。この『牛首村』は大人数で観に行くことをおすすめします。怖いですから。
──莉子さんもご自身の出演作は劇場でも観るんですね。
もちろん!友達と一緒にもう一度、頑張って観ようと思います。
──この映画の撮影を経験をしたら、もうホラー映画を観られるのではないですか?
それはみんなに言われるのですが、この作品を観るのも結構頑張ったので…、逆に一番最初に観るホラーが清水組の『牛首村』なんて、かなりハードルが高いところから行ったなと思います(笑)。
──映画での出演作が続いていますが、それぞれの楽しさは?
映画は『小説の神様』と『牛首村』と『君が落とした青空』の3本ですね。『小説の神様』は、演技が楽しいと思ったきっかけの作品だったのですが、初めての現場だったので、緊張感や不安の中で終わってしまい、私の中で悔しさが残りました。けれど、その悔しさがやる気に繋がり、今は演じることがとても楽しく思えるようになってきました。その後に撮ったのが『牛首村』と『君が落とした青空』だったので、映画の撮影にも慣れてきて、楽しく出来たと感じられました。違うタイプの作品に立て続けに出演させていただいたのですが、こうした全く違う役をこなせるようになってこそ女優なのかなと思うので、そこは頑張っていこうと思います。
──莉子さんはInstagramでも人気ですが、SNSでの映画の楽しみ方は?
“私はこの映画を観て感動したけれど、他の人はいったいどう捉えたのだろう?”という時は、Twitterで作品名を検索して、他の方の感想を見ます。みんな気に入った作品のことを結構つぶやいていたりしていて。いろいろ考察の仕方があるドラマや映画だと、参考になったりしますね。基本Twitterが多いですが、好きなドラマはインスタの公式アカウントを見たりもします。
──この作品はどんな方に観ていただきたいですか?
ホラーなので小さい子は怖すぎて観られないかも知れませんが、家族愛もテーマになっているので、家族で観に行っていただきたいですね。怖い時でも隣に誰かがいたら、怖さも軽減されると思うので。そんな感じで楽しんでいただきたいですね。
──これから挑戦したい役は?
今回、初めて車で殺される役を演じたのですが、殺されたり死ぬ役はこれからも演じていきたいですね。悪者の役もやりたいし、何か恨みを持っているような暗い役もやってみたいと思っています。今までは明るい役や高校生の役が多く、私を知って下さっている方からは、ずっとニコニコしているし悪役とか全然想像つかないとか言われるので、だからこそ挑戦してみたいですね。
Photography by Takahiro Idenoshita
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『牛首村』
出演/Kōki、萩原利久、高橋文哉、芋生悠、大谷凜香、莉子、松尾諭、堀内敬子、田中直樹、麿赤兒
監督/清水崇
脚本/保坂大輔、清水崇
音楽/村松崇継
製作/村松秀信、與田尚志、佐野真之、丸橋哲彦、中林千賀子、後藤明信、檜原麻希、吉村和文、福田剛紀、宮田昌広
企画/紀伊宗之
企画・プロデュース/高橋大典
プロデューサー/三宅はるえ
制作プロダクション/ブースタープロジェクト
2022年/115分/カラー/ビスタ/5.1ch
日本公開/2022年2月18日(金)
配給/東映
公式サイト
©2022「牛首村」製作委員会