【単独インタビュー】『美しい彼』萩原利久が体現した、高校生という特別な季節と一途な初恋
- Atsuko Tatsuta
対極な男子高校生2人の恋を丹念に描いた甘酸っぱい青春ドラマ『美しい彼』が11月18日(木)よりMBSドラマ特区枠で放送開始されます。
幼い頃から「吃音症」を持ち、無口で友人もいない高校3年生の平良一成(萩原利久)。周囲に馴染めないでいた平良は、高3の春からクラスメイトになった清居奏(八木勇征)と出会い、ひと目で恋に落ちた。冷酷で美しい清居は、スクールカーストの頂点に君臨する“キング”。平良はクラス替えの自己紹介で吃音が出てしまったことから、あるグループのパシリとなってしまうが、そのグループに清居がいたため苦痛はなかった。気持ちの整理がつかないまま清居のことを思い続ける平良だったが、ある日、グループ内の力関係が変わる出来事が起きたことにより、二人の関係は急展開していく──。
原作は、「流浪の月」で本屋大賞2020を受賞した凪良ゆうがBLアワード2015で第1位を獲得したベストセラー小説「美しい彼」。映画・舞台など多くの脚本を手掛ける坪井文と、きゃりーぱみゅぱみゅやGReeeeNのMVを手掛ける気鋭の映像作家・酒井麻衣監督のタッグにより、ドラマ化が実現しました。
平良役には、主演ドラマ『鈍色の箱の中で』を始め、連続テレビ小説『エール』や映画『牛首村』など注目作への出演が続く新進俳優の萩原利久(はぎわら・りく)。平良が密かにあこがれる美しくカリスマ的な魅力に溢れる清居役を、FANTASTICS from EXILE TRIBEのボーカル・八木勇征(やぎ・ゆうせい)が演じています。
高校から大学へ、思春期のふたりの切なくも爽やかで、儚い初恋の行方を繊細に描いた『美しい彼』の放送に先立ち、平良役を演じた萩原利久がインタビューに応じてくれました。
──今回の出演にあたり、脚本と原作はどちらを先に読まれたのですか?
脚本を先に読みました。平良を演じることが決まってからだったので、平良の目線を気にかけながら読みました。平良のピュアさや無自覚さ、純粋な故に周囲の出来事に巻き込まれていく感じが、とても面白いと思いました。脚本を読むのは、現場に向けた準備のような感じだったので、シーンなどを思い浮かべながら読んでいました。その後に、原作も読みました。脚本はドラマ用のものですから、原作のポイントを押さえつつ、映像化した時の見え方や距離感、テンションや間を考えて書かれていましたが、原作では、平良の真っ直ぐさなどがより伝わってきました。
原作を読んだおかげで、平良のキャラクターに立体感を持てたところがあって、現場に入る前の準備として良かったと思います。原作を読んだ後に再び脚本を読んだのですが、平良と八木の会話やコミュニケーションを、崩すことなく書かれていたことがわかり、原作を大事にしている脚本だと改めて思いました。
──どのような部分に惹かれて、この作品に出演したいと思ったのですか?
男の子と男の子のラブストーリーが僕自身にとって初めてだったので、役よりもこのテーマにどう挑戦していくのかという部分が大きかったです。どんな作品でも、初めてのジャンルでは、新たな一歩をどのように踏み出すのかを見つけることが大事です。チャレンジャーとして何ができるのか。楽しみな反面、怖い部分もありました。
──同性愛がテーマの作品も最近増えていますが、現在22歳の萩原さんの世代だと、男の子同士の恋愛もオープンに語られていますか?
確かにそうですね。僕自身、学生から今に至るまで、同性愛は周りでも普通に語られていたし、目にしていたし、偏見もありませんでしたね。ニュースで取り上げられることも多いので、多様性といったことは気になるテーマでした。平良と清居の場合も、二人の間で関係が成り立っているなら、それがどんな関係であっても良いと思っています。なので、テーマや物語にはすんなりと入っていけましたが、僕自身に経験がなかったので、表現する上では手探りで演じました。
──リサーチはしたのですか?
このジャンルには暗黙の了解的なものがあるそうで、(監督の)酒井さんは、それは尊重したいとおっしゃっていました。でも、あまりリアルさだけにこだわり過ぎることなく、それぞれひとりの人間である平良と清居との関係性をじっくり表現できればと思いました。それに、これまでこういった作品に触れてこなかった方にも観てもらいたいと思っています。
──ドラマの中で平良が経験する感情は、ある種10代ならではのもの、あるいは初恋だったりしますが、ご自分の体験はどのように演技に反映したのですか?
どの作品においても、自分が実際に体験していたり、似たような感情を経験している場合は、演じる上で感情を引っ張ってきやすく、キャラクターも作りやすいですし、観ている方もきっと、感情移入しやすいと思います。なので僕は、脚本から自分が共感できる部分をできるだけ汲み取り、どう表現するかをよく考えますね。とはいえ、必ずしも演じる役と同じ経験ができるわけでもありません。殺人犯の役を演じるのに、人を殺すわけにはいきませんからね。お稽古など演技に直結することはしますが、例えばこのドラマにある愛や感情的な体験、人との関係などを演技のために無理に経験しようとするのも違うと思ったので、想像に頼る部分が多かったです。
──10代の頃を思い出したりしましたか?
はい。高校生の頃は大人ぶっていたと思います。子どものように見られたくないというか、周りの子よりは大人なんだぞという思いがありました。今思うと、青春時代って恥ずかしいですよね(笑)。でも、その瞬間は必死に生きていたんです。そういう意味で、平良はあり得ないくらい真っ直ぐに清居を追い求めますが、大人の方なら、対象は違ってもおそらく近い状態になった経験があると思うので、平良の感覚もきっと理解してもらえるのではないかと思います。
──夢中になりすぎて周りが見えなくなってしまうとか?
そうですね。向かっている対象は人それぞれですが、夢中になりすぎて周りが見えなくなる感覚は、僕らが自身の高校時代に感じていたものと同系列のものだと思います。何も考えずに、ただただ夢中になっているだけなのですけどね。それで、大人になればなるほど周りを気にするようになって、なり振り構わず行動しづらくなっていくのだと思います。
──平良と清居の関係性については、八木さんと話し合ったのですか?
具体的な話はあまりしませんでした。ただ、勇征くんはいつも清居でいてくれました。高校時代は、平良がひたすら清居に夢中という、ほとんど一方通行の関係でしたし。撮影が始まった早い段階でお互いの距離感が掴めて、自然と良い関係を築けたように思います。
──今回の作品に関わって面白かったところは?
やっぱり、平良の真っ直ぐさですかね。高校生だから成り立つ世界なのかなと思いました。これまで、モノやコトに熱中している役はありましたが、人に対してここまで夢中になってしまうような役は初めてだったので、面白かったです。無垢って罪だなと思いました。
──八木さんとのW主演の作品ですが、清居役を演じたいと思ったことはありますか?
僕は平良の方が断然演じやすいですね。清居はカッコ良いので、僕には演じられないです。清居が廊下を歩くとみんなが振り向く……というのを僕が演じたら、笑っちゃうと思います。勇征くんは、とてもサマになっていますから、あれを見てしまうと、僕にはできないなと思ってしまいます。
──撮影中はずっと平良になりきっていたのですか?
この役に限らず、僕はオンとオフを切り替える方なので、日常生活が役に影響を受けることはあまりありません。その分、“役に入る”瞬間が明確にあります。
──“これをやると平良になる”というポイントはあるのですか?
意識しているのは、歩き方や姿勢、目線の方向ですね。前髪が少し長い役なので、前髪を伸ばすところから始めました。ちょっと下を向くと髪が目に被るくらいに。やはり目から得る情報は多く、半分ほど前髪がかかった状態だと、視界が一気に黒がかるというか、見える景色が違います。視界がクリアではない、“ちょっと見えない”という違いが、平良を演じる上ではすごくポジティブに作用していたと思います。
──平良の吃音に関しては監督と話したりしたのですか?
もちろん丁寧に演じられるよう、本読み等で専門家の方にご指導いただきました。平良の吃音は、コミュニケーションをとる上では確かに障壁にはなっていますが、特定の状況下で出てしまうものです。清居とはリラックスして話せるようになっていくし、清居は平良の吃音に対して何かを言ってくるわけでもないので、二人の関係性でその点が過剰に注目されてしまうと、もったいないなと思います。
──萩原さんは子役時代からキャリアも長く、様々な役を演じていますが、今回の平良役では視聴者からどのような反応を期待していますか?
平良はしつこく清居につきまとうのですが、それでも平良という人間が可愛く見える瞬間もあります。気持ち悪いと可愛いのちょうど中間の、キモカワくらいに思っていただければ、作戦通りですね。清居は平良の行動に対してリアクションをとってくれますが、僕自身は平良のような人に好かれた経験はなく、ただただ避けてしまうと思うので、ここまでの関係にはならないでしょうね。
──このドラマの見どころは?
脚本を読んで僕が感じたように、人間と人間がコミュニケーションをとって、本音で接することをとても丁寧に描いたドラマです。なので、平良と清居という二人の人間の関係を観ていただきたいですね。僕もそこを一番意識して演じていますし。平良は内面をさらけ出さない人ですが、心中を吐露するモノローグもそれなりにあって、その辺りは結構コミカルにしています。
──初恋や10代の恋愛がテーマの作品で、影響を受けたものはありますか?
漫画だと、週刊少年マガジンで連載されていた「ドメスティックな彼女」という作品ですね。高校生が教師に恋愛感情を持っていたら、義姉弟になってしまうところから始まる物語です。これももがきながら恋愛をしていく話で、高校生じゃないと成り立たない物語という意味で、平良に通ずるところがあると思いました。始まりが数年後だったら、物語が成り立たず。高校生の恋愛が面白いのはその点だと思いますし、人生でたった3年しかないこの時間軸で起きたことにより、人間関係が変わっていくというのは、すごく特別なテーマなのだと大人になってから思いました。ちょっと高校時代に戻ってみたい気もしますね。ただ、この漫画を読んでいて、人と人の関係というのはどんな状況下でもあまり変わらないのかなと感じました。弊害となるのは周りや世間の目で、そうした人が善悪で判断してくるからこそ、振り回されていくのだと思います。
Photography by Takahiro Idenoshita
Styling by Shinya Tokita
Hair&Makeup by Emily
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ドラマ特区 『美しい彼』
言いたい言葉がはっきり伝えられない「吃音症」に悩んでいた、高校3年生の平良一成(萩原利久)は、幼い頃から周囲に馴染めず、友達がいない。趣味に、と両親が買ってくれたカメラで、何気ない日常を写しては、自分の人生に半ば諦めを感じていた。そして迎えた、高校最後の新学期のクラス替え。平良はいつも以上に緊張し、自己紹介で「吃音」が出てしまい、自分の名前が言えなくなってしまう…。しかし、絶妙なタイミングで同じクラスの清居奏(八木勇征)が入ってきたことにより、クラスの空気が一変し、偶然にも助けられる。このことがきっかけで、平良は清居らのグループからパシリにされてしまうが、意外にも苦ではない様子。というのも平良は、清居をひと目みた瞬間から、強烈に恋に堕ちてしまったのだった──。
原作/凪良ゆう「美しい彼」(徳間書店 キャラ文庫刊)
出演/萩原利久、八木勇征、 高野洸、坪根悠仁、櫻井健人、桃果、マーシュ彩、中村守里
監督/酒井麻衣
脚本/坪田文
制作プロダクション/C&Iエンタテインメント
幹事会社/MBS、カルチュア・エンタテインメント
製作/「美しい彼」製作委員会・MBS
2021年11月18日(木)初回放送スタート
MBS:11月18日スタート 毎週木曜 24:59~
テレビ神奈川:11月18日スタート 毎週木曜 23:00~
チバテレ:11月19日スタート 毎週金曜23:00~
とちテレ:11月25日スタート 毎週木曜22:30~
テレ玉:11月25日スタート 毎週木曜23:30~
群馬テレビ:11月25日スタート 毎週木曜23:30~
配信:TVer、MBS動画イズム 見逃し配信1週間あり
公式サイト
©「美しい彼」 製作委員会・MBS