Column

2021.07.01 8:00

【インタビュー】Fukaseが『キャラクター』で演じた“優しい殺人鬼”

  • Atsuko Tatsuta

菅田将暉×Fukase(SEKAI NO OWARI)が共演する映画『キャラクター』が公開されました。

漫画家として成功を夢見る山城圭吾(菅田将暉)は、画力には定評があるが、お人好しすぎる性格が災いして、リアルな悪役を描けず、万年アシスタント生活を送っていた。ある日、師匠の依頼で“幸せそうな家”のスケッチに出かけた山城は、4人家族の惨殺現場に遭遇、さらに犯人(Fukase)を目撃してしまう。やがてその犯人を基に殺人鬼“ダガー”を主人公に描いた漫画は大ヒット、山城は売れっ子漫画家となったが、その漫画と連続殺人事件との共通点を見出した刑事の清田(小栗旬)に目をつけられる──。

「20世紀少年」や「MASTERキートン」など漫画家・浦沢直樹作品を手掛けてきたことでも知られるストーリー共同制作者の長崎尚志が10年に渡って構想したオリジナルストーリーを、『恋は雨上がりのように』(18年)などで知られる永井聡監督が映画化した『キャラクター』。未熟な漫画家が、謎めいた殺人鬼との運命的な出会いによって人生の歯車を狂わされていくダークエンターテイメントです。

主人公・山城圭吾を演じるのは、若手演技派として数々のヒット作に主演している菅田将暉。また、山城の運命を狂わす天才的な殺人鬼・両角役には、SEKAI NO OWARIのボーカル・Fukaseが抜擢されました。ミュージシャンとしてカリスマ的なパフォーマンスで人気のFukaseは、本作が俳優デビューにもかかわらず、菅田を始め小栗旬、高畑充希、中村獅童といった実力派の共演俳優たちにも引けをとることなく、唯一無二の殺人鬼を圧倒的な存在感で演じきりました。

SEKAI NO OWARIがデビュー10周年を迎える今年、なぜ俳優に挑戦したのか。映画公開に際し、Fukaseがインタビューに応じてくれました。

──これが俳優デビュー作とは思えないほど、堂々とした素晴らしい演技でした。そもそもどのような経緯で出演することになったのですか?
オファーをいただいたのですが、芝居なんてしたことがなかったので無理だと思い、最初はお断りしようと思いました。でも、お断りするにしても、直にお話しした方が良いと思い、プロデューサーにお会いすることになり、そこで強引に心のドアをネジ開けられたと言うか。撮影が始まるまで1年半もあったので、まずは演技の先生にお会いして、「1年半で僕がこの役をできるようになれますか」とお聞きしたら、「とりあえず、やってみましょう」と。そこから、演技のレッスンやワークショップが始まりました。

実際のところ、もし僕が出演することで作品の質が下がるのなら、別の方が演じた方が良いのではないかと思っていたので、撮影直前まで迷っていました。でも、そう思いながらズルズルとレッスンは続けて、気がついたら、両角になるしかなくなって。腹をくくったのは、撮影の2ヶ月前くらい。それからは楽しめましたね。ワークショップも定期的に通って、宿題もこなして、真摯に向き合えたと自信を持って言えるくらいすべてやりました。これでダメならしょうがない、と。

──役作りはどのようにしたのですか?
この作品は(原作がない)完全にオリジナルストーリーなので、両角を完全に把握している人はいなくて。みんなそれぞれの両角像があったと言うか。反対に言えば、縛りがないのでどう演じても良い。台本にはセリフがあっただけなので、本当のことを言うと、非常に困りましたね。

今回役者をやるときに、背中を押してくれたひとりが、神木隆之介でした。いろんなことを話したのですが、その中で印象的だったのが、「Fukaseくんは、優しい殺人鬼が似合うよ」という言葉でした。「優しい殺人鬼ってなんだ?優しいヤツは、殺人しないだろう?」と思ったのですが、まあ言っていることはわかるな〜、と。それで、当時はまだ脚本は完成していなかったんですが、セリフを優しい声で録音して、自分で聴きました。その声のイメージから、両角という人間を作り上げていったという感じですね。

両角は、絶対悪でもなく、善も悪もないような人間。かと言って、快楽殺人犯でもない。映画に出てくる殺人犯は、快楽殺人犯が多いと思うんですよね。人が悶え苦しむのを見て、楽しんだり、興奮したりするという。でも、台本にはその要素がなかったので、これまでの映画に出てくる殺人鬼では、参考にできるものもありませんでした。だから、“優しい声“をキーワードに、肉付けしていきました。それが正しいやり方なのか、わかりませんでしたけれど。

──首の動きや漫画を読むときの少年のようなつぶらな目の動きなど、細かい演技が印象的でした。
そうした挙動や表情は自分で意識したわけではなく、監督に指示されたわけでもないんです。菅田(将暉)くん演じる山城と、初めて対峙して芝居をした時に、自然とそう演じていました。監督から、「今の良かったよ」と言われて、モニターで見てから自分でもそういう演技をしていたことがわかりました。おそらく、自分の声や考えていることに引っ張られて出てきた表情や挙動だったのだと思います。

──特に大変だったシーンは?
山に登ったシーンですね。急な所も登ったのに、結果使われたのは、一番平坦だったところでしたけど(笑)。

人を刺すシーンでは、アクション部の方から「そんなんじゃ刺さんないですよ!もっとこうですよ!人間の肉って硬いんです」と言われました。「なんでそんなこと知ってんだろう?怖えなっ、どんな人なんだろう?」と思いながら目を見たら、超怖いし(笑)。でも、とても紳士な方々で、終わったら、「Fukaseさん、ありがとうございました。あれなら、ばっちり刺さります」と太鼓判を押されました。思いっきりやらないと、そう見えないんですね。本当に疲れて、その撮影の翌日は全身筋肉痛になりました。初期の台本では「人を殺すって、2日間寝込むくらい疲れるんだよ」というセリフがあったのですが、それが撮影の時には「1日寝込むくらい疲れるんだよ」と書き換えられていて、監督に、「これ、4人殺ったら2日です」と訴えたくらい。もちろん演技ですけど、それでも全身筋肉痛になり、次の日は肩が全然上がりませんでしたね。

──両角は殺人のやり口にある種のこだわりを持つ異常者ですが、そんな彼でも演じていて共感する部分はありましたか?
演技の先生に聞くと、「どんなに共感ができないキャラクターに対しても、自分が演じきった後に少しでも好きでいれたら、それはひとつの正解だ」と言われました。その時は、「(両角に対しては)無いな」と思っていました。殺人鬼は、自分の目的のために人の命を奪う究極のエゴイスト。両角に至っては、何人殺したんだってくらい大勢殺している。両角の心情はちょっと理解できないと思っていたら、先生から、「小さい頃に戻って、幸せだったこと、嬉しかったこと、大切な人やこと、音楽など、一つずつ頭の中から消し去ってください」とアドバイスをもらって。メンタルに来そうな作業だなと思いましたが、3日くらいかけてやっていったら、僕もこうした大切なものがなかったら、両角のような人間になっていたかもしれない可能性があるんだな、ということに気がつきました。

──今回の経験は、今後の表現活動に影響があると感じますか?
表現方法としては、表情から歌っていくことはたくさんあるので、参考になっています。なにせ殺人鬼の顔はすぐにできますよね。僕らはファンタジーの歌ばっかりを歌っているわけじゃないし、ライブで殺人鬼の顔で歌って良い曲は何曲かあって。

──完成した映画を実際に観た感想は?
すごいカッコいい映画だと思います。僕以外は。めちゃくちゃスタイリッシュな映画に出演させてもらって、嬉しいです。僕なりに頑張りました。誰も知らない完全オリジナルなストーリーなので、楽しんでいただけたらと思います。

──出演シーンで気に入っているところはありますか?
自分(両角)のことは直視できなかったので薄目で観ていたのですが……僕がアドリブで入れたセリフが結構活かされていたのは、個人的に嬉しかったですね。例えば、「ごめんね」というセリフとか、「疲れた〜」とか、だいたい人を殺した後のセリフはアドリブでした。そういうところを観て欲しいのですが、同時に、「Fukaseって本当にヤバいヤツなんだ」とは思わないで欲しい。僕のことを”どっちかな”と思っている人が世間の半々ぐらいなのでは思ったりもしますが、これは演技です。僕はとっても優しい人間だということをわかっていただきたいと思います。

──最初は菅田将暉さんの相手役ということで緊張したとのことでしたが、一緒に仕事をしてみて、菅田さんのすごさとは何だと思いますか?
まずは、とても誠実な人だということですね。何をやっても誠意があるから、映画やドラマにこれだけ引っ張りだこになるんだろうなと思います。手を抜いている瞬間がまったく無くて。僕が言うのもおこがましいのですが、いつ休んでいるのだろうと心配になるくらい。今回の撮影でも、菅田くんは自分の顔がカメラに映らないシーンでも、僕が演じやすいように本気で演じてくれるいるんです。そこまでやったら、菅田くん疲れてしまうんじゃないかな、と思ってしまう。その誠実さが伝わってくるから、僕もそれに応えなきゃとも思うし、「僕の本業はミュージシャンなんで」とか言っていられません。いろいろ学ばせてもらいました。

撮影現場を訪問したSEKAI NO OWARIのメンバー

──俳優の仕事をしてみて、思うことはありますか?
想像もしなかった仕事ですね。幸運にも僕は音楽を通じて、いろいろなことが経験できましたが、この年齢でも“生まれて初めて”という経験はあるんだなと思いました。

僕の場合、音楽に関してはパフォーマーであると同時に、楽曲制作やライブの演出だったりと、頭の半分はディレクターになっちゃっています。一方で映画は監督のものだし、僕は100%表現者でいられて、面白かったですね。音楽でも、表現者だけでいる時があっても良いんじゃないかと思いました。

──今後は俳優業も続けていく予定ですか?
演技をしたこともなかったところから、今回の両角という役をつくり、1本撮り終えたわけですが、だからと言って、「これから役者やっていくぞ」といったおこがましいことは言えないですね。餅は餅屋という部分もありますし。でも、とても楽しかったので、また機会があればやらせていただきたいと思いますね。

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『キャラクター』

漫画家として売れることを夢見る山城圭吾(菅田将暉)は、高い画力があるにも関わらず、リアルな悪役キャラクターを描くことができず、万年アシスタント生活を送っていた。ある日、スケッチに出かけた先で惨殺事件に遭遇、しかも犯人を目撃してしまう。事件の第一発見者となった山城は、警察の取り調べに対して「犯人の顔は見ていない」と嘘をつく。それどころか自分だけが知っている犯人を基に殺人鬼の主人公“ダガー”を生み出し、サスペンス漫画「34(さんじゅうし)」を描き始めたところ、漫画は異例の大ヒット。瞬く間に売れっ子漫画家となった山城は、恋人の夏美(高畑充希)とも結婚し、順風満帆な生活を手に入れた。しかし、「34」を模したような事件が続き、刑事の清田俊介(小栗旬)や真壁孝太(中村獅童)から目をつけられる山城。そんな中、一人の男が山城の前に姿を現した。「両角(もろずみ)って言います。先生が描いたものも、リアルに再現しておきましたから。」交わってしまった二人。山城を待ち受ける“結末”とは?

キャスト/菅田将暉、Fukase(SEKAI NO OWARI)、高畑充希、中村獅童、小栗旬
原案・脚本/長崎尚志
監督/永井聡

日本公開/2021年6月11日(金)ROADSHOW
配給/東宝
公式サイト
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