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2021.04.25 21:00

2021年夏に観たい注目のLGBTQ映画4選!

  • Fan's Voice Staff

近年、邦画・洋画を問わずLGBTQをテーマにした映画が多数公開されています。2021年も、息子の死をきっかけにゲイバーを再建することになった主婦の希望と友情を描いた『ステージ・マザー』や、フランスのジェンダーレスモデルのアレクサンドル・ヴェテールが映画初主演を果たした『MISS ミス・フランスになりたい!』、異なる境遇の2人の女性が化石を通じて惹かれ合い、新たな自分を見出していく様を描いた『アンモナイトの目覚め』といった良作が評判を呼びました。

本記事では、この夏公開されるLGBTQ+映画の中でも注目作をピックアップ。フランスを代表するクィア監督であるフランソワ・オゾンが少年二人の瑞々しい恋を描いた青春映画や、ゲイの水球チームの実話をベースにしたドラマ、コリン・ファースとスタンリー・トゥッチというベテラン名優がカップルを演じる愛の物語など、多彩な作品が揃いました。

また、5月20日より開催される「ドイツ映画祭 HORIZONTE 2021」のオープニング作品として上映される『未来は私たちのもの』は、イラン系移民を親にもつミレニアル世代の若者の成長を通して移民問題やLGBTQテーマを描いた秀作。ドイツ映画界に新風を吹き込む注目の若手監督ならではの解釈や表現は、時代によって変化していくLGBTQ映画の今を知る上でも必見です。

『スーパーノヴァ』

『英国王のスピーチ』でアカデミー賞を受賞したコリン・ファースと、『ラブリーボーン』でアカデミー賞にノミネートされたスタンリー・トゥッチがカップル役を演じ、20年を共にした2人が向き合う人生の最終章を描く感動作。俳優としてデビューし、本作が監督第2作目となるハリー・マックイーンが、オリジナル脚本として書き上げた物語です。さらに、『ターナー、光に愛を求めて』などで2度アカデミー賞にノミネートされたディック・ポープが撮影監督を務め、水と緑が織りなす風景が絵画のように美しい湖水地方をはじめ、イギリスが誇る景勝を余すところなく捉えています。

〈あらすじ〉家族・友人に恵まれ、ユーモアや文化を愛し、最高の人生を紡いできたピアニストのサム(コリン・ファース)と作家のタスカー(スタンリー・トゥッチ)。友人や家族に囲まれ、些細なやり取りや出来事にさえ幸せを感じる穏やかで充実した日々でしたが、タスカーのある一言が引き金となり、続くはずだった2人の未来の終わりが近いこと、さらに心に秘めていたそれぞれの結末が全く異なっていたことに気付いていきます。最後の最後まで共に生きることを望むサムと、愛しているからこそ終わりを望むタスカー。お互いを想い合う2人が愛がゆえに導き出す答えとは──?

出演/コリン・ファース、スタンリー・トゥッチ
監督・脚本/ハリー・マックイーン
2020年/イギリス/カラー/ビスタ/5.1chデジタル/95分/G/字幕翻訳:西村美須寿/原題:Supernova

日本公開/2021年7月1日(木)TOHOシネマズ シャンテ 他全国順次ロードショー
提供/カルチュア・パブリッシャーズ、ギャガ
配給/ギャガ
© 2020 British Broadcasting Corporation, The British Film Institute, Supernova Film Ltd.

『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』

フランスに実在するゲイの水球チーム”シャイニー・シュリンプス”を題材とした笑いと涙の物語。メガホンをとったセドリック・ル・ギャロ監督は、実在の”シャイニー・シュリンプス”メンバーの一員。チームに入るまでは、ゲイの友人がひとりもいなかったという監督の「奇異で過激と見られようと自分を貫く自由な仲間との旅は、人生観が変わるほどの経験だった。何よりも、辛い現実をユーモアで乗り切る彼らの圧倒的な強さを知ってもらいたいという思いから、この映画は誕生した」という熱い想いと特別な経験が散りばめられた渾身の一作です。

2019年5月、フランスで公開されたフランス語映画で初週動員数No.1を記録(続編を除く/2019年5月8日~12日/Box Office Mojo調べ)。メディアからも「まさか水球映画に泣かされるなんて!監督の実体験が散りばめられた傑作!!」(The Independent)、「感動的でチャーミング!ハッピーが止まらない!!」(Radio Times)と、絶賛コメントが相次いでいます。

〈あらすじ〉同性愛者への心ない発言の罰として、ゲイのアマチュア水球チームのコーチをすることになった、元オリンピック銀メダリストの水泳選手マチアス(ニコラ・ゴブ)。彼に課されたミッションは、弱小チーム「シャイニー・シュリンプス」を3ヶ月後にクロアチアで開催される世界最大のLGBTQ+五輪「ゲイゲームズ」に出場させること。ところが、メンバーは勝ち負けにこだわらない“パーティー好き”なお調子者の集まりで、いつもポジティブでハッピーオーラ全開。水泳一筋、勝利のためなら家族も犠牲にしてきたストイックなマチアスは、適当にコーチをやり過ごそうとしていましたが、悩みを抱えながらも明るく陽気に振る舞い、どんな困難にも持ち前のユーモアで立ち向かって”自分らしく”生きるシャイニー・シュリンプスの姿は、やがてマチアスの”心”を変えていき──。

監督・脚本/セドリック・ル・ギャロ、マキシム・ゴヴァール
出演/ニコラ・ゴブ、アルバン・ルノワール、ミカエル・アビブル、デイヴィット・バイオット、ロマン・ランクリー、ローランド・メノウ、ジェフリー・クエット、ロマン・ブロー、
フェリックス・マルティネス
2019/フランス/カラー/ビスタ/DCP/5.1ch/字幕翻訳:高部義之/PG-12/英題:The Shiny Shrimps/原題:Les Crevettes pailletées

日本公開/2021年7月9日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ ほか全国順次公開!!
配給/ポニーキャニオン、フラッグ
提供/フラッグ、ポニーキャニオン 
© LES IMPRODUCTIBLES, KALY PRODUCTIONS et CHARADES PRODUCTIONS

『Summer of 85』

フランス映画界の巨匠フランソワ・オゾンの最新作。原作はオゾンが17歳の時に出会い、「いつか長編映画を監督する日がきたら、その第一作目はこの小説だと思った」と言うほど深く影響を受けた英作家エイダン・チェンバーズによる青春小説の金字塔「Dance on my Grave」(おれの墓で踊れ/徳間書店)。約35年の時を経て、オーディションで見出した注目の新鋭二人を主演に迎えて映像化を果たしました。

数々の名作を世に放ってきたオゾンが、原作から受けた感銘はそのままに、初恋の衝動を圧巻の映像美と巧みな演出で表現し、たどり着いた”愛の原点”。これまでの過激な恋愛描写は封印し、爽やかで瑞々しい少年たちのひと夏の初恋、そして永遠の別れの物語を紡ぎ出します。1985年を舞台にしたノスタルジックな雰囲気漂うフィルム撮影による映像や、音楽にも要注目です。

〈あらすじ〉1985年夏のフランス。進路に悩む16歳の少年アレックス(フェリックス・ルフェーヴル)は、今日もひとり波に揺られ、あてもない日々を過ごしていました。ある日、突然の嵐に見舞われ転覆したボートから彼の命を救ったのは、18歳のダヴィド(バンジャマン・ヴォワザン)。アレックスにとって、ダヴィドは眩いほど自然体で自信に満ちた魅力に溢れていました。運命的に出会った2人は急速に惹かれ合い、恋愛感情で結ばれます。これが、アレックスにとって初めての恋でした──。

監督・脚本/フランソワ・オゾン
出演/フェリックス・ルフェーヴル、バンジャマン・ヴォワザン、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、メルヴィル・プポー
PG-12

日本公開/2021年8月20日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開
配給/フラッグ、クロックワークス
© 2020-MANDARIN PRODUCTION-FOZ-France 2 CINÉMA–PLAYTIME PRODUCTION-SCOPE PICTURES

『未来は私たちのもの』

1994年生、イラン系移民2世のファラズ・シャリアット監督が、ドイツにおける移民系の青年の成長を描いた自伝的デビュー作。LGBTQや移民問題をテーマに、今の若者が社会の中で希望を持って生きていく姿を、力強くスタイリッシュな映像で映し出しています。

多様性を繊細かつポップに強く肯定する訴えが評価され、2020年のベルリン国際映画祭では、LGBTQをテーマとした映画から選ばれるテディ賞を受賞し、パノラマ部門観客賞第2位に。さらにシャリアット監督が2021年ドイツ映画批評家賞と最優秀長編賞を、ヤコブ・ヒユフエルが映画音楽賞を受賞し、主演のベンヤミン・ラジャブプルは主演男優賞にノミネート。2020年のトロントLGBTQ映画祭でも受賞しています。

主題歌はイラン出身でトランスジェンダーのラッパー、サイエ・スカイ。イランの性的マイノリティは差別的な法律により、死をも含む危険にさらされています。イランで初めてラップでLGBTQのことを取り上げた後、迫害にあい、カナダに亡命し在住。ベルリンでも音楽活動をしています。

〈あらすじ〉イラン系移民の両親を持つミレニアル世代の青年パーヴィス(ベンヤミン・ラジャブプル)は、両親がドイツで築いた安定した快適な環境で育ちながらも出会い系アプリでのデート、レイヴやパーティなどで、地方暮らしの退屈さを紛らわせています。ある日、万引きがばれ、社会奉仕活動を課され難民施設で通訳として働くことになり、イランからやってきた姉弟に出会います。その出会いを通じて、彼らはドイツにおけるそれぞれの未来が平等でないことに気づき始めます──。

監督/ファラズ・シャリアット
キャスト/ベンヤミン・ラジャブプル、バナフシェ・フールマズディ、アイディン・ジャラリー、マリアム・ザレー 他
2020年/93分/ペルシア語、ドイツ語/日本語・ドイツ語字幕付/英題:No Hard Feelings/原題:Futur Drei
©Juenglinge Film

「ドイツ映画祭 HORIZONTE 2021」オープニング作品
会期:5月20日(木)~5月23日(日)
会場:渋谷ユーロライブ(東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F)
主催:ゲーテ・インスティトゥート東京
共催:German Films
協力:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES

5月12日追記:「ドイツ映画祭 HORIZONTE 2021」は11月に開催延期となりました。