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2020.09.08 13:00

『異端の鳥』の”驚異の映像体験”を谷川俊太郎、奈良美智、小島秀夫らが語るコメントが到着!

  • Fan's Voice Staff

第76回ベネチア国際映画祭において、『ジョーカー』に並び話題を集めた『異端の鳥』の“驚異の映画体験”を、各界の著名人が綴った絶賛コメントが到着しました。

第二次大戦中、ナチスのホロコーストから逃れるために、たった一人で田舎に疎開した少年が差別と迫害に抗いながら強く生き抜く姿と、異物である少年を徹底的に攻撃する“普通の人々”を赤裸々に描いた本作。原作は、ポーランドの作家イェジー・コシンスキが1965年に発表した「ペインティッド・バード」。ポーランドでは発禁書となり、作家自身も後に謎の自殺を遂げた“いわくつきの傑作”を、チェコ出身のヴァーツラフ・マルホウル監督が実に11年もの歳月をかけて執念ともいえる映像化を果たしました。

第76回ベネチア国際映画祭コンペティション部門での上映時には、少年の置かれた過酷な状況が賛否を呼び、途中退場者が続出した一方で、10分間のスタンディングオベーションも受け、ユニセフ賞を受賞。同映画祭屈指の話題作となりました。その後も多くの批評家から絶賛を浴び、本年度アカデミー賞国際長編映画賞のチェコ代表に選出、本年度のチェコ・アカデミー賞(チェコ・ライオン)では最多の8部門を受賞しました。

総勢11名から寄せられたコメントは次の通り(順不同/敬称略)。

谷川俊太郎(詩人)
見終わって私の言葉はしばし仮死状態に陥りました。
でもこの映画にひそむ沈黙から言葉はふたたびよみがえるでしょう。

小川洋子(小説家)
邪悪を射抜く少年のまなざしに、魂を奪われ、ただ立ち尽くすしかない。

奈良美智(画家・彫刻家)
生き物の本質に善悪の基準なんてないだろう。生き残るために「人間性」は空虚な言葉になって、非情で残虐な世界に埋没していく。それでも、人が生き続ける限り、忘却の彼方から言葉が生き返る瞬間を、僕らは最後に目撃するだろう。

古舘寛治(俳優)
映画館のスクリーンで観るべき映画。その映像美の中に目を背けてはいけない「人間の正体」がある。

深緑野分(作家)
戦争が人間を変えるのではなく、元々人間が残忍だから戦争も虐殺も起きるのだ。筆舌に尽くしがたい醜悪さを突きつける、東欧の芸術作品らしい陰惨で濃厚な魔術的物語。

李相日(映画監督)
美しく完璧なショットが炙り出すのは、人の皮を被った動物の姿。この映画でしか味わえない圧倒的な余韻がある。

濱野ちひろ(ノンフィクションライター)
生き延びることそれ自体が理不尽であるような最悪な状況。
不条理と狂気にまみれた少年の日々を直視させる映像美が憎い。

ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
戦争が引き起こす人間性の破綻、その連続から目を背けたくなりつつも、美しい白黒の映像美と主人公の少年による無言のリアルな演技で最後まで釘付けになりました。

小島秀夫(ゲームクリエイター)
これまで最も不快な戦争体験は『炎628』だったが、本作はそれに匹敵する。時代に流されていく孤独な少年の流刑。いつかは幸せになれると、微かな期待をしつつの169分は、見事に裏切られる。少年の無垢を彩る美しいモノクロ映像と、戦火の吐瀉物や血痰とのコントラストが続く。ところが、不思議なことに後半には戦争色に全てが染まる。戦時下、どこにも光はなく、色もない。灰色に染めあげられていく無垢なる“モノクロームの少年”。もう子供でも大人でも戦士でもない。彼こそが“戦争”そのものなのだ。

松尾貴史(タレント)
凄まじい映像と物語。普通の人たちの内なる差別、悪意、残虐、あらゆる「業」が、少年にここまでの仕打ちをするのか。長尺を忘れて、心の中で叫び続けた。この機会を逃さずに。

桜庭一樹(作家)
川本三郎先生の書評で原作小説を知り、読みました。恐ろしい物語ですが、〝知っている地獄〟のような不思議な懐かしさを感じました。映画と小説の両輪で理解を深めてほしい作品です。
※書評=「走れナフタリン少年」(川本三郎/北宗社、中公文庫)所収の「ひとりぼっちの逆十字軍」

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『異端の鳥』(原題:The Painted Bird)

東欧のどこか。ホロコーストを逃れて疎開した少年は、預かり先である一人暮らしの叔母が病死した上に火事で家が消失したことで、身寄りをなくし一人で旅に出ることになってしまう。行く先々で彼を異物とみなす周囲の人間たちの酷い仕打ちに遭いながらも、彼はなんとか生き延びようと、必死でもがき続ける──。

監督・脚本/ヴァーツラフ・マルホウル 
原作/イェジー・コシンスキ「ペインティッド・バード」 (松籟社・刊)
キャスト/ペトル・コトラール、ステラン・スカルスガルド、ハーヴェイ・カイテル、ジュリアン・サンズ、バリー・ペッパー、ウド・キアー
2018年/チェコ・スロヴァキア・ウクライナ合作/スラヴィック・エスペラント語、ドイツ語ほか/169分/シネスコ/DCP/モノクロ/5.1ch/字幕翻訳:岩辺いずみ/R15

日本公開/2020年10月9日(金)、TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー
配給/トランスフォーマー
後援/チェコ共和国大使館 日本・チェコ交流100周年記念作品
公式サイト
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