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2020.08.21 8:00

【ネタバレ無し感想・評価】『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』笑えて泣ける、史上最高の青春映画

  • Fan's Voice Staff

オリヴィア・ワイルド初監督作の青春コメディ『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』が8月21日(金)に日本公開されます。本記事では、公開に先立ち開催されたオンライン試写会に参加したファンの感想とともに、本作の見どころを紹介します。

モリー(ビーニー・フェルドスタイン)、エイミー(ケイトリン・デヴァー)

成績優秀で負けず嫌いの生徒会長のモリーと、同じく優等生で2年前に同性愛をカミングアウトしているエミリー。親友同士のふたりは、高校生活のすべてを勉学に費やし、一流の大学への進路を決めていました。ところが、高校の卒業式の前日、パーティやスポーツに明け暮れていた同級生も有名大学や一流企業に進むことを知り愕然。「私たちだってスマートで、おもしろい人間だってことを知らしめてやる!」と、クラスの人気者ニックが開くパーティに潜り込もうとしますが、招待すらされていないふたりは会場も知らず──。

製作総指揮に名を連ねているのは、『俺たち〜』シリーズを手掛け、『バイス』(18年)ではゴールデン・グローブ賞監督賞にノミネートされたアダム・マッケイと、“俺たちシリーズ”で主演を務めてきた俳優のウィル・フェレル。アメリカのコメディ界を牽引するふたりは、コンスタンス・ウー、ジェニファー・ロペスらがポールダンサーを演じたローリーン・スカファリア監督『ハスラーズ』(19年)のプロデュースも手掛けていますが、本作では女優オリヴィア・ワイルドの堂々の監督デビューを後押ししています。

『ベイビー・ドライバー』(17年)を輩出したSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)映画祭でワールドプレミアされた『ブックスマート 』は、インディペンデント・スピリット賞新人作品賞、ハリウッド映画賞ブレークスルー監督賞を受賞。ゴールデン・グローブ賞ではビーニー・フェルドスタインが主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)にノミネートされるなど、世界の映画賞で25部門受賞、65ノミネートを獲得。映画ファンでも知られるオバマ前米国大統領の「フェバリエット・ムービーズ・オブ・2019」にも選ばれ、注目を浴びました。

史上最強の女子高校生版バディ・ムービーの誕生

米国で公開されるや否や、「女性版『スーパーバッド 童貞ウォーズ』!」「新たなる学園映画の傑作!」と大絶賛された『ブックスマート』。これまで、『アメリカン・グラフティ』(73年)を始め、時代ごとに高校の卒業パーティーを舞台にした学園コメディは描かれてきましたが、本作はその枠にとどまらず、主人公ふたりの友情や絆を描く“バディムービー”としての存在感が際立ちます。

バディムービーといえば、学園コメディに勝るとも劣らない人気ジャンルで、『リーサル・ウェポン』から『マイアミ・バイス』、『ラッシュ・アワー』、『テッド』など多くのヒット作が映画史を彩ってきました。ところが、その中でのバディ(親友)というのは、なぜか男性ばかり。2001年には、ソーラ・バーチ、スカーレット・ヨハンソン主演の『ゴーストワールド』という、ティーン女子が主人公のバディムービーの金字塔がヒットし話題となりましたが、圧倒的に”品薄”の状態。そんな中で登場したのが、『ブックスマート』です。

抱腹絶倒のスピード感あふれるコメディでありながら、笑って泣ける青春映画。高校生活という「刹那」を全力でサバイバルしようとするふたりの友情に、多くの共感の声が寄せられています。

これまでの「常識」をアップデートする、革命的なコメディ

同級生のニック(メイソン・グッディング)、”トリプルA”(モリー・ゴードン)、タナー(ニコ・ヒラガ)

『ブックスマート』が傑出しているのは、これまでの学園ものにありがちな「ダサい女の子たちがおしゃれして人気者になる」といったようなステレオタイプ的な表現が皆無なところ。主人公のふたりは単なる「ガリ勉」でなく、ウィットに富んだ毒舌家で、恋や性にも好奇心旺盛な、等身大の高校生。エイミーは、”2年前にカミングアウト済み”の同性愛者で、そのことに対する葛藤は描かれません。

ふたりを取り巻く同級生たちも個性豊かで、魅力的。性的嗜好も人種もルックスも、それぞれ違っていて当たり前。従来の学園ものとは一線を画する視点で描かれたキャラクターたちを通して語られる高校生活は、今日的です。

オリヴィア・ワイルドの鮮やかすぎる監督デビュー

 

右:オリヴィア・ワイルド監督

本作で監督デビューを果たしたのは、TVシリーズ『The OC』で注目を集め『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』(18年)や『リチャード・ジュエル』(19年)などでも存在感を見せた、女優のオリヴィア・ワイルド。「脚本を読んで爆笑した」というワイルドは、この物語をなによりも友情の物語として描きたかったそう。「思春期の友情というのは、人生で最も親密な関係。つまり、この映画では人生の重要な時期を描いている。女の子たちの、楽しくて刺激的な冒険をね。大人から見るとかわいい悩みでも、彼等にとっては戦争。だから、この映画にはアクション映画や戦争映画のように取り組んだ」。

『ビバリーヒルズ・コップ』や『リーサル・ウェポン』を参考にしたワイルドはコメントしていますが、モリーとエイミーの軽妙な会話やスピード感あふれる展開には、監督としての並々ならない才能を感じさせます。『ブックスマート』が大絶賛されているワイルドですが、すでにフローレンス・ピュー、シャイア・ラブーフ、クリス・パイン、ダコタ・ジョンソン共演のサイコスリラー『Don’t Worry, Darling』を製作中。さらには、ソニー・ピクチャーズ製作の女性キャラクターを主人公とした新作マーベル映画の監督にも抜擢されたと海外で報じられています。両作品とも、『ブックスマート』の脚本を務めたケイティ・シルバーマンと再タッグ。監督としてのますますの活躍に目が離せません。

フレッシュな個性派女優が体現する「青春のリアル」

同級生のジャレッド(スカイラー・ギソンド)、モリー(ビーニー・フェルドスタイン)

ミシェル・オバマや史上2人目となるアメリカ最高裁判事のルース・ベイダー・ギンズバーグを仰ぎ、最年少で最高裁判事就任を夢見るモリー役で抜群のコメディ・センスを発揮したのは、ビーニー・フェルドスタイン。グレタ・ガーウィグ監督『レディ・バード』(17年)で、シアーシャ・ローナン演じる主人公の親友役を演じ一躍脚光を浴びましたが、『ブックスマート』ではゴールデン・グローブ賞(ミュージカル・コメディ部門)主演女優賞にノミネートされるなど、さらに躍進。大ヒットしたミュージカル『ハロー・ドーリー!』でブロードウェイ・デビューも果たしています。ちなみに、兄は『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(07年)や『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(13年)の俳優で、『mid90s ミッドナインティーズ』で監督デビューを果たしたジョナ・ヒルです。

相棒のエイミーを演じたのは、ケイトリン・デヴァー。『ショート・ターム』(13年)や『デトロイト』(17年)で注目され、『アンビリーバブル たった1つの真実』(19年)ではゴールデン・グローブ賞(リミテッドシリーズ/テレビムービー部門)主演女優賞にノミネートされました。

同級生のライアン(ヴィクトリア・ルエスガ)、エイミー(ケイトリン・デヴァー)

ケイトリンは、レズビアンをカミングアウトしていたけれど、気になる子に声をかけられない引っ込み思案な優等生というエイミーに出会い、「こんなにキャラクターの濃い役は初めてだったから、どうしてもこの役をやりたい」と思ったそう。親友という間柄にリアリティをもたせるため、撮影中、フェルドスタインとデヴァーは同居してましたが、「最高の経験だった。私たちは1日の撮影が終わると一緒に家に帰り、ベッドに横たわってテレビを観て、パンケーキを食べた。ビーニーをすごく身近に感じた」と振り返っています。

最高なふたりの最後の一夜を彩るプレイリスト

学園コメディに欠かせないのが、音楽です。「自分の感情を発見し、自分を表現する方法を知る青春時代ならではの音楽体験を反映させたい」というワイルド監督が音楽監修を任せたのは、長年の友人もあるブライアン・リング。多様性に富んだ登場人物を象徴するかのように、ヒップホップ、エレクトロ、クラシック音楽まで、幅のある選曲でサウンドトラックが構成されています。数々の映画などで使用されてきたSalt-N-Pepaの「Push It」といった定番もあれば、”金持ち”同級生が登場するシーンではLeikeli47の「Money」、モリーとエイミーがパーティーに向かうシーンでは、Discoveryの「Osaka Loop Line」(=”大阪環状線”)が流れ、エモーショナルな場面ではLykke LiやRhyeのメロディックな歌声がシーンを引き立てたりと、物語に音楽がリンクしたプレイリストムービーとも言えるでしょう。ほか、Lizzo、M.I.A.、DJ Shadow、Little Dragon、SBTRKT、Perfume Geniusなどの楽曲が登場し、さらに『ベイビー・ドライバー』にも楽曲提供したダン・ジ・オートメイターがオリジナルスコアを手掛けています。

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『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(原題:Booksmart)

監督/オリヴィア・ワイルド
製作総指揮/ウィル・フェレル、アダム・マッケイ
出演/ケイトリン・デヴァー、ビーニー・フェルドスタイン、ジェシカ・ウィリアムズ、リサ・クドロー、ウィル・フォーテ、ジェイソン・サダイキス、ビリー・ロード、ダイアナ・シルバーズ、モリー・ゴードン、 ノア・ガルビン、オースティン・クルート、ヴィクトリア・ルエスガ、エドゥアルド・フランコ、ニコ・ヒラガ、メイソン・グッディング
2019年/アメリカ/英語/102分/スコープ/カラー/5.1ch/日本語字幕:髙内朝子

日本公開/2020年8月21日(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
提供・配給/ロングライド
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